雨降ってきた。テントに当たる雨音を聞いている。寝袋はあたたかく、闇はどこまでも深い。目を閉じているのか開いているのか分からないくらいだ。誰もいない山の上で雨に降られていること、そんな中にささやかな我が家を築けていること、その幸せを噛み締めながらぼんやりとしている。問題は、問題があるとすれば、さっきから気づかないふりをしてごまかしている尿意だ。寝袋の心地良さに引きずられて、雨が降る前に用足しに出なかった自分馬鹿。風も吹いてきて、雨音は益々激しくなっている。やつもまた、密やかに存在感を増し始めている。こうやって意識を他のことに向けていても、やつは確実にそこにいるのだ。長い夜に、なるかもしれない。