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新酒の季節に考える——酒造年度(BY)表示の「曖昧さ」と日本酒の未来

新酒が店頭に並び始める季節になると、酒好きの心は自然と弾みます。「今年の出来はどうか」「去年と比べて香りは?」といった話題が飛び交い、冬の訪れを感じる瞬間でもあります。しかし、その一方で、瓶に小さく印字された「BY」――酒造年度(Brewery Year)の表示に首をかしげる人も少なくありません。ワインの「ヴィンテージ」に似ているようで、実は似て非なるこの表示。改めてその意味と課題を考えてみたいと思います。 ワインの『ヴィンテージ』とのズレ…
新酒の季節に考える——酒造年度(BY)表示の「曖昧さ」と日本酒の未来
新酒が店頭に並び始める季節になると、酒好きの心は自然と弾みます。「今年の出来はどうか」「去年と比べて香りは?」といった話題が飛び交い、冬の訪れを感じる瞬間でもあります。しかし、その一方で、瓶に小さく印字された「BY」――酒造年度(Brewery Year)の表示に首をかしげる人も少なくありません。ワインの「ヴィンテージ」に似ているようで、実は似て非なるこの表示。改めてその意味と課題を考えてみたいと思います。 ワインの『ヴィンテージ』とのズレ ワインの世界では「ヴィンテージ=葡萄の収穫年」であり、その年の天候や収穫状況が味に直結します。いわば自然との対話を数字で示すものです。 一方、日本酒の「酒造年度(BY)」は、「その酒が仕込まれた年度」を示すもので、原料である米の収穫年とは一致しません。日本酒は、前年に収穫された米を冬に仕込み、翌年の春以降に出荷するのが一般的です。つまり、ワインが「農産物の年」を示すのに対し、日本酒は「仕込みの年」を示しているにすぎません。 この構造的なズレを考えると、「BYをワインのヴィンテージのように語る」ことは正確ではなく、もし『ヴィンテージ』を標榜するなら、本来は米の収穫年度を基準にすべきではないかという疑問が残ります。 さらに厄介なのは、このBY表示が一般の消費者にとって非常に分かりづらいという点です。たとえば「R6BY」と書かれていても、それが令和6年(2024年)に仕込まれた酒だとすぐ理解できる人は限られます。加えて、同じ蔵の中でも「R6BYの生酒」と「R5BYの火入れ酒」が同時に売られていることもあり、単に新しい数字が新しい酒とは限りません。 結果として、BY表示は本来の意義を果たせず、「難しい」「何を指しているのかわからない」という印象だけが残り、むしろ消費者を遠ざけてしまう側面すらあります。 新酒も古酒もそれぞれに価値があるのに… 日本酒の世界には、しぼりたての『新酒』のフレッシュな魅力と、熟成によって深みを増した『古酒』の妖艶な美しさの両方があります。しかし、現在の表示制度では、その違いがラベルから直感的に伝わらないのが現状です。製造年月は記載されていても、それが「瓶詰め時」なのか「蔵出し時」なのか明確でなく、消費者が「いま飲んでいる酒」がいつどのように造られたものなのかを正確に把握するのは難しいのです。 本来なら、①仕込み年度(酒造年度) ➁原料米の収穫年度 ③瓶詰め・出荷年月 といった情報を統一的に、分かりやすい形式で記載すべきでしょう。これが整えば、「今年の米で仕込み、半年熟成させた酒」なのか、「2年前の仕込みを寝かせた熟成酒」なのかが一目で分かり、日本酒の多様な世界がもっと正当に評価されるはずです。 曖昧さが日本酒の魅力を損ねている 現在のBY表示は、専門家や愛好家にとっては利用価値があるのかもしれませんが、酒自体の価値を語るにはあまりに曖昧で、個々の日本酒が持つ物語性を十分に伝えられません。 「いつ仕込まれた」「いつ詰められた」「いつ出荷された」——これらが一本のラベルの中で明確に整理されるだけで、日本酒の価値はさらに高まるでしょう。ワインが『ヴィンテージ』を誇るように、日本酒もまた、『時間をどう扱う酒か』を堂々と語れる時代を迎えるべきです。 新酒の季節に思うのは、この「BY」という小さな文字が、日本酒の未来を閉ざしてしまっているのではないかということであります。もともと酒造税法によって生まれた「BY」をそのまま転用するのではなく、今こそ消費者目線に沿って、個々の日本酒の魅力を伝える表示に切り替えるべきだと考えるのであります。
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「Oriental Sake Awards 2025」の最高賞が決まる──アジア市場が示した次の日本酒基準

アジア最大級の日本酒コンテストとして知られる「Oriental Sake Awards 2025」(以下 OSA)において、最高賞「サケ・オブ・ザ・イヤー」に新澤醸造店(宮城県大崎市)の「あたごのまつ 鮮烈辛口」が選ばれました。アジア全域から集まった審査員によるブラインド審査を経て決まるこの賞は、その年を代表するたった一本の日本酒に贈られる栄誉です。本醸造酒である同銘柄が、アジアの大規模市場で最も高い評価を獲得したことは、日本酒の未来に大きな意味を持ちます。…
「Oriental Sake Awards 2025」の最高賞が決まる──アジア市場が示した次の日本酒基準
アジア最大級の日本酒コンテストとして知られる「Oriental Sake Awards 2025」(以下 OSA)において、最高賞「サケ・オブ・ザ・イヤー」に新澤醸造店(宮城県大崎市)の「あたごのまつ 鮮烈辛口」が選ばれました。アジア全域から集まった審査員によるブラインド審査を経て決まるこの賞は、その年を代表するたった一本の日本酒に贈られる栄誉です。本醸造酒である同銘柄が、アジアの大規模市場で最も高い評価を獲得したことは、日本酒の未来に大きな意味を持ちます。 アジア市場で求められる食中酒としての完成度 OSAは香港を拠点とし、アジアに広がる日本酒ファン・飲食店・ホテル・輸入事業者から高い注目を集める国際日本酒コンテストです。アジアは現在、世界で最も日本酒消費が増えている地域であり、日本酒の新たな市場を形成する存在になっています。そこで最高賞に選ばれたということは、単に品質の高さだけでなく、「アジアの食文化に適応し、現地で愛される可能性が最も高い酒」として評価されたことを意味します。 「あたごのまつ 鮮烈辛口」は、キレのある辛口設計に加え、柔らかな米の旨味がバランスよくまとまり、食中酒としての対応力が非常に高い日本酒です。–5℃での氷温貯蔵によるクリアな味わいが保たれている点も評価され、寿司や日本料理はもちろん、東南アジアのスパイス料理や中華料理との相性も自然と高まります。国や文化を超えてペアリングの幅が広がることが、アジア市場で強く支持された理由の一つといえるでしょう。 本醸造の価値がアジアで再定義される 今回の最高賞には、もうひとつ重要な視点があります。それは、「本醸造」というカテゴリーがアジア市場において高く評価された点です。日本国内では純米・吟醸系が注目されがちですが、アジアでは日常酒としての飲みやすさや、料理に寄り添う万能性が求められ、本醸造の持つ「軽快さ」や「キレ」が強い武器になります。 OSAという大舞台で本醸造酒が頂点に立ったことは、日本酒の国際展開において「高価格帯・華やかさ」だけが評価軸ではないという、新たなメッセージでもあります。「毎日の食卓に合わせやすい味」こそが、アジアの日本酒需要を押し上げる原動力であることを示した結果といえます。 アジア発の評価が日本酒の未来を動かす 日本酒の輸出額の伸びをけん引しているのは中国・台湾・香港・シンガポール・タイなど、アジアの国々です。こうした市場では、現地の味覚や酒類文化を踏まえながら、その土地で選ばれる酒であるかどうかが重要になります。 OSAはまさにその指標となるコンテストであり、そこで最高賞を受けたということは「あたごのまつ 鮮烈辛口」がアジアで最も伸びる潜在力を持った銘柄であると評価されたに等しいのです。今後、アジアの飲食店やラグジュアリーホテルで採用が進む可能性も高く、海外販路の拡大に直結する成果となるでしょう。 地域の蔵からアジアの『日常酒』へ 「あたごのまつ 鮮烈辛口」の受賞は、地方の蔵元が生み出す「日常に寄り添う酒」が、アジアの巨大市場へと橋を架けた瞬間でもあります。華やかさではなく、食卓に溶け込む味わいが選ばれたことは、日本酒文化が次の段階へ進みつつあることを示しています。 アジア最大級のコンテストで生まれたこの結果は、これからの日本酒の海外展開において大きな指標となり、さらなる市場拡大と文化交流の鍵を握るものになるでしょう。
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日本酒における「本物」とは何か? 酔いや味わいを超えた哲学の探求

「酒ぬのや本金酒造」様のインスタグラムに、非常に示唆に富む問いかけがありました。それは「日本酒における本物とは何か」という根源的な問いです。興味深いことに、これは外国からの問いかけであると記されています。 国内で「無視」されてきた根源的な問い 私たち日本人にとって、日本酒は長きにわたり「あって当たり前」の存在でした。米を耕し、水を守り、四季の移ろいを肌で感じて生活を営む中で、酒は祭りや儀式、そして日常の食事を彩る、生活の一部、文化の背景そのものでした。…
日本酒における「本物」とは何か? 酔いや味わいを超えた哲学の探求
「酒ぬのや本金酒造」様のインスタグラムに、非常に示唆に富む問いかけがありました。それは「日本酒における本物とは何か」という根源的な問いです。興味深いことに、これは外国からの問いかけであると記されています。 国内で「無視」されてきた根源的な問い 私たち日本人にとって、日本酒は長きにわたり「あって当たり前」の存在でした。米を耕し、水を守り、四季の移ろいを肌で感じて生活を営む中で、酒は祭りや儀式、そして日常の食事を彩る、生活の一部、文化の背景そのものでした。 そのため、国内では「本物とは何か」という根源的な定義を問い直す必要は、ほとんどなかったと言えるでしょう。「美味しい」「この土地ならでは」「うちの蔵の味」といった、個々の感覚や地域性に根ざした評価基準が、いわば暗黙の了解として存在していたからです。この問いかけは、あまりにも身近すぎて、かえって無視されてきた問いかけだ、と表現することもできます。 世界的な広がりが突きつける「本物」の定義 しかし今、日本酒は急速に世界的な広がりを見せています。海外の多様な文化や、蒸留酒・ワイン・ビールといった他の酒類との比較の中で、日本酒は「SAKE」という新しいカテゴリーとして受け入れられています。 異文化圏の人々は、まず日本酒の独自性、すなわち「本物であることの証明」を求めます。彼らは、単に「米から造る酒」という事実以上の、意味や価値、哲学を欲しているのです。 なぜ米と水だけで、これほど複雑な味が生まれるのか? 伝統とは、どのような技術と歴史に裏打ちされているのか? 日本酒は、人々の暮らしや精神性に、どのような役割を果たしてきたのか? これらの問いは、酔いや味わいといった感覚的な価値にとどまらず、その背景にある「文化的な深み」や「哲学に通じるもの」を求めるものです。彼らにとっての「本物」とは、五感で感じる美味しさの向こう側にある、論理的・精神的な納得感なのです。 求められるのは「酔い」や「味」を超えた哲学 日本酒人気の広がりとともに、国内外で求められているのは、もはや「美味しいから飲む」という段階を超えた価値です。そこには、以下のような、哲学に通じる要素が求められています。 【土地(テロワール)の哲学】 ①その土地の水・米・気候・蔵人の生き様が、酒にどのように映し出されているか。 ➁単なる産地表示ではなく、「なぜ、この場所でなければならないのか」という存在理由。 【時間の哲学】 ①受け継がれてきた数千年の歴史や、醸造という行為に込められた時間の概念。 【人と自然の哲学】 ①自然の摂理に従いながら微生物とともに酒を造るという、循環と共生の精神。 ➁日本古来からの、持続可能性(サステナビリティ)に通じる概念。 真摯な探求こそが未来の業界を支える 「本物とは何か」という問いに、醸造技術のデータや、官能的な表現だけで答えることはできません。蔵元や業界全体が、自らのルーツ、技術の背景、そして酒が生活にもたらす精神的な意味合いを、言語化し、発信していく必要があります。 これこそが、外国からの問いかけに真摯に向き合うということです。自らの手で醸す酒の存在意義を深く考察し、その哲学的な価値を明確にすることは、単に海外展開に役立つというだけでなく、国内においても日本酒が、「単なるアルコール飲料」から「人々の暮らしを豊かにする文化財」へと、再認識される契機となります。 「本物」の探求とは、自己との対話であり、文化の再定義です。これに真摯に向き合うことで、日本酒は酔いや味わいといった一過性の価値を超え、人々の暮らしに深く資する普遍的な存在となり、これからの業界の発展を、哲学という名の太い幹で支えることになるでしょう。
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福山雅治ゆかりの名酒「残響」がルクセンブルク酒チャレンジ2025最高賞受賞

10月28日、国際日本酒品評会「ルクセンブルク酒チャレンジ2025」にて、新澤醸造店 の「超特選 純米大吟醸 残響 2024」が、最高賞にあたる「Best Award」に選出されたことが明らかになりました。なお、本コンテストのプラチナ/金/銀賞の受賞結果は、6月17日付で既に発表されており、最高賞の発表は10月末日としていたものです。 コンテストの特徴と意義…
福山雅治ゆかりの名酒「残響」がルクセンブルク酒チャレンジ2025最高賞受賞
10月28日、国際日本酒品評会「ルクセンブルク酒チャレンジ2025」にて、新澤醸造店 の「超特選 純米大吟醸 残響 2024」が、最高賞にあたる「Best Award」に選出されたことが明らかになりました。なお、本コンテストのプラチナ/金/銀賞の受賞結果は、6月17日付で既に発表されており、最高賞の発表は10月末日としていたものです。 コンテストの特徴と意義 「ルクセンブルク酒チャレンジ」は、2022年に第1回が開催され、ヨーロッパにおける日本酒の魅力を発信し、新たな市場開拓を目的とした国際日本酒品評会です。本コンテストの主な特徴は以下の通りです。 審査員にはヨーロッパ各国で活動する「酒ソムリエ」やホテル・レストランの専門家が含まれ、日本酒の香り・味わいだけでなく「現地の料理とのペアリング適性」も評価ポイントとなっています。 審査基準においては、外観、香り、味わい、調和、パッケージの優雅さなど多角的に評価されており、単純な技術醸造だけでなく市場適合性を重視している点が注目されます。 ルクセンブルクを拠点に、ベルギー・ドイツ・フランスといった欧州主要市場にアクセスできることから、日本酒の欧州市場参入における「重要な入り口」として位置づけられています。 こうした特色をもつ本コンテストにおいて、最高賞を獲得することは、単なる受賞にとどまらず、対外的な評価・ブランド発信の大きな転機となるものです。 「残響」が示した新しい日本酒の姿 今回、最高賞を受けた「残響」は、単なる技術的な到達点を超えた、日本酒文化の象徴的存在です。その誕生は2009年。新澤醸造店の蔵元と、俳優でありミュージシャンでもある福山雅治氏との親交から生まれました。当時、世界最高とされた精米歩合7%という前人未踏の挑戦から誕生したものです。 以後、「残響」は国内外の主要コンテストで数々の受賞を重ねてきました。ロンドン酒チャレンジやIWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)SAKE部門では、ワインの専門家たちから「最も繊細で詩的な日本酒」と評され、すでに国際的評価を確立していました。今回、欧州の中心地であるルクセンブルクで最高賞に選ばれたことは、世界の味覚の一部として認められた象徴的な出来事と言えるでしょう。 それはまた、「残響」が体現する『磨きの哲学』が、欧州の審査員の深い共感を呼び込んだということでもあります。単なる技術競争ではなく、素材と向き合い、心を込めて限界まで磨き抜く姿勢――それはクラフトマンシップと精神性を重んじるヨーロッパの文化とも響き合います。その意味で、今回の最高賞は日本酒が文化として成熟し、共感の言語を世界と共有し始めたことを象徴しています。 この受賞によって、「残響」は再び世界の舞台で脚光を浴びました。今回の受賞を契機に、「残響」は単なるプレミアム日本酒を超え、日本酒の芸術的到達点として国際市場で新たな価値を創出していくはずです。そしてその余韻は、まさに名の通り、世界中の酒席に静かに、しかし確かに響き続けていくことでしょう。 ▶ 残響|熟成しても燗にしても美味いプレミアム日本酒
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「梵」、INTERNATIONAL SAKE CHALLENGE 2025で4冠

2025年の INTERNATIONAL SAKE CHALLENGE(ISC) の審査結果がこのほど発表され、福井県鯖江市の加藤吉平商店による銘酒「梵(BORN)」が、7部門中4部門で最高賞である TROPHY(トロフィー) を獲得しました。 この結果は、単なる受賞の枠を超え、「梵」というブランドが改めて世界の審美眼に通用する品質を持つことを証明したものとして注目されています。 INTERNATIONAL SAKE CHALLENGEとは何か…
「梵」、INTERNATIONAL SAKE CHALLENGE 2025で4冠
2025年の INTERNATIONAL SAKE CHALLENGE(ISC) の審査結果がこのほど発表され、福井県鯖江市の加藤吉平商店による銘酒「梵(BORN)」が、7部門中4部門で最高賞である TROPHY(トロフィー) を獲得しました。 この結果は、単なる受賞の枠を超え、「梵」というブランドが改めて世界の審美眼に通用する品質を持つことを証明したものとして注目されています。 INTERNATIONAL SAKE CHALLENGEとは何か ISCは、2007年に設立された日本酒の国際審査会で、世界的なワインコンペティション「International Wine Challenge(IWC)」の姉妹大会に位置づけられています。 しかし、IWC SAKE部門とは異なり、ISCは完全に日本国内で開催される国際基準の官能評価会である点が特徴です。審査員には日本国内の酒類鑑定士や蔵人だけでなく、海外のマスター・オブ・ワイン(MW)やワインジャーナリスト、ホテルソムリエなど、非日本人審査員が多数参加しており、評価基準はワインやスピリッツの世界基準と同等の枠組みで運営されています。 他の主要コンクール――たとえば全国新酒鑑評会やSAKE COMPETITIONなどが「技術力」を基準にした美味しさを評価するのに対し、ISCは世界の消費者が感じる美味しさという普遍的基準を軸に置いています。香味の完成度・熟成バランス・温度変化による味の展開、さらには輸出市場での可能性まで含めた「総合的国際評価」が行われるため、世界で売れる日本酒を見極める場ともいわれます。 世界に知られる「梵」が、再び世界基準で認められた そんな審査の中で、梵が4部門でトロフィーを獲得したのは極めて異例です。 梵はすでに、海外では「BORN」というローマ字表記で高級レストランや一流ホテルに流通しており、国際的ブランドとして確立している銘柄です。1998年の国際酒祭り(カナダ・トロント)ではグランプリを受賞、カンヌ国際映画祭で日本酒として初めて晩餐酒として使われるなど、国際的な舞台に度々登場してきました。 つまり、世界市場での名声をすでに持つ酒が、あえて世界標準の審査に挑み、とんでもない快挙を達成したのです。しかも「梵・天使のめざめ」は、毎年のようにトロフィーを獲得しています。 このように、「評価されるべき酒が、再び評価された」ことは、一見当然のようでいて、実は非常に難しいことです。なぜなら、知名度のある酒ほど期待値が高く、厳しい目が向けられるからです。そんな中でも、「梵」が純米大吟醸・吟醸・純米酒・熟成酒と複数のカテゴリーで最高賞を得たことは、蔵としての総合力と品質維持力の高さを、あらためて世界に示した形です。 今後への影響 今回のISC2025での「梵」の快挙は、「世界に認められた日本酒」が我が国の日本酒コンテストで認められたということであり、日本酒の評価軸が定まってきたことを象徴しています。 これまで日本酒は、国内で高い評価を受けても必ずしも海外で理解されるとは限らず、また逆に、海外で人気を博す銘柄が国内審査で埋もれることもありました。しかし今回、「梵」が世界の舞台で培った信頼と、日本の酒としての完成度を両立させ、「世界品質の日本酒」として再確認されたことは、業界全体にとって大きな意味を持ちます。 この結果は、単に「梵」にとっての栄誉ではなく、日本酒という文化そのものが「国境を越えて通じる味」として成熟したことの証でもあります。今後、「梵」が築いたこの評価の橋を渡るように、多くの蔵が世界と対話しながら、新たな日本酒像を描いていくことになるでしょう。 【TROPHY(トロフィー)受賞酒一覧】 最優秀大吟醸・吟醸酒 出羽桜 大吟醸酒 出羽桜酒造 山形県 最優秀純米大吟醸酒 五橋 純米大吟醸50% 酒井酒造 山口県 最優秀純米吟醸酒 會津宮泉 純米吟醸 宮泉銘醸 福島県 最優秀純米酒 梵・純米55 加藤吉平商店 福井県 最優秀熟成酒 梵・天使のめざめ 加藤吉平商店 福井県 最優秀スパークリング酒 梵・ささ雪 加藤吉平商店 福井県 最優秀プレミアム酒 梵・夢は正夢 加藤吉平商店 福井県
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重陽の節句と燗酒――秋の深まりとともに訪れる「温め酒」の季節

日本には四季折々の節句があり、その中でも旧暦の9月9日にあたる「重陽(ちょうよう)の節句」は、古くから「菊の節句」としても知られています。奇数が重なることを「陽が重なる」として、強くなりすぎた陽の気を祓い、無病息災を願って菊酒を飲む風習が平安時代から伝わってきました。もともとは中国の陰陽思想に由来し、九という最大の陽数が重なる日を「陽の極」と捉えることに始まります。 この重陽の節句は、新暦では、概ね10月中に訪れます。そして実は、この日こそが「燗酒」の季節の幕開けとされてきたのです。 「花冷え」から「雪の酒」へ――燗酒の季節区分…
重陽の節句と燗酒――秋の深まりとともに訪れる「温め酒」の季節
日本には四季折々の節句があり、その中でも旧暦の9月9日にあたる「重陽(ちょうよう)の節句」は、古くから「菊の節句」としても知られています。奇数が重なることを「陽が重なる」として、強くなりすぎた陽の気を祓い、無病息災を願って菊酒を飲む風習が平安時代から伝わってきました。もともとは中国の陰陽思想に由来し、九という最大の陽数が重なる日を「陽の極」と捉えることに始まります。 この重陽の節句は、新暦では、概ね10月中に訪れます。そして実は、この日こそが「燗酒」の季節の幕開けとされてきたのです。 「花冷え」から「雪の酒」へ――燗酒の季節区分 古くからの日本酒文化では、酒を温めて飲む「燗」の習慣が、季節の移ろいとともに繊細に区分されてきました。春の「花冷え」や「涼冷え」など冷酒の温度呼称に対し、秋から冬にかけては「日向燗」「人肌燗」「ぬる燗」「上燗」「熱燗」「飛び切り燗」といった呼び名が生まれています。 この「燗酒の季節」は、旧暦の重陽の節句から翌年の桃の節句(旧暦3月3日、現在の4月中旬ごろ)までとされていました。つまり、秋が深まり始める頃に温め酒を始め、春を迎えるまでの半年間を「燗の季節」と見立てていたのです。気温の低下とともに体を温める知恵でもあり、また、熟成が進んだ秋の日本酒を味わう絶好の時期でもありました。 古の人々は、この季節の変化を敏感に感じ取り、味覚として楽しみました。新米の酒が仕上がる前のこの時期、夏を越して旨みが乗った「ひやおろし」を火で温めると、さらに柔らかく、深みのある味わいが引き出されます。まさに、燗酒は秋の実りとともに楽しむ旬の酒なのです。 2025年は10月29日――重陽の節句を味わう日 月の満ち欠けを基準にした旧暦カレンダーをめくると、2025年の旧暦9月9日は、10月29日にあたります。つまり、今年の「重陽の節句」は10月29日。暦の上では、ここから本格的な燗酒の季節が始まるということになります。 この日を境に、秋の夜長にしっとりと燗をつける楽しみが増していきます。近年では冷酒人気が高い一方で、燗酒の魅力が再評価されつつあります。温度による香りと味わいの変化、酒質による相性、器の選び方など、五感で楽しむ深い世界がそこにあります。特に純米系や生酛・山廃系の酒は、温めることで旨味がふくらみ、料理との相性も格段に良くなります。 現代の暮らしの中で、季節を実感する瞬間が少なくなった今こそ、旧暦の節句を意識してみるのも趣深いものです。たとえば10月29日の夜、菊の花を一輪飾り、秋の味覚を肴にして、ぬる燗をゆっくり味わう――そんな時間の中に、古い歴史を持つ日本のよさが感じられるかもしれません。 暦とともに楽しむ酒文化の再発見 重陽から桃の節句までの半年は、まさに「燗酒の文化」が最も豊かに花開く時期です。冬の寒さをしのぐ手段であると同時に、米の旨みを最大限に引き出す温度の妙が楽しめるこの季節。現代の私たちにとっても、燗酒はただの温め酒ではなく、自然のリズムに寄り添いながら味わう『熱い文化』だと言えるでしょう。 2025年10月29日、重陽の節句――冷酒から一転、湯気とともに立ち上る香りに、秋の深まりを感じる季節が始まります。 ▶ 雄町サミット燗酒部門での初代最優等賞に輝いた岡山の日本酒【生酛 和井田】
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都市型酒蔵「KOFUNE SAKE BREWERY」誕生——時間を共有する次世代の日本酒体験とは

大阪・梅田に、都市型の新しい日本酒醸造所「KOFUNE SAKE BREWERY(コフネ・サケ・ブルワリー)」が2025年11月1日にグランドオープンします。 この施設は、「酒造りを見ながら飲める」というライブ感あふれる空間を特徴とし、従来の日本酒づくりにおける『時間の概念』を根本から見直す試みとして注目を集めています。 「ゆっくり熟す」から「時間を共有する」酒造りへ…
都市型酒蔵「KOFUNE SAKE BREWERY」誕生——時間を共有する次世代の日本酒体験とは
大阪・梅田に、都市型の新しい日本酒醸造所「KOFUNE SAKE BREWERY(コフネ・サケ・ブルワリー)」が2025年11月1日にグランドオープンします。 この施設は、「酒造りを見ながら飲める」というライブ感あふれる空間を特徴とし、従来の日本酒づくりにおける『時間の概念』を根本から見直す試みとして注目を集めています。 「ゆっくり熟す」から「時間を共有する」酒造りへ 一般的に日本酒は、仕込みから出荷まで数カ月をかけ、発酵・熟成の過程を経て完成します。ところがKOFUNEでは、この「時間をかける」プロセスを削るのではなく、『その時間を見せる』という方向に舵を切ったといいます。 都市部に限られたスペースで行う小仕込みを前提とし、発酵期間は数週間から1か月程度。小ロットで仕込むことで、造り手が自由に発想し、そのアイデアをリアルタイムで形にするというのです。まるでアーティストが次々と新曲を発表するように、KOFUNEは、造りたての日本酒を、大阪という大都会で発信していくのです。 この新たな酒体験を実現するために、KOFUNE SAKE BREWERY では、醸造設備とともにパブが併設され、仕込みタンクを眺めながら、造りたての日本酒をその場で味わうことができるようになっています。発酵のピーク、落ち着き、そして瓶詰め後の変化までを来訪者と共有するスタイルで、それはまさに「発酵のライブ」。 一般的な蔵が「時間を閉じ込めた酒」を提供するのに対し、KOFUNEは「時間が動いている酒」を見せるのです。造り手と飲み手が同じ時間軸で味わいを確かめ合うという、これまでにない体験を提供することになります。 醸造家の自由と都市のスピードが出会う場所 KOFUNEのもう一つの特徴は、醸造家の創造性を最大限に尊重する仕組みです。酒造免許や設備投資などのハードルをKOFUNE側がサポートし、造り手は「造りたい酒」に集中できるのです。この構想は、創作を支える「音楽レーベルのSAKE版」です。都市というスピーディーな環境の中で、伝統技術に裏打ちされたクラフト精神をどのように発揮できるか。その挑戦の場がKOFUNEなのです。 そして、「時間を短縮する」のではなく「時間をともに過ごす」という、KOFUNEの核心思想。仕込み直後のフレッシュな香りから、数日ごとに変化する旨味や酸のバランスまでを、リアルタイムで楽しむ。まるでワインの樽試飲やクラフトビールの新バッチのように、KOFUNEのSAKEには『今しかない味わい』を感じ取ることができるはずです。それは、市場に出回る日本酒が持つ静的な魅力に対し、動的で現在進行形の美味しさを提案するものです。 都市で生まれる新しい酒文化 KOFUNE SAKE BREWERYは、伝統とスピード、職人技と都市文化を融合させた、まったく新しい日本酒の実験場です。11月のグランドオープンでは、地方の料理人を招いたペアリングイベントや限定銘柄の提供も予定されています。これまで「時間をかけて完成させる」ことに重きを置いた日本酒の世界に、KOFUNEは「時間を共有して味わう」という新しい美学を持ち込みます。 都市で酒を造り、その場で飲む——その行為自体が、日本酒の未来を象徴しているのかもしれません。
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雪国から生まれる循環の酒──津南醸造が描くサステナブルな日本酒の未来

新潟県津南町に蔵を構える津南醸造は、2025年10月23日から25日にかけて開催されたフードテックカンファレンス「SKS JAPAN 2025」の街中展示企画「食のみらい横丁」に出展しました。同蔵が紹介したのは、純米大吟醸「郷(GO)GRANDCLASS 魚沼コシヒカリEdition」です。雪国のテロワールを象徴する一本として注目を集めましたが、今回の展示で特に焦点となったのは、その味わいだけでなく「サステナビリティ(持続可能性)」というテーマでした。 雪国の気候を生かす「自然冷蔵庫」…
雪国から生まれる循環の酒──津南醸造が描くサステナブルな日本酒の未来
新潟県津南町に蔵を構える津南醸造は、2025年10月23日から25日にかけて開催されたフードテックカンファレンス「SKS JAPAN 2025」の街中展示企画「食のみらい横丁」に出展しました。同蔵が紹介したのは、純米大吟醸「郷(GO)GRANDCLASS 魚沼コシヒカリEdition」です。雪国のテロワールを象徴する一本として注目を集めましたが、今回の展示で特に焦点となったのは、その味わいだけでなく「サステナビリティ(持続可能性)」というテーマでした。 雪国の気候を生かす「自然冷蔵庫」 津南町は日本有数の豪雪地帯として知られています。冬には積雪が3メートルを超えることもあり、その雪は厳しい自然環境であると同時に、津南醸造にとっては貴重な資源でもあります。蔵では雪室を利用した貯蔵や温度管理を行っており、電力使用量を大幅に抑えています。つまり、雪の冷気がゆるやかに温度を安定させることで、機械による制御を最小限にし、エネルギーコストを削減しながら酒質の安定を実現しているのです。 この「雪の冷蔵庫」は、自然エネルギーを活かした地域ならではの持続可能な仕組みといえます。雪を敵ではなく味方にする発想が、雪国テロワールの根幹にあります。 米・水・人がつなぐ地域循環 「郷(GO)」シリーズの大きな特徴は、原料米に魚沼産コシヒカリを使用している点です。一般的には食用米として知られるコシヒカリですが、津南醸造はその香味の豊かさに注目し、酒造好適米ではなく地元農家と連携して栽培した食用米を用いています。これにより、農家の販路拡大につながり、地域経済の循環を促しています。 また、仕込み水には信濃川源流域の伏流水を使用しています。この清冽な水は雪解けとともに山々から流れ込み、町の水田を潤します。その水が再び酒となって人々の手に戻るという循環こそ、津南醸造が掲げる「雪国サステナビリティ」の象徴です。 フードテックと伝統の融合 今回のSKS JAPANでは、「未来の食」をテーマにテクノロジーと環境への配慮を取り入れた食品が多く出展されました。その中で津南醸造は、伝統的な日本酒という枠組みを超え、自然環境との共生を軸に据えた「地域循環型のフードシステム」としての酒造りを提示しました。 蔵では再生可能エネルギーの導入や廃棄物削減の取り組みも進めています。酒粕は堆肥化され、再び米作りへと還元されます。さらに、瓶や包装資材にもリサイクル素材を積極的に活用し、輸送過程でも二酸化炭素の排出を抑える努力を続けています。 雪国から世界へ──持続可能な味わい 津南醸造の挑戦は、単に環境に優しい酒造りというだけではありません。地域の自然と人の営みを一体化し、未来に継承できる「酒文化の生態系」をつくることを目指しています。 雪国が抱える厳しい気候を逆に資源として捉え、地域全体で支え合う循環のモデルは、世界のサステナブルフードの潮流にも通じます。「郷(GO)GRANDCLASS 魚沼コシヒカリEdition」は、雪国の恵みを凝縮した一本であり、環境と共存する新しい日本酒の在り方を示す『未来の郷土酒』といえるでしょう。 ▶ 食卓に寄り添う魚沼の新風:津南醸造「郷(GO)TERRACE」始動
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「堅あげポテト あさりの酒蒸し味」登場──『あまいすえひろ』に寄り添う、日本酒専用スナックの誕生

カルビーが発表した10月27日からの新商品「堅あげポテト あさりの酒蒸しバター仕立て」が、いまにわかに注目を浴びています。その理由は、単なる新フレーバーの登場ではなく、会津若松の老舗・末廣酒造の純米酒「あまいすえひろ」に合わせて開発された『日本酒専用スナック』だからです。これまでの「食に合わせて日本酒を選ぶ」発想から、「日本酒に合わせて食をデザインする」発想へ──日本酒文化が新たなフェーズに入ったことを象徴する一品と言えます。 『あまいすえひろ』のやさしい甘みに寄り添う味設計…
「堅あげポテト あさりの酒蒸し味」登場──『あまいすえひろ』に寄り添う、日本酒専用スナックの誕生
カルビーが発表した10月27日からの新商品「堅あげポテト あさりの酒蒸しバター仕立て」が、いまにわかに注目を浴びています。その理由は、単なる新フレーバーの登場ではなく、会津若松の老舗・末廣酒造の純米酒「あまいすえひろ」に合わせて開発された『日本酒専用スナック』だからです。これまでの「食に合わせて日本酒を選ぶ」発想から、「日本酒に合わせて食をデザインする」発想へ──日本酒文化が新たなフェーズに入ったことを象徴する一品と言えます。 『あまいすえひろ』のやさしい甘みに寄り添う味設計 末廣酒造は嘉永3年(1850年)創業の老舗蔵で、「伝統を守りながら新しさを創る」姿勢で知られています。その純米酒「あまいすえひろ」は、まろやかな米の甘味と軽やかな酸味が調和する、優しく包み込むような味わいが特徴です。アルコール度数はやや低めで、食中酒としてもデザート酒としても楽しめる柔軟さを持っています。 今回の「堅あげポテト あさりの酒蒸しバター仕立て」は、この「あまいすえひろ」の持つ米の甘味と繊細な香りを引き立てるように、あさりの旨みと酒蒸しの風味を重ね合わせたといいます。あさりのだし感が日本酒の甘みを引き立て、香ばしいポテトの余韻が酒の酸をやさしく包み込む。まさに、「酒をおいしくするための菓子」として設計された逸品です。 『食が日本酒に寄り添う』という新しい文化の兆し これまでの日本酒ペアリングは、料理に合わせて酒を選ぶのが一般的でした。刺身には吟醸、煮物には純米、天ぷらには本醸造――というように、食材の特性を基準に酒が選ばれてきました。しかし、この商品はまったく逆。まず特定の日本酒があり、その味わいを最大限に引き出すために、スナックの味が組み立てられています。 この発想の転換は、まさに日本酒の楽しみ方を拡張するものです。スナックという軽やかなフォーマットに日本酒の魅力を組み合わせることで、これまで「日本酒は難しい」「食事の時だけ」と感じていた層にも、新しい入り口を提示しています。特に「あまいすえひろ」のようなやわらかな味わいの酒は、女性層や若年層にも人気があり、その層と親和性の高いスナックとのコラボは、非常に理にかなっていると言えるでしょう。 カルビーの「堅あげポテト」は、厚切りのじゃがいもをじっくり揚げることで生まれる独特の硬質食感と、素材の香りを引き出す低温仕上げが特徴です。今回の「堅あげポテト あさりの酒蒸しバター仕立て」では、その技術が活かされ、咀嚼のたびに広がる貝の旨味が、あまいすえひろのやさしい甘香と重なり合います。 日本酒が主役の時代へ──ペアリングの未来 今回のコラボは、食品メーカーと酒蔵の協業が進む中でも特に象徴的な事例です。ワインやウイスキーでは「ペアリングフード」の発想が定着していますが、日本酒でこれほど明確に『銘柄指定』で味を合わせたスナックは、ほとんど前例がありません。 この動きは、日本酒の「嗜好品としての再定義」にもつながります。すなわち、日本酒が料理を支える脇役ではなく、食体験の中心に立つ主役へと変わりつつあるということです。今後、他の酒造や地域限定銘柄とのタイアップも増えることでしょう。 『カルビー×末廣酒造』という異業種のタッグが生み出した「堅あげポテト あさりの酒蒸しバター仕立て」。それは、スナックの世界に日本酒文化を融合させた『味の交差点』であり、日本酒が日常の中に自然に溶け込む未来を予感させる試みです。 日本酒を主役に据えた一袋──その小さな革命が、家庭の晩酌をより豊かな時間へと変えていくに違いありません。
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シャンパンファイトに変わるか『AWA SAKE』~ドジャースとともに闘う八海山

新潟県南魚沼市の老舗蔵「八海醸造」は、メジャーリーグ・ロサンゼルス・ドジャースのリーグ優勝を記念した限定ボトル「八海山 ドジャース リーグチャンピオン記念ボトル」を発表しました。球団公式パートナーとして契約を結ぶ同社が、優勝の節目に合わせて記念酒をリリースするのは初の試みです。すでにアメリカ国内のファンや日本の野球ファンの間で話題となり、単なる限定酒にとどまらず、『日本酒が世界の祝祭に登場する瞬間』として注目を集めています。 スポーツ×日本酒が切り開く、新たな文化的祝杯…
シャンパンファイトに変わるか『AWA SAKE』~ドジャースとともに闘う八海山
新潟県南魚沼市の老舗蔵「八海醸造」は、メジャーリーグ・ロサンゼルス・ドジャースのリーグ優勝を記念した限定ボトル「八海山 ドジャース リーグチャンピオン記念ボトル」を発表しました。球団公式パートナーとして契約を結ぶ同社が、優勝の節目に合わせて記念酒をリリースするのは初の試みです。すでにアメリカ国内のファンや日本の野球ファンの間で話題となり、単なる限定酒にとどまらず、『日本酒が世界の祝祭に登場する瞬間』として注目を集めています。 スポーツ×日本酒が切り開く、新たな文化的祝杯 八海山は、長年にわたり「淡麗辛口」を象徴する銘柄として国内外にファンを持つ蔵です。清冽な南魚沼の水と精緻な温度管理によるキレのある味わいは、アメリカ市場でも『HAKKAISAN』ブランドとして定着し、寿司店や高級レストランなどで高い評価を得ています。 今回の記念ボトルは、そうした国際展開の延長線上にあります。ドジャースという世界的チームとのコラボレーションは、日本酒がもはや「輸出される伝統産品」ではなく、「文化を共有する象徴的存在」へと進化していることを示しています。 スポーツという喜びを共有する舞台で日本酒が祝杯の中心に登場することは、文化的にも極めて意義深いことです。長年、勝利や祝福の瞬間にはシャンパンが定番とされてきましたが、そこに日本酒が並び立つ姿は、日本文化の新たな国際的地位を象徴します。特に八海山には、シャンパンを標榜する『AWA SAKE』があり、その清らかな酒質は、スポーツの美学にもよく似合うと思われます。 近年、日本酒の海外展開は「飲まれる」から「語られる」段階へと変化しています。八海山のような蔵が、スポーツや文化イベントと連動する動きを見せるのは、単なる販売促進ではなく、「体験価値」を生み出す戦略といえます。 ドジャースとの提携によって、八海山は国際的なブランドとしての存在感を強化しつつあります。これは他の酒蔵にとっても大きな刺激となるでしょう。音楽・映画・アートなど、異業種とのコラボレーションによる文化発信が今後さらに広がれば、日本酒が『文化資産』として世界の舞台に定着する可能性が高まります。 ワールドチャンピオンの瞬間には『AWA SAKE ファイト』を 今回のリーグ優勝記念ボトルの発売は、八海山が次のステージを見据えていることを示しています。現時点でこれほど話題性のある限定品を打ち出してきたことからも、もしドジャースがワールドチャンピオンに輝いた暁には、さらなる特別企画が待っているのではないかと期待されます。 そして、その瞬間には、シャンパンファイトならぬ「八海山 AWA SAKE ファイト」を見たい——そう願うファンも少なくないでしょう。八海山のスパークリング日本酒「あわ 八海山(AWA SAKE)」は、細やかな泡と上品な香りで、まさに祝杯にふさわしい一本です。もしその AWA SAKE がロッカールームで勢いよく開栓され、勝利の喜びを共有する姿が見られたなら、それは日本酒文化が世界に完全に受け入れられた瞬間になるはずです。 日本酒が国境を越え、祝祭の象徴となる未来。その先頭を走るのが八海山であり、今回のドジャース優勝記念ボトルはその道を切り拓く第一歩です。次なる舞台は、ワールドシリーズの頂点。もし再び八海山が勝利の瞬間を彩ることになれば、日本酒の新たな歴史が、世界の歓声とともに刻まれることになるかもしれません。 ▶ 「美味しいお酒」が「SAKE」に! 大谷翔平選手MVPインタビュー通訳が生んだ日本酒への熱視線 ▶ 日本酒をメジャーに導く、ドジャース公式日本酒「特別本醸造 八海山 ブルーボトル」
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全国で広がる「呑み鉄」文化|列車で楽しむ地酒イベントと日本酒ツーリズムの未来

このところ、列車に揺られながら日本酒を楽しむユニークな旅 ―――いわゆる「呑み鉄(のみてつ)」スタイルのイベントが全国各地で盛り上がっています。たとえば、東日本旅客鉄道新潟支社の「越乃Shu*Kura」は、2014年から運行され、車内で新潟の地酒を味わえるとして人気となっています。また今月25日には、関東鉄道常総線(水海道−下館駅間)で、地元の酒やつまみを車内で味わえる「日本酒列車」を運行するとあって注目されているほか、山陽新幹線でも、「一滴一駅~新幹線酒めぐり~」という11月のイベントが話題を呼んでいます。…
全国で広がる「呑み鉄」文化|列車で楽しむ地酒イベントと日本酒ツーリズムの未来
このところ、列車に揺られながら日本酒を楽しむユニークな旅 ―――いわゆる「呑み鉄(のみてつ)」スタイルのイベントが全国各地で盛り上がっています。たとえば、東日本旅客鉄道新潟支社の「越乃Shu*Kura」は、2014年から運行され、車内で新潟の地酒を味わえるとして人気となっています。また今月25日には、関東鉄道常総線(水海道−下館駅間)で、地元の酒やつまみを車内で味わえる「日本酒列車」を運行するとあって注目されているほか、山陽新幹線でも、「一滴一駅~新幹線酒めぐり~」という11月のイベントが話題を呼んでいます。 呑み鉄とは何か 「呑み鉄」とは、元来「酒を飲みながら列車旅を楽しむ」鉄道ファンのスタイルを指します。テレビ番組 六角精児の呑み鉄本線・日本旅(NHK-BS)では、俳優で鉄道ファンでもある 六角精児 さんが各地のローカル線を巡り、車内で缶ビールやお酒を嗜み、沿線の酒蔵を訪ねる旅を紹介しており、この番組を通じて「呑み鉄」という言葉が一般にも広く知られるようになりました。 鉄道旅とお酒、地域文化が結びつくことで、「ただ乗る」「ただ飲む」だけではない、『旅と酒と鉄道』が三位一体となった遊び方として注目されてきたのです。たとえば、旅先の沿線風景を眺めながらお酒を一口含むと、列車の揺れや車窓の景観が酒の味わいを引き立て、旅そのものが特別な体験になります。実際、六角精児さんも「車内で泥酔しない」「列車を目的地ではなく移動そのものを楽しむ」のが基本と語っています。 なぜ今、盛り上がっているのか 近年、観光列車や地域活性化の文脈で、『景色+地域産品(=地酒)』という組み合わせが重視されており、鉄道会社や自治体、酒蔵側が共同で企画を打ち出すケースが増えています。また、イベント型「枡酒列車」や「地酒電車」など、プログラム化された列車旅が『旅行商品』の一つとして定着しつつあるのです。 さらにコロナ禍以降、人との接触を抑えた『ゆったり旅』や、鉄道を移動手段だけでなく『旅そのもの』として楽しむムーブメントが強まり、「列車旅×飲酒」のスタイルにも追い風となりました。こうした背景が、「呑み鉄」の流行を後押ししているといえます。 今後の展望と課題 これから「呑み鉄」が発展していくうえで、いくつかのポイントが考えられます。まず、地域との連携。酒蔵・飲食店・鉄道会社が一体となり、列車旅をハブに地元体験を盛り込むことで、旅の満足度が高まります。若桜鉄道(鳥取県)では酒蔵見学を含める企画まで準備していますが、これはその好例です。 次に、移動を楽しむ視点の維持。「飲むこと」が主目的になってしまうと列車旅の魅力が損なわれかねません。六角精児さんも語っていたように、列車特有の『ゆっくりと流れる時間』を楽しみながら飲むことが鍵です。また、公共交通としての安全配慮も重要です。酒を伴う旅なので、飲酒量のコントロール、席数や定員、駅からの帰路手段などを明確にする必要があります。 さらに、新しい体験の創出が期待されます。例えば、四季折々の風景と連動する「雪室熟成酒列車」や、夜景と合わせた「ナイト地酒列車」、さらには海外観光客向けの『日本酒+鉄道』パッケージなど、無数の組み合わせが評判を呼ぶ可能性を秘めています。 ただし、気をつけるべき課題もあります。列車旅という公共空間で飲酒を伴う以上、マナーや安全への配慮、および飲酒後の移動手段の確保など、企画者側・参加者ともに意識すべきです。また、飲酒そのものの需要だけでなく、地域体験としての「旅」の価値を高めることが、長期的な人気継続につながるでしょう。
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和光アネックス、「IWA 5」取り扱い開始 ──スイーツと日本酒の新しい関係を提案

銀座・和光アネックスで、話題の日本酒「IWA 5」がラインナップに加わりました。フランス・シャンパーニュの名門「ドン ペリニヨン」を率いたリシャール・ジョフロワ氏が手がけるこの日本酒は、彼の代名詞ともいえる「アッサンブラージュ(調合)」の技術が存分に発揮された逸品です。今回、和光では「IWA 5」とショコラ・フレ(生チョコレート)のペアリングを提案し、日本酒とスイーツの新たな関係性を提示しています。 「IWA 5」が示すアッサンブラージュの極み 「IWA…
和光アネックス、「IWA 5」取り扱い開始 ──スイーツと日本酒の新しい関係を提案
銀座・和光アネックスで、話題の日本酒「IWA 5」がラインナップに加わりました。フランス・シャンパーニュの名門「ドン ペリニヨン」を率いたリシャール・ジョフロワ氏が手がけるこの日本酒は、彼の代名詞ともいえる「アッサンブラージュ(調合)」の技術が存分に発揮された逸品です。今回、和光では「IWA 5」とショコラ・フレ(生チョコレート)のペアリングを提案し、日本酒とスイーツの新たな関係性を提示しています。 「IWA 5」が示すアッサンブラージュの極み 「IWA 5」は、富山県・白岩で仕込まれる純米大吟醸酒でありながら、シャンパーニュの哲学を背景に持ちます。複数の酒米や酵母、仕込み年度の異なる原酒をブレンドすることで、単一の酒にはない奥行きと調和を生み出しているのが特徴です。ジョフロワ氏は「ひとつの完成形ではなく、進化を続ける味わい」をテーマに掲げ、毎年のアッサンブラージュによって「IWA 5」というブランドの生命を更新し続けています。 和光アネックスでは、この「IWA 5」を複数の仕込み年度で飲み比べることができる特別な体験を用意。日本酒のヴィンテージという新しい概念を、ラグジュアリーブランドの文脈で提示しています。これにより、日本酒がワインやシャンパーニュと同じように「年ごとに語る」文化として根づいていく可能性を感じさせます。 スイーツと日本酒の“新しいマリアージュ” 今回の注目は、「ショコラ・フレ」との組み合わせです。和光のショコラティエが手がけるフレッシュなチョコレートは、繊細な口溶けと香りの広がりが特徴で、「IWA 5」の多層的な味わいと見事に響き合います。日本酒の米由来の甘みと旨みがカカオの苦味をやわらげ、反対にチョコレートのコクが酒の酸味や余韻を引き立てる。単なる「合わせる」ではなく、互いの世界を補完しあう関係が生まれています。 興味深いのは、このペアリングが「酒にスイーツを合わせる」という従来の発想に留まらず、「スイーツに酒を合わせる」という逆の発想をも促している点です。ジョフロワ氏のアッサンブラージュ哲学をスイーツに応用し、「ショコラ・フレ」に合わせたブレンドのIWAを生み出す──そんな可能性も夢ではありません。素材の対話による調和という意味では、双方がアーティストの領域で共鳴していると言えるでしょう。 日本酒の未来を切り拓くアートとしてのペアリング 日本酒と洋菓子の融合は、これまでにも試みられてきましたが、和光の提案はその域を超えています。高級ショコラを通じて、日本酒の持つ繊細さと構築的な味わいを“ラグジュアリーの文法”で表現する──それはまさに、日本酒を世界の高級嗜好文化の中に再定義する試みです。 今後、「IWA 5」のようにワールドワイドな視点をもつブランドが、スイーツや香り、音楽など異分野との協働を進めることが予想されます。特に、アッサンブラージュという手法は、異素材を調和させるという点で、ペアリング文化と極めて親和性が高いと言えるでしょう。たとえば「チョコに合う酒」「チーズに合う酒」といったテーマ別の限定ボトルが登場すれば、日本酒の楽しみ方はさらに広がっていくでしょう。 銀座という洗練の舞台で始まった「IWA 5」とショコラ・フレの出会いは、日本酒の新しい物語の幕開けです。ジョフロワ氏の掲げる「調和の美学」が、和光のショコラティエによって味覚の芸術へと昇華されたとき、日本酒は単なる伝統産業ではなく、世界に通じる表現媒体として進化を遂げていくのかもしれません。
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女性審査員が選ぶ美酒コンクール2025『吟天 龍王』が日本酒界の頂点に

今年3回目を迎えた『第3回 美酒コンクール 2025』の審査概要および結果が公表され、「吟天 龍王」(小田切商事株式会社/兵庫県)が、最高賞である「美酒 of the Year 2025」に輝きました。主催の 一般社団法人『日本のSAKEとWINEを愛する女性の会』は、「香り・味わい」という感性を切り口に、女性審査員のみで審査を行う新しい日本酒コンクールとして注目を集めています。 ▶ 『女性審査員による日本酒コンクール』ホームページ…
女性審査員が選ぶ美酒コンクール2025『吟天 龍王』が日本酒界の頂点に
今年3回目を迎えた『第3回 美酒コンクール 2025』の審査概要および結果が公表され、「吟天 龍王」(小田切商事株式会社/兵庫県)が、最高賞である「美酒 of the Year 2025」に輝きました。主催の 一般社団法人『日本のSAKEとWINEを愛する女性の会』は、「香り・味わい」という感性を切り口に、女性審査員のみで審査を行う新しい日本酒コンクールとして注目を集めています。 ▶ 『女性審査員による日本酒コンクール』ホームページ 今回、国内外から127社293アイテムが出品され、審査員数も海外からの参加者を含め165名に及びました。審査方式も一般的な「特定名称」別ではなく、香りと味わいの特徴に応じて分類された全6部門(フルーティー/ライト&ドライ/リッチ&旨味/エイジド<熟成酒>/スパークリング/ロウ・アルコール)で構成され、酒類資格を保有する『正規審査員』と、一般女性の『アマチュア審査員』の両輪でブラインド・テイスティング形式の評価が行われました。 本コンクールが掲げる三つの理念――「日本の伝統文化の継承」「地域経済の活性化」「女性が活躍する社会の実現」――もあわせて強く打ち出され、特に女性審査員による審査という構造が、これまで日本酒コンクールであまり見られなかった女性の感性を活かした評価基準を提示しており、新たな価値づくりの場となっています。 今回「美酒 of the Year 2025」に選定された『吟天 龍王』は、エイジド(熟成)部門の金賞受賞酒でもあり、熟成という時間を経た酒の深み、香味の重層性、果実的なアロマとコクのバランスなどが、女性審査員の評価軸と好相性を示した結果と言えるでしょう。 今後このコンクールを展望すると、香味を起点とした部門構成によって「自分好みの味わいを選ぶ」消費者動線の構築が進む可能性があります。蔵元にとっても、女性審査員のコメントやアマチュア消費者の意見をマーケティングに活かす機会が増えており、酒造りのブランディングや流通展開にも新たなヒントをもたらしています。たとえば、銘柄ラベルに香味部門を明示することで、消費者にとって敷居の低い選びやすい日本酒となる可能性が開けてきています。 まとめると、第3回となる今回の美酒コンクールは、出品数・審査員数ともに規模を固めつつ、従来の枠を超えた女性審査・香味別部門という切り口で日本酒ジャンルに新風を吹き込みました。そして、その最高賞に選ばれた『吟天 龍王』の受賞は、熟成日本酒の魅力が改めて女性の審美眼によって讃えられた象徴とも言えます。今後、全国各地の蔵元がこの評価制度を刺激源とし、より多彩な味わいを表現していくことが期待されます。 美酒 of the Year 2025 (エイジド部門) 吟天 龍王 小田切商事 兵庫県 TOP OF THE BEST フルーティー部門 作 槐山一滴水 清水清三郎商店 三重県 ライト&ドライ部門 赤城山 本醸造辛口生貯蔵酒 近藤酒造 群馬県 リッチ&ウマミ部門 萬歳楽 石川門 純米  小堀酒造店 石川県 エイジド部門 夢乃寒梅 古酒 2000 鶴見酒造 愛知県 スパークリング部門 琵琶のささ浪リンゴ印スパークリング 麻原酒造 埼玉県 ロウ・アルコール部門 賀茂泉酒造 COKUN 賀茂泉酒造 広島県 特別賞 ソムリエ賞 Catskills Brooklyn Kura アメリカ 客室乗務員/CA賞 天賦 純米吟醸 西酒造 鹿児島県 アマチュア賞 越乃雪椿 Grand-Cuvée 純米大吟醸原酒 雪椿酒造 新潟県 ラベル賞 吟天 花龍 小田切商事 兵庫県 ▶ 大吟醸も純米酒も同じ土俵で――美酒コンクール2025の入選酒発表を受けて
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宇宙へ飛び立つ日本酒──獺祭MOON、10月21日に種子島から打ち上げ決定

2025年10月21日、ついに人類初の宇宙での清酒醸造試験が始動します。山口県岩国市を拠点とする酒造会社獺祭と三菱重工業は、共同開発した宇宙用醸造装置および清酒原材料を、種子島宇宙センターから H3 ロケット第7号機で打ち上げると正式に発表しました。…
宇宙へ飛び立つ日本酒──獺祭MOON、10月21日に種子島から打ち上げ決定
2025年10月21日、ついに人類初の宇宙での清酒醸造試験が始動します。山口県岩国市を拠点とする酒造会社獺祭と三菱重工業は、共同開発した宇宙用醸造装置および清酒原材料を、種子島宇宙センターから H3 ロケット第7号機で打ち上げると正式に発表しました。 本プロジェクトは「獺祭MOONプロジェクト」と名づけられ、将来的には月面上での酒蔵建設・醸造を視野に入れる野心的プランの一環です。まずは国際宇宙ステーション(ISS)に設置された日本実験棟「きぼう」内で、月面重力環境(1/6G)を模擬した条件下での試験醸造が行われる予定です。 打ち上げ方法と ISS での醸造プロセス 打ち上げは 2025年10月21日(火) 10時58分頃の予定で、H3 ロケットによって宇宙へ送り出されます。荷物は、今回が初搭載となる次世代補給機 HTV-X により ISS へ輸送されます。 SS に到着後は、宇宙飛行士 油井亀美也氏が醸造装置を設置する準備を担当する見込みとされ、JAXA と調整中と報じられています。 装置には、米(α化米)、乾燥麹、乾燥酵母、水の四種の原材料があらかじめ投入されており、水を注入することですべてが混合され、いわゆる 並行複発酵 が始まる仕組みです。地上からは自動攪拌やアルコール濃度のモニタリングがなされ、約10日後から発酵試験を開始、2週間程度で進行する見通しです。醸造中および試験中の各種データは地上から遠隔で観察されます。 発酵を終えた醪(もろみ)は軌道上で凍結保管され、地球帰還のタイミングまで保存されます。早ければ年内に地球への帰還が見込まれています。帰還後、凍結醪は解凍され、清酒にするために搾られます。完成した清酒の半量は販売用に、残る半量は科学解析用サンプルとして扱われる予定です。 宇宙清酒の驚きの価格と意義 この清酒は 「獺祭MOON-宇宙醸造-」 と名付けられ、一般向けには 100ミリリットル入りで価格 1億1,000万円(税込) で販売される計画です。販売利益はすべて将来の宇宙開発事業に寄付される見込みとされています。 販売本数は極めて少ないとの見方が強く、すでに問い合わせや予約希望が複数件あるとの報道もあります。 この宇宙醸造プロジェクトには、ただ話題性を狙ったものではなく、将来的に月面で人が生活する環境下で “酒文化” や “食文化の豊かさ” をもたらすことを視野に入れた目的があります。生活の質(QOL:Quality of Life)向上という観点から、宇宙での発酵技術や食品加工技術の研究は今後不可欠となるからです。 また、この種の技術実証は、月面だけでなく火星や他の天体での食料生産技術にも波及し得る可能性があり、宇宙産業やバイオテクノロジー分野での新たな展開を予感させます。 課題と今後の展望 ただし、このような壮大な挑戦には多くの技術的・運用的なリスクも伴います。極限環境下での発酵制御、温度管理、宇宙放射線や微小重力下での酵母挙動、機器の故障リスクなどが懸念されます。また、輸送・帰還時の振動・衝撃への耐性や、凍結保存から解凍・搾り出し作業の品質維持といった点も重要な課題です。 さらに現地で酒を造るためには、将来的に “月資源の活用” や “現地素材の利用” が鍵になるとされ、この金属構造・水利用・微生物環境設計などは今後の研究テーマとなるでしょう。 成功すれば、この打ち上げは宇宙開発と日本文化との融合という、新たなステージの幕を開くものとなるかもしれません。日本の伝統技術を宇宙で試すこの挑戦に、国内外からの注目が集まっています。
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「美味しいお酒」が「SAKE」に! 大谷翔平選手MVPインタビュー通訳が生んだ日本酒への熱視線

ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手が、ナ・リーグ優勝決定シリーズの最優秀選手(MVP)に輝いた後のインタビューで、通訳のウィル・アイアトン氏が発した「SAKE」という言葉が大きな話題を呼んでいます。大谷選手が「今日は美味しいお酒を飲んでください」とファンへ向けたメッセージを、アイアトン通訳は「SAKE」と直訳に近い形で伝達。この瞬間に、球場は一層の歓声に包まれました。この粋な計らいは、単なる通訳を超えた文化の発信として、世界中の人々に「SAKE(日本酒)」という言葉を印象づけました。…
「美味しいお酒」が「SAKE」に! 大谷翔平選手MVPインタビュー通訳が生んだ日本酒への熱視線
ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手が、ナ・リーグ優勝決定シリーズの最優秀選手(MVP)に輝いた後のインタビューで、通訳のウィル・アイアトン氏が発した「SAKE」という言葉が大きな話題を呼んでいます。大谷選手が「今日は美味しいお酒を飲んでください」とファンへ向けたメッセージを、アイアトン通訳は「SAKE」と直訳に近い形で伝達。この瞬間に、球場は一層の歓声に包まれました。この粋な計らいは、単なる通訳を超えた文化の発信として、世界中の人々に「SAKE(日本酒)」という言葉を印象づけました。 ドジャースと八海醸造のタッグが追い風に この「SAKE」の背景には、ドジャースと八海醸造(新潟県南魚沼市)が結んでいる契約があります。八海醸造は、今年からドジャースとパートナーシップ契約を締結し、ドジャースタジアム内で日本酒を提供するなど、積極的なブランド展開を行っています。 大谷選手という世界的スターのメッセージと、それに乗じたアイアトン通訳の「SAKE」という言葉が、この八海醸造の取り組みと相まって、日本酒の存在感を飛躍的に高めました。これは、日米のトップスポーツチームと老舗酒蔵という異業種間の連携が、文化交流という形で実を結んだ好例と言えるでしょう。 日本酒業界への計り知れない影響 今回の出来事が日本酒業界に与える影響は、非常に大きいと考察されます。 【国際的な認知度の向上】 「SAKE」というシンプルな単語が、MVPという輝かしい舞台で、大谷選手という影響力を持つ人物を通じて発信されたことで、英語圏における日本酒の認知度が格段に向上しました。これにより、「SAKE=美味しいお酒」というイメージが、これまで日本酒に馴染みのなかった層にも広く浸透することが期待されます。 【消費拡大への期待】 特にアメリカでは、若者を中心に健康志向が高まっており、日本酒が持つ「グルテンフリー」や「天然の醸造酒」といった特性が、新たな消費層を開拓する強力なフックとなり得ます。ドジャースタジアムという「ハレの場」での提供実績が相まって、アメリカ国内での日本酒の販売拡大に直結する可能性を秘めています。 【プレミアム化とブランド価値の向上】 八海醸造のような、すでに国際的に評価の高い酒蔵だけでなく、他の日本酒ブランドにとっても、今回の出来事はブランド価値向上のチャンスです。スポーツと結びつくことで、日本酒が「洗練された」「セレブが楽しむ」といったポジティブなイメージをまとい、プレミアムなアルコール飲料としての地位を確立する大きな一歩となるでしょう。 ワールドシリーズ制覇で熱狂は最高潮へ さらに、ドジャースがこの勢いでワールドシリーズを制覇すれば、日本酒への注目度は最高潮に達するでしょう。大谷選手が再びMVPなどの栄誉に輝く場面や、優勝後の祝賀ムードの中で、日本酒がメディアに露出する機会が増えることは間違いありません。 「世界一のチーム」と「公式SAKEパートナー」という強固な結びつきは、日本酒を「勝利の美酒」として世界に印象づけます。この「勝利」というイメージは、日本酒のブランド力をさらに高め、特にアメリカをはじめとする海外輸出に決定的な追い風となります。日本酒業界は、この歴史的な瞬間を、グローバル市場での飛躍につなげる絶好の機会と捉えるべきでしょう。 大谷選手の偉業と、通訳の機知に富んだ「SAKE」という一言は、八海醸造とのパートナーシップを基盤に、日本酒を世界的なアルコール飲料へと押し上げる起爆剤となりそうです。そして、ワールドシリーズ制覇という快挙が実現すれば、その熱狂は一過性のものでは終わらず、日本酒を「クールな日本文化」の象徴として世界に定着させるでしょう。この波を最大限に活かし、日本酒業界全体がグローバルな展開を加速させることが、今後ますます重要になってくるはずです。「美味しいお酒=SAKE」が世界の共通語となる日も、そう遠くないかもしれません。 ▶ 日本酒をメジャーに導く、ドジャース公式日本酒「特別本醸造 八海山 ブルーボトル」
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大関「上撰ワンカップ 大相撲ラベル2」発売~世界を標榜する二つの伝統が交わるとき

大関株式会社(兵庫県西宮市)は、10月14日に「上撰ワンカップ 180ml 瓶詰(大相撲ラベル2)」を数量限定で発売しました。力士の姿をあしらったこの特別デザインは、同社が展開する人気シリーズの第2弾にあたり、土俵の緊張感や日本の美意識を小さな瓶の中に凝縮したような仕上がりです。四股名にローマ字表記を加えることで、海外のファンにも親しみやすいデザインであり、まさに世界へ開かれた日本酒を象徴する一本といえます。 国技と国酒という二つの顔…
大関「上撰ワンカップ 大相撲ラベル2」発売~世界を標榜する二つの伝統が交わるとき
大関株式会社(兵庫県西宮市)は、10月14日に「上撰ワンカップ 180ml 瓶詰(大相撲ラベル2)」を数量限定で発売しました。力士の姿をあしらったこの特別デザインは、同社が展開する人気シリーズの第2弾にあたり、土俵の緊張感や日本の美意識を小さな瓶の中に凝縮したような仕上がりです。四股名にローマ字表記を加えることで、海外のファンにも親しみやすいデザインであり、まさに世界へ開かれた日本酒を象徴する一本といえます。 国技と国酒という二つの顔 相撲と日本酒は、いずれも日本文化の根幹にある伝統です。力士が神前で四股を踏み、土俵入りの前に塩をまく所作は、古代からの祈りと清めの儀式に通じます。同じように日本酒も、神事に欠かせない「御神酒」として、人々の暮らしの中にありました。両者は形式の中に精神性を宿し、「形の美」と「心の和」を併せ持つ文化として発展してきたのです。 近年、相撲も日本酒も国内の枠を超え、海外での存在感を高めています。相撲は世界各地で巡業が行われ、外国出身力士の活躍が常態化しました。日本酒もまた、“SAKE”という名で国際的に評価され、ヨーロッパや北米の高級レストランのワインリストに並ぶまでになっています。どちらも「日本から世界へ」を合言葉に、新しいファンを獲得しながら進化を遂げています。 『上撰ワンカップ』が体現するグローバル・トラディション 大関の「上撰ワンカップ」は、1964年の発売以来、半世紀以上にわたり日本の食卓と旅路を支えてきたロングセラーです。開けてすぐ飲める手軽さと、どこか懐かしい温もり。その両立は、日本人の日常の中の文化を象徴する存在として定着しました。 今回の「大相撲ラベル2」は、その伝統的な価値を保ちながらも、デザイン面でグローバルな視点を取り入れています。瓶に描かれた力士の四股名がローマ字で表記されているのは、単なる視認性のためではありません。相撲と日本酒、二つの日本文化を誰もが読める言語で世界に伝えるための象徴的な一歩なのです。 大関はこれまでも「日本の心をカジュアルに楽しむ」という理念を掲げ、伝統と現代性の両立を追求してきました。その延長線上にある今回のコラボレーションは、まさに国技と国酒の融合というメッセージを世界に発信する試みといえるでしょう。 世界が見つめる「円」の美学 相撲の土俵も、日本酒の盃も、どちらも円形をしています。その円は「和」を象徴し、境界を持ちながらも調和を生む形です。大関のワンカップが持つ丸いフォルムは、土俵の円と共鳴し、日本の文化が大切にしてきた循環と連帯の精神を静かに伝えています。 今回の「大相撲ラベル2」は、単なる限定ボトルではなく、こうした円の哲学を現代に再解釈した文化的メッセージボトルでもあります。手のひらに収まるその小さな瓶が、世界のどこにあっても日本の心を感じさせる――それが大関の目指す新しい伝統のかたちです。 ロンドンへ――ふたつの伝統が並び立つ舞台 そして発売の翌日、10月15日には「大相撲ロンドン公演」が開幕しました。日本文化を代表する二つの象徴が、ほぼ同時に世界へと羽ばたいたことは、偶然にして象徴的です。 土俵の上で力士が踏みしめる大地と、盃の中で揺らめく清酒。どちらも日本の精神を宿した円の文化です。大関「上撰ワンカップ 大相撲ラベル2」は、その円が世界と交わる瞬間を、最も美しいかたちで映し出しているのかもしれません。
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日本酒レビュー・情報メディア「Japan Cellar」グランドオープン

日本酒・焼酎・日本ワインの魅力を世界に発信する新しい情報プラットフォーム「Japan Cellar(ジャパン・セラー)」が、2025年10月にグランドオープンしました。運営は、東京・高田馬場に拠点を置く株式会社ハイパープロダクティブ。同社は、国内外の酒類を評価・紹介する統一的なレビュー基準を確立し、日本の酒文化を国際的に通用する形で可視化することを目標に掲げています。 世界基準に近づく「日本酒レビュー」の新時代 「Japan…
日本酒レビュー・情報メディア「Japan Cellar」グランドオープン
日本酒・焼酎・日本ワインの魅力を世界に発信する新しい情報プラットフォーム「Japan Cellar(ジャパン・セラー)」が、2025年10月にグランドオープンしました。運営は、東京・高田馬場に拠点を置く株式会社ハイパープロダクティブ。同社は、国内外の酒類を評価・紹介する統一的なレビュー基準を確立し、日本の酒文化を国際的に通用する形で可視化することを目標に掲げています。 世界基準に近づく「日本酒レビュー」の新時代 「Japan Cellar」は、ワイン業界における“パーカーポイント”のように、専門的で透明性のある評価を行う仕組みを導入しました。その中核となるのが、独自の5指標「JC BLICU(Balance/Length/Intensity/Complexity/Uniqueness)」です。バランス、余韻、力強さ、複雑性、独自性という5つの観点から酒を総合的に分析し、85点以上の銘柄のみを掲載するという厳格な基準を設けています。 レビュアーには、全日本最優秀ソムリエの井黒卓氏や岩田渉氏、さらに世界的ワイン誌『The Wine Advocate』の元レビュアー星山厚豪氏など、国内外で実績を持つ専門家が参加。いずれも匿名ではなく記名制で評価することで、レビューの透明性と信頼性を担保しています。試飲用サンプルではなく、自社購入による評価方針を明確にしている点も、これまでの酒類メディアとは一線を画しています。 デジタル化と多言語展開が拓く新たな市場 同サイトは日本語と英語の2言語対応でスタートし、今後はフランス語、中国語など主要言語への展開も予定されています。対象は日本酒だけでなく、焼酎や日本ワインにも及びます。酒蔵やワイナリーのデータベース、ペアリングガイド、酒蔵見学情報なども充実しており、国内外の消費者・バイヤーが日本の酒文化を体系的に理解できる構成となっています。 これまで、ワインのように国際的な共通指標が存在しなかった日本酒市場では、輸出先ごとに味覚や品質評価が分散していました。「Japan Cellar」は、そうした断片的な情報の壁を取り払い、“世界の酒類の中での日本酒の位置づけ”を明確に示す試みといえます。特に、輸出拡大を狙う中小酒造にとっては、海外の流通業者や飲食店バイヤーへの新たなプレゼンテーション手段となる可能性を秘めています。 日本酒業界ではここ数年、品質や味わいの多様化が進み、従来の“地酒”という枠を超えて、クラフトやテロワールといった概念が注目され始めています。「Japan Cellar」は、こうした動きを国際的に可視化し、定量化する役割を果たすことで、ブランド価値の客観的評価や国際競争力の向上に寄与するでしょう。 一方で、点数化がもたらす序列や市場偏重への懸念もあります。特定の味覚傾向に評価が集中すれば、多様性が損なわれる可能性も否定できません。運営側はこの点を意識し、「文化的背景や個性を尊重したレビュー」を理念に掲げています。今後、どのように公平性と創造性を両立させるかが、プラットフォームの信頼性を左右する鍵となりそうです。 日本酒の魅力を“感覚”ではなく“共通言語”として伝える試み——。世界の愛好家が日本の酒を語るための新しい基準を築く第一歩として、「Japan Cellar」の今後の展開が注目されます。 ▶ Japan Cellar ホームページ
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日本酒に広がる小容量化の動き──「開華」の新展開から見える未来

栃木県佐野市の第一酒造が手掛ける銘柄「開華」は、このたび既存の人気商品を小容量で展開する新たな取り組みを始めました。「日本酒をもっと身近に、もっと自由に楽しんでいただきたい」という思いから生まれたこの試みは、近年の消費者動向や流通環境の変化を象徴するものだといえます。日本酒業界における小容量化の潮流は、確実に全国に広がっています。 小容量需要の背景…
日本酒に広がる小容量化の動き──「開華」の新展開から見える未来
栃木県佐野市の第一酒造が手掛ける銘柄「開華」は、このたび既存の人気商品を小容量で展開する新たな取り組みを始めました。「日本酒をもっと身近に、もっと自由に楽しんでいただきたい」という思いから生まれたこの試みは、近年の消費者動向や流通環境の変化を象徴するものだといえます。日本酒業界における小容量化の潮流は、確実に全国に広がっています。 小容量需要の背景 まず背景として、日本酒消費のライフスタイルの変化が挙げられます。かつては一升瓶での購入が当たり前でしたが、少子高齢化や単身世帯の増加により、一度に多くを消費する機会は減っています。また、家庭内での飲酒は「少しずつ、さまざまな種類を飲み比べたい」という志向が強まり、720mlや300mlといった小瓶の需要が年々拡大しています。開華の小容量展開も、この流れを踏まえたものといえるでしょう。 小容量化には、流通や観光の場でも大きな利点があります。旅行先やイベントで「飲み切りサイズ」を持ち帰りたいというニーズは根強く、軽量で手軽な小瓶は土産物としても親和性が高いのです。加えて、EC販売においても、初めて購入する銘柄を気軽に試してみたい消費者にとって小容量は魅力的です。こうした需要を捉えることは、蔵元にとって新たな市場の拡大につながります。 さらに見逃せないのが、「鮮度保持」という観点です。日本酒は一度開栓すると酸化が進み、風味が劣化しやすい飲料です。その点、小容量であれば飲み切りやすく、常に新鮮な状態で味わうことができます。この利点に注目し、あえて一升瓶を廃止し、四合瓶や、さらに小容量に特化する蔵も出てきています。保存や流通の効率を考えれば一升瓶の役割は大きかったものの、鮮度や飲用シーンの多様化を優先する姿勢が見え始めているのです。 小容量化の課題と挑戦 一方で、小容量化は製造やコスト面での課題も伴います。瓶やパッケージの単価は容量が小さいほど割高になり、流通コストの上昇を招く恐れがあります。また、蔵元にとっては充填ラインの整備や在庫管理の複雑化といったハードルも存在します。それでもなお、多くの酒蔵が小容量化に取り組むのは、消費者との接点を増やし、市場全体を活性化させるために不可欠だからです。 さらに注目すべきは、小容量化が日本酒文化の新たな発信手段となり得る点です。たとえば、地域限定商品や季節限定酒を180mlや300mlで展開することは、観光客の購買意欲に訴えかけ、SNSで発信する可能性を高めます。結果的に、ブランドや地域の認知度向上に寄与し、次なる購入や訪問需要へとつながる循環が期待できます。 加えて、小容量展開は健康志向や多様化する飲酒スタイルとも相性が良いと言えます。アルコール摂取量を抑えながらも味わいを重視する層にとって、少量パックは理想的です。ワインやクラフトビールに見られるように、シーンに合わせてサイズを選ぶ習慣が根付けば、日本酒もより柔軟に生活に溶け込むでしょう。 今回の「開華」の取り組みは、単なる容量の変更にとどまらず、日本酒の未来を切り拓く実験の一環だといえます。飲みきりサイズが生み出す鮮度の魅力、そして一升瓶からの転換という大きな価値観の変化を背景に、日本酒はより幅広い世代やライフスタイルに受け入れられるはずです。小容量化は、一見すると小さな変化に見えますが、実は日本酒文化を次の時代へと導く大きな一歩となるでしょう。
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月桂冠『アルゴ』グッドデザイン賞受賞|若者に響く革新で日本酒離れに挑む

月桂冠株式会社(本社:京都市伏見区)が開発したアルコール度数5%の日本酒「アルゴ」が、2025年度グッドデザイン賞を受賞しました。従来の日本酒のイメージを刷新する革新的な商品として、デザイン性と飲みやすさの両面から高く評価されました。…
月桂冠『アルゴ』グッドデザイン賞受賞|若者に響く革新で日本酒離れに挑む
月桂冠株式会社(本社:京都市伏見区)が開発したアルコール度数5%の日本酒「アルゴ」が、2025年度グッドデザイン賞を受賞しました。従来の日本酒のイメージを刷新する革新的な商品として、デザイン性と飲みやすさの両面から高く評価されました。 「アルゴ」は、ギリシャ神話に登場する伝説の船「アルゴー号(Argo)」にちなみ、新しい価値の探求から生まれた商品です。爽やかでフルーティな味わいを特徴とし、平日にも気軽に楽しめる日本酒として開発されました。一般的な日本酒のアルコール度数が15%前後であるのに対し、「アルゴ」はその約3分の1。これにより、飲酒のハードルを下げ、若年層やライトユーザーにも親しみやすい商品となっています。 日本酒離れに立ち向かう革新の一手 近年、日本酒業界では若者離れや消費量の減少が深刻な課題となっています。伝統的な酒造りの技術や文化が継承される一方で、現代のライフスタイルや嗜好に合った新たな提案が求められてきました。そうした中で「アルゴ」は、低アルコールという切り口と洗練されたデザインによって、これまで日本酒に馴染みのなかった層へのアプローチを可能にしています。 月桂冠の調査によれば、日本酒は週末に飲まれる傾向が強く、平日の需要は限定的でした。一方で、低アルコール市場は近年急速に拡大しており、ビールやチューハイに加え、日本酒にもその波が押し寄せています。「アルゴ」は、こうした市場の変化に応える形で誕生した製品であり、同社の挑戦的な姿勢がうかがえます。 デザインと味わいで新たな層へ グッドデザイン賞の審査員は、「非炭酸でアルコール度数5%という新しい日本酒の提案」「ネーミングと数字の“5”による直感的な訴求」「青を基調とした軽やかで上質なパッケージデザイン」などを高く評価しました。これらの要素が相乗的に機能し、従来の日本酒に対する敷居の高さを感じていた層にもアプローチできる点が受賞の決め手となりました。 業界への影響も大きいと考えられます。「アルゴ」のような低アルコール・高デザイン性の商品は、新たな顧客層の開拓につながる可能性があります。また、グッドデザイン賞の受賞は、酒類業界におけるデザインの重要性を再認識させる契機ともなり得ます。 さらに、「アルゴ」は食品ヒット賞にも選ばれており、その商品力と市場での評価は確かなものです。スパークリングタイプや缶入りなど、ラインアップの拡充もあり、日本酒の新しい楽しみ方を提案する存在として注目が集まっています。 月桂冠の「アルゴ」は、単なる新商品にとどまらず、日本酒の未来を切り拓く一歩となるかもしれません。伝統と革新が融合したこの一杯が、より多くの人々の暮らしに寄り添うことを期待したいところです。
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青森・西田酒造店の若き情熱が結実 数年ぶりに限定酒『外ヶ濱』をリリース

『田酒(でんしゅ)』で知られる青森県の銘醸蔵、株式会社西田酒造店から、この度、数年ぶりとなる限定銘柄『外ヶ濱(そとがはま)』が発売されました。今回の『外ヶ濱』は、酒蔵の未来を担う若手蔵人たちが、杜氏の指導なしで、自らの経験と創意工夫を注ぎ込んだ意欲作として、大きな注目を集めています。 蔵の未来を懸けた若き蔵人たちの挑戦 今回リリースされたのは、同じ仕様で仕込まれた対照的な二つの純米吟醸酒、「外ヶ濱 純米吟醸 モノクロ」と「外ヶ濱 純米吟醸…
青森・西田酒造店の若き情熱が結実 数年ぶりに限定酒『外ヶ濱』をリリース
『田酒(でんしゅ)』で知られる青森県の銘醸蔵、株式会社西田酒造店から、この度、数年ぶりとなる限定銘柄『外ヶ濱(そとがはま)』が発売されました。今回の『外ヶ濱』は、酒蔵の未来を担う若手蔵人たちが、杜氏の指導なしで、自らの経験と創意工夫を注ぎ込んだ意欲作として、大きな注目を集めています。 蔵の未来を懸けた若き蔵人たちの挑戦 今回リリースされたのは、同じ仕様で仕込まれた対照的な二つの純米吟醸酒、「外ヶ濱 純米吟醸 モノクロ」と「外ヶ濱 純米吟醸 ハイカラ」です。この二つの銘柄は、製造時に20代と30代であった若手蔵人たちが、製造工程の全てを主導し、一切の妥協なく造り上げられたものです。 「モノクロ」と「ハイカラ」は、どちらも青森県の酒造好適米である「華吹雪」を精米歩合50%まで磨き上げた純米吟醸酒という点では共通しています。しかし、それぞれ異なる世代の蔵人が、それぞれの持つ感性と技術を反映させた結果、ユニークな個性を獲得しています。 20代の蔵人が仕込んだ「モノクロ」は、甘みが際立つ一本です。フレッシュで軽快な飲み口と、その奥に広がる米の旨み、そして甘さのバランスが絶妙で、若々しくも綺麗な味わいが特徴です。一方、30代の蔵人が仕込んだ「ハイカラ」は、「モノクロ」と比較してやや辛口に仕上げられています。低アルコール酒(アルコール度13%)でありながら、それを感じさせないしっかりとした骨格と、心地よい酸味が特徴で、後味がキレ良く軽やかにまとまっています。 伝統と革新を繋ぐ「杜氏不在」の酒造り この若手蔵人による「杜氏からの指示なし」というチャレンジは、単なる企画的な商品展開以上の意味を持っています。西田酒造店が長年守り続けてきた伝統的な酒造りの技術を、次世代の蔵人たちが単に受け継ぐだけでなく、自らの力で解釈し、新しい挑戦を通じて技術を昇華させる「継承と革新」の試みであるからです。 酒造りにおける杜氏の存在は、経験に基づく知識と技術の集大成であり、酒の品質を決定づける重要な要素です。その杜氏の指導を排し、若手がゼロから全てを組み立てることは、若手自身の力量と判断力を最大限に引き出すための、酒蔵の未来を懸けた教育的な意味合いも持ちます。これにより、若手蔵人は試行錯誤を通じて深い経験を積み、将来的に蔵を支える核となる人材へと成長することが期待されます。 『外ヶ濱』から見える日本酒業界の未来 近年、日本酒業界では、若手蔵元のUターンや新進気鋭の若手杜氏の活躍が目覚ましくなっていますが、西田酒造店のこの取り組みは、既存の蔵の内部から新しい風を吹き込む、大変建設的なチャレンジです。 この「モノクロ」と「ハイカラ」の飲み比べは、消費者にそれぞれの酒の個性を楽しんでもらうだけでなく、「同じ蔵の、同じ米、同じ精米歩合で、造り手によって味わいがこれほど変わる」という日本酒の奥深さを伝える貴重な機会ともなります。 『田酒』の看板と共に歩んできた西田酒造店が、数年の沈黙を破ってリリースした『外ヶ濱』。それは、単なる限定酒ではなく、同蔵の若き情熱が詰まった「未来への布石」と言えるでしょう。日本酒業界の明るい未来を示すものとして、今後の動向が注目されます。 ▶ 田酒|米と水だけで生まれる日本酒。風格ある純米酒の代表格
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全国47都道府県の米が一つに——被災地復興支援「絆舞」プロジェクト始動

全国47都道府県の米を使って仕込む日本酒「絆舞(きずなまい)」の仕込みが、2025年10月11日、福島県会津坂下町の曙酒造で始まりました。このプロジェクトは、東日本大震災の被災地復興を支援し、日本各地の絆を酒という形で結び直そうという思いから2017年に誕生したものです。酒の名に込められた「絆」と「舞」という言葉は、支え合いの象徴と、喜びを分かち合う姿を重ね合わせています。…
全国47都道府県の米が一つに——被災地復興支援「絆舞」プロジェクト始動
全国47都道府県の米を使って仕込む日本酒「絆舞(きずなまい)」の仕込みが、2025年10月11日、福島県会津坂下町の曙酒造で始まりました。このプロジェクトは、東日本大震災の被災地復興を支援し、日本各地の絆を酒という形で結び直そうという思いから2017年に誕生したものです。酒の名に込められた「絆」と「舞」という言葉は、支え合いの象徴と、喜びを分かち合う姿を重ね合わせています。 今回の仕込みには、全国各地の信用金庫関係者をはじめ、地域活性化に携わる人々が参加しました。全国179地域から集められた米が用いられ、曙酒造が中心となって醸造を担当します。同蔵は「天明」や「一生青春」で知られる実力派で、繊細なブレンド技術と高い発酵管理能力を活かし、多様な産地の米を調和させる難題に挑みます。精米歩合は47%と、都道府県の数にちなみ、大吟醸酒としての品質を追求しています。 出来上がった「絆舞」は、大吟醸、純米大吟醸、生酒、貴醸酒の4種類が予定されており、500ml瓶で約8,000本の出荷を見込んでいます。発売は11月26日~27日に東京で開催される「よい仕事おこしフェア」でのお披露目を経て、全国の酒販店などで順次販売される予定です。売上の一部は被災地支援や地域復興のために寄付される仕組みで、飲むことで支援の輪が広がる一本として注目を集めています。 「絆舞」の最大の特徴は、単なる地域コラボレーションにとどまらず、全国を結ぶ象徴的な取り組みである点です。各都道府県から集められる米は、それぞれ気候や風土、育て方が異なります。粒の大きさや水分量もさまざまで、ひとつの仕込みタンクにまとめるには高度な調整が求められます。それでもあえて“混ぜる”ことに挑むのは、地域の個性を一つにまとめ、支え合う日本全体の姿を映し出したいという想いからです。 このプロジェクトは、震災から十数年が経過した今でも「忘れない」というメッセージを発信し続けています。仕込みの際には、各地の生産者の思いが書かれた札が持ち寄られ、酒米とともにタンクへと投入されるという演出も行われました。人と人、地域と地域の絆を象徴する儀式として、多くの参加者の心を打ちました。 「絆舞」は、単なる日本酒ではなく、全国の支援と希望を一つに醸した“祈りの酒”ともいえます。被災地支援から始まったこの試みは、今や日本全体を結ぶ文化プロジェクトへと成長しました。地域の力を束ね、未来へと舞い上がるその姿は、日本酒がいまなお「人をつなぐ文化」であることを雄弁に語っています。
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白鶴、「HAKUTSURU SAKE CRAFT No.12」発売 ― 大手酒造が挑む“小ロット時代”の象徴に

白鶴酒造株式会社(神戸市)は、同社のマイクロブルワリー「HAKUTSURU SAKE CRAFT」で醸造した新作酒「HAKUTSURU SAKE CRAFT No.12」を10月4日より白鶴酒造資料館で数量限定(219本)販売しました。大手酒造が自社内であえて小ロットの実験的な酒造りを行う試みとして、業界関係者の注目を集めています。 「HAKUTSURU SAKE…
白鶴、「HAKUTSURU SAKE CRAFT No.12」発売 ― 大手酒造が挑む“小ロット時代”の象徴に
白鶴酒造株式会社(神戸市)は、同社のマイクロブルワリー「HAKUTSURU SAKE CRAFT」で醸造した新作酒「HAKUTSURU SAKE CRAFT No.12」を10月4日より白鶴酒造資料館で数量限定(219本)販売しました。大手酒造が自社内であえて小ロットの実験的な酒造りを行う試みとして、業界関係者の注目を集めています。 「HAKUTSURU SAKE CRAFT」は、2024年に始動した白鶴の小規模醸造プロジェクトです。酒造資料館の一角に設けられたガラス張りのミニ蔵で、来場者が発酵や搾りなどの工程を間近に見ることができます。従来の大量生産では試みづらい、酵母や発酵条件の違いによる新たな香味表現に挑む場として設計されました。 今回の「No.12」は、ワイン酵母と日本酒酵母を掛け合わせた白鶴独自の改良酵母(Hi-EtCap434、Hi-TRP475)を用い、マスカットのような果実香と穏やかな酸味を特徴とする純米酒。オリジナル酒米「白鶴錦」を100%使用し、精米歩合50%、アルコール度数12%。価格は720mlで税込6,600円と高価格帯に位置づけられています。 大手が小さく造る意味 大手酒造の主戦場はこれまで、安定した品質と供給量を求められる全国流通市場でした。しかし、消費者の嗜好が多様化し、特定の地域やスタイル、香味個性を求める声が高まる中で、「一つの味で全国をカバーする」時代は過ぎつつあります。 白鶴がマイクロブルワリーを立ち上げた背景には、そうした変化への対応力を磨く意図がうかがえます。大量生産のノウハウを持つ大手こそ、小規模で柔軟な開発力を内包する必要がある――「HAKUTSURU SAKE CRAFT」は、その象徴的な一歩といえます。 業界では近年、月桂冠や宝酒造など他の大手メーカーも限定醸造やコラボ製品を相次いで展開しており、かつて“実験的な挑戦”が地酒蔵の専売特許だった時代から、明確な潮流の変化が見て取れます。 多様性がもたらす広がりと課題 今回の「No.12」は、香りと味わいの新境地を示すだけでなく、日本酒の「多様性」を正面から捉える試みでもあります。マスカットや白ワインを思わせる酸味の効いた味わいは、従来の清酒とは異なる層――特に若年層やワインユーザーを意識したアプローチとも言えます。 日本酒市場は人口減少と嗜好の分散によって縮小傾向にありますが、同時に「クラフト日本酒」「低アルコール」「ボタニカル日本酒」など、新しいカテゴリが次々と登場。多様性はもはや一時的な流行ではなく、業界の生存戦略として無視できないものになっています。 白鶴のような大手がその多様化を自らの手で体現することは、業界にとって大きな意味を持ちます。品質管理力や資本力を備えた企業が、小規模ながら挑戦的な製品を市場に出すことで、消費者側も「新しい日本酒」への関心を高めやすくなるからです。 “変化に応える軽さ”こそ、次代の鍵 今回のプロジェクトで注目すべきは、白鶴が自社の巨大生産体制の一角に“軽やかな醸造部門”を組み込んだ点です。変化を恐れず、企画から醸造、販売まで短期間で回せる仕組みを作ったことが、従来の大手モデルとの最大の違いといえます。 市場の動きが早まる中、変化に対応できる「軽快さ」は、日本酒業界全体の課題です。地方蔵では柔軟な発想が強みとなる一方、大手は組織の大きさゆえに動きが鈍くなりがちでした。白鶴の挑戦は、その構造的課題を突破する試みとして注目されます。 「HAKUTSURU SAKE CRAFT No.12」は、単なる新商品ではなく、大手酒造が自ら“変化の装置”を内製化した象徴的なプロジェクトです。日本酒の多様性を受け止め、実験的な小ロット生産を通じて次代の味を探る姿勢は、今後の業界に新しい風を吹き込むでしょう。
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超硬水と超軟水で醸す日本酒セット『浅間嶽 阿吽』誕生——“水の個性”を味わう新たな挑戦

10月11日土曜日、長野県小諸市の酒蔵「大塚酒造株式会社」 が、超硬水と超軟水という対極の水質で醸した日本酒セット『浅間嶽 阿吽』の予約販売を、クラウドファンディング方式で開始すると発表しました。水という要素を対比させたコンセプトを掲げる日本酒としては、非常に異例の試みといえます。 水の違いを打ち出す意義と背景…
超硬水と超軟水で醸す日本酒セット『浅間嶽 阿吽』誕生——“水の個性”を味わう新たな挑戦
10月11日土曜日、長野県小諸市の酒蔵「大塚酒造株式会社」 が、超硬水と超軟水という対極の水質で醸した日本酒セット『浅間嶽 阿吽』の予約販売を、クラウドファンディング方式で開始すると発表しました。水という要素を対比させたコンセプトを掲げる日本酒としては、非常に異例の試みといえます。 水の違いを打ち出す意義と背景 日本酒の約八割を占める仕込み水。多くの酒造は、水の清らかさ、湧水地、軟水・硬水の良さなどを宣伝文句として掲げています。しかし、それはあくまで「この水は優れている」という訴求が中心であり、異なる水を意図的に使い分け、その違いを飲み手に体験させる商品は極めて少ないのが現実です。 大塚酒造が今回のプロジェクトで明確に打ち出したのは、「超硬水での酒」と「超軟水での酒」という対照ペア。双方とも同じ原料米、同じ精米歩合、同じ酵母、同じ酒造という前提ながら、仕込み水を変えるだけでどう変化するかを飲み比べられるという設計になっています。これは、水質を実験的に可視化するような商品とも言えるでしょう。 小諸市は、浅間山を含む地域が長年かけてろ過を続けた地層を通して湧き出る水により、超硬水から超軟水までバリエーションある湧水群 を擁している地域とされています。その恵まれた水資源を、「飲み比べ」という体験型商品に昇華させるという点で、このプロジェクトは、水そのものを“商品軸”に据える野心的なものです。 二水源使いの異例さ 酒造りにおいて最も安定を求められるもののひとつが、仕込み水の品質と供給体制です。多くの酒造は、一つの水源に依拠して年間を通じて安定した条件を確保し、発酵プロセスを再現可能にすることを重視します。異なる水を使うということは、発酵速度、温度管理、酵母の挙動など多くの変数が増え、醸造管理が複雑になります。 その点を理解したうえで、大塚酒造はあえて「二つの水源」を使う道を選びました。浅間山近傍の硬度の高い伏流水(通常の「浅間嶽」ブランドでも用いられてきた水源)を「超硬水」側に採用し、また別の軟水寄りの湧水を「超軟水」側に据えることで、水質そのものの差異を明示的に表現しようという意図です。 このように、醸造変数を敢えて揺らす構造を採る蔵は極めて限定されており、技術と胆力が求められる挑戦とも言えます。中には、仕込み水をアッサンブラージュする先駆的取り組みを行っている市野屋(長野県大町市)のような酒造もありますが、「対比構造」による今回のような商品化は、極めて珍しいと言えます。 今回、「水の違いで飲み比べる」商品が登場したことは、日本酒の価値観を揺さぶる可能性があります。これまで「この水がいい」「この水源が清らかだ」という抽象的な訴求はありましたが、水質の違いを飲み手に体感させるフェーズには至っていなかったからです。 これはまた、地方酒蔵や水資源を抱える地域にとって、“水をストーリー資源化する”手法として参考になるモデルになり得ます。水源保全・管理といったインフラ課題を抱える地域こそ、水の魅力を可視化できれば、観光や地域振興と結びつけやすくなるでしょう。 また、醸造技術の面でも、異なる水質に対応する酒造の醸造ノウハウが蓄積されれば、新たなスタイルの日本酒づくりへの展開も期待できます。たとえば、今後「三種水飲み比べ」「地域複数水源ミックス酒」などの拡張も考えられます。こうなると、日本酒を通じてさまざまなコラボが促進されるかもしれません。 ただし、リスクもあります。温度管理、発酵進行の差異、酵母ストレスなど技術的困難に直面する可能性は高く、計画通りの熟成安定性を得られないケースも想定されます。加えて、飲み手に“水の違い”を明確に感じてもらうストーリーテリングと解説が不可欠で、マーケティングの力も問われます。 大塚酒造が手がける『浅間嶽 阿吽』は、水を味わいの主役へと昇華させた挑戦です。クラウドファンディングという形式も、単なる販路ではなく、地域と飲み手をつなぐコミュニケーション手段として機能しようとしています。 水という目に見えにくい要素を、飲み比べという体験に変えるこの試みが成功すれば、日本酒産業の価値観を刷新する起点となるかもしれません。飲む人が「この水はこういう風に効いているのだな」と感じられる対話型の酒。それが『浅間嶽 阿吽』という物語なのです。 ▶ 小諸の水源から生まれた奇跡 超硬水と超軟水で醸す日本酒セット『浅間嶽 阿吽』
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映画『種まく旅人~醪のささやき~』が公開 情報化時代に見直される“ものづくり”の原点

淡路島の老舗・千年一酒造が舞台に 2025年10月10日、映画『種まく旅人~醪(もろみ)のささやき~』が全国で公開されました。日本の第一次産業をテーマにした人気シリーズ「種まく旅人」の第5作となる本作は、兵庫県淡路島を舞台に、日本酒づくりに携わる人々の情熱と苦悩、そして未来への希望を描いています。…
映画『種まく旅人~醪のささやき~』が公開 情報化時代に見直される“ものづくり”の原点
淡路島の老舗・千年一酒造が舞台に 2025年10月10日、映画『種まく旅人~醪(もろみ)のささやき~』が全国で公開されました。日本の第一次産業をテーマにした人気シリーズ「種まく旅人」の第5作となる本作は、兵庫県淡路島を舞台に、日本酒づくりに携わる人々の情熱と苦悩、そして未来への希望を描いています。 主人公は農林水産省で働く官僚・神崎理恵(菊川怜)です。理恵は酒造業の現状を調査するため、淡路島の老舗酒蔵「千年一酒造」を訪れます。蔵では、伝統を守ろうとする蔵元・松元恒雄(升毅)と、時代の変化に合わせた酒づくりを模索する息子・孝之(金子隼也)が対立しながらも、理恵の存在を通じて少しずつ歩み寄っていきます。若手蔵人の夏美(清水くるみ)らも加わり、後継者問題や地域再生の課題など、現代の酒造業が直面する現実が丁寧に描かれています。 本作の重要な舞台となる千年一酒造は、淡路島に実在する明治創業の老舗蔵です。淡路島産の米と湧水を使い、今なお手づくりにこだわった酒造りを続けています。映画では実際の蔵で撮影が行われ、蒸し米の香り、醪のゆらめき、木桶の音など、五感に訴える映像が印象的に映し出されています。主演の菊川怜さんは「現場の空気そのものが物語を語ってくれるようでした」とコメントし、リアリティを大切にした撮影を振り返っています。 近年、情報化が進み、AIやデジタル技術が日常に浸透する一方で、土や水、人の手が生み出す“ものづくり”の価値が改めて注目されています。かつては時代遅れと見なされ、若者が離れていった第一次産業が、今では「かっこいい仕事」として再評価されつつあります。SNSや動画配信などを通じて、酒造りや農業の現場がリアルに発信され、職人たちの姿が憧れの対象となる時代になりました。 『醪のささやき』は、まさにそうした時代の転換を象徴する作品です。日本酒という伝統産業の中で、デジタルでは再現できない人の感性や手仕事の尊さを見つめ直しています。理恵が蔵人たちと心を通わせる過程は、効率やデータでは測れない“人のぬくもり”を描き出しており、観客に深い余韻を残します。 淡路市では映画公開に合わせて特別上映会が予定されており、千年一酒造にも見学希望が増えているといいます。蔵元の松元氏は「映画をきっかけに、若い世代にも酒造りの魅力を知ってもらいたい」と語り、地域全体で作品を支えています。 映画は107分のヒューマンドラマとして構成され、淡路島の美しい風景とともに、伝統産業が現代に生き続ける理由を静かに問いかけます。第一次産業への回帰が叫ばれる今、忘れかけていた“手でつくることの意味”を思い出させてくれる作品です。 『種まく旅人~醪のささやき~』は、日本酒という一滴に込められた人々の想いを通して、変化の時代を生きるすべての人に、「本当の豊かさとは何か」を問いかけます。その答えを探す旅が、今、静かに始まったのです。
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インドネシア商社が高知を訪問~甘口日本酒で新市場開拓の兆し

インドネシアの食品輸入商社「リブラフードサービス社」が、10月7日から9日にかけて高知県内の酒蔵を訪問しました。訪問の目的は、日本酒の輸出に向けた具体的な協議や商品選定で、今後の東南アジア市場における日本酒展開を見据えた動きとみられます。 富裕層を中心に広がる「甘口日本酒」人気…
インドネシア商社が高知を訪問~甘口日本酒で新市場開拓の兆し
インドネシアの食品輸入商社「リブラフードサービス社」が、10月7日から9日にかけて高知県内の酒蔵を訪問しました。訪問の目的は、日本酒の輸出に向けた具体的な協議や商品選定で、今後の東南アジア市場における日本酒展開を見据えた動きとみられます。 富裕層を中心に広がる「甘口日本酒」人気 近年、インドネシアでは日本酒への関心が高まり、富裕層や都市部のレストランを中心に“ちょっとした日本酒ブーム”が起きています。人口2億7000万人を誇る同国は、イスラム教徒が多数を占めるため、飲酒が文化的に制限されている一方で、非イスラム層や外国人駐在員などを含めると約5000万人規模の飲酒市場が存在するとされています。これは東南アジアの中でも非常に大きな潜在需要といえます。 その中で特徴的なのが、インドネシアの食文化に合った“甘口嗜好”です。現地では甘味の強い料理が多く、これに寄り添う形で、やや甘口の日本酒が好まれる傾向にあります。これまで辛口で知られてきた日本酒の中でも、フルーティーで柔らかい甘みを持つタイプが人気を集めています。 「CEL-24酵母」がもたらした新しい味わい 高知県の日本酒といえば、長らく「土佐鶴」や「司牡丹」に代表されるようなキリッとした辛口が主流でした。しかし、2013年に高知県工業技術センターが開発した酵母「CEL-24」の登場により、状況は一変しました。この酵母を使うことで、リンゴや南国フルーツを思わせる華やかな香りと、独特のフルーティーな甘みを持つ酒が誕生し、全国的に注目を浴びています。今回、リブラフードサービス社が高知を訪問した背景にも、この「CEL-24」系統の酒がインドネシア市場で受け入れられる可能性を見据えた狙いがあるとみられます。 課題と可能性 一方で、輸出には課題もあります。日本酒は温度管理が品質を大きく左右する繊細な酒です。インドネシアのような高温多湿な気候では、輸送中や保管中の品質維持が難しく、現地の物流体制や保冷輸送の確立が重要になります。また、インドネシア国内でのアルコール販売に関する規制も複雑で、宗教的配慮を踏まえた販売戦略が求められます。現在、流通している日本酒は高価格帯のものが中心で、一般市場にはまだ十分に浸透していません。 それでも、今回のように現地商社が日本の酒蔵を直接訪問するケースが増えていることは、海外市場の広がりを象徴する動きといえます。特に東南アジアでは、日本食レストランの増加に伴い、日本酒を「料理と楽しむ文化」として紹介する動きが活発化しています。甘口の酒が人気という傾向は、高知の新しい酒質との親和性が高く、今後、同県がインドネシア市場で存在感を高める可能性もあります。 日本酒業界にとって、インドネシアは決して容易な市場ではありません。しかし、5000万人という飲酒可能人口を抱える巨大な潜在市場であり、品質管理や現地の嗜好に合わせた酒づくりが進めば、新たな成長の柱となることも期待されます。今回の商談は、そうした未来に向けた第一歩として、大きな意味を持っているといえるでしょう。
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