読書録
読書録
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一昨日読んだ本
『面白いほどよくわかる!犯罪心理学』内山絢子監修、西東社
近年「犯罪心理学」という単語を聞くことが増えたものの、実際はどんなことを研究しているのかなどなど、知らないことだらけで興味を持ったため手に取った。その後でタイトルとイラストのフランクさから「実際の研究から離れた大衆迎合的な内容だったらどうしよう?」と心配になったが杞憂であった。また同時に、以前、警察官が職務質問の対象とする人の基準には明確な差別があると聞いたことがあったので、同様に差別的な内容であったらという不安もあったが、全体的には偏りはほぼなく公平な研究判断が行われていた。
August 2, 2025 at 12:16 AM
先日読んだ本
『杜甫詩選』黒田洋一編、岩波文庫
400p近いボリュームがあり、また(だからこそ知識を求めて読んだのだが)漢詩の知識などがなく面白さがいまいちわからなかったため、読み始めてから読了までに3日を要してしまった。漢詩の面白さはわからず、教養としても身につかないままではあったが、杜甫の詩の巧みさ、完成度は無知の身にもひしひしと伝わってきた。
驚いた点は、当時の社会(政治)への批判の詩が少なくなかったことである。杜甫は罪のある廷臣を庇ったことを咎められているが、こういった批判は許されていたのであろうか。
個人的に好きだった詩は後半の、自然を詠んだもの。杜甫の卓越した描写力がわかる。
August 2, 2025 at 12:05 AM
先日読んだ本
『サンショウウオの四十九日』朝比奈秋、新潮社
とある特殊な事情を持つ一卵性双生児が、これまた特殊な出生の伯父の訃報を受け、四十九日を迎えるまでを描いた物語。
序盤で話に出てくる人間の数とその場にいる人間の数とが合わず、また視点が頻繁に入れ替わっていたため困惑したが、焦らすことなく二人の事情が描かれたため比較的ストレスは少なく済んだ。
タイトルは作中に描かれるモチーフからのもの。自らを陰と陽になぞらえて考えるシーンは面白かった。全体としてはぼんやりとした感触のまま終わってしまったのが残念。
July 30, 2025 at 7:56 AM
最近読んだ本
『罪と罰』第一巻〜第三巻 ドストエフスキー、岩波文庫
主人公·ラスコーリニコフが、貸金業の老齢女性とその妹のリザヴェーダを手にかけ、自らの才覚への失望と罰とに怯えながら暮らすさまを描いた作品。第一巻第二巻とも、読者はラスコーリニコフの視点に立たされて「自らの罪がよそにバレているのかいないのか」という点でハラハラさせられはするもののあまり大きく話が動くことはなく、面白さがいまいちわからなかった上、内容が内容だけに「これは文学なのか?」という疑念も生じたものの、第三巻の終章、さらにその最後の数ページで劇的に話が動き、「なるほどこれは確かに文学かもしれない」と納得させられた。
July 21, 2025 at 1:38 AM
先日読んだ本
『文豪どうかしてる逸話集』進士素丸、KADOKAWA
以下ブクログと同文
タイトル通り、高名な文豪たちの面白エピソードを集めた1冊。エピソードとともにその人物の代表作2〜3作品程度も紹介されており、そのあらすじがユーモラスに書かれていたため、これまであまり興味の持てなかった作家(の作品)でも、「これ気になる」「読んでみたい」と思わされたので、文豪や古典作品にあまり興味が持てないという人にもおすすめできる1冊かもしれない。
個人的には志賀直哉の「骨董品を買いに行く」話と内田百閒の「錬金術」のエピソードが特に面白かった。
July 21, 2025 at 1:19 AM
今日読んだ本
『モモ』ミヒャエル・エンデ、大島かおり訳、岩波書店
言わずと知れた名作であるが、何だかんだと今まで縁がなかったものの近年度々随所でおすすめ本として挙げられていたため、この機会に読んでみることにした。
時間を「倹約」しているつもりで時間泥棒に時間を奪われる大人、それに巻き込まれていく子どもたちを救うため、モモが一人立ち向かい世界を救うまでの話。
前評判通り現代社会への鋭い批判が織り込まれており、児童文学に属する作品でありながら、大人の身でも読み応えが感じられた。しかしながら大人の身で読むと、時間貯蓄銀行の外交員と名乗る怪しげな男たちにまんまと乗せられ、そういう仕組みになっているとは
July 16, 2025 at 7:36 AM
今日読んだ本
『可愛い女 犬を連れた奥さん』チェーホフ、神西清訳、岩波文庫
国内で翻訳出版されているチェーホフの本は読み尽くしたと思っており、この本も読んだつもりでいたが、いずれの作品にも既視感がなかったので初読であったかもしれない。
お互いに別の伴侶を持ちながら運命的に惹かれ合う男女を描いた「犬を連れた奥さん」、お互いに魅力を感じながらもそのタイミングの噛み合わない男女を描く「ヨーヌィチ」、伴侶を次々と亡くし、その度に別の相手に惹かれ影響され、知人の子供を見守る立場に落ち着く「可愛い女」を収録。
いずれも様々な人生とその悲哀を描いているが、どこかユーモラスであり喜劇的なものも感じる。
July 15, 2025 at 5:24 AM
先日読んだ本
『日本の伝統とは何か』梅原猛、ミネルヴァ書房
以下ブクログと同文

日本の復帰すべき「伝統」について論じた(複数の講演内容をまとめ巻末に対談も付け加えられた)1冊。
学生時代に梅原猛の評判をよく耳にしていたが、意識して読んだことがなかったため気になり手に取った。
タイトルから、(前評判から安全であろうとは思われたが)「ネトウヨ」と呼ばれる人々がよく口にするような「古き良き日本」評が飛び出すのではないかと不安も感じていたが、決してそのような内容はなく、日本の仏教特有の「草木国土悉皆成仏」の考え方に基づき、生命の循環を重視した、今で言うところの持続可能性に着目して述べており、
July 15, 2025 at 2:33 AM
今日読んだ本
『おひとりさまのあったか1ヶ月食費2万円生活 四季の野菜レシピ』
おづまりこ、KADOKAWA
表題の通り、四季折々の野菜を使い健康的かつ安価なレシピを紹介している。自分は購入するのでないレシピ本からは、食材どうし、または食材と調味料の新たな組み合わせパターンを求めて読むのだが、その意味では本書からは得られるものがあまりなかった。目新しかったのは大根+トマト缶→カレーの流れくらいであろうか。とはいえ全ページ作者のやさしい絵柄で漫画で表現されており親しみやすく、料理の初心者でもハードルが低いのではないだろうか。
June 29, 2025 at 12:41 PM
今日読んだ本
『モフモフはなぜ可愛いのか』小林朋道、新潮新書
表題を含め、第三者(Twitterフォロワー?)から寄せられた、「人間」という生物に関する様々な問いに、動物行動学/進化心理学の研究者である著者が答える1冊。
著者いわく「動物行動学の基本であるから」とのことだが、全ての問いに対して「その方が自分(の遺伝子)の生存繁殖に有利になるから」という結論で結ばれており、そこに至るまでの推論も、研究者でなくとも想像がつく仮説やネット上に転がっている程度の知識がほとんどであまり面白いと思える部分がなく落胆した。
文章も(おそらく後書きで語っていることが祟っているのであろう)読みにくく、
June 29, 2025 at 7:29 AM
今回でレビューを書いた本が100冊になりました。よろしければブクログもご覧ください。
booklog.jp/users/chouko...
蝶子の本棚 (蝶子) - ブクログ
蝶子さんの本棚:読んだ本をすぐ忘れるので記録用。 全部紙で読んでます。
booklog.jp
June 27, 2025 at 6:34 AM
昨日読んだ本
『狂気へのグラデーション』稲垣智則、東海大学出版部
筆者が「自らの中にある狂気を忘れないように」認めた手記をまとめたもの。地元図書館ではエッセイ等の棚に置かれていたが内容としては現代哲学といって差し支えないように思う。読み始める前の期待として、フーコーなどに触れ狂気と正気の狭間について論じられるものかと思ったが、実際にはそういった哲学的な「狂気」の話ではなく、どちらかと言えば近年ネットに頻出する「𓏸𓏸歳までに××しないと(あるいは年齢については触れられずただ××しないと、として書かれることもある)狂う」といった言説に現れる「狂い」への対抗であるように思われ、より身近に感じられる。
June 27, 2025 at 6:29 AM
昨日読んだ本
『民俗の原風景 埼玉 イエのまつり·ムラの祭り』大舘勝治、朝日新聞社
たまたま書棚で目にし、面白そうだったので手に取った。
埼玉県内の民俗行事を調べ民俗学的考察を加えた上でまとめている。取り上げられる祭りはどれも埼玉県内のものだが、ねぷたなど県外に関連する行事等がある場合はそれにも触れられている。
ことさらに特別な単語などが使われることは少なく、全体としては民俗学に明るくなくともわかりやすく読みやすかった。一方やはり専門用語も皆無というわけではなく、巻末に用語解説があるがこれは巻頭にあった方が良いのではないかと感じる。
個人的には田の神去来信仰という概念を初めて知り楽しく読めた。
June 12, 2025 at 6:45 AM
今日読んだ本『笑う神さま図鑑』川副秀樹、言視舎
日本各地のユニークな神(仏を含む)さまを集めている。載っている神(/仏)はいずれも独特でありながら親しみやすく、かといって過度に下品な好奇心に基づく話などもなく、読みやすくわかりやすかった。軽い読み物のつもりで手に取ったが、庚申像や道祖神、石神、地蔵や稲荷に大口真神などと民俗学において主として取り上げられる神々を網羅しており、部分的にではあるが大学民俗学の復習が楽しくできた。
写真がモノクロであるのと、上手くモノクロへの変換編集がされておらず何が映っているのかわからないものが多かった点だけ残念。また各項目に3回程度は筆者のセルフツッコミがあり、
June 7, 2025 at 1:58 AM
昨日読んだ本
『戦争倫理学』加藤尚武、ちくま新書
パレスチナ侵攻、ウクライナ侵攻など、世界各地で未だ絶えない戦争の数々を、もっと高解像度で理解したく読んだ。
目次の時点で小林よしのりを引用していることがわかり、筆者の意見、引いては本書全体の信頼性について危惧したが、読み進めてみると小林よしのりの述懐に強く批判的な立場を取っていたのでそれ以降は安心して読めた。
戦争(武力行使)容認派、無差別主義、憲法九条反対派、いわゆるネトウヨ……といった人々からは受け入れられないであろうが、国際法·国連憲章·国際条約·憲法、また知識人の著述など、人文学的な知を集積し、また実際の紛争からもそれらを見つめ直して
June 4, 2025 at 2:30 AM
今日読んだ本
『はじめてのやさしい短歌のつくりかた』横山未来子、日本文芸社
字数の数え方、枕詞序詞などの短歌独特の技法や、短歌に限らない表現技法、文法に至るまで、短歌を作る参考となるあらゆる知識技法を網羅した本。それぞれに豊富な例示もあり、言葉使いも易しくわかりやすいため、初心者必携の1冊かもしれない。ただ個人的には最後の章で「添削」としてページ数を割いていたことが、「やはり短歌は堅苦しくて難しいのでは」というハードルの高さを呼び起こしてしまい気軽に短歌に向き合えず残念に感じた。作った短歌を推敲添削してブラッシュアップしていくのは重要なことではあるが……
May 27, 2025 at 11:21 AM
今日読んだ本
『キャベツ』石井睦美、講談社
中二で父を亡くし、以降家庭の中で料理をはじめとして家事を担ってきた「ぼく」と豪放磊落な妹の美砂、働いて家計を支えようとする母と、時折訪れる「川向こうのばあちゃん」、そして妹の紹介で知り合った「かこちゃん」との、ささやかな恋と日常を描いた作品。描かれる日々は穏やかながらも小さな変化に富んで、作品の中で重大な事件が起こることはなく、日常の愛おしさ以外のテーマは自分には読み取れなかったものの、読後の満足感は大きかった。また素朴な味わいがあり、まるで本当に素朴な味わいでありながら栄養たっぷりで温かい、ロールキャベツを食べた後のような感覚が残った。
May 21, 2025 at 6:55 AM
今日読んだ本
『和歌のルール これだけ知れば楽しく読める10の和歌のルールをやさしく説明!』
自分が和歌を詠むにあたり、本歌取りなどの技法を全く知らないため参考になればと思い読んだ。副題にもある通りあくまで和歌を「読む」ための本であり、自分で詠むには逆にハードルを上げてしまった感があった。それぞれの技法について詳細に解説されており和歌の技法について徹底解剖されていると感じたが、しかしそれ故に「初めて和歌を読む人々を思い浮かべて書かれた」という割には大学レベルと思われる記載が多く、初心者にはハードルが高く感じた。もう少し噛み砕いた内容でもよかったのではないだろうか。
May 20, 2025 at 5:07 AM
今日読んだ本
『ぼくの小鳥ちゃん』江國香織、あかね書房
ある日ぼくが窓辺でコーヒーを飲んでいると、小鳥ちゃんがやってきた。
そのまま居着いた「小鳥ちゃん」とぼく、時々彼女との、穏やかな日常が描かれる。
小鳥ちゃんが帰っていくまでが描かれるのかと思いながら読み進めたが、結局小鳥ちゃんは帰らず、物語のオチや起承転結はわかりにくかった。
しかしながらぼくの静かな日常、彼女のさっぱりとした性格、小鳥ちゃんの愛らしいわがままとが組み合わさり、優しく穏やかで色彩に満ちた世界観を構成しており、リラックスしてのんびりと読めた。
May 14, 2025 at 1:45 AM
今日読んだ本
『山の怪異譚』山の怪と民俗研究会編、河出書房新社
山での怪異について民俗学的現地から考察を加えるものと思い手に取った。しかしながら内容は「語り手本人または周囲の人間が山で幽霊を見た」という話だけで終わるものから、山の怪異について出典や伝承の変遷を探るものまでさまざまで、本書全体としての評価が中々に難しい。本書は登山家や民俗学者、作家を中心として山での怪異の話を集めたアンソロジー的1冊であるようだ。
May 13, 2025 at 10:32 AM
今日読んだ本
『万葉集が面白いほどわかる本』荒木清、中経出版
和歌に明るくなく、初心者向けの解説をしてくれる本をと思い手に取った。
しかしながら国語の本でありながら横書き、それも統一されておらず各章扉では縦書きになったりとばらばらで読みにくく目が疲れた。
また肝心の内容についても、それぞれの歌について3行程度の軽い解説(にさえなっていないものも多い)しかなく、詠み込まれた内容がよくわからず折角の風情も感じられない。また解説のキャラクターと設定が完全に蛇足でしかなく残念。
ただ次から次へと歌の解説に移るため取り上げられている句は多く、万葉集の中から気になる歌を見つけるのには適しているかもしれない
April 21, 2025 at 4:23 AM
今日読んだ本
『すきまのおともだちたち』江國香織、白泉社
気鋭の新聞記者である「私」はある日出先で街を歩いているうち、気付けば見知らぬ場所にいた。それから後、「私」は意図せぬときに度々すきまのような「世界」に落ちていくことになる……
「世界」では「おんなのこ」は「おんなのこ」のまま、成長することも老いることもなく、ただそこにあるものとして当然のように存在し続ける。一方で「私」は現実に帰る度に歳を取り、ライフイベントを乗り越え、「おんなのこ」に会う度に誰だかわからないと言われるほどに成長しあるいは老いていく。
「世界」には冷たい雨も病もあるが、それでも「おんなのこ」は「おんなのこ」のままで
April 15, 2025 at 4:25 AM
今日読んだ本
『水上バス浅草行き』岡本真帆、ナナロク社
短歌俳句の五七五(七七)のリズムに馴染みたく、まずは人の書いたものに触れようと思い本書を手に取った。筆者について全く知識がなかったが、SNSで流行した句(「本当にあたしでいいの?ずぼらだし、傘もこんなにたくさんあるし」)が収録されており有名な歌人であることがわかった。
収録されている句はどれも生活に関するものや恋に関するもので、「そういうことって、あるよなぁ」と共感と共に読んだ。犬に関する句が多いのは筆者が犬派だからだろうか。
個人的には冒頭の「手遅れで手に入らないものばかり育ちの良さも既婚の君も」に深く共感し心打たれた。
April 14, 2025 at 3:37 AM
今日読んだ本
「やさしい俳句入門」辻桃子、安部元気、主婦の友社
昔から短歌俳句に苦手意識があり全く思いつかなかったのだが、最近身の回りに短歌俳句を詠む人が増え、何とか自分も短歌俳句を詠めるようになりたい、コンプレックスを克服したいと思い本書を手に取った。
全体として平易な言葉で、例示も含めて大層わかりやすく書かれており、持病に重い頭でもすんなりと理解ができてたいへん良かった。
短歌俳句をうまく詠めない理由は人それぞれであろうが、自分の場合は五七五のリズムがうまく身についていないためであることが分かった。多くの作品に触れてこのリズムを自分のものに出来ればと思う。
また、本書を読む前は短歌俳句を
April 11, 2025 at 3:42 AM
今日読んだ本
『春琴抄』谷崎潤一郎、新潮文庫
かねてより読もう読もうと思いつつ、体調と文体の相性が会わないように感じ敬遠していたものをようやく手に取った。
名家に生まれながら盲目となり音曲の道に入った春琴と、奉公人の佐助との一生を描いた物語。
記憶とは違い漢文調ではなかったものの、代わりに文中に読点句読点がほぼなく、文章の切れ目がよくわからず読むのには少し骨が折れた。著者の作は先に「刺青」を読んでいたため本書も同一の雰囲気を期しており、いつこの展開がひっくり返るのだろう、と思いながら読み進めていたが、どんでん返しは無いままに終わった。しかしながら読後言い知れぬ、満足に似た感情に胸を満たされ、
April 10, 2025 at 5:22 AM