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アルゴルはそう言うとポットを手にとりそっと目を閉じる

「こうやって、ポットで踊る茶葉をイメージしてください」

そっと目を開けてカップに紅茶を注ぐ

「次はお砂糖です、幸せであたたかい気持ちで優しくカップに入れてください」

サラサラと、溶けていく砂糖を愛おしむようにカップへ入れ

静かに混ぜるとヴェーロールムに手渡す

「優しくて甘いおまじないです、このお茶が素敵な時間を彩りますように」

--小さじ一杯の魔法 Fin
November 2, 2025 at 7:23 PM
「今日は特別な日なので、ヴェーロールムさんにひとつ魔法をプレゼントしたいんです、いいですか?」

アルゲニブは目配せをして、ヴェーロールムを頷かせる。

「……わかりました、今日は特別ですからね」

「ふふ、ありがとうございます」

「良かったね、受け取ってもらえるみたいだよ」

ヴェーロールムはアルゲニブに目をやると、また満足気な表情を浮かべている。

「祖母からの受け売りなんです、あたたかい魔法なので今日にぴったりですよ」
November 2, 2025 at 7:22 PM
いつもの子気味良い軽口にアルゴルは笑みを浮かべ、アルゲニブもつられるようにして微笑む。

「魔導書以外の書物も好きなんです、知らない事がまだまだ沢山で」

「デルタもたくさんいるから挨拶にも行かないとね」

「三階にもデルタはいるでしょう」

「三階のデルタは三階のデルタだからね」

他愛もない会話をするうち、程よく時間が過ぎていく。

「今日もおふたりは仲良しですね、お話も楽しいですけどもうすぐお茶の用意ができますよ」

ヴェーロールムは少し言葉に詰まった様子だが、アルゲニブは満足そうな表情を浮かべる。
November 2, 2025 at 7:22 PM
--そして現在
《禁書エリアのさらに奥》

「おふたりとも、ありがとうございます」

ヴェーロールムは手元のカップと菓子を綺麗に並べ、また視線をふたりの元へ戻す。

「ヴェーロールムさんも、ご一緒してくださってありがとうございます」

「アルゴルは嬉しそうだね」

「普段は中々ご一緒できませんから。こうしてお茶ができるのがとても嬉しいんです」

この時間を愛おしむようにアルゴルは話す。

「エリアが違いますからね、と言ってもあなた方はこちらにもいらっしゃいますが」

「図書館司書だからね」

「下に魔導書はありませんが」
November 2, 2025 at 7:21 PM
「ヴェーロールムさんもいらっしゃるんですね、こんにちは」

「こんにちは、アルゴルさん。危ないですから館内で走らないように」

「すみません、つい駆け足になっちゃいました。アルゲニブさん、どうかされましたか?」

「今からお茶会をしようか、今日は素敵なお客さんもいるからね。きっと楽しい時間になる」

アルゴルは期待を顔に浮かべ、捲っていた袖を下ろす。

「わぁ、きっと素敵な時間になりますね」

「それじゃあ、移動しようか」

「ええ、時間は有限ですから」
November 2, 2025 at 7:19 PM
今日は中央図書館の創立記念日だが、利用客にとっては何の変哲もない一日。

いつも通り、膨大なデータが移動している。

「ふふ、よく知っているね。さすがデルタ社のエリートくんだ」

「我が社のことですから、当然です」

「そんな特別な日なんだ、今日くらいは揃ってゆっくりしないかい?」

少し間を置いて、悩んだ末に半ば諦めのような表情を浮かべ

「かまいませんよ、この時間なら利用客もそう多くないでしょう」

「決まりだね、あの子も呼んで移動しようか。アルゴル、デルタと話し終わったらこっちにおいで」

呼び掛けに応え、アルゴルはデルタに挨拶をしてふたりの元へ小走りでやってくる。
November 2, 2025 at 7:19 PM
--遡ること数刻
《中央図書館 二階 近代アーカイブエリア》

「今日はデルタに任せて、お茶をしないかい?」

薄い液晶を手にするヴェーロールムを、アルゲニブが後ろから覗き込む。

「……なんですか、唐突に。そういったことは」

「今日は特別な日だ、あの子もきっと喜ぶだろうから」

ふたりの視線の先にはデルタと話し込むアルゴルの姿。

「デルタちゃん、今日はおめかしして3階で働いてみませんか?特別な日なんですって、きっと楽しいですよ」

「朝からあの調子なんだ、デルタが僕たちの分まで働いてくれるようだし」

「浮かれていますね、彼女。今日は創立記念日、でしたか」
November 2, 2025 at 7:18 PM