66
「そうですか、じゃねぇんだけどなァ」
「😳❓❓ ……あっ、ラジオの‼️」
スノースマイル☃️✨
寒いからコートのポケットに手を招く理由になるという‼️
「リクエスト、覚えていてくださったんですねっ☺ うれしい」
「そうでもねぇけど、まぁいいや。そういうことにしといてくれ」
「☺❓❓」
よくわからないまま帰途につく。
「なぁ」
「はい❣☺」
「フェーヴの袋、アンタは何が入ってると思ってたんだ?」
「え?」
「最初は喜んでただろ。何か期待してたモンがあったんじゃねぇの?」
「最初は、じゃなくて今も、これからも喜んでますよ😤✨」
「貰う理由がないとか言ってたし」
63
「アンタのそういうとこわかんねぇわ……」
「ごめんなさい😣」
「嬉しそうにしてたのは何だったんだ」
「うれしいです‼️ とっても‼️」
「じゃあそれでいいだろ。アンタの喜ぶ顔が見たかった私のために貰ってくれや」
「😳🥺😔💦」
「フェーヴ、毎年貰ってたんだろ? 当たっても当たらなくても」
「あっはい……、……‼️」
そうだ。栗毛は思い出す。そんな話もしていた。当たらなくても毎年陶器のフェーヴだけは毎年もらって、コレクションにしてるんだと。
でも今年のことなんて一言も言わなかったのに。
実家に帰らないのなら、当然、生まれたときから続いていたコレクションは増えない。穴が開く。
60
半分くらい飲んだココアを傍らに置いて、小さな袋を閉じているシールを少しずつ剥がした。そういえばもらったとき、袋ごとほんのり温かかった。ナ力ヤマさんのポケットに入っていたからかな。いまもすこし温かいのは、ナ力ヤマさんから借りてるコートのポケットの中に入れていたからだろう。
「テキトーに破っちまってもいいのに」
「大切ないただきものですよで」
「まだ何が入ってんのかわかんねぇのに?」
「ナ力ヤマさんがおかしなものをくださるなんて思ってませんよっ☺」
「その信頼はいったいどこから湧き出てきてんのかねぇ?」
「おかしなもの、くださるんですか?」
「つまんねぇもんかもだし」
66
「そうですか、じゃねぇんだけどなァ」
「😳❓❓ ……あっ、ラジオの‼️」
スノースマイル☃️✨
寒いからコートのポケットに手を招く理由になるという‼️
「リクエスト、覚えていてくださったんですねっ☺ うれしい」
「そうでもねぇけど、まぁいいや。そういうことにしといてくれ」
「☺❓❓」
よくわからないまま帰途につく。
「なぁ」
「はい❣☺」
「フェーヴの袋、アンタは何が入ってると思ってたんだ?」
「え?」
「最初は喜んでただろ。何か期待してたモンがあったんじゃねぇの?」
「最初は、じゃなくて今も、これからも喜んでますよ😤✨」
「貰う理由がないとか言ってたし」
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「アンタのそういうとこわかんねぇわ……」
「ごめんなさい😣」
「嬉しそうにしてたのは何だったんだ」
「うれしいです‼️ とっても‼️」
「じゃあそれでいいだろ。アンタの喜ぶ顔が見たかった私のために貰ってくれや」
「😳🥺😔💦」
「フェーヴ、毎年貰ってたんだろ? 当たっても当たらなくても」
「あっはい……、……‼️」
そうだ。栗毛は思い出す。そんな話もしていた。当たらなくても毎年陶器のフェーヴだけは毎年もらって、コレクションにしてるんだと。
でも今年のことなんて一言も言わなかったのに。
実家に帰らないのなら、当然、生まれたときから続いていたコレクションは増えない。穴が開く。
60
半分くらい飲んだココアを傍らに置いて、小さな袋を閉じているシールを少しずつ剥がした。そういえばもらったとき、袋ごとほんのり温かかった。ナ力ヤマさんのポケットに入っていたからかな。いまもすこし温かいのは、ナ力ヤマさんから借りてるコートのポケットの中に入れていたからだろう。
「テキトーに破っちまってもいいのに」
「大切ないただきものですよで」
「まだ何が入ってんのかわかんねぇのに?」
「ナ力ヤマさんがおかしなものをくださるなんて思ってませんよっ☺」
「その信頼はいったいどこから湧き出てきてんのかねぇ?」
「おかしなもの、くださるんですか?」
「つまんねぇもんかもだし」
「何か買ってくる。その辺で待ってろ」
「あっ、はい🙂💦」
ナ力ヤマさんの視線の先には偶然誰も座っていないベンチがある。言うが早いかちらほら人が並ぶキッチンカーの方へ向かうナ力ヤマさんの背を見送って、栗毛はそっとベンチに腰を掛けた。
もしかしたら何かイベントでもやっていたのかも。この国の元旦といえば静かに穏やかに過ごすものと聞いていたし、そんなイメージだったけれど……年始に因んだ人が集まる楽しいイベントがあれば、参加したい人もいるし、書き入れ時とばかりにキッチンカーも出店していたのかも。
楽しそうな音楽とひとびとをかき分けて、そのうちナ力ヤマさんが帰ってくる。
63
「アンタのそういうとこわかんねぇわ……」
「ごめんなさい😣」
「嬉しそうにしてたのは何だったんだ」
「うれしいです‼️ とっても‼️」
「じゃあそれでいいだろ。アンタの喜ぶ顔が見たかった私のために貰ってくれや」
「😳🥺😔💦」
「フェーヴ、毎年貰ってたんだろ? 当たっても当たらなくても」
「あっはい……、……‼️」
そうだ。栗毛は思い出す。そんな話もしていた。当たらなくても毎年陶器のフェーヴだけは毎年もらって、コレクションにしてるんだと。
でも今年のことなんて一言も言わなかったのに。
実家に帰らないのなら、当然、生まれたときから続いていたコレクションは増えない。穴が開く。
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半分くらい飲んだココアを傍らに置いて、小さな袋を閉じているシールを少しずつ剥がした。そういえばもらったとき、袋ごとほんのり温かかった。ナ力ヤマさんのポケットに入っていたからかな。いまもすこし温かいのは、ナ力ヤマさんから借りてるコートのポケットの中に入れていたからだろう。
「テキトーに破っちまってもいいのに」
「大切ないただきものですよで」
「まだ何が入ってんのかわかんねぇのに?」
「ナ力ヤマさんがおかしなものをくださるなんて思ってませんよっ☺」
「その信頼はいったいどこから湧き出てきてんのかねぇ?」
「おかしなもの、くださるんですか?」
「つまんねぇもんかもだし」
「何か買ってくる。その辺で待ってろ」
「あっ、はい🙂💦」
ナ力ヤマさんの視線の先には偶然誰も座っていないベンチがある。言うが早いかちらほら人が並ぶキッチンカーの方へ向かうナ力ヤマさんの背を見送って、栗毛はそっとベンチに腰を掛けた。
もしかしたら何かイベントでもやっていたのかも。この国の元旦といえば静かに穏やかに過ごすものと聞いていたし、そんなイメージだったけれど……年始に因んだ人が集まる楽しいイベントがあれば、参加したい人もいるし、書き入れ時とばかりにキッチンカーも出店していたのかも。
楽しそうな音楽とひとびとをかき分けて、そのうちナ力ヤマさんが帰ってくる。
54
住宅街を出て、すこしだけ歩く。昨晩赴いた神社とは別の方向。クルマが行き来する大通りにたどりつく。さすがに元旦だから閉まってるお店も多いけど、飲み屋さんとかは開いてるみたい。新年を祝う陽気な歓声が聞こえてくる。冬真っ只中だからとっくに陽は落ちていて、息をするたびに白いかたまりがこぼれた。
「ナ力ヤマさんのコート、あったかいです☺」
「中等部ん時に買ったやつだな。妹に譲るつもりだったやつ」
「そうだったんですか……ナ力ヤマさんのおさがり、ですね😊」
栗毛は自分のコートも持ってきていたけれど、ナ力ヤマさんが貸してくれたのだ。……借りたお洋服とマッチしづらいからと。
60
半分くらい飲んだココアを傍らに置いて、小さな袋を閉じているシールを少しずつ剥がした。そういえばもらったとき、袋ごとほんのり温かかった。ナ力ヤマさんのポケットに入っていたからかな。いまもすこし温かいのは、ナ力ヤマさんから借りてるコートのポケットの中に入れていたからだろう。
「テキトーに破っちまってもいいのに」
「大切ないただきものですよで」
「まだ何が入ってんのかわかんねぇのに?」
「ナ力ヤマさんがおかしなものをくださるなんて思ってませんよっ☺」
「その信頼はいったいどこから湧き出てきてんのかねぇ?」
「おかしなもの、くださるんですか?」
「つまんねぇもんかもだし」
54
住宅街を出て、すこしだけ歩く。昨晩赴いた神社とは別の方向。クルマが行き来する大通りにたどりつく。さすがに元旦だから閉まってるお店も多いけど、飲み屋さんとかは開いてるみたい。新年を祝う陽気な歓声が聞こえてくる。冬真っ只中だからとっくに陽は落ちていて、息をするたびに白いかたまりがこぼれた。
「ナ力ヤマさんのコート、あったかいです☺」
「中等部ん時に買ったやつだな。妹に譲るつもりだったやつ」
「そうだったんですか……ナ力ヤマさんのおさがり、ですね😊」
栗毛は自分のコートも持ってきていたけれど、ナ力ヤマさんが貸してくれたのだ。……借りたお洋服とマッチしづらいからと。
51
「出かけてくる」
「あっ、はい☺ いってらっしゃい……」
ナ力ヤマさんのおうちにお邪魔して、二度目のナ力ヤマさん単独お出かけ。
一度目こそひとり残されてどうしたらいいのか困ったけれど、いまは違う。二日ほどしか経っていないけれど弟妹ちゃんたちとはすっかり打ち解け、ナ力ヤマさんのお母様ともお父様ともおしゃべりができるようになっている‼️
寮とおなじくらいの時間帯のお夕飯。おもちと鶏肉、しいたけに水菜が入ったお雑煮を食べ終わった頃合いのことだ。
このあとの栗毛はお夕飯のお片付けのお手伝いをして、弟妹ちゃんたちの宿題を見る予定。そのうちお風呂も頂いて、最後の夜を過ごす。
㊽
お部屋のソファに座って、年始の動画配信をタブレットで見たりしながら朝を待っていたけれど、ナ力ヤマさん、耐えられなくなったみたい。うとうとと舟を漕ぎだした。
「おやすみなさい」
タブレットを消灯して、部屋の灯りもオフにした。そっとソファから立ち上がる。ゆっくりとナ力ヤマさんを寝かせて、おふとんと毛布をかけた。カーテンを開けたままの窓の外はまだ夜で、初日の出まではまだあるみたい。足音を立てないようにそろそろとベッドに向かって、ふかふかのおふとんをかぶる。
不思議な気分だった。予定では寮で帰省なし組の子たちと過ごすはずだったのに。おせちを作って、食べて、
54
住宅街を出て、すこしだけ歩く。昨晩赴いた神社とは別の方向。クルマが行き来する大通りにたどりつく。さすがに元旦だから閉まってるお店も多いけど、飲み屋さんとかは開いてるみたい。新年を祝う陽気な歓声が聞こえてくる。冬真っ只中だからとっくに陽は落ちていて、息をするたびに白いかたまりがこぼれた。
「ナ力ヤマさんのコート、あったかいです☺」
「中等部ん時に買ったやつだな。妹に譲るつもりだったやつ」
「そうだったんですか……ナ力ヤマさんのおさがり、ですね😊」
栗毛は自分のコートも持ってきていたけれど、ナ力ヤマさんが貸してくれたのだ。……借りたお洋服とマッチしづらいからと。
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「出かけてくる」
「あっ、はい☺ いってらっしゃい……」
ナ力ヤマさんのおうちにお邪魔して、二度目のナ力ヤマさん単独お出かけ。
一度目こそひとり残されてどうしたらいいのか困ったけれど、いまは違う。二日ほどしか経っていないけれど弟妹ちゃんたちとはすっかり打ち解け、ナ力ヤマさんのお母様ともお父様ともおしゃべりができるようになっている‼️
寮とおなじくらいの時間帯のお夕飯。おもちと鶏肉、しいたけに水菜が入ったお雑煮を食べ終わった頃合いのことだ。
このあとの栗毛はお夕飯のお片付けのお手伝いをして、弟妹ちゃんたちの宿題を見る予定。そのうちお風呂も頂いて、最後の夜を過ごす。
㊽
お部屋のソファに座って、年始の動画配信をタブレットで見たりしながら朝を待っていたけれど、ナ力ヤマさん、耐えられなくなったみたい。うとうとと舟を漕ぎだした。
「おやすみなさい」
タブレットを消灯して、部屋の灯りもオフにした。そっとソファから立ち上がる。ゆっくりとナ力ヤマさんを寝かせて、おふとんと毛布をかけた。カーテンを開けたままの窓の外はまだ夜で、初日の出まではまだあるみたい。足音を立てないようにそろそろとベッドに向かって、ふかふかのおふとんをかぶる。
不思議な気分だった。予定では寮で帰省なし組の子たちと過ごすはずだったのに。おせちを作って、食べて、
㊺
やりとげたいこと。
この国で走ること。
あなたのそばで走ること。……ちょっと目標としては大きすぎるかな。新年のごあいさつ、なんだから、この一年のことを考える。
やりとげたいこと……。
「オープン入り……したいです……」
わたしはあとどのくらい、走ることができるだろう。
本格化がどれだけ保つのか、どれだけ保たせることができるのかはひとによる。走り方を変えたのだから、いつなにが起こってもおかしくはない。
「そのための万葉Sだろうが。もっとデカいとこ、狙わねぇの?」
「重賞ですか……?!」
「今アンタは可能性を見た。それを見るだけかい?」
……わたしが重賞を?
51
「出かけてくる」
「あっ、はい☺ いってらっしゃい……」
ナ力ヤマさんのおうちにお邪魔して、二度目のナ力ヤマさん単独お出かけ。
一度目こそひとり残されてどうしたらいいのか困ったけれど、いまは違う。二日ほどしか経っていないけれど弟妹ちゃんたちとはすっかり打ち解け、ナ力ヤマさんのお母様ともお父様ともおしゃべりができるようになっている‼️
寮とおなじくらいの時間帯のお夕飯。おもちと鶏肉、しいたけに水菜が入ったお雑煮を食べ終わった頃合いのことだ。
このあとの栗毛はお夕飯のお片付けのお手伝いをして、弟妹ちゃんたちの宿題を見る予定。そのうちお風呂も頂いて、最後の夜を過ごす。
㊽
お部屋のソファに座って、年始の動画配信をタブレットで見たりしながら朝を待っていたけれど、ナ力ヤマさん、耐えられなくなったみたい。うとうとと舟を漕ぎだした。
「おやすみなさい」
タブレットを消灯して、部屋の灯りもオフにした。そっとソファから立ち上がる。ゆっくりとナ力ヤマさんを寝かせて、おふとんと毛布をかけた。カーテンを開けたままの窓の外はまだ夜で、初日の出まではまだあるみたい。足音を立てないようにそろそろとベッドに向かって、ふかふかのおふとんをかぶる。
不思議な気分だった。予定では寮で帰省なし組の子たちと過ごすはずだったのに。おせちを作って、食べて、
㊺
やりとげたいこと。
この国で走ること。
あなたのそばで走ること。……ちょっと目標としては大きすぎるかな。新年のごあいさつ、なんだから、この一年のことを考える。
やりとげたいこと……。
「オープン入り……したいです……」
わたしはあとどのくらい、走ることができるだろう。
本格化がどれだけ保つのか、どれだけ保たせることができるのかはひとによる。走り方を変えたのだから、いつなにが起こってもおかしくはない。
「そのための万葉Sだろうが。もっとデカいとこ、狙わねぇの?」
「重賞ですか……?!」
「今アンタは可能性を見た。それを見るだけかい?」
……わたしが重賞を?
「何だよ、唐突に。面白いことでもあったか?」
「いえ、……穏やかな年越しになったな、と思って☺」
「穏やか……、そうかァ? 今ですら神社の参拝客で騒がしいのに」
うんざりしていそうなナ力ヤマさん。もとより情緒のない雑踏はお好きじゃないひとだもんね。せっかくだから夜のうちに行っておいでとナ力ヤマさんのお母様に背中を押されたけれど、ナ力ヤマさんはお嫌だったかも?😖💦なんて考えていたら、ため息がきこえてくる。
「寮じゃこの時間に出歩けねぇからな。で? アンタは何を持って穏やかだなんてほざいたんだ?」
「ふふ。実家では毎年ご近所さんも交えての年越しパーティーをしていたんですよ」
㊽
お部屋のソファに座って、年始の動画配信をタブレットで見たりしながら朝を待っていたけれど、ナ力ヤマさん、耐えられなくなったみたい。うとうとと舟を漕ぎだした。
「おやすみなさい」
タブレットを消灯して、部屋の灯りもオフにした。そっとソファから立ち上がる。ゆっくりとナ力ヤマさんを寝かせて、おふとんと毛布をかけた。カーテンを開けたままの窓の外はまだ夜で、初日の出まではまだあるみたい。足音を立てないようにそろそろとベッドに向かって、ふかふかのおふとんをかぶる。
不思議な気分だった。予定では寮で帰省なし組の子たちと過ごすはずだったのに。おせちを作って、食べて、
㊺
やりとげたいこと。
この国で走ること。
あなたのそばで走ること。……ちょっと目標としては大きすぎるかな。新年のごあいさつ、なんだから、この一年のことを考える。
やりとげたいこと……。
「オープン入り……したいです……」
わたしはあとどのくらい、走ることができるだろう。
本格化がどれだけ保つのか、どれだけ保たせることができるのかはひとによる。走り方を変えたのだから、いつなにが起こってもおかしくはない。
「そのための万葉Sだろうが。もっとデカいとこ、狙わねぇの?」
「重賞ですか……?!」
「今アンタは可能性を見た。それを見るだけかい?」
……わたしが重賞を?
「何だよ、唐突に。面白いことでもあったか?」
「いえ、……穏やかな年越しになったな、と思って☺」
「穏やか……、そうかァ? 今ですら神社の参拝客で騒がしいのに」
うんざりしていそうなナ力ヤマさん。もとより情緒のない雑踏はお好きじゃないひとだもんね。せっかくだから夜のうちに行っておいでとナ力ヤマさんのお母様に背中を押されたけれど、ナ力ヤマさんはお嫌だったかも?😖💦なんて考えていたら、ため息がきこえてくる。
「寮じゃこの時間に出歩けねぇからな。で? アンタは何を持って穏やかだなんてほざいたんだ?」
「ふふ。実家では毎年ご近所さんも交えての年越しパーティーをしていたんですよ」
㊴
月桂樹に麦の穂、太陽に向日葵。かつては宗教的な意味もあったモチーフだけれど、現代だとそれらも薄れつつあると栗毛は聞いたことがある。
「たとえば月桂樹のレイヤージュが持つ意味は『勝利』。麦の穂は『豊穣』。太陽は『生命』。ひまわりは『栄光』……願掛けのようなものではあるので、やりやすいものを選んでもよいのですが……」
「何言ってんだ。その中なら月桂樹一択だろ」
ナ力ヤマさんの言葉に栗毛が首を傾げると、ナ力ヤマさんは肩をすくめてみせた。
「アンタ、次走がなんなのか忘れたのか?」
「万葉ステークス……。葉っぱですか?」
「意味が勝利ならますますおあつらえ向きだろうが」
㊺
やりとげたいこと。
この国で走ること。
あなたのそばで走ること。……ちょっと目標としては大きすぎるかな。新年のごあいさつ、なんだから、この一年のことを考える。
やりとげたいこと……。
「オープン入り……したいです……」
わたしはあとどのくらい、走ることができるだろう。
本格化がどれだけ保つのか、どれだけ保たせることができるのかはひとによる。走り方を変えたのだから、いつなにが起こってもおかしくはない。
「そのための万葉Sだろうが。もっとデカいとこ、狙わねぇの?」
「重賞ですか……?!」
「今アンタは可能性を見た。それを見るだけかい?」
……わたしが重賞を?
「何だよ、唐突に。面白いことでもあったか?」
「いえ、……穏やかな年越しになったな、と思って☺」
「穏やか……、そうかァ? 今ですら神社の参拝客で騒がしいのに」
うんざりしていそうなナ力ヤマさん。もとより情緒のない雑踏はお好きじゃないひとだもんね。せっかくだから夜のうちに行っておいでとナ力ヤマさんのお母様に背中を押されたけれど、ナ力ヤマさんはお嫌だったかも?😖💦なんて考えていたら、ため息がきこえてくる。
「寮じゃこの時間に出歩けねぇからな。で? アンタは何を持って穏やかだなんてほざいたんだ?」
「ふふ。実家では毎年ご近所さんも交えての年越しパーティーをしていたんですよ」
㊴
月桂樹に麦の穂、太陽に向日葵。かつては宗教的な意味もあったモチーフだけれど、現代だとそれらも薄れつつあると栗毛は聞いたことがある。
「たとえば月桂樹のレイヤージュが持つ意味は『勝利』。麦の穂は『豊穣』。太陽は『生命』。ひまわりは『栄光』……願掛けのようなものではあるので、やりやすいものを選んでもよいのですが……」
「何言ってんだ。その中なら月桂樹一択だろ」
ナ力ヤマさんの言葉に栗毛が首を傾げると、ナ力ヤマさんは肩をすくめてみせた。
「アンタ、次走がなんなのか忘れたのか?」
「万葉ステークス……。葉っぱですか?」
「意味が勝利ならますますおあつらえ向きだろうが」
㊱
翌日。
「ちと出てくるわ」
「え……?!」
という感じでナ力ヤマさんがお出かけになってしまいました……理由も聞けず見送るだけになってしまった栗毛。ひとさまのおうちで?! ひとりになるなんて想定していない。
しかしやることはたくさんあって、ナ力ヤマさんのお母様に引き続きお料理を習ったり。
「キズナちゃん」
「はい、なんでしょう?」
「冬休みの宿題おしえて!」
弟妹ちゃんたちの宿題を見てみたり。いわゆる『こくご』の宿題は栗毛にもまだ飲み込めていない文章のニュアンスなどもあるから漢字の書き取りを眺めるくらいしかできなかったけれど、『さんすう』は別だ。あとは『英語』も。
「何だよ、唐突に。面白いことでもあったか?」
「いえ、……穏やかな年越しになったな、と思って☺」
「穏やか……、そうかァ? 今ですら神社の参拝客で騒がしいのに」
うんざりしていそうなナ力ヤマさん。もとより情緒のない雑踏はお好きじゃないひとだもんね。せっかくだから夜のうちに行っておいでとナ力ヤマさんのお母様に背中を押されたけれど、ナ力ヤマさんはお嫌だったかも?😖💦なんて考えていたら、ため息がきこえてくる。
「寮じゃこの時間に出歩けねぇからな。で? アンタは何を持って穏やかだなんてほざいたんだ?」
「ふふ。実家では毎年ご近所さんも交えての年越しパーティーをしていたんですよ」
㊴
月桂樹に麦の穂、太陽に向日葵。かつては宗教的な意味もあったモチーフだけれど、現代だとそれらも薄れつつあると栗毛は聞いたことがある。
「たとえば月桂樹のレイヤージュが持つ意味は『勝利』。麦の穂は『豊穣』。太陽は『生命』。ひまわりは『栄光』……願掛けのようなものではあるので、やりやすいものを選んでもよいのですが……」
「何言ってんだ。その中なら月桂樹一択だろ」
ナ力ヤマさんの言葉に栗毛が首を傾げると、ナ力ヤマさんは肩をすくめてみせた。
「アンタ、次走がなんなのか忘れたのか?」
「万葉ステークス……。葉っぱですか?」
「意味が勝利ならますますおあつらえ向きだろうが」
㊱
翌日。
「ちと出てくるわ」
「え……?!」
という感じでナ力ヤマさんがお出かけになってしまいました……理由も聞けず見送るだけになってしまった栗毛。ひとさまのおうちで?! ひとりになるなんて想定していない。
しかしやることはたくさんあって、ナ力ヤマさんのお母様に引き続きお料理を習ったり。
「キズナちゃん」
「はい、なんでしょう?」
「冬休みの宿題おしえて!」
弟妹ちゃんたちの宿題を見てみたり。いわゆる『こくご』の宿題は栗毛にもまだ飲み込めていない文章のニュアンスなどもあるから漢字の書き取りを眺めるくらいしかできなかったけれど、『さんすう』は別だ。あとは『英語』も。
㉝
「あっナ力ヤマさん、れんこんはふつうのれんこんですよ。辛子れんこんはだめですよ」
「チッ」
「不貞腐れてもだめです。あとは……栗の甘露煮、カタクチイワシの乾物、こんにゃく、赤カブ、ごぼうにたまご……。魚屋さんでかずのこと鰤と海老、ですね」
「ガレット・デ・ロワの材料は?」
「抜かりなし、です!」
ナ力ヤマさんのお家に帰ればおせち作りの傍ら、夜ご飯も作る。夜ご飯のメニューはにんじんのハンバーグシチューで、栗毛と妹が歓声をあげる。(ナ力ヤマさんも、ちょっとうれしそう☺)
お夕食をいただいて、もうすこしだけおせちの仕込み。お風呂をいただけばあっときうまに就寝時間。
㊴
月桂樹に麦の穂、太陽に向日葵。かつては宗教的な意味もあったモチーフだけれど、現代だとそれらも薄れつつあると栗毛は聞いたことがある。
「たとえば月桂樹のレイヤージュが持つ意味は『勝利』。麦の穂は『豊穣』。太陽は『生命』。ひまわりは『栄光』……願掛けのようなものではあるので、やりやすいものを選んでもよいのですが……」
「何言ってんだ。その中なら月桂樹一択だろ」
ナ力ヤマさんの言葉に栗毛が首を傾げると、ナ力ヤマさんは肩をすくめてみせた。
「アンタ、次走がなんなのか忘れたのか?」
「万葉ステークス……。葉っぱですか?」
「意味が勝利ならますますおあつらえ向きだろうが」
㊱
翌日。
「ちと出てくるわ」
「え……?!」
という感じでナ力ヤマさんがお出かけになってしまいました……理由も聞けず見送るだけになってしまった栗毛。ひとさまのおうちで?! ひとりになるなんて想定していない。
しかしやることはたくさんあって、ナ力ヤマさんのお母様に引き続きお料理を習ったり。
「キズナちゃん」
「はい、なんでしょう?」
「冬休みの宿題おしえて!」
弟妹ちゃんたちの宿題を見てみたり。いわゆる『こくご』の宿題は栗毛にもまだ飲み込めていない文章のニュアンスなどもあるから漢字の書き取りを眺めるくらいしかできなかったけれど、『さんすう』は別だ。あとは『英語』も。
㉝
「あっナ力ヤマさん、れんこんはふつうのれんこんですよ。辛子れんこんはだめですよ」
「チッ」
「不貞腐れてもだめです。あとは……栗の甘露煮、カタクチイワシの乾物、こんにゃく、赤カブ、ごぼうにたまご……。魚屋さんでかずのこと鰤と海老、ですね」
「ガレット・デ・ロワの材料は?」
「抜かりなし、です!」
ナ力ヤマさんのお家に帰ればおせち作りの傍ら、夜ご飯も作る。夜ご飯のメニューはにんじんのハンバーグシチューで、栗毛と妹が歓声をあげる。(ナ力ヤマさんも、ちょっとうれしそう☺)
お夕食をいただいて、もうすこしだけおせちの仕込み。お風呂をいただけばあっときうまに就寝時間。
㉚
「これは」
「はい」
「アンタが愛されてきた証なんだろうな」
たっぷりストロベリージャムがのったクレープ。
チョコレートがけのパリブレスト。
あふれんばかりのカスタードに蓋をしたシューアラクレーム。
甘酸っぱいタルトシトロンに、多重層のミルフィーユ。
たくさんのお菓子やケーキのかたちをしたフェーヴを、キャビネットの上にディスプレイしたのをスマートフォンで撮影した画像をながめながら、ナ力ヤマさんは言う。
「フェーヴっつうのは謂わば祝福の切っ掛けなワケだろ。その一切れを得る事が出来なかったとしても、その切っ掛けを与えられてるんだとしたら、ただの陶器人形じゃあるまいよ」
㊱
翌日。
「ちと出てくるわ」
「え……?!」
という感じでナ力ヤマさんがお出かけになってしまいました……理由も聞けず見送るだけになってしまった栗毛。ひとさまのおうちで?! ひとりになるなんて想定していない。
しかしやることはたくさんあって、ナ力ヤマさんのお母様に引き続きお料理を習ったり。
「キズナちゃん」
「はい、なんでしょう?」
「冬休みの宿題おしえて!」
弟妹ちゃんたちの宿題を見てみたり。いわゆる『こくご』の宿題は栗毛にもまだ飲み込めていない文章のニュアンスなどもあるから漢字の書き取りを眺めるくらいしかできなかったけれど、『さんすう』は別だ。あとは『英語』も。
㉝
「あっナ力ヤマさん、れんこんはふつうのれんこんですよ。辛子れんこんはだめですよ」
「チッ」
「不貞腐れてもだめです。あとは……栗の甘露煮、カタクチイワシの乾物、こんにゃく、赤カブ、ごぼうにたまご……。魚屋さんでかずのこと鰤と海老、ですね」
「ガレット・デ・ロワの材料は?」
「抜かりなし、です!」
ナ力ヤマさんのお家に帰ればおせち作りの傍ら、夜ご飯も作る。夜ご飯のメニューはにんじんのハンバーグシチューで、栗毛と妹が歓声をあげる。(ナ力ヤマさんも、ちょっとうれしそう☺)
お夕食をいただいて、もうすこしだけおせちの仕込み。お風呂をいただけばあっときうまに就寝時間。
㉚
「これは」
「はい」
「アンタが愛されてきた証なんだろうな」
たっぷりストロベリージャムがのったクレープ。
チョコレートがけのパリブレスト。
あふれんばかりのカスタードに蓋をしたシューアラクレーム。
甘酸っぱいタルトシトロンに、多重層のミルフィーユ。
たくさんのお菓子やケーキのかたちをしたフェーヴを、キャビネットの上にディスプレイしたのをスマートフォンで撮影した画像をながめながら、ナ力ヤマさんは言う。
「フェーヴっつうのは謂わば祝福の切っ掛けなワケだろ。その一切れを得る事が出来なかったとしても、その切っ掛けを与えられてるんだとしたら、ただの陶器人形じゃあるまいよ」
㉗
栗毛にはストックがある。賭け事や勝負が好きなナ力ヤマさんの興味を引けるようなストックを、日頃から収集している。
ナ力ヤマさんは甘いものがさほどお好きではない。ジンジャーエールとかの炭酸も。(それでもいつかは、無理して飲んでくれたけど……)
NGというわけではないけれど、ただのお菓子の話をしても、話には付き合ってくれるけれど、楽しませることができない!
なのに!
「フェーヴを入れたガレット・デ・ロワを全員で切り分けて、フェーヴが隠れている一切れに当たったひとが王様になるんです! 王様になったひとは、その場のひとたちから祝福されて、一年間幸福が続くと言われていて……☺」
㉝
「あっナ力ヤマさん、れんこんはふつうのれんこんですよ。辛子れんこんはだめですよ」
「チッ」
「不貞腐れてもだめです。あとは……栗の甘露煮、カタクチイワシの乾物、こんにゃく、赤カブ、ごぼうにたまご……。魚屋さんでかずのこと鰤と海老、ですね」
「ガレット・デ・ロワの材料は?」
「抜かりなし、です!」
ナ力ヤマさんのお家に帰ればおせち作りの傍ら、夜ご飯も作る。夜ご飯のメニューはにんじんのハンバーグシチューで、栗毛と妹が歓声をあげる。(ナ力ヤマさんも、ちょっとうれしそう☺)
お夕食をいただいて、もうすこしだけおせちの仕込み。お風呂をいただけばあっときうまに就寝時間。
㉚
「これは」
「はい」
「アンタが愛されてきた証なんだろうな」
たっぷりストロベリージャムがのったクレープ。
チョコレートがけのパリブレスト。
あふれんばかりのカスタードに蓋をしたシューアラクレーム。
甘酸っぱいタルトシトロンに、多重層のミルフィーユ。
たくさんのお菓子やケーキのかたちをしたフェーヴを、キャビネットの上にディスプレイしたのをスマートフォンで撮影した画像をながめながら、ナ力ヤマさんは言う。
「フェーヴっつうのは謂わば祝福の切っ掛けなワケだろ。その一切れを得る事が出来なかったとしても、その切っ掛けを与えられてるんだとしたら、ただの陶器人形じゃあるまいよ」
㉗
栗毛にはストックがある。賭け事や勝負が好きなナ力ヤマさんの興味を引けるようなストックを、日頃から収集している。
ナ力ヤマさんは甘いものがさほどお好きではない。ジンジャーエールとかの炭酸も。(それでもいつかは、無理して飲んでくれたけど……)
NGというわけではないけれど、ただのお菓子の話をしても、話には付き合ってくれるけれど、楽しませることができない!
なのに!
「フェーヴを入れたガレット・デ・ロワを全員で切り分けて、フェーヴが隠れている一切れに当たったひとが王様になるんです! 王様になったひとは、その場のひとたちから祝福されて、一年間幸福が続くと言われていて……☺」
㉔
「そういや黒豆は帰ってきた時に親父が煮てたな」
「お父様がですか?」
「料理するタイプだからな」
「そうなんですねっ……わたしのお父さんもお料理する方です! いつか作ったコンソメスープはおばあちゃんのレシピなんですが、お父さんのスープのレシピもあって……😊 ……あっ!」
「何だ?」
「いえ、聞かれてもないのにお喋りしすぎてしまったなって……おはずかしい😳💦」
「別に気にすることじゃねぇだろ。で? スープのレシピがなんだって?」
「えと、この季節だとあつあつのオニオンぐらたんスープのレシピをもらってます。あまーい玉ねぎとしょっぱいチーズがおいしいんですよ😊🧅」
㉚
「これは」
「はい」
「アンタが愛されてきた証なんだろうな」
たっぷりストロベリージャムがのったクレープ。
チョコレートがけのパリブレスト。
あふれんばかりのカスタードに蓋をしたシューアラクレーム。
甘酸っぱいタルトシトロンに、多重層のミルフィーユ。
たくさんのお菓子やケーキのかたちをしたフェーヴを、キャビネットの上にディスプレイしたのをスマートフォンで撮影した画像をながめながら、ナ力ヤマさんは言う。
「フェーヴっつうのは謂わば祝福の切っ掛けなワケだろ。その一切れを得る事が出来なかったとしても、その切っ掛けを与えられてるんだとしたら、ただの陶器人形じゃあるまいよ」
㉗
栗毛にはストックがある。賭け事や勝負が好きなナ力ヤマさんの興味を引けるようなストックを、日頃から収集している。
ナ力ヤマさんは甘いものがさほどお好きではない。ジンジャーエールとかの炭酸も。(それでもいつかは、無理して飲んでくれたけど……)
NGというわけではないけれど、ただのお菓子の話をしても、話には付き合ってくれるけれど、楽しませることができない!
なのに!
「フェーヴを入れたガレット・デ・ロワを全員で切り分けて、フェーヴが隠れている一切れに当たったひとが王様になるんです! 王様になったひとは、その場のひとたちから祝福されて、一年間幸福が続くと言われていて……☺」
㉔
「そういや黒豆は帰ってきた時に親父が煮てたな」
「お父様がですか?」
「料理するタイプだからな」
「そうなんですねっ……わたしのお父さんもお料理する方です! いつか作ったコンソメスープはおばあちゃんのレシピなんですが、お父さんのスープのレシピもあって……😊 ……あっ!」
「何だ?」
「いえ、聞かれてもないのにお喋りしすぎてしまったなって……おはずかしい😳💦」
「別に気にすることじゃねぇだろ。で? スープのレシピがなんだって?」
「えと、この季節だとあつあつのオニオンぐらたんスープのレシピをもらってます。あまーい玉ねぎとしょっぱいチーズがおいしいんですよ😊🧅」
⑳
年末年始お世話になるのだから、ただのお客さんではなく、積極的にお手伝いをしていきたい旨はナ力ヤマさんにも伝えていたし、両親からも伝えてもらっていた。「居酒屋のバイトかよ」と肩をすくめるヤマさんに首をかしげつつ。
「これ買い物リストね。お金はこれ。余ったら買い食いでもしておいで」
「へーへー」
「魚屋には買い食いしてから最後に寄ってね」
「わーってるって」
「なんのお買い物ですか?」
「おせちの買い物」
「フェス夕は隙を見て無難じゃないもの入れようとするから、見張っといてもらえると嬉しいわ!」
おせち!
寮でも年始に出ると聞いていた、おせち料理!!
㉗
栗毛にはストックがある。賭け事や勝負が好きなナ力ヤマさんの興味を引けるようなストックを、日頃から収集している。
ナ力ヤマさんは甘いものがさほどお好きではない。ジンジャーエールとかの炭酸も。(それでもいつかは、無理して飲んでくれたけど……)
NGというわけではないけれど、ただのお菓子の話をしても、話には付き合ってくれるけれど、楽しませることができない!
なのに!
「フェーヴを入れたガレット・デ・ロワを全員で切り分けて、フェーヴが隠れている一切れに当たったひとが王様になるんです! 王様になったひとは、その場のひとたちから祝福されて、一年間幸福が続くと言われていて……☺」
㉔
「そういや黒豆は帰ってきた時に親父が煮てたな」
「お父様がですか?」
「料理するタイプだからな」
「そうなんですねっ……わたしのお父さんもお料理する方です! いつか作ったコンソメスープはおばあちゃんのレシピなんですが、お父さんのスープのレシピもあって……😊 ……あっ!」
「何だ?」
「いえ、聞かれてもないのにお喋りしすぎてしまったなって……おはずかしい😳💦」
「別に気にすることじゃねぇだろ。で? スープのレシピがなんだって?」
「えと、この季節だとあつあつのオニオンぐらたんスープのレシピをもらってます。あまーい玉ねぎとしょっぱいチーズがおいしいんですよ😊🧅」
⑳
年末年始お世話になるのだから、ただのお客さんではなく、積極的にお手伝いをしていきたい旨はナ力ヤマさんにも伝えていたし、両親からも伝えてもらっていた。「居酒屋のバイトかよ」と肩をすくめるヤマさんに首をかしげつつ。
「これ買い物リストね。お金はこれ。余ったら買い食いでもしておいで」
「へーへー」
「魚屋には買い食いしてから最後に寄ってね」
「わーってるって」
「なんのお買い物ですか?」
「おせちの買い物」
「フェス夕は隙を見て無難じゃないもの入れようとするから、見張っといてもらえると嬉しいわ!」
おせち!
寮でも年始に出ると聞いていた、おせち料理!!
⑲
「こんにちは、キズナです。ナ力ヤマさん……ええと、お姉ちゃんの後輩です」
「キズナちゃん」
「はい☺ お姉ちゃんにはいつもお世話になっています😊」
妹さんにくらべると弟さんは人見知りなのかも。会釈を返したところで、手にしていたトレイに気づく。
「これ、お母さんが……」
「おー御苦労」
「キズナちゃんはトゥインクルシリーズのどのレースを走ってるの? たからづか? とーすぽはい? おーかしょう?」
妹さんのキラキラした瞳がまぶしい‼️
「まだまだ速くなってる途中、なのと、あまり短い距離に向いていないので、……次は万葉ステークスというレースに出ます😊」
㉔
「そういや黒豆は帰ってきた時に親父が煮てたな」
「お父様がですか?」
「料理するタイプだからな」
「そうなんですねっ……わたしのお父さんもお料理する方です! いつか作ったコンソメスープはおばあちゃんのレシピなんですが、お父さんのスープのレシピもあって……😊 ……あっ!」
「何だ?」
「いえ、聞かれてもないのにお喋りしすぎてしまったなって……おはずかしい😳💦」
「別に気にすることじゃねぇだろ。で? スープのレシピがなんだって?」
「えと、この季節だとあつあつのオニオンぐらたんスープのレシピをもらってます。あまーい玉ねぎとしょっぱいチーズがおいしいんですよ😊🧅」
⑳
年末年始お世話になるのだから、ただのお客さんではなく、積極的にお手伝いをしていきたい旨はナ力ヤマさんにも伝えていたし、両親からも伝えてもらっていた。「居酒屋のバイトかよ」と肩をすくめるヤマさんに首をかしげつつ。
「これ買い物リストね。お金はこれ。余ったら買い食いでもしておいで」
「へーへー」
「魚屋には買い食いしてから最後に寄ってね」
「わーってるって」
「なんのお買い物ですか?」
「おせちの買い物」
「フェス夕は隙を見て無難じゃないもの入れようとするから、見張っといてもらえると嬉しいわ!」
おせち!
寮でも年始に出ると聞いていた、おせち料理!!
⑲
「こんにちは、キズナです。ナ力ヤマさん……ええと、お姉ちゃんの後輩です」
「キズナちゃん」
「はい☺ お姉ちゃんにはいつもお世話になっています😊」
妹さんにくらべると弟さんは人見知りなのかも。会釈を返したところで、手にしていたトレイに気づく。
「これ、お母さんが……」
「おー御苦労」
「キズナちゃんはトゥインクルシリーズのどのレースを走ってるの? たからづか? とーすぽはい? おーかしょう?」
妹さんのキラキラした瞳がまぶしい‼️
「まだまだ速くなってる途中、なのと、あまり短い距離に向いていないので、……次は万葉ステークスというレースに出ます😊」
⑯
「突っ立ってないで座ってどーぞ」
「おことばにあまえて……」
ナ力ヤマさんのお部屋はとってもシンプル。寮生活をしているとなかなか実家に戻ることはないから、必要最低限にしてあるのかもしれない。さっき荷物を置いたスツールに、クローゼット。それから今栗毛が座ったグレーのソファ。本棚には漫画が並んでいるのかな。どんなものかはわからないけど雑誌とか、文庫本もあるみたい。あとはオーディオ。壁には帽子掛けがあって、キャップとかが並んでる。あとは寮の部屋にもあるような棚つきのデスク。それから……
「そんな人の部屋が珍しいか?」
「わ、ぶ、不躾でしたよね、ごめんなさい😵💫💦」
⑳
年末年始お世話になるのだから、ただのお客さんではなく、積極的にお手伝いをしていきたい旨はナ力ヤマさんにも伝えていたし、両親からも伝えてもらっていた。「居酒屋のバイトかよ」と肩をすくめるヤマさんに首をかしげつつ。
「これ買い物リストね。お金はこれ。余ったら買い食いでもしておいで」
「へーへー」
「魚屋には買い食いしてから最後に寄ってね」
「わーってるって」
「なんのお買い物ですか?」
「おせちの買い物」
「フェス夕は隙を見て無難じゃないもの入れようとするから、見張っといてもらえると嬉しいわ!」
おせち!
寮でも年始に出ると聞いていた、おせち料理!!
⑲
「こんにちは、キズナです。ナ力ヤマさん……ええと、お姉ちゃんの後輩です」
「キズナちゃん」
「はい☺ お姉ちゃんにはいつもお世話になっています😊」
妹さんにくらべると弟さんは人見知りなのかも。会釈を返したところで、手にしていたトレイに気づく。
「これ、お母さんが……」
「おー御苦労」
「キズナちゃんはトゥインクルシリーズのどのレースを走ってるの? たからづか? とーすぽはい? おーかしょう?」
妹さんのキラキラした瞳がまぶしい‼️
「まだまだ速くなってる途中、なのと、あまり短い距離に向いていないので、……次は万葉ステークスというレースに出ます😊」
⑯
「突っ立ってないで座ってどーぞ」
「おことばにあまえて……」
ナ力ヤマさんのお部屋はとってもシンプル。寮生活をしているとなかなか実家に戻ることはないから、必要最低限にしてあるのかもしれない。さっき荷物を置いたスツールに、クローゼット。それから今栗毛が座ったグレーのソファ。本棚には漫画が並んでいるのかな。どんなものかはわからないけど雑誌とか、文庫本もあるみたい。あとはオーディオ。壁には帽子掛けがあって、キャップとかが並んでる。あとは寮の部屋にもあるような棚つきのデスク。それから……
「そんな人の部屋が珍しいか?」
「わ、ぶ、不躾でしたよね、ごめんなさい😵💫💦」
⑬
「ご両親からもご連絡もらいましたよ。普通のおもてなししか出来ないけどゆっくりしていって頂戴ね!」
「恐縮です😖💦」
「んな鯱張らなくてもいいだろ……」
ナカヤマさんのお母さんは肝っ玉母さん! みたいなシャキシャキ元気そうなひとだった。背丈はナカヤマさんとそんなに変わらないのに、なんだか大きく見える。短距離走ってらしたのかな。「先に部屋行っておいで、オヤツ持っていったげるから!」ナカヤマさんもろとも背中を押される。リビングを出掛けに奥のソファに座っていたお父さんと目があったから、あわてて会釈した。……ナカヤマさん、お父さん似だ。お母さんにも似てるけど。親子だもんね。
⑲
「こんにちは、キズナです。ナ力ヤマさん……ええと、お姉ちゃんの後輩です」
「キズナちゃん」
「はい☺ お姉ちゃんにはいつもお世話になっています😊」
妹さんにくらべると弟さんは人見知りなのかも。会釈を返したところで、手にしていたトレイに気づく。
「これ、お母さんが……」
「おー御苦労」
「キズナちゃんはトゥインクルシリーズのどのレースを走ってるの? たからづか? とーすぽはい? おーかしょう?」
妹さんのキラキラした瞳がまぶしい‼️
「まだまだ速くなってる途中、なのと、あまり短い距離に向いていないので、……次は万葉ステークスというレースに出ます😊」
⑯
「突っ立ってないで座ってどーぞ」
「おことばにあまえて……」
ナ力ヤマさんのお部屋はとってもシンプル。寮生活をしているとなかなか実家に戻ることはないから、必要最低限にしてあるのかもしれない。さっき荷物を置いたスツールに、クローゼット。それから今栗毛が座ったグレーのソファ。本棚には漫画が並んでいるのかな。どんなものかはわからないけど雑誌とか、文庫本もあるみたい。あとはオーディオ。壁には帽子掛けがあって、キャップとかが並んでる。あとは寮の部屋にもあるような棚つきのデスク。それから……
「そんな人の部屋が珍しいか?」
「わ、ぶ、不躾でしたよね、ごめんなさい😵💫💦」
⑬
「ご両親からもご連絡もらいましたよ。普通のおもてなししか出来ないけどゆっくりしていって頂戴ね!」
「恐縮です😖💦」
「んな鯱張らなくてもいいだろ……」
ナカヤマさんのお母さんは肝っ玉母さん! みたいなシャキシャキ元気そうなひとだった。背丈はナカヤマさんとそんなに変わらないのに、なんだか大きく見える。短距離走ってらしたのかな。「先に部屋行っておいで、オヤツ持っていったげるから!」ナカヤマさんもろとも背中を押される。リビングを出掛けに奥のソファに座っていたお父さんと目があったから、あわてて会釈した。……ナカヤマさん、お父さん似だ。お母さんにも似てるけど。親子だもんね。
⑩
「いつものとさして変わらないだろ……」
二人部屋の寮生活だから、お洋服をたくさん持ち込めるわけじゃない。だから外出着はローテーションになりがちだ。オシャレが好きな子で学園から実家が近い子は衣替えごとにお洋服を実家に持ち帰って交換して帰るみたいだけど、ナカヤマさんはあまりそういうことはしていない、気がする。
アウターのジャケット、ニットセーター、カーゴパンツにショートブーツ。ちょっと甘いのが可愛くて「かわいいです☺」と思わずこぼしたら思いきり不可解な表情を浮かべられた。
「最近購入されたんですか?」
「年末のセールでな。寮に置いてるのも草臥れてきたし」
⑯
「突っ立ってないで座ってどーぞ」
「おことばにあまえて……」
ナ力ヤマさんのお部屋はとってもシンプル。寮生活をしているとなかなか実家に戻ることはないから、必要最低限にしてあるのかもしれない。さっき荷物を置いたスツールに、クローゼット。それから今栗毛が座ったグレーのソファ。本棚には漫画が並んでいるのかな。どんなものかはわからないけど雑誌とか、文庫本もあるみたい。あとはオーディオ。壁には帽子掛けがあって、キャップとかが並んでる。あとは寮の部屋にもあるような棚つきのデスク。それから……
「そんな人の部屋が珍しいか?」
「わ、ぶ、不躾でしたよね、ごめんなさい😵💫💦」
⑬
「ご両親からもご連絡もらいましたよ。普通のおもてなししか出来ないけどゆっくりしていって頂戴ね!」
「恐縮です😖💦」
「んな鯱張らなくてもいいだろ……」
ナカヤマさんのお母さんは肝っ玉母さん! みたいなシャキシャキ元気そうなひとだった。背丈はナカヤマさんとそんなに変わらないのに、なんだか大きく見える。短距離走ってらしたのかな。「先に部屋行っておいで、オヤツ持っていったげるから!」ナカヤマさんもろとも背中を押される。リビングを出掛けに奥のソファに座っていたお父さんと目があったから、あわてて会釈した。……ナカヤマさん、お父さん似だ。お母さんにも似てるけど。親子だもんね。
⑩
「いつものとさして変わらないだろ……」
二人部屋の寮生活だから、お洋服をたくさん持ち込めるわけじゃない。だから外出着はローテーションになりがちだ。オシャレが好きな子で学園から実家が近い子は衣替えごとにお洋服を実家に持ち帰って交換して帰るみたいだけど、ナカヤマさんはあまりそういうことはしていない、気がする。
アウターのジャケット、ニットセーター、カーゴパンツにショートブーツ。ちょっと甘いのが可愛くて「かわいいです☺」と思わずこぼしたら思いきり不可解な表情を浮かべられた。
「最近購入されたんですか?」
「年末のセールでな。寮に置いてるのも草臥れてきたし」
⑦
年の瀬だけあって電車の利用客も多い。それでも目的地までひとっとびの新幹線だとかではないから、座る余裕は若干ある。
函館に札幌、北海道。
福島、京都。京都はともかくとして栗毛のレースは遠征がつきものだった。そのたびにユニフォームとシューズ、替えの蹄鉄に手入れ用のハンマー、バックダンサー時のダンス衣装と、三着までに入れたときのダンス衣装、ヘアメイク道具、それから宿泊用のあれこれに宿題を準備すれば30㍑ほどのキャリーケースを引くことになる。キャリーケースを傍において、なかなか見慣れない車窓の景色を見つめる。となりにはだいたいトレーナーさんだとか、同じレース場に向かう子がいる。
⑬
「ご両親からもご連絡もらいましたよ。普通のおもてなししか出来ないけどゆっくりしていって頂戴ね!」
「恐縮です😖💦」
「んな鯱張らなくてもいいだろ……」
ナカヤマさんのお母さんは肝っ玉母さん! みたいなシャキシャキ元気そうなひとだった。背丈はナカヤマさんとそんなに変わらないのに、なんだか大きく見える。短距離走ってらしたのかな。「先に部屋行っておいで、オヤツ持っていったげるから!」ナカヤマさんもろとも背中を押される。リビングを出掛けに奥のソファに座っていたお父さんと目があったから、あわてて会釈した。……ナカヤマさん、お父さん似だ。お母さんにも似てるけど。親子だもんね。
⑩
「いつものとさして変わらないだろ……」
二人部屋の寮生活だから、お洋服をたくさん持ち込めるわけじゃない。だから外出着はローテーションになりがちだ。オシャレが好きな子で学園から実家が近い子は衣替えごとにお洋服を実家に持ち帰って交換して帰るみたいだけど、ナカヤマさんはあまりそういうことはしていない、気がする。
アウターのジャケット、ニットセーター、カーゴパンツにショートブーツ。ちょっと甘いのが可愛くて「かわいいです☺」と思わずこぼしたら思いきり不可解な表情を浮かべられた。
「最近購入されたんですか?」
「年末のセールでな。寮に置いてるのも草臥れてきたし」
⑦
年の瀬だけあって電車の利用客も多い。それでも目的地までひとっとびの新幹線だとかではないから、座る余裕は若干ある。
函館に札幌、北海道。
福島、京都。京都はともかくとして栗毛のレースは遠征がつきものだった。そのたびにユニフォームとシューズ、替えの蹄鉄に手入れ用のハンマー、バックダンサー時のダンス衣装と、三着までに入れたときのダンス衣装、ヘアメイク道具、それから宿泊用のあれこれに宿題を準備すれば30㍑ほどのキャリーケースを引くことになる。キャリーケースを傍において、なかなか見慣れない車窓の景色を見つめる。となりにはだいたいトレーナーさんだとか、同じレース場に向かう子がいる。
確かに寮でのお餅つきは魅力的だ。春のファン感謝祭で餅つきをしているのを見たことがあったけれど、近くで見たことはない。寮長が過去の餅つきの様子を写真におさめたアルバムを見せてくれて、とても楽しみだった。
お餅じたいも食べたことがある。そういえば去年フランスに帰ったとき、おばあさまがパリにお餅の店ができてたのよと言っていたのを思い出す。結局行かなかったけれど……
そうじゃない。
現実逃避しようにもそこから引き上げてくれる同室は昨日のうちに実家に帰ってしまった。
どうしよう! とLANEに乗せかけて踏みとどまる。
いつも頼ってばかりじゃ……だめだ……‼️
⑩
「いつものとさして変わらないだろ……」
二人部屋の寮生活だから、お洋服をたくさん持ち込めるわけじゃない。だから外出着はローテーションになりがちだ。オシャレが好きな子で学園から実家が近い子は衣替えごとにお洋服を実家に持ち帰って交換して帰るみたいだけど、ナカヤマさんはあまりそういうことはしていない、気がする。
アウターのジャケット、ニットセーター、カーゴパンツにショートブーツ。ちょっと甘いのが可愛くて「かわいいです☺」と思わずこぼしたら思いきり不可解な表情を浮かべられた。
「最近購入されたんですか?」
「年末のセールでな。寮に置いてるのも草臥れてきたし」
⑦
年の瀬だけあって電車の利用客も多い。それでも目的地までひとっとびの新幹線だとかではないから、座る余裕は若干ある。
函館に札幌、北海道。
福島、京都。京都はともかくとして栗毛のレースは遠征がつきものだった。そのたびにユニフォームとシューズ、替えの蹄鉄に手入れ用のハンマー、バックダンサー時のダンス衣装と、三着までに入れたときのダンス衣装、ヘアメイク道具、それから宿泊用のあれこれに宿題を準備すれば30㍑ほどのキャリーケースを引くことになる。キャリーケースを傍において、なかなか見慣れない車窓の景色を見つめる。となりにはだいたいトレーナーさんだとか、同じレース場に向かう子がいる。
確かに寮でのお餅つきは魅力的だ。春のファン感謝祭で餅つきをしているのを見たことがあったけれど、近くで見たことはない。寮長が過去の餅つきの様子を写真におさめたアルバムを見せてくれて、とても楽しみだった。
お餅じたいも食べたことがある。そういえば去年フランスに帰ったとき、おばあさまがパリにお餅の店ができてたのよと言っていたのを思い出す。結局行かなかったけれど……
そうじゃない。
現実逃避しようにもそこから引き上げてくれる同室は昨日のうちに実家に帰ってしまった。
どうしよう! とLANEに乗せかけて踏みとどまる。
いつも頼ってばかりじゃ……だめだ……‼️
「はい。年明けからレースの予定があるので……」
「あー、万葉Sか」
「はい☺ 去年は帰国中でしたから、日本で年末年始を過ごすのははじめてなんです‼️ 寮のほうで、おもちつきとか‼️ するみたいで‼️☺✨ ナ力ヤマさんはご実家に帰られるんですよね」
「まぁな。そうするつもりだが……。元旦からトレーニング予定でもあるのか?」
「いえ、大晦日から三が日はお休みにしようってトレーナーさんとお話してて……」
「ならウチに来いよ」
「……」
「こっからそう遠くはねぇし。……おい」
「は、はい‼️」
「私の話、聞いてたか?」
「ナ力ヤマさんのおうちに」
「聞いてんじゃねぇか」
⑦
年の瀬だけあって電車の利用客も多い。それでも目的地までひとっとびの新幹線だとかではないから、座る余裕は若干ある。
函館に札幌、北海道。
福島、京都。京都はともかくとして栗毛のレースは遠征がつきものだった。そのたびにユニフォームとシューズ、替えの蹄鉄に手入れ用のハンマー、バックダンサー時のダンス衣装と、三着までに入れたときのダンス衣装、ヘアメイク道具、それから宿泊用のあれこれに宿題を準備すれば30㍑ほどのキャリーケースを引くことになる。キャリーケースを傍において、なかなか見慣れない車窓の景色を見つめる。となりにはだいたいトレーナーさんだとか、同じレース場に向かう子がいる。
確かに寮でのお餅つきは魅力的だ。春のファン感謝祭で餅つきをしているのを見たことがあったけれど、近くで見たことはない。寮長が過去の餅つきの様子を写真におさめたアルバムを見せてくれて、とても楽しみだった。
お餅じたいも食べたことがある。そういえば去年フランスに帰ったとき、おばあさまがパリにお餅の店ができてたのよと言っていたのを思い出す。結局行かなかったけれど……
そうじゃない。
現実逃避しようにもそこから引き上げてくれる同室は昨日のうちに実家に帰ってしまった。
どうしよう! とLANEに乗せかけて踏みとどまる。
いつも頼ってばかりじゃ……だめだ……‼️
「はい。年明けからレースの予定があるので……」
「あー、万葉Sか」
「はい☺ 去年は帰国中でしたから、日本で年末年始を過ごすのははじめてなんです‼️ 寮のほうで、おもちつきとか‼️ するみたいで‼️☺✨ ナ力ヤマさんはご実家に帰られるんですよね」
「まぁな。そうするつもりだが……。元旦からトレーニング予定でもあるのか?」
「いえ、大晦日から三が日はお休みにしようってトレーナーさんとお話してて……」
「ならウチに来いよ」
「……」
「こっからそう遠くはねぇし。……おい」
「は、はい‼️」
「私の話、聞いてたか?」
「ナ力ヤマさんのおうちに」
「聞いてんじゃねぇか」
確かに寮でのお餅つきは魅力的だ。春のファン感謝祭で餅つきをしているのを見たことがあったけれど、近くで見たことはない。寮長が過去の餅つきの様子を写真におさめたアルバムを見せてくれて、とても楽しみだった。
お餅じたいも食べたことがある。そういえば去年フランスに帰ったとき、おばあさまがパリにお餅の店ができてたのよと言っていたのを思い出す。結局行かなかったけれど……
そうじゃない。
現実逃避しようにもそこから引き上げてくれる同室は昨日のうちに実家に帰ってしまった。
どうしよう! とLANEに乗せかけて踏みとどまる。
いつも頼ってばかりじゃ……だめだ……‼️
嫁のコンセプトは『ふつう』の女の子なので。
やっぱりときメモGSなんだなあ。くれを
嫁のコンセプトは『ふつう』の女の子なので。
やっぱりときメモGSなんだなあ。くれを
㉖
「……う、歌を。ナ力ヤマさんの歌をもっと聞きたくて。でも歌唱SHOWは人気コーナーだから、採用は難関じゃないですか」
「そうだな。繁盛してるのは有り難いことだが」
「一瞬でも──お願いしたらナ力ヤマさん、歌ってくれるのかなって思ってしまったんです。おたより、採用されなくても」
「番組内で?」
「……😖」
「……、あァ、独り占めでもしたかったのか?」
「そっそこまで強欲じゃないですっ!」
「そんくらい思っててもバチは当たんねぇだろ。で? 何が聴きたいんだ。言ってみろ」
「えっ」
「出来れば知ってる曲で頼む。私が四苦八苦してるのを笑う趣味、アンタにゃないだろ?」
㉓
「運が味方してくれたんです。運命も、環境も。わたしひとりで得たものじゃありません」
「なんにもかんにもおのが力で切り拓いてきた奴なんていない。それに、……アンタがこれまで勝ち取ってきたものを運だの運命だので絡げてくれるな。アンタがそれを許しても私は見過ごしてはやらねぇぞ」
「……、……えっ」
「アンタの言い分はわかった。私もいくら身内だからって贔屓はしたくねぇし、アンタも贔屓をされたくない。だが……」
「えっ」
「あ?」
「え、あ、いえ、その、……み、みうち?」
「……これまでその前提で話をしてたと思ったが、違ったか?」
「あああああの、あの、その……ごめんなさい」
だって言えるわけがない!
ラジオネームを考え直してほしいってご指摘をもらったリスナーだなんて!!! 言えるわけが
「あっ」
「何だよ」
「サインください! 油性ペンあります! このステッカーの上に……硬質ケースの上から……よ、よければ!」
「んじゃラジオネーム教えてくれ」
「😖 てっ転売対策には名前入が鉄板ですもんね……」
「アンタが転売するとは思わないがね」
「もちろんです! するわけがありません! 家宝にします!」
でも!!!!
ラジオネームを告げるのはやはりはばかられてしまう!!😵💫
「まぁ教えたくないならそれで。よく考えりゃ知っちまえば憚りが出るかもだし」
㉖
「……う、歌を。ナ力ヤマさんの歌をもっと聞きたくて。でも歌唱SHOWは人気コーナーだから、採用は難関じゃないですか」
「そうだな。繁盛してるのは有り難いことだが」
「一瞬でも──お願いしたらナ力ヤマさん、歌ってくれるのかなって思ってしまったんです。おたより、採用されなくても」
「番組内で?」
「……😖」
「……、あァ、独り占めでもしたかったのか?」
「そっそこまで強欲じゃないですっ!」
「そんくらい思っててもバチは当たんねぇだろ。で? 何が聴きたいんだ。言ってみろ」
「えっ」
「出来れば知ってる曲で頼む。私が四苦八苦してるのを笑う趣味、アンタにゃないだろ?」
㉓
「運が味方してくれたんです。運命も、環境も。わたしひとりで得たものじゃありません」
「なんにもかんにもおのが力で切り拓いてきた奴なんていない。それに、……アンタがこれまで勝ち取ってきたものを運だの運命だので絡げてくれるな。アンタがそれを許しても私は見過ごしてはやらねぇぞ」
「……、……えっ」
「アンタの言い分はわかった。私もいくら身内だからって贔屓はしたくねぇし、アンタも贔屓をされたくない。だが……」
「えっ」
「あ?」
「え、あ、いえ、その、……み、みうち?」
「……これまでその前提で話をしてたと思ったが、違ったか?」
「あああああの、あの、その……ごめんなさい」
だって言えるわけがない!
ラジオネームを考え直してほしいってご指摘をもらったリスナーだなんて!!! 言えるわけが
「あっ」
「何だよ」
「サインください! 油性ペンあります! このステッカーの上に……硬質ケースの上から……よ、よければ!」
「んじゃラジオネーム教えてくれ」
「😖 てっ転売対策には名前入が鉄板ですもんね……」
「アンタが転売するとは思わないがね」
「もちろんです! するわけがありません! 家宝にします!」
でも!!!!
ラジオネームを告げるのはやはりはばかられてしまう!!😵💫
「まぁ教えたくないならそれで。よく考えりゃ知っちまえば憚りが出るかもだし」
天使の栗毛と悪魔の栗毛がせめぎあう栗毛(?)
👼あなたがはつナイの非リスナーならともかく、リスナーである自覚があるのなら、ほかのリスナーから見て不公平な真似はしてはいけないと思うよ。
😈リスナーでも非リスナーでも関係ないよ。推しは推せるときに推せっていうように、機会は最大限活かすべき。みずから機会損失を選んじゃだめだよ。わがままになってもいいんじゃない?
👼たしかにナ力ヤマさんなら歌ってくれるかもしれないよ、でも、ほんとうにそれでいいの? ほかのリスナーに対して後ろめたくなってしまわない?
😈だから歌唱SHOWコーナーにはおたよりしなければいいんだよ。簡単じやない。
㉓
「運が味方してくれたんです。運命も、環境も。わたしひとりで得たものじゃありません」
「なんにもかんにもおのが力で切り拓いてきた奴なんていない。それに、……アンタがこれまで勝ち取ってきたものを運だの運命だので絡げてくれるな。アンタがそれを許しても私は見過ごしてはやらねぇぞ」
「……、……えっ」
「アンタの言い分はわかった。私もいくら身内だからって贔屓はしたくねぇし、アンタも贔屓をされたくない。だが……」
「えっ」
「あ?」
「え、あ、いえ、その、……み、みうち?」
「……これまでその前提で話をしてたと思ったが、違ったか?」
「あああああの、あの、その……ごめんなさい」