#市民参加型予算
提案・選定型と提案・共創型 県民との対話を通じた予算づくり-1
今回紹介する「県民参加型予算」はその具体的な取り組みとして導入された制度だ。キーワードは「対話」と「共創」だ。
#進化する自治
#市民参加型予算
#市民と市政
#vision50
行政の予算編成への市民参加で「公共」はどう変わる?-5
提案・選定型と提案・共創型 県民との対話を通じた予算づくり-1 県民との対話を通じて県予算を共に創り上げる ucoでは、昨年2024年に市民が行政の施策に関与するアプローチを検討するuco講座「進化する自治を構想する」の1つとして、「市民参加型予算から見る市民自治」を実施した。その際に、国内でこれまで紹介した海外の事例と同じようなスタイルで実施している自治体を調査した。長野県では、2022年(令和4)に県民参加型予算を試行的に導入している。※取材は2023年から2024年にかけて行ったもので、「長野県 県民参加型予算」令和5年度の事業内容である長野県企画振興部 広報・共創推進課 対話・共創推進係宮本武彰さんにインタビューに応えていただいた。 長野県・阿部守一知事(現在4期目)が2022年に4期目を目指す際、重点的に取り組むべきと考える政策を「公約」として取りまとめた書面の中に、「県民参加型予算を試行するなど、県民の皆様の声を県政に直接的に反映する方法を検討してまいります。」の一文が記されている。この公約の中で、阿部守一知事は次の3点を「知事として取り組む重点政策」として挙げている。1 持続可能で安定した「確かな暮らし」を守り抜く2 経済が発展し、人間らしい生活が営まれる「ゆたかな社会」を創造する3 県行政を県民に信頼され共創する組織として進化させる 3の「県行政を県民に信頼され共創する組織として進化させる 」の項目の一つとして「県民の皆様との対話と共創の拡大」という文言がある。今回紹介する「県民参加型予算」はその具体的な取り組みとして導入された制度だ。長野県の制度の特徴として、「提案・選定型」と「提案・共創型」2つのスキームが考案されている。キーワードは「対話」と「共創」だ。導入にあたってのポイントは次のことだという。知事公約を踏まえ、「対話と共創」による県政の推進にあたっての具体的な手法の一つとして、県民等の新たな発想や問題意識を取り入れ、県予算を共に創り上げるため制度を導入。対話と共創の手法を多角的に検討するため、選定型と共創型の2つのスキームを試行的に実施。 提案・選定型 県民参加型予算 提案・選定型は、実施する地域振興局において、地域の住民の方にとって関心の高いテーマや、具体的な事業を提案しやすいテーマとなるよう意識しながら、地域の強みや特性も踏まえて設定し、テーマに沿った提案をしてもらう形をとっている。 ガイドブックには、「行政がこんなことに取り組んでくれたらいいな」という思いを、事業としてご提案ください。長野県のより良い未来づくりに皆さまのアイデアを活かします!」とあるように、できるだけ敷居を低く、地域の実情をよく知っている地元の人から、広く提案ができるようなしくみづくりをしている。長野県下には、6つの地域振興局がある。 佐久地域振興局 上田地域振興局 上伊那地域振興局 木曽地域振興局 北アルプス地域振興局 北信地域振興局 それぞれの振興局がテーマを設定しており、令和5年度は以下のテーマで募集している。 募集事業の要件は3点 募集テーマに該当するもの 1事業につき概ね1,000万円以下となるもの 原則として単年度で完了するもの 事例として、令和5年度に予算化・実施した4事業が紹介されている。令和4年募集の実績としては提案数は23件、その中から4つの事業が実施に至っている。 諏訪地域振興局 募集テーマ “諏訪の湖には魚多し”復活プロジェクト(昭和40年代の湖内環境の復活)について 事業名 取り戻そう!豊かだった諏訪の湖 ~諏訪湖魚介類生息環境修復事業~ 事業概要 諏訪湖沿岸域で水生植物帯を試行的に造成 予算額 9,982千円 南信州地域振興局 募集テーマ リニア中央新幹線長野県駅(仮称)が設置される南信州の認知度向上について 事業名① 南信州のふしぎ発見! 日本一コンテンツ普及・開発プロジェクト 事業概要① 地域の目線によるPR要素の掘り起こしを実施 予算額① 6,486千円 事業名② 南信州地域の環境や風土を活かしたウリニア新時代を見据えた、「南信州メディカルバレー(仮称)構想元年」 事業概要② 南信州地域の環境や風土を活かしたウェルビーイングをテーマとして、研究者や民間企業等から募集した提案の調査研究、情報発信 予算額② 4,501千円 長野地域振興局 募集テーマ 「果樹産地ながの」を支える「働き手」の確保について 事業名 果樹産地と果樹の支え手“win-win”共創モデル事業 事業概要 果樹作業への参画を促進する動画作成等 予算額 2,410千円 各地域の県民が、提案された事業について、県民の意見が反映できるよう、事業選定には県民も参加できるような手法をとっている。応募できる提案者資格も 提案日時点で県内に住所を有する方 提案日時点で県内に本社、支店等を有する団体、NPO、企業等 いずれかに該当すれば、原則だれでも提案ができるようになっている。また、幅広い層からも提案いただけるよう、提案者に年齢要件は設けず、除外者も県職員など限定的に設定したという。提案から、事業実施までのステップは下図の通り。審査にあたっては、県民の方にも参加してもらえるよう一般募集をしている。審査員の応募条件も以下の2点いずれかとしている。 審査日時点で提案事業を募集する地域振興局の管轄区域内に住所を有する 者 審査日時点で提案事業を募集する地域振興局の管轄区域内へ通勤・通学し ている者 今回は、長野県「県民参加型予算」(提案・選定型)についてそのしくみと狙いについて確認した。次回は、(提案・共創型)の仕組みや工夫について見ていこうと思う。 前の記事を読む 続く
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September 26, 2025 at 3:00 AM
日本で「市民参加型予算」の実例が見られるようになるのは、2000年に地方分権一括法が施行されて以降。参加型予算の事例から「市民自治」を考える。
#進化する自治
#市民参加型予算
#市民と市政
#vision50
行政の予算編成への市民参加で「公共」はどう変わる?-2
「住民の関与」が「市民自治」につながるか? 日本で導入された事例から考える 地方分権改革を起点に始まった地方行政の変化とともに 日本で「市民参加型予算」の実例が見られるようになるのは、2000年に地方分権一括法が施行されて以降。従来自治体の予算は法令や国の補助金で制約された部分が多かったが、一括法により予算編成の自由裁量権が広がったことがひとつ。もう一つには、1998年に特定非営利活動促進法(NPO法)が施行され、市民活動の幅の広がりなどが要因とみられている。「自治体予算編成過程への市民参加」(末尾出典参照)によれば、2003年の時点で、日本における自治体予算編成過程への市民参加として3つのタイプを挙げられている。 既存の制度の説明責任の向上を目指して予算編成過程を公開するあるいはわかりやすい予算書を作成する 市役所とは別に市民が自治体予算全体の見直しと予算案作成を行う 市予算のうちの一部を自治体内の地区に交付し市民が地区予算を編成する この時点では、海外で多く見られるような「事業アイデアを住民から募る」は、3の予算の一部を自治体内の地区に交付・配分する形式が該当する。「自治体予算編成過程への市民参加」でも事例として挙げられている三重県名張市の「ゆめづくり地区予算制度」が代表的で、2003年(平成15)にスタートし現在も行われている。時代をさかのぼり2010年ころには、その取り組み方も多様化し、中でも(4)の「1%支援制度」が注目されるようになっている。「まちづくりに関する日本の参加型予算の現状と可能性」(末尾出典参照)では、参加型予算の取り組みを5つのタイプに分類。各タイプは、下記に示すような手法で行われているが、いずれも海外事例のような「市民の直接的参加」という手法とまでは言えない。 予算編成過程の公開  編成過程での情報公開と市民意見の収集・反映   参考:全国市民オンブズマン連絡会議「予算編成過程・住民参加状況調査」 (予算編成過程=予算要求・予算査定段階での情報公開、住民参加=意見を述べる手段の有無や意見の公表、回答の公表 など) 市民委員会による予算案の作成(現在は行われていない)     例:志木市「市民委員会」設置と「市民予算編成」 (市民委員会は公募。情報は行政各部署が提供、それに基づき予算のムダを分析して積算の増減の可能性を検討 (優先順位ではなく変更可能性を提示)、市民予算説明会で行政の予算案とともに公表) 予算の一部を自治体地区に交付 例:名張市ゆめづくり地域予算制度 市民活動団体への支援 例:和泉市あなたが選ぶ市民活動支援事業(R2まで)個人住民税1%を市民投票により補助 市民税1%相当額を予算枠とし、その配分を市民活動団体への市民の投票で決める 市民提案事業  予算前にNPOから事業提案を受ける 例:千葉県「パートナーシップ市場」(現在は廃止、詳細不明) 成功の要因(兼村2024「再び住民参加予算の登場と今後の展望」) ※これらの取り組みの一部(③類似の取り組み)や、日本版BID(業務地区、商業地区の事業者についての合意をとったうえで、エリアマネジメントのための費用を徴収して使うしくみ)、ふるさと納税がPB World Atlasでは参加型予算類似の仕組みとして扱われたこともあったが、2020年版では外されている(「ポルトガルにおける参加型予算の制度と実践」藤原 遥 2023年) 日本での市民参加型予算は、政府以外の主体が課題解決するためのスキームを含んでいるが、国際的にみれば必ずしもそうではない海外にも事業提案型の市民参加型予算が存在するが、事業提案段階、説明会や投票段階には、行政やNPOなどの関与がある。提案~決定~実行の各段階において市民が参加できるチャネルがあり、参加する機会をつくる多様なしくみが用意されている。 1%支援制度 「1%支援制度」は、一定の条件を満たした市民が、自分の応援したい市民活動団体を選択して届け出ることができ、その選択結果に基づき団体に支援金が交付される制度である。ハンガリーで始まった、自身の所得税の1%を指定した団体に寄付できる制度が発端のため、俗にこう呼ばれている。市民が直接、意思表示をする点がこの制度のポイントである。現在、千葉県市川市、北海道恵庭市、岩手県奥州市、愛知県一宮市、大分県大分市、千葉県八千代市、大阪府和泉市で制度が導入されている。3つの特徴1.市民が直接選択する 地域課題の解決方法を市民活動団体が市民に提案し、その賛同票を得られれば、その分補助金が得られる。2.多様な市民活動団体に公的資金が流れるルートができる 従来の補助金という枠組みでは公的資金が流れることがなかった団体に補助金が流れている3.地域全体を巻き込んだ取り組み これまで市民活動とあまり接点のなかった市民もが、参加するチャネルを開く仕組みとなっている 地方分権から都市内分権へを謳う名張市「ゆめづくり地域予算制度」 先に挙げた、日本における参加型予算の事例として名張市の「ゆめづくり地域予算制度」は、使途自由の一括交付金として始まった制度だった。当初(2003年)、14地域で結成された「地域づくり委員会」に対し、使途自由な一括交付金(5,000 万円:現在の基本額に相当)を交付。応募型の市民公益活動実践事業として始まった。しかし20年の間に改善を重ね、2012年に「ゆめづくり協働事業提案制度」という、地域と市が協議しながら新たなサービスや価値を生み出すための協働事業に刷新され、現在に至っている。住民の合意により設立された住民主体のまちづくり組織である「地域づくり組織」→各地区ごとの「まちづくり協議会」が事業の提案者であり担い手でもある。地域に対する予算割り当てを基本としてはいるが、現在の同制度は、「市民の直接参加」、「市民提案」、「熟議」、「市民×行政の協働」というかたちを備えていると言えよう。各地区の「まちづくり協議会」の運営に当たっては行政のサポートが行われているので、行政主導とも言えなくはない。例えば事業分野では、次のように分類され、それぞれのテーマに合った事業提案が行われている。 名張市のゆめづくり地域予算制度の交付金内容 自主防犯、自主防災 人権、健康、福祉 環境、景観の保全 高齢者の生きがいづくり 子どもの健全育成 地域文化の継承、創出 コミュニティビジネス 住民交流、地域振興 その他 各地域ごとに振り分けられれば個々の予算額はそれほど大きいわけではないが、地域の課題改善、市民の主体的なまちづくりという点では、大いに機能していると思われる。 【事業例】70歳以上単身高齢者交流会小学校新入生に「命の笛」贈呈ラジオ体操支援防災関係資機材の整備給食ボランティア支援稲作体験教室防災井戸を活用した蔵清水カフェウォークラリー大会伝統文化教室(獅子神楽)開催コミュニティバス運行放課後児童クラブ支援道標(案内板)設置事業くわしくは、webサイト名張市ゆめづくり地域予算制度 これまで見てきたように「市民参加型予算制度」には様ざまな手法が行われてきた。しかし、海外で始まり発展を遂げてきている、市民が地域や市民生活をテーマに行政に対し直接「事業提案」を行うしくみについては、2017年に東京都が行った事例が挙げられる。ucoでは、市民がより行政に関与する手法として、「市民参加型予算制度」について理解を深めるため、そうした事例について一昨年に調査。東京都、三重県、長野県、東京都杉並区の4自治体へのインタビューを行った。 次回はそれぞれの自治体の制度のしくみや実施内容についてみていこうと思う。 前の記事を読む 続く 出典●「自治体予算編成過程への市民参加」松田真由美(公立鳥取環境大学客員研究員)(調査研究報告 地域生活空間 TORCレポート №26 2004年) 出典●まちづくりに関する日本の参加型予算の現状と可能性 ~NPOをはじめとする市民社会組織による役割を中心に~松原 明、鈴木 歩 『まちと暮らし研究』 No.13 (一般財団法人 地域生活研究所 2011年6月20日発行)「新しい公共」の社会設計にむけて 出典●「ポルトガルにおける参加型予算の制度と実践」(藤原 遥 福島大学経済経営学類准教授)
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September 3, 2025 at 3:01 AM
東京都の市民参加型予算。制度を導入して行政側はどのように受け止めているか。また実際に参加、提案した市民はこの制度をどのようにとらえているだろうか。
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#市民参加型予算
#市民と市政
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東京都の市民参加型予算に見る「都民×行政」の効果
東京都の市民参加型予算。制度を導入して行政側はどのように受け止めているか。また実際に参加、提案した市民はこの制度をどのようにとらえているだろうか。 #進化する自治 #市民参加型予算 #市民と市政 #vision50
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September 5, 2025 at 3:01 AM
"台湾ではすでに、クアドラティック・ボーティング(二次の投票)[★07]とクアドラティック・ファンディング(二次の資金調達)を実施しており、最近になって「複数投票制」と「複数資金調達制」と名称を変更しました。ただし、これらはユニバーサル・ベーシック・インカム(UBI)とは似て非なる概念です。説明しますと、例えば総統主催のハッカソンを開催する際には、市民参加型予算の仕組みを取り入れ、気候変動対策やデジタルグリーン化などに関する優れたアイデアを公募します"
オードリー・タンとの対話#1 創造力こそが私たちの資本 | DISTANCE.media
「私にとって民主主義とは、ある種のテクノロジー、それもソーシャル・テクノロジーです」―オードリー・タンに聞く、デジタル直接民主主義とユニバーサル・ベーシックインカムの可能性。
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January 26, 2025 at 1:56 AM
選挙をハックするってな輩が増えて権力を政治家に集中させることへの危うさがより増すなら市民参加型予算とか分散化についても真面目に考えていかんといかん感じがしますね。
November 16, 2024 at 4:59 AM
東京都の市民参加型予算。制度を導入して行政側はどのように受け止めているか。また実際に参加、提案した市民はこの制度をどのようにとらえているだろうか。
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行政の予算編成への市民参加で「公共」はどう変わる?-3
東京都の市民参加型予算。制度を導入して行政側はどのように受け止めているか。また実際に参加、提案した市民はこの制度をどのようにとらえているだろうか。 #進化する自治 #市民参加型予算 #市民と市政 #vision50
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November 6, 2025 at 1:15 AM
参加型予算は、市民(住民)が直接政策決定に参加することによって、自治体の事業や予算の決定プロセスがオープン(透明化)になることで、行政への不信感が払しょくされたり、信頼性を築くこともできる。
#進化する自治
#市民参加型予算
#市民と市政
#vision50
行政の予算編成への市民参加で「公共」はどう変わる?-1
参加型予算は、市民(住民)が直接政策決定に参加することによって、自治体の事業や予算の決定プロセスがオープン(透明化)になることで、行政への不信感が払しょくされたり、信頼性を築くこともできる。
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October 22, 2025 at 11:52 PM
参加型予算は、市民(住民)が直接政策決定に参加することによって、自治体の事業や予算の決定プロセスがオープン(透明化)になることで、行政への不信感が払しょくされたり、信頼性を築くこともできる。
#進化する自治
#市民参加型予算
#市民と市政
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行政の予算編成への市民参加で「公共」はどう変わる?-1
参加型予算は、市民(住民)が直接政策決定に参加することによって、自治体の事業や予算の決定プロセスがオープン(透明化)になることで、行政への不信感が払しょくされたり、信頼性を築くこともできる。
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August 27, 2025 at 3:01 AM
日本で「市民参加型予算」の実例が見られるようになるのは、2000年に地方分権一括法が施行されて以降。参加型予算の事例から「市民自治」を考える。
#進化する自治
#市民参加型予算
#市民と市政
#vision50
行政の予算編成への市民参加で「公共」はどう変わる?-2
「住民の関与」が「市民自治」につながるか? 日本で導入された事例から考える 地方分権改革を起点に始まった地方行政の変化とともに 日本で「市民参加型予算」の実例が見られるようになるのは、2000年に地方分権一括法が施行されて以降。従来自治体の予算は法令や国の補助金で制約された部分が多かったが、一括法により予算編成の自由裁量権が広がったことがひとつ。もう一つには、1998年に特定非営利活動促進法(NPO法)が施行され、市民活動の幅の広がりなどが要因とみられている。「自治体予算編成過程への市民参加」(末尾出典参照)によれば、2003年の時点で、日本における自治体予算編成過程への市民参加として3つのタイプを挙げられている。 既存の制度の説明責任の向上を目指して予算編成過程を公開するあるいはわかりやすい予算書を作成する 市役所とは別に市民が自治体予算全体の見直しと予算案作成を行う 市予算のうちの一部を自治体内の地区に交付し市民が地区予算を編成する この時点では、海外で多く見られるような「事業アイデアを住民から募る」は、3の予算の一部を自治体内の地区に交付・配分する形式が該当する。「自治体予算編成過程への市民参加」でも事例として挙げられている三重県名張市の「ゆめづくり地区予算制度」が代表的で、2003年(平成15)にスタートし現在も行われている。時代をさかのぼり2010年ころには、その取り組み方も多様化し、中でも(4)の「1%支援制度」が注目されるようになっている。「まちづくりに関する日本の参加型予算の現状と可能性」(末尾出典参照)では、参加型予算の取り組みを5つのタイプに分類。各タイプは、下記に示すような手法で行われているが、いずれも海外事例のような「市民の直接的参加」という手法とまでは言えない。 予算編成過程の公開  編成過程での情報公開と市民意見の収集・反映   参考:全国市民オンブズマン連絡会議「予算編成過程・住民参加状況調査」 (予算編成過程=予算要求・予算査定段階での情報公開、住民参加=意見を述べる手段の有無や意見の公表、回答の公表 など) 市民委員会による予算案の作成(現在は行われていない)     例:志木市「市民委員会」設置と「市民予算編成」 (市民委員会は公募。情報は行政各部署が提供、それに基づき予算のムダを分析して積算の増減の可能性を検討 (優先順位ではなく変更可能性を提示)、市民予算説明会で行政の予算案とともに公表) 予算の一部を自治体地区に交付 例:名張市ゆめづくり地域予算制度 市民活動団体への支援 例:和泉市あなたが選ぶ市民活動支援事業(R2まで)個人住民税1%を市民投票により補助 市民税1%相当額を予算枠とし、その配分を市民活動団体への市民の投票で決める 市民提案事業  予算前にNPOから事業提案を受ける 例:千葉県「パートナーシップ市場」(現在は廃止、詳細不明) 成功の要因(兼村2024「再び住民参加予算の登場と今後の展望」) ※これらの取り組みの一部(③類似の取り組み)や、日本版BID(業務地区、商業地区の事業者についての合意をとったうえで、エリアマネジメントのための費用を徴収して使うしくみ)、ふるさと納税がPB World Atlasでは参加型予算類似の仕組みとして扱われたこともあったが、2020年版では外されている(「ポルトガルにおける参加型予算の制度と実践」藤原 遥 2023年) 日本での市民参加型予算は、政府以外の主体が課題解決するためのスキームを含んでいるが、国際的にみれば必ずしもそうではない海外にも事業提案型の市民参加型予算が存在するが、事業提案段階、説明会や投票段階には、行政やNPOなどの関与がある。提案~決定~実行の各段階において市民が参加できるチャネルがあり、参加する機会をつくる多様なしくみが用意されている。 1%支援制度 「1%支援制度」は、一定の条件を満たした市民が、自分の応援したい市民活動団体を選択して届け出ることができ、その選択結果に基づき団体に支援金が交付される制度である。ハンガリーで始まった、自身の所得税の1%を指定した団体に寄付できる制度が発端のため、俗にこう呼ばれている。市民が直接、意思表示をする点がこの制度のポイントである。現在、千葉県市川市、北海道恵庭市、岩手県奥州市、愛知県一宮市、大分県大分市、千葉県八千代市、大阪府和泉市で制度が導入されている。3つの特徴1.市民が直接選択する 地域課題の解決方法を市民活動団体が市民に提案し、その賛同票を得られれば、その分補助金が得られる。2.多様な市民活動団体に公的資金が流れるルートができる 従来の補助金という枠組みでは公的資金が流れることがなかった団体に補助金が流れている3.地域全体を巻き込んだ取り組み これまで市民活動とあまり接点のなかった市民もが、参加するチャネルを開く仕組みとなっている 地方分権から都市内分権へを謳う名張市「ゆめづくり地域予算制度」 先に挙げた、日本における参加型予算の事例として名張市の「ゆめづくり地域予算制度」は、使途自由の一括交付金として始まった制度だった。当初(2003年)、14地域で結成された「地域づくり委員会」に対し、使途自由な一括交付金(5,000 万円:現在の基本額に相当)を交付。応募型の市民公益活動実践事業として始まった。しかし20年の間に改善を重ね、2012年に「ゆめづくり協働事業提案制度」という、地域と市が協議しながら新たなサービスや価値を生み出すための協働事業に刷新され、現在に至っている。住民の合意により設立された住民主体のまちづくり組織である「地域づくり組織」→各地区ごとの「まちづくり協議会」が事業の提案者であり担い手でもある。地域に対する予算割り当てを基本としてはいるが、現在の同制度は、「市民の直接参加」、「市民提案」、「熟議」、「市民×行政の協働」というかたちを備えていると言えよう。各地区の「まちづくり協議会」の運営に当たっては行政のサポートが行われているので、行政主導とも言えなくはない。例えば事業分野では、次のように分類され、それぞれのテーマに合った事業提案が行われている。 名張市のゆめづくり地域予算制度の交付金内容 自主防犯、自主防災 人権、健康、福祉 環境、景観の保全 高齢者の生きがいづくり 子どもの健全育成 地域文化の継承、創出 コミュニティビジネス 住民交流、地域振興 その他 各地域ごとに振り分けられれば個々の予算額はそれほど大きいわけではないが、地域の課題改善、市民の主体的なまちづくりという点では、大いに機能していると思われる。 【事業例】70歳以上単身高齢者交流会小学校新入生に「命の笛」贈呈ラジオ体操支援防災関係資機材の整備給食ボランティア支援稲作体験教室防災井戸を活用した蔵清水カフェウォークラリー大会伝統文化教室(獅子神楽)開催コミュニティバス運行放課後児童クラブ支援道標(案内板)設置事業くわしくは、webサイト名張市ゆめづくり地域予算制度 これまで見てきたように「市民参加型予算制度」には様ざまな手法が行われてきた。しかし、海外で始まり発展を遂げてきている、市民が地域や市民生活をテーマに行政に対し直接「事業提案」を行うしくみについては、2017年に東京都が行った事例が挙げられる。ucoでは、市民がより行政に関与する手法として、「市民参加型予算制度」について理解を深めるため、そうした事例について一昨年に調査。東京都、三重県、長野県、東京都杉並区の4自治体へのインタビューを行った。 次回はそれぞれの自治体の制度のしくみや実施内容についてみていこうと思う。 前の記事を読む 続きを読む 出典●「自治体予算編成過程への市民参加」松田真由美(公立鳥取環境大学客員研究員)(調査研究報告 地域生活空間 TORCレポート №26 2004年) 出典●まちづくりに関する日本の参加型予算の現状と可能性 ~NPOをはじめとする市民社会組織による役割を中心に~松原 明、鈴木 歩 『まちと暮らし研究』 No.13 (一般財団法人 地域生活研究所 2011年6月20日発行)「新しい公共」の社会設計にむけて 出典●「ポルトガルにおける参加型予算の制度と実践」(藤原 遥 福島大学経済経営学類准教授) ucoの活動をサポートしてください
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November 4, 2025 at 12:00 AM
長野県が提示するテーマに対して、県民との対話を通じて県予算を共に創り上げる。県内の課題をテーマに官民の力を糾合する。官民協働のありかたを進化させる対話と共創の手法
#進化する自治
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#vision50
行政の予算編成への市民参加で「公共」はどう変わる?-6
提案・選定型と提案・共創型 県民との対話を通じた予算づくり-2 官民協働のありかたを進化させる対話と共創の手法 ucoでは、昨年2024年に市民が行政の施策に関与するアプローチを検討するuco講座「進化する自治を構想する」の1つとして、「市民参加型予算から見る市民自治」を実施した。その際に、国内でこれまで紹介した海外の事例と同じようなスタイルで実施している自治体を調査した。長野県では、2022年(令和4)に県民参加型予算を試行的に導入している。※取材は2023年から2024年にかけて行ったもので、「長野県 県民参加型予算」令和5年度の事業内容である長野県企画振興部 広報・共創推進課 対話・共創推進係宮本武彰さんにインタビューに応えていただいた。 前半では、提案・選定型についてそのしくみと内容についてみてきた。 再度掲載となるが、キーワードとポイントをおさらいしておこう。 キーワードは「対話」と「共創」 導入にあたってのポイント 知事公約を踏まえ、「対話と共創」による県政の推進にあたっての具体的な手法の一つとして、県民等の新たな発想や問題意識を取り入れ、県予算を共に創り上げるため制度を導入。 対話と共創の手法を多角的に検討するため、選定型と共創型の2つのスキームを試行的に実施。 オリジナリティが見られる制度設計 先の提案・選定型県民参加型予算は、三重県や東京都の先行事例を参考に庁内で検討して制度設計が行われた。一方、提案・共創型県民参加型予算は、提案者との対話過程を重視した、県民と行政が共創を目指すスキーム。長野県独自の制度として、一から組み立てられている。事業を進めるため、県民等との対話や協働・共創の推進を所管する広報・共創推進課が担当。(令和5年4月、組織改正により「県民協働課」と「広報県民課」を統合し設置している)県民の提案事業に行政が伴走しながら事業を組み立て、予算化、議会提案、知事決済に至る手法となっている。対話による事業構築が前提となっていることから、応募にあたっては完全に固まった事業提案ではなく、大きな方向性を示す程度の提案内容としている。提案者と県の担当部局の担当者が対話を重ね、事業構築におけるブラッシュアップの可能性を見込む形としたところにオリジナリティがある。実施にあたって特に重視したのが「対話」の質。 「予算要求までの半年以上を県民等との対話期間とすることで、県民等の意見を深く県予算に反映させられるようプロセスを構築した。」という。実際の提案後の流れはこのようになっている。 提案内容の確認 提案内容のうち提案の対象から除外するものを確認し除外 県民協働課及び提案を受けた担当課が提案者から提案内容を事前にヒアリング 提案内容が類似していたり 、複数の提案内容を一緒に検討した方がより効果が見込めると判断した場合は、提案者との協議により、関係する提案者と共に事業構築を行うこととする 事業の構築 1の提案内容の確認後、担当課が提案者及び必要に応じて提案者以外の参加者と対話を通じた事業の構築を行う。 事業の構築にあたっては、対話の伴走役として、コーディネーターを外部に委託している。 事業の決定 事業構築の状況や予算編成過程における議論を踏まえ、知事が事業を決定 事業の決定後は、予算案の公表時に決定事業を公表。予算成立後は、事業スキーム、提案の独創性、市場の成熟度などを勘案して事業を実施していくことになる。提案の受付から、事業の決定までは、県民等との対話や協働・共創の推進を所管する広報・共創推進課が担当し、つなぎ役を引き受けている。募集にあたり、提案・共創型県民参加型予算の実施目的として、「県予算の構築に当たり県民の新たな発想や問題意識を取り入れるため、県が提示するテーマ(課題)に対して、県民等との対話を通じて県予算を共に創り上げる」とある。テーマを決めるために事前に庁内でテーマを募集している。共創で取り組みたい課題や困りごととして庁内から応募のあったテーマについて、課題の具体性、課題内容、予算要求時期等を踏まえ、広報・共創推進課で総合的に判断している。 県内の課題をテーマに官民の力を糾合する 長野県では、2022年(令和4)10月より以下のようなテーマで提案募集を行い、2023年(令和5)年度に提案者とともに事業構築を行っている。 募集テーマ[担当課]信州まつもと空港における賑わいの創出・活性化[松本空港課]テーマの概要信州まつもと空港では、飛行機利用者の増加を図るとともに、地域活性化の拠点として魅力ある施設を目指しています。飛行機を利用しない人でも多くの方 に集まっていただけるような魅力ある空港を目指すため、空港の新たな活用策や企画の提案を募集します。 募集テーマ[担当課]共生社会の実現に向けた体験機会の創出[障がい者支援課]テーマの概要「障がいの社会モデル」という考え方に対する理解を促進し、障がいのある人とない人との間にあるバリアを解消する事業を募集します。 募集テーマ[担当課]伝統工芸品を含むクラフト産業の振興[産業技術課]テーマの概要SDGsエシカル消費、多様な働き方等、近年クラフト産業の価値が見直されつつある中、クラフトを県内産業として活性化させるための企画提案を募集します。 募集テーマ[担当課]スマート農業による「匠の技術」の伝承[園芸畜産課]テーマの概要農業の規模拡大に伴う省力化や「匠の技術」の継承を目指すため、AI技術等を活用した『スマート農業モデル事業』の提案を募集します。 募集テーマ[担当課]県営住宅空き住戸の有効な利活用[公営住宅室]テーマの概要県営住宅の空き住戸の一部を入居要件にかかわらず活用して、学生や若者、子育て世代や移住者などの利用を促し、入居者との交流や地域で多様な世代がつながり支えあう「ミクストコミュニティ」の形成に繋がる有効な利用方法の提案と実践を募集します。 募集要項にはこのほかに、テーマの背景や課題、県のこれまでの取組、解決策イメージ、県が提供するリソース、期待する成果などが提示されている。令和4年度の募集では、上記5つのテーマで計28件の提案があった。 まつもと空港の賑わい:7件 共生社会の実現:5件 クラフト産業の振興:9件 スマート農業:2件 県営住宅の利活用:5件 2023年(令和5)3月15日に選定結果が公表された。提案のあった28件のうち、6件(各テーマ 1~2件)を選定している。 各テーマの事業について予算編成過程で検討が行われた結果、2024年(令和6)年度当初予算案へ4事業が計上され、発表されている。発表内容は以下の通り。 各テーマの事業について予算編成過程で検討が行われた結果、2024年(令和6)年度当初予算案へ4事業が計上され、発表されている。発表内容は以下の通り。5テーマに対して、県内の企業・団体等の皆様から事業提案をいただき、ヒアリング等を経て選定。選定された提案について、提案者とテーマ担当課を中心に約半年間継続的に対話を重ねて事業内容を検討し、事業を構築。5テーマのうち4テーマにおいて事業構築し、R6当初予算案に計 32,574千円を計上※「スマート農業による「匠の技術」の伝承」については、採算性の面から事業化を見送り 実際に受けた提案内容については、「必ずしも一致したものばかりではない。ただし、そこから対話することが共創型の狙いであるため、特に問題視していない。」と考えられている。また、「行政にとっては県民等の新たな発想や問題意識の取り入れ。県民にとっては県政への参画実感。」をもたらしたのではないかという。提案・選定型と異なり、足掛け3年にわたっての事業化となるため、提案者も提案を受ける側も、お互いに息の長い作業となっている。実際に半年間にわたる事業構築の間も、様ざまなアイデアや軌道修正が行われたことは想像に難くない。このように対話を重視する施策は、県民、県庁双方ともに、人的にも予算的にも多くのリソースを費やされているだろう。これまでのお任せ行政のあり方からすれば、余分な作業とみなされてしまうと思う。しかし時代と共に市民が行政に求めることや官民協働の概念は大きく変わろうとしている。「民」の力、「民」の発想とは、民間企業だけでなく、県民、市民の力をも糾合していくところに、新しい自治の姿があるのではないか。 前の記事を読む 続く
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October 1, 2025 at 3:01 AM
区民が積極的に区政に関わることが区政の主眼の一つとして進められた杉並区の参加型予算。より充実した事業としていくための検証と見直しが必要だ。提案される内容も、参加者を増やすことも求められている。
#進化する自治
#市民参加型予算
#市民と市政
#vision50
行政の予算編成への市民参加で「公共」はどう変わる?-7
対話協調型区政の具体化としての「杉並区参加型予算モデル」 計画説明型の行政から対話協調型の行政への転換 ucoでは、昨年2024年に市民が行政の施策に関与するアプローチを検討するuco講座「進化する自治を構想する」の1つとして、「市民参加型予算から見る市民自治」を実施した。その際に、国内でこれまで紹介した海外の事例と同じようなスタイルで実施している自治体を調査した。東京都杉並区では、2023年(令和5)に「杉並区参加型予算モデル」を試行的に導入している。※取材は2023年から2024年にかけて行ったもので、「杉並区参加型予算モデル」令和5年度の事業内容である杉並区政策経営部 財政課長の土田昌志さんにインタビューに応えていただいた。2023年(令和5)の区長選で岸本聡子氏が当選し、この年「杉並区総合計画(区政経営改革推進基本方針)」の第2次「杉並区区政経営改革推進計画 改定案」が発表された。これは選挙での岸本区長の公約が基本となっている。この中で5つの基本方針が明記されている。 方針1 柔軟な発想に基づく業務の効率化と区民サービスの向上 方針2 財政の健全性の確保と時代の変化に即応できる持続可能な財政運営の実現 方針3 対話協調型区政の推進 方針4 自治の更なる発展と自治体間連携の強化 方針5 施設マネジメントの推進 今回紹介する「杉並区参加型予算モデル」は、方針4の「自治の更なる発展と自治体間連携の強化」の方針に基づく主な取組として提案されている。取組みのトップに「自治・分権の推進」が挙げられている。そして「自治の推進の観点から、区民一人ひとりが積極的に区政に関わることができる取組を進めます。」とされている。区民が積極的に区政に関わることが区政の主眼の一つとして進められているのがわかる。ちなみに「参加型予算の実施」と並んで、「気候区民会議の開催」についても記載されている。この気候区民会議は、2024年の3月から8月にかけて実施されている。この区政方針の中で、参加型予算については次のように記載されている。担当部署は財政課。  区民の意見を直接的に行政活動に反映させ、区の財政を身近に感じてもらうとともに、区政に積極的に参加することを促進し、また、区にとって行政にはない新たな発想や考えを取り入れることでより区民ニーズに沿った行政課題の解決につなげることを目的に「参加型予算」を実施します。 令和6年度(2024年度)は、令和5年度(2023年度)に引き続きモデル実施を行い、令和7年度(2025年度)以降は、継続的に検証し、必要な見直しを行いながら、取組を進めていきます。 本格実施に向けたモデル事業の実施 2023(令和5)年度は、「モデル実施」とされており、ucoが取材した時期は翌年度からの取組みを見据えたモデル実施時期になる。そのこともあり、「森林環境譲与税基金」の使途について区民から提案を受けることにしたという。森林整備を促進することを目的に、人材育成・担い手の確保・木材利用の促進・普及啓発等の、森林の整備の促進に関する施策に充てる財源であることから、区民にとって分かりやすいテーマとなること、また2024(令和6)年度から森林環境税の徴収が開始することも踏まえた上でテーマ設定としたとのこと。実際の募集では、「木材利用・環境教育などについて」というメッセージとなっている。基金の残高が約6,000万円。予算化する事業を3事業程度選定することを想定し、1事業の上限を2,000万円とする予算設定が行われた。当時の募集内容から、参加型予算の実施の流れを見てみよう。 提案募集 6月15日~7月17日にかけて区民からの提案を募集 審査 区による審査を行い複数の案を選定 投票 選定された提案の中で実施を希望する事業案について区民投票を実施 選定 投票結果から予算案に反映する事業案を選定 確定 区議会で議決のうえ、次年度予算として確定。次年度に実施。 提案できるのは、区内在住・在勤・在学の方、区内に活動拠点がある法人やその他団体。提案方法として、区の設置している応募フォームから提案するか、ホームページに掲載している提案様式に合わせて記載し、区へ郵送することで提案できる。提案募集と並行して、翌年度からの本格実施に向けて、参加型予算に関するアンケートとワークショップが実施されている。こちらは、区に住民登録がある18歳以上のを区が無作為で抽出した2,000名に案内状を送り、参加要請をしている。2023(令和5)年度は、57件の提案があり、その中から投票事案として10事業を決定されてる。決定にあたっては、区民からの提案については、 提案内容の修正や変更も含め て 検討し、提案の主旨を踏まえできるる限り実施につなげるように働きかけが行われたという。投票にあたって提示された事業は下記の通り。 投票は10月1日から31日までの1か月間実施。一人1回、最大3事業まで選ぶことができる。投票できるのは投票日時点で区内に在住している住民。事業内容については、財政課、区政資料室、区民事務所、図書館などでの閲覧ができ、投票もQRコードなどでインターネットからの投票に加え、投票用紙の郵送によっても可能。広報として、広報誌・区公式ホームページへの掲載、X(旧 Twitter)やfacebook等のSNS、区立施設へのチラシ設置、区立学校へのチラシの電子配布、各種イベントでのチラシ配布などが行われている。投票者数は2,586人。(住民基本台帳との照合の結果、杉並区民であることが確認できなかった者が含まれている)投票を受けて最終的に予算化、実施された事業は下記の3件となっている。 より充実した事業提案と区民参加に向けて 提案内容について、区では「行政にはない発想をいただくなど、(当初の目的と)概ね一致したと考えています」との回答だった。一方市民からは、「令和5年度のテーマ自体が限られた内容のものであったため、区民からの意見には目新しいものはない、投票したい事業が無い等の意見も一定程度見受けられ」たという。また投票者からは、「予算について知るきっかけになった、区政への参画に対する心理的ハードルが下がった等の意見」があった。参加型予算については、第2次「杉並区区政経営改革推進計画 改定案」発表当初に区民からも様ざまな意見が寄せられていた。いくつかをピックアップしてみると・・・。出典:令和4年度第5回意見提出手続きの結果「杉並区実行計画等の一部修正案」について区民等の意見全文より 参加型予算について。予算編成は、杉並区のことをよく理解し、税金を預かって行政を動かす責任と、幅広い知識や経験を持ち、全体を俯瞰して考えを述べることができる方々によって行っていただきたいです。区の職員さんは区民の声をよく聞いてくださっていますし、区民の代表である議員の皆さんが区民の声を議会に届けて、議論されています。区民を代表していないどこの誰かもわからない少数の区民の意思が予算に反映される仕組みが、議論もされないまま計画されることは、非常に不安です。 参加型予算の実施とありますが、区の予算編成に際しては区内に存在する様々な組織団体から予算要望、並びに所管との意見交換を行ってきています。これらは参加型予算と見なされていないのでしようか。各々の組織団体はその役割において専門的な意見を述べているものと思います。あまりに大きな場での抽象的な意見交換はマイナスになることも懸念されます。実施内容をもう少し明確に示したなかでモデル実施すべきではないでしょうか。 住民参加型予算は「主な取組」としてより正面に、大きく打ち出すべき施策であると考えます。海外では早くから普及し、国内でも既にいくつかの市区で導入しており、住民意識が高いといわれる杉並区の特性にふさわしい施策であると思います。 「区政経営改革」で私が関心を持っているのは区民参加型予算と対話の会の拡充です。今回新たに追記された「参加型予算」について、特に興味があります。区議は選挙という民主主義の一つの方法で選出された区民の代表ですが選挙の制度的な問題や文化や社会の影響で女性や若者が少なく、議会での議論や政策が必ずしも我々区民の意思を反映しているとは言い難く偏っていると常々不満に思っていました。杉並区はこうした先進的取り組みにもっと積極的であって欲しいです。 現在、杉並区では、2025(令和7)年度の「皆さんとつくる予算(区民参加型予算事業)」を実施している。テーマは「健康・ウェルネス」。webサイトには、前年度、全前年度の実施報告も掲載されている。その末尾に「課題及び今後の対応」という記載があるので、最後にそれを引用して、杉並区についてのレポートを終わる。出典:参加型予算モデル実施報告 (1)より充実した事業提案をいただくための見直し区民等からの事業提案について、法令や区の既存事業との重複等の関係から、一定割合のものが「実施不可」となっている。より実効性の高い提案をいただき、区民等の参画意識を高めていくためにも、公民連携プラットフォーム(すぎなみプラス・すぎなみボイス)を活用しながら、区の事業に関する情報をなるべくわかりやすく提供していくとともに、地域の担い手の皆さん同士をつなぎ、互いのアイデアや知識・ノウハウを共有しながら提案を練っていけるような「場作り」を行っていく。 (2)より多くの区民等の皆さんに参加いただくための仕組の検討区の参加型予算の投票数は3,322人と、投票率としては1%に届いていない状況である。より多くの属性の方に事業提案、投票いただけるよう、従来の広報媒体での周知や地域でのイベント等での案内に加え、地域団体や教育機関といった地域の担い手へのアプローチを行っていく。 前の記事を読む 続く ucoの活動をサポートしてください
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October 8, 2025 at 3:02 AM
「みんなでつくろか みえの予算」で三重を変える
県民の皆様とともに予算をつくり上げる。予算、行政経験のない県民の方と一緒に事業に落とし込むプロセスで職員にも刺激がある。
#進化する自治
#市民参加型予算
#市民と市政
#vision50
行政の予算編成への市民参加で「公共」はどう変わる?-4
「みんなでつくろか みえの予算」で三重を変える 事業の構築に新たな発想や身近な問題意識を取り入れる ucoでは、昨年2024年に市民が行政の施策に関与するアプローチを検討するuco講座「進化する自治を構想する」の1つとして、「市民参加型予算から見る市民自治」を実施した。その際に、国内でこれまで紹介した海外の事例と同じようなスタイルで実施している自治体を調査した。中でも今回紹介する三重県は、2019年度から試行的に県民参加型予算をスタートさせている。※取材は2023年から2024年にかけて行ったもので、「みんなでつくろか みえの予算」令和元年度の事業内容である。現在は「県民提案予算」に名称変更し、実施内容も一部異なる。三重県 総務部 財政課 谷口 純一さん、三井 南津美さんのお二方にインタビューに応えていただいた。「みんなでつくろか みえの予算」は、2019年4月に鈴木英敬氏が三重県知事として再選されたことに始まる。公約集でもある「未来展望みえの会の政策集 2019」の中で記載した、「厳しい財政状況の中でも、県民の皆様と協創で予算を作り上げるという観点から、フランス・パリ市などで行われている「参加型予算」の導入について検討します」という提案を実行に移すことから始まっている。そのため、2020年度の予算編成に県民参加型予算を導入することとなった。導入にあたって、鈴木知事が政策集で示していたフランス・パリ市をはじめ、ポルトアレグレ市(ブラジル)、ポルトガル、名張市(三重県)、東京都などの先行事例をもとに制度設計された。三重県の「みんつく予算」では、市民から事業アイデアの「提案」を受け、実行主体となる県庁で「審査」し、絞り込んだ提案に対し具体的な事業案を作成した上で、市民の「投票」で実行する事業を決定するという方法が採用されている。また制度趣旨(目的)については次の3点が挙げられている。 事業の構築に新たな発想や身近な問題意識を取り入れることで事業の質の向上や限られた資源の有効活用を図ること 予算の使い道について県民の理解、共感及び納得性を高めながら県政への参画を促すこと また、職員を良い意味で刺激し、行政の在り方に前向きな変化を引き起こすこと 予算規模は、総額を約5千万円とし、1事業を1千万円以内。総額の中で複数の事業を選定し、毎年2月に県議会に提出される当初予算案に盛り込むというかたちを取っている。提案・選考方法は次のようになっている。参加形態は東京と同様、「事業提案の募集」と「県民投票による事業決定」という2つの参加方法がある。また、応募資格については、当初三重県に関心を持つ人から幅広く提案を募るためとして、住所や年齢の制限を設けていない。 県民から事業アイデアの「提案」を受け、実行主体となる県庁で「審査」→絞り込み(具体的な事業内容の構築は県庁で行う) ※行政の観点で提案内容を審査した上で、予算やスケジュールを含め担当部局が事業を具体的に組み立てる 絞り込んだ提案に対し具体的な事業案を作成した上で、県民の「投票」で実行する事業を決定する 基本単年度事業。継続事案は、経常事業として溶け込んでいるものもある。[食品ロスゼロ啓発プロジェクト、これからの移動手段チャレンジ、高齢者向けスローモビリティの開催などが当初地域連携の事業として残っているという。] 提案の流れ 事業提案の募集<県民参加> 投票候補案の審査 <県庁> 具体的な事業内容の構築<県庁> 県民投票による事業決定<県民参加> 提案者によるプレゼンテーション 知事査定、投票結果の発表 提案の募集にあたっては、20のテーマを設定し募集。提案をセクションごとに仕分け、各部局で審査を行う。テーマ事例三重の魅力発信などの分野から、各部局からの推薦も踏まえ、県政の重要課題である20のテーマを設定。「避難行動の促進」、「男性育児参画」、「モビリティ・マネジメント」、「食品ロスの削減」、「多文化共生の理解促進」、「三重の農林水産品の魅力向上」など提案数は、2019年度が229件、取材を行った2023年度は122件となっている。また、2021年度からは「自由提案」も含めて募集を行っている。テーマを限定したため、提案者側から「より出したい提案が自由に出せない」、「県庁にとって都合の良いテーマだけが選ばれている」という批判があったという。そのため自由提案枠を設け、実施年度ごとに各部局が課題と思っていることをテーマに提案してもらい、その年のテーマ設定をしている。2023年度は14のテーマが設定された。2025年度では、自由提案に加え、個別テーマとして9つのテーマが設定されていた。 【個別テーマ】令和8年度当初予算に向けた県民提案募集より 三重県誕生150周年記念事業 外国人住民の日本語習得を推進するための取組 若者世代にささる地産地消の推進 外国人観光客の誘客に繋げる県産農林水産物の魅力発信 子ども・若者たちに建設業の魅力をPR 犯罪防止に向けた取組 子どもが自ら学び、自ら考える力を育成する交通安全教育 未来の警察官育成 インターネット利用に起因する若年層を対象とした犯罪被害防止及び犯罪に加担させないための取組 市民からの提案や意見、叱咤激励など、職員に良い刺激をもたらした 県民投票によって決定した事業については、提案者が知事プレゼンテーションを行う。県民と県職員の協働によってつくられた事業提案は、職員にとっても新しい発見があったようだ。 職員のみで行う知事へのプレゼンテーションと比較して、生き生きとした事業説明が行われた。 予算、行政経験のない方(県民)と一緒に事業に落とし込むプロセスで職員に刺激があった。 という感想が聞かれたという。というのも、提案事業を取り入れるにあたっては、経常経費では予算がないので年度の上限を削って行うことになる。そのために様ざまな試行錯誤も行われることにになり、部局にとっては試行事業としてとらえられる面もあるという。募集、投票の周知方法として、新聞、県内フリーペーパー掲載、公式snsなどで行われている。また県内29市町、国の地方機関、関係団体、事業者、ボランティア等への周知、県庁主催のイベント等でのチラシ配布なども行っている。応募方法は、電子申請、メール、郵送、職員による回収、財政課への持ち込み。電子申請は、既存の電子申請システムを活用し、リンクできるQRコードをチラシに掲載するなどしてアクセスを容易にしている。県内からの提案が182件、県外からの提案が47件あり、最年少は18歳、最高齢は81歳。投票方法は、電子申請、メール、郵送、投票箱で行われた。投票箱は、県庁3階の財政課と津駅前にあるアスト津3階のみえ県民交流センターに設置。投票者数2,837人、投票総数6,381票の結果を踏まえ、投票数の多い順に上位6事業(総額5,020万4千円)が2020年度当初予算に計上されている。※いずれも初年度実施の結果。現在の公式三重県サイトの「県民提案予算の取組について紹介します」では、「 令和2年度当初予算から令和7年度当初予算までの6年間で延べ1,308件の提案があり、それらの中から52の事業、約2億9,200万円の予算が事業化されました。」とある。さて、県民参加型予算に対する県民からの思いにはどのようなものがあるのだろうか。提案内容そのものというより、特に県民投票の結果を踏まえて事業が採択されていることについて「多数決で決まってしまうため、少数意見が反映されない」「数百票の得票で最大1,000万円の予算の使い道が事実上決定してしまう」などの懸念の声などがあったという。今後の参加型予算の取り組み方について、財政課としての思いを尋ねた。 事務コストは増やさず、可能な限り簡素化・合理化を図りながら、県民が気軽に参加できる手法を維持していきたい。また規模の拡大は考えていない。 分野は、昨年度までは、何らかのテーマ設定をしていて、今年度(2023年度)のみ原則自由提案としている。今年度の実施結果をふまえて、来年度以降のあり方を検討予定。 県民が気軽に参加できるしくみは維持したい一方、しっかり行政職員として必要性・緊急性・整合性などの観点で十分チェックを行う体制や時間の確保にも努めていく。 最後に、初年度に本事業を推進した三重県総務部財政課 富永隼行氏、谷口純一氏による報告書には、市民参加を活かす行政への変化があったとして、次のように記されている。 今回、事業提案を20テーマに限ったことに対し、自由な提案を認めて欲しい旨やテーマの幅を広げて欲しい旨の意見が多数寄せられた。自由度を広げた制度設計が望ましいが、その場合、県庁での審査・具体化・実行が難化する懸念がある。また、実施すべき事業ではなく、廃止すべき事業を選ぶ仕組み(「みんやめ予算」)を求める意見もあった。事業の背景には多くの利害が関わるため、投票結果だけで事業の廃止を決めることは難しいが、行政が既存の事業を不要だとは言いにくい現状を打開する意味で、市民が指摘する仕組みは一考の価値がある。拡大・深化する市民参加を活かすために、行政自身が市民の声をよりストレートに聴くよう変わるべきである。市民の提案を市民目線で受け止め、具体的な事業に落とし込む過程は、職員に良い刺激を与え、政策立案・実行能力の向上に繋がる*29。市民の意見は行政にとって耳の痛い話が多く、それを正面から受け止めることは容易ではないが、真摯に向き合う姿勢が必要である。 ※出典:三重県庁の参加型予算「みんつく予算」の取組について
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September 19, 2025 at 3:02 AM