赤目
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赤目
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文弱。雑食系本読み乱読派。純文出身SF好きミステリ初級外国文学どこでも。山田風太郎と田中小実昌、ビジョルド、ヴォネガット、E.ストラウト、呉明益が愛しい。
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#名刺がわりの小説10選
百年の孤独/G・ガルシア゠マルケス
坊っちゃん/夏目漱石
本格小説/水村美苗
忍ぶ川/三浦哲郎
スローターハウス5/カート・ヴォネガット
エドの舞踏会/山田風太郎
さようなら、ギャングたち/高橋源一郎
告白/町田康
トリツカレ男/いしいしんじ
本泥棒/マークース・ズーサック
永井紗耶子『木挽町のあだ討ち』(新潮文庫)読む。
衆人環視の中で起きた仇討ち。後年、現場である芝居小屋近くに当時の状況を聞いて回る武士が現れるが、その目的は.......。藪の中的展開になるのかと、なかなか事件の真相が明らかにならないなかに、人情噺などでホロリとさせながら最後は二転三転。終盤、オチが読めたが、だからといって興ざめするというよりむしろそうであってこそと納得の展開に心が晴れやかになるおもしろさ。直木賞&山本周五郎賞。
#読了
楊双子『四維街一号に暮らす五人』(三浦裕子訳、中央公論新社)読む。
古い日本風家屋をシェアする女子学生4人と大家の共同生活とそこで起こるちょっと不思議な出来事と素敵な魔法。ライトでポップ、しかし奥行きがありずしりとくる展開。シスターフッドにあふれ、いつまでも読んでいたい心地よさに、美味しそうな台湾グルメが相乗する佳品。
#読了
カテジナ・トゥチコヴァー『ジートコヴァーの最後の女神たち』(阿部賢一・豊島美波訳、新潮社)読む。
チェコの山村で代々不思議な力を受け継いできた〈女神〉たち。唯物論的進歩主義のもと弾圧された共産時代、オカルト思想とアーリア主義が混淆したヒトラーのもとで目をつけられたナチス時代、そして民主化され過去の資料が公開された1990年代を舞台に〈女神〉の末裔が自らのルーツと秘められた謎を追う。事実を下敷きにし実際の資料を援用した手法で興味深いが、中盤がどうにもダレた。そして物語性がぼやけ気味なのか題材が馴染み薄すぎて頭に入ってこないせいなのか、テーマが拡散して全体に薄味の印象。
#読了
ロイス・マクマスター・ビジョルド『魔術師ペンリックと暗殺者』(鍛治靖子訳、創元推理文庫)読む。
〈五神教〉世界のペンリック・シリーズ第4弾。毎度毎度読んだ端から忘れていくからいまいち乗り切れないところ、今作はシリーズ初の長編(プラス中編)なのでどっぷり世界観に浸れる。そして浸れば浸るほど、実に豊穣で奥行きのある世界と軽妙なやりとり、魅力ある登場人物にうっとり。ビジョルドはおもしろいぞ。
#読了
西村亨『自分以外全員他人』(ちくま文庫)読む。
なかなか言えないことだと思う、「全員他人」だなんて。40代男性独身、コロナ禍、生きていくのがつらく、日々のことに傷付きストレスを抱え、鬱屈と攻撃性をためこんでいく。そんな彼に容赦なく訪れる出来事......。昇華するのか破滅するのかという物語上の帰結はおいて、他人は他人であると認識するには自他への高い解像度が必要なわけで、そこはよく書けているなと。2023年太宰賞。
#読了
壺井栄『妻の座』(けいこう舎)読む。
妻を亡くし4人の子を抱える知人作家の後添えに請われて自分の妹を紹介するも、亡妻を忘れられぬばかりか不器量な容姿に耐えられず2カ月で破婚する。この男の身勝手さ(モデルはプロレタリア作家のT)はひどいが、妹を支えようとしながらも結構めちゃくちゃなこと考えている主人公(もちろん壺井栄本人)も笑っちゃうくらいひどいのは時代の限界かもしれんが、それを隠さず書いてしまうところがやはりすごい。本編120ページに対して、解説60ページという非常に愛のあるつくり且つ面白い作家案内もよい。
#読了
エミリー・テッシュ『宙の復讐者』(金子浩訳、早川書房)読む。
地球をぶっ壊されて生き残った人類が異星人への逆襲を企図して雌伏し、純然たる復讐心を研ぎ澄ませるべくミニ管理・統制国家と化したコロニーで育った少女たち。相手は時空を自在に操る装置〈叡智〉。はてさてどうなるか、と、前半は割とオーソドックスなミリタリーSF、そして後半は......。長いのに詰め込み過ぎというか欲張り過ぎなところがあって、この長さも必然なんだけれど、ちょっと惜しいかなあと。
#読了
アルンダティ・ロイ『至上の幸福をつかさどる家』(パロミタ友美訳、春秋社)読む。
墓場に住み始めた〈第三の性〉ヒジュラー、そこに集まる人々、動物。カシミール紛争から現在のヒンドゥー至上主義につながるインド現代史。見えているもの、見えている姿が、本当にそのままのものなのか、姿なのか。一筋縄にいかない事情、情勢がある。外からは捉えにくい物事を内から伝えるのも文学の力。いや、しかし、なかなかに手強い読書だった。
#読了
木山捷平『角帯兵児帯/わが半生記』(講談社文芸文庫)読む。
雑誌新聞掲載のエッセイ群と未完の自身の半生記。いまはどうだか知らないが、読者とのやりとりが非常に身近なことに驚く。いちばんおもしろかったのが「現代文芸家色紙展」。当時の作家らが一言したためた色紙を集めた展覧会の短い報告だが、それぞれの寸評に愛がこもっていて楽しい。
#読了
木山捷平『井伏鱒二/弥次郎兵衛/ななかまど』(講談社文芸文庫)読む。
短編10作と井伏鱒二、太宰治のそれぞれについて書いた小品2作。短編小説はすっとぼけながらあまりに自然に脱線するから、いったい何を読まされているのかと。それでいてまったく破綻していないのがとにかくすごい。晩年の作品が多いせいかちょっと寂しくもあり、それでいて枯れた色気があってなお良い。
#読了
なお『神戸/続神戸』が新潮文庫から刊行され、お求めやすくなっております。
西東三鬼『神戸/続神戸/俳愚伝』(講談社文芸文庫)読む。
〈おそるべき君等の乳房夏来る〉。新興俳句の旗手による自伝的3作品。なにもかも、妻子からも逃げ出して暮らした神戸。戦時下にありながらコスモポリタン的な様相を呈す街の、これも国際色豊かにさまざまな人が集うホテルを舞台に繰り広げる人間模様。語り口から内容までこれが滅法おもしろい。新興俳句の人だから、というわけでもないんだろうけれど、かなり自由でぜんぜん古くない。「俳愚伝」はいわゆる京大俳句事件の顚末も描かれる。
#読了
平中悠一『She’s Rain』(河出文庫)読む。
1980年代の神戸の街を遠景に、夏休みを目前にした高校2年生の男女のすれ違う思いを瑞々しく描いた小品。自分の好きなそのままでいて欲しいという気持ちの行く先に何が待つのか知らない10代の少年による語りは、痛々しくも爽やか。庄司薫的ナイーブさに、村上春樹的めんどくささと村上龍的関係性を混ぜ込んだような、といったら怒られるかな。でも、なかなかにすっきりした読後感でよい(「かわいい」を「かあいい」と表記する時代性はさすがにちょっと。。。)。1984年度の文藝賞。
#読了
ジョエル・ドン・ハンフリーズ『オーバー・ザ・トップ』(村田勝彦訳、角川文庫)読む。
40年ほど前のスタローン主演映画のノベライズ。だいたいは記憶通りで、長らく会っていなかった主人公と息子の、空白の時を取り戻すハートフルな物語。意地の悪い義父はほんとに意地悪く描かれ、気持ちのいいトラック野郎たちは気持ちよく描かれてと、まあノベライズだよねととりたてていうところはないけれど、勢いと熱量のあった映画を想起させるにほどよい感じで。
#読了
デイヴィッド・マレル『一人だけの軍隊』(沢川進訳、ハヤカワ文庫)読む。
『ランボー』原作。映画とかなり風合いが違ってびっくり。映画は映画で良いが、こちらはランボーと敵役の心理描写がかなり細かいうえ、敵役の闘うべき理由がはっきりしていておもしろい。映画の印象が強いだけにいい意味で裏切られ、読んでよかった。調子に乗って映画も久しぶりに見たけど、こっちもやはりスタローンがよくっておもしろい。
#読了
リチャード・フラナガン『第七問』(渡辺佐智江訳、白水社)読む。
これはタスマニアの作家のメモワール。太平洋戦争で捕らわれ日本で強制労働させられた父、誰よりもはやく原子爆弾を予想したH.G.ウェルズ、彼の作品を通して破滅的な核戦争の到来を危惧し奔走する異能の物理学者、そして広島で炸裂する原爆⋯⋯。父と母、一族、自分に迫った死を見つめ、けっして答えの出ない問いを繰り返し繰り返し繰り返し問う。問わなければならなかった、問わなければならない、問い続けなくてならない。断章からなる記憶とエピソードに完全に打ちのめされた。これはすごい。
#読了
ポール・ハーディング『もうひとつのエデン』(小竹由美子訳、白水社)読む。
さまざまな血と肌の色が混ざりあいながら孤絶して暮らす島の人たちと、そこに押し寄せる近代化と〈科学〉という名の暴威。題にもあるとおり楽園は失われるもの。失われるからこそ楽園なのかもしれない。なぜなら本当にそこを〈エデン〉と呼ぶにはあまりに哀しい過去があるから。
#読了
トリスタン・ガルシア『7』(高橋啓訳、河出書房新社)読む。
ななつからなる物語集。若返ることができるドラッグ、未来の音楽を先取りした木管、革命が成就した/しなかったパラレルの世界などの比較的短い6編に、同じ生を繰り返す男の長大な1編。それぞれが読み応えのある作品だが、最後の7章構成の長編で驚きの仕掛けがあり、この作品集全体の姿が一変する。最終章の駆け上がり方がすごい。大作ですわ。
#読了
スタローンが集まった。読まねば。
グレアム・マクレー・バーネット『揺れる輪郭』(宇佐川晶子訳、早川書房)読む。
ある精神科医について調べている〈私〉のもとに届いたノート。姉の死の真相を求めて医師のもとに偽名で通ったという元患者のものだ。〈わたし〉と、〈わたし〉が患者を装う人格、〈私〉が綴る医師の来歴、〈わたし〉が描く医師の相貌が溶け合い/混じり合い、そして本書の輪郭すら揺れ、ぼやけてくる。。。
#読了
アグラヤ・ヴェテラニー『その子どもはなぜ、おかゆのなかで煮えているのか』(松永美穂訳、河出書房新社)読む。
チャウシェスク時代のルーマニアから亡命したサーカス一家の末娘〈わたし〉による一人語り。作者の自伝的要素が強いとされ、流亡と貧困、失った故郷、無垢であり無知である生活のなかの、家族への/家族からの愛憎を描く。とりわけ母を失うことへの恐怖のなかで思い描く「おかゆのなかで煮られる子ども」のイメージは強烈。しかし強烈ではあるが、静かで妙に白っぽい夢のような。
#読了
都筑道夫『なめくじに聞いてみろ』(講談社文庫)読む。
父の教え子である12人の殺し屋と対決するミステリ&アクション。12人それぞれ得物が違って、展開もうまく変奏しているけれど、さすがに1ダースはちょっとマンネリ感は否めず。とはいってもやたらにカッコいいセリフと掛け合いがあって楽しめる。風俗や用語、セリフ回しがいちいち昭和っぽいなあと思いながら読んだ。
#読了
#私の本棚の早川書房ベスト約8冊

ヴィアン『うたかたの日々』
ストラウト『私の名前はルーシー・バートン』
ヘラー『キャッチ゠22』
ズーサック『本泥棒』
ヴォネガット『スローターハウス5』
シモンズ『ハイペリオン』
ハインライン『夏への扉』
マーティン『七王国の王座』

や、これ、ミステリとか文芸とかSFとか国内とかジャンル分けしないとムリっす。
三浦晴海『なぜ「あしか汁」のことを話してはいけないのか』(宝島社)読む。
最近はやりのモキュメンタリー形式のホラー。新聞記事やネットニュース、資料などをちりばめて、大叔父が日記に遺した「あしか汁」という謎のキーワードを追う。なぜ話してはいけないかはなるほどと感心したが、そこ以外はうーんまあそんなもんかと。つまり「あしか汁」勝ち。
#読了
高田大介『図書館の魔女』(講談社文庫)読む。
非常に質が高く、そして読後感が爽やかなファンタジー大作。国をも動かす力を持つ少女と山里から下りてきた少年の出会いから物語が始まり、〈言葉〉をめぐってその本質を丁寧にすくい取る。全編通して緩急がすごく利いており、ちょっと「緩」のところが長いかなとも思うけど、それがあってか「急」の描写力、展開がひときわ印象的。これは読んどけ的なメフィスト賞作。
#読了