来るべき機会のためにと、まずはざっと通読。
インタビューだけというより、質的研究を論文にまとめるという明確な最終ゴールを目指して構成された、常に手元に置いて参照したい具体的かつ有用なガイド。
なかでも、「データ分析」(第5章)のコーディングの具体的方法は、自分の研究でも応用できそう。
「厚い記述」や「先行研究を捨てる勇気」(179頁の囲み記事)も常に意識しておきたい。
来るべき機会のためにと、まずはざっと通読。
インタビューだけというより、質的研究を論文にまとめるという明確な最終ゴールを目指して構成された、常に手元に置いて参照したい具体的かつ有用なガイド。
なかでも、「データ分析」(第5章)のコーディングの具体的方法は、自分の研究でも応用できそう。
「厚い記述」や「先行研究を捨てる勇気」(179頁の囲み記事)も常に意識しておきたい。
昭和の地方政治の生々しい記録。田中角栄の新潟三区をはじめ、それぞれ独特な様相を呈する6選挙区が取り上げられている。カネ、権力闘争、利益誘導、選挙の裏側、有権者の本音等々に焦点が当てられ、読み物としては面白いが、このような側面ばかりが「政治」として捉えられること自体が選挙代表制の問題であろう。とはいえ、衆院が中選挙区制だった時代の記録であり、その後、小選挙区制へと変わった結果、どのような変化があったのか(なかったのか)、同じ選挙区での平成・令和版を読んでみたい。
昭和の地方政治の生々しい記録。田中角栄の新潟三区をはじめ、それぞれ独特な様相を呈する6選挙区が取り上げられている。カネ、権力闘争、利益誘導、選挙の裏側、有権者の本音等々に焦点が当てられ、読み物としては面白いが、このような側面ばかりが「政治」として捉えられること自体が選挙代表制の問題であろう。とはいえ、衆院が中選挙区制だった時代の記録であり、その後、小選挙区制へと変わった結果、どのような変化があったのか(なかったのか)、同じ選挙区での平成・令和版を読んでみたい。
制定された自治基本条例の実効性を担保するための「自治推進委員会」についての論文。
筆者によれば、同条例が行為規範であって裁判規範ではない性格を持つため、この種の外部チェック機関は重要である。しかし、その審議過程は事務局(自治体主管部局)によって管理され、委員長は委員と事務局の間で板挟みになり、事務局も組織上の地位が低いことが多い。委員会が本来の機能を果たすには、委員長が事務局との連携を強化しつつも摩擦を恐れないことや、主管部局の組織上の地位を向上させることが必要、というのである。
制定された自治基本条例の実効性を担保するための「自治推進委員会」についての論文。
筆者によれば、同条例が行為規範であって裁判規範ではない性格を持つため、この種の外部チェック機関は重要である。しかし、その審議過程は事務局(自治体主管部局)によって管理され、委員長は委員と事務局の間で板挟みになり、事務局も組織上の地位が低いことが多い。委員会が本来の機能を果たすには、委員長が事務局との連携を強化しつつも摩擦を恐れないことや、主管部局の組織上の地位を向上させることが必要、というのである。
公募市民35名による「自治基本条例をつくる会」が起草した条例案が、ほぼそのままの形で条例となった大和市。その1年8ヶ月にわたる策定過程にファシリテーターとして関与した筆者による論文。
筆者によれば、「市民立法」が実現したのは、合意形成の各ステージにおいて様々な層の市民に対して行われたパブリック・インボルトメント(PI。計63回、のべ約1,400人)により、「つくる会」が市民意思を代表する場となったためであり、何人が参加すれば市民の代表としてオーソライズされるのか、という問いに対する答えのひとつがPIである、という。
公募市民35名による「自治基本条例をつくる会」が起草した条例案が、ほぼそのままの形で条例となった大和市。その1年8ヶ月にわたる策定過程にファシリテーターとして関与した筆者による論文。
筆者によれば、「市民立法」が実現したのは、合意形成の各ステージにおいて様々な層の市民に対して行われたパブリック・インボルトメント(PI。計63回、のべ約1,400人)により、「つくる会」が市民意思を代表する場となったためであり、何人が参加すれば市民の代表としてオーソライズされるのか、という問いに対する答えのひとつがPIである、という。
フリッカーの認識的不正義理論とヤングの内的排除概念を応用し、表面的・儀礼的な象徴的不正義に対し、構造的・潜在的な認識的不正義(更にその下位として証言的/解釈的不正義)を理論化し、それがミニ・パブリックスにおける内部排除の理解にとって重要であることを指摘する論文。その上で、市民参加型の議題設定、社会運動からの専門家招聘、積極的なファシリテーション、少数派の過剰代表などの対応策を提案する。
分類は直感的にわかりにくいが、正義と「社会の縮図」性をうまく両立させ、理想的なミニ・パブリックスを設計する難しさを考えさせられる。
フリッカーの認識的不正義理論とヤングの内的排除概念を応用し、表面的・儀礼的な象徴的不正義に対し、構造的・潜在的な認識的不正義(更にその下位として証言的/解釈的不正義)を理論化し、それがミニ・パブリックスにおける内部排除の理解にとって重要であることを指摘する論文。その上で、市民参加型の議題設定、社会運動からの専門家招聘、積極的なファシリテーション、少数派の過剰代表などの対応策を提案する。
分類は直感的にわかりにくいが、正義と「社会の縮図」性をうまく両立させ、理想的なミニ・パブリックスを設計する難しさを考えさせられる。
直接関与した市役所担当部署による編著のおかげで、一般的な公開情報だけでは知り得ない策定の具体的な過程がよくわかる貴重な一冊。
公募による市民メンバーの長期間にわたるコミット度合い、市長の市民参加へのこだわり、パブリック・インボルブメントの積み重ねなどは、想像していたレベルを遥かに超える。市民メンバーは、最終的に約3/4まで減ってはいるものの、1/3強まで減った抽選制メンバーによる東村山市の事例と比べると、コミット強度/負担耐性は公募の方が強いと言えるのかもしれない。
直接関与した市役所担当部署による編著のおかげで、一般的な公開情報だけでは知り得ない策定の具体的な過程がよくわかる貴重な一冊。
公募による市民メンバーの長期間にわたるコミット度合い、市長の市民参加へのこだわり、パブリック・インボルブメントの積み重ねなどは、想像していたレベルを遥かに超える。市民メンバーは、最終的に約3/4まで減ってはいるものの、1/3強まで減った抽選制メンバーによる東村山市の事例と比べると、コミット強度/負担耐性は公募の方が強いと言えるのかもしれない。
将来のインタビューへの準備として。
第I部は、一連のプロセス全般にわたっての実践・具体的ガイド。第II部は、いくつかの分野での専門家が、具体例とともにその分野ならではの苦労やノウハウを紹介している。
特に、権利関係の事前整理のための「聞き取りに関する合意書」や「記録音声等の公開に関する同意」の雛型(付録として収録)などは、重要だが見落としがちなポイントとして注意しておきたい。
将来のインタビューへの準備として。
第I部は、一連のプロセス全般にわたっての実践・具体的ガイド。第II部は、いくつかの分野での専門家が、具体例とともにその分野ならではの苦労やノウハウを紹介している。
特に、権利関係の事前整理のための「聞き取りに関する合意書」や「記録音声等の公開に関する同意」の雛型(付録として収録)などは、重要だが見落としがちなポイントとして注意しておきたい。
有権者の意思を反映する公的組織としての政党の役割を高く評価し、その役割が発揮されにくい現行の選挙制度の改革案を提示する一冊。
個人的に、政党の役割には懐疑的であり、それが覆されるまでの説得力は感じられなかった。とはいえ、選挙管理機関の独立性を高める必要性や、選挙制度改革を政治家以外に任せるべきとの主張は納得できる。
有権者の意思を反映する公的組織としての政党の役割を高く評価し、その役割が発揮されにくい現行の選挙制度の改革案を提示する一冊。
個人的に、政党の役割には懐疑的であり、それが覆されるまでの説得力は感じられなかった。とはいえ、選挙管理機関の独立性を高める必要性や、選挙制度改革を政治家以外に任せるべきとの主張は納得できる。
包摂性と代表性の充実のため数百人規模になったミニ・パブリックスでの熟議において自ら発言を控える「自己排除」の現象を扱った論文。①女性、若年、低教育水準などの社会的地位を参加者が自己内面化した結果の「従属的(deferential)」、②複雑かつ抽象的なテーマに対する情報・知識不足からの「認識的(Epistemic)」、という自己排除が観察されたとする。ただし、規模だけではなく、制度設計も原因の一つであり、より洗練されたファシリテーション、パネルの自由選択、きめ細かい事前情報提供といった対策である程度回避しうるという。
包摂性と代表性の充実のため数百人規模になったミニ・パブリックスでの熟議において自ら発言を控える「自己排除」の現象を扱った論文。①女性、若年、低教育水準などの社会的地位を参加者が自己内面化した結果の「従属的(deferential)」、②複雑かつ抽象的なテーマに対する情報・知識不足からの「認識的(Epistemic)」、という自己排除が観察されたとする。ただし、規模だけではなく、制度設計も原因の一つであり、より洗練されたファシリテーション、パネルの自由選択、きめ細かい事前情報提供といった対策である程度回避しうるという。
人類の進化とともに変化してきた道徳の系譜学。
道徳はまず、集団を形成し始めた人類が団結と協調行動をに高めるために生まれた。その後、集団化の度合いに応じて、懲罰的で集団志向となり、さらに個人主義的アイデンティティ志向を持つようになる。そして人々は、自分と同じ道徳陣営の人間にしか社会的信用を持ちえなくなり、道徳的アイデンティティはますます鮮明化し、社会は分断しやすくなったと今日の世界を診断する。ただし、このような表面の下には、全人類が共有する普遍的な価値観が潜んでいるともいう。
「悪だけではなく、善も陳腐」とのフレーズが印象的。
人類の進化とともに変化してきた道徳の系譜学。
道徳はまず、集団を形成し始めた人類が団結と協調行動をに高めるために生まれた。その後、集団化の度合いに応じて、懲罰的で集団志向となり、さらに個人主義的アイデンティティ志向を持つようになる。そして人々は、自分と同じ道徳陣営の人間にしか社会的信用を持ちえなくなり、道徳的アイデンティティはますます鮮明化し、社会は分断しやすくなったと今日の世界を診断する。ただし、このような表面の下には、全人類が共有する普遍的な価値観が潜んでいるともいう。
「悪だけではなく、善も陳腐」とのフレーズが印象的。
【訂正】
「オンラインでの計算が可能」
→「オンラインで入手可能な専用ソフトウェアでの自動計算が可能」
【訂正】
「オンラインでの計算が可能」
→「オンラインで入手可能な専用ソフトウェアでの自動計算が可能」
『熟議民主主義研究手法』所収(7章)。
単なる合意や意見変容の度合いではなく、集団として共有された推論構造を持てたかという熟議の理性度(主観間一貫性)を測る指標の紹介。
論点と政策選好についての各人の熟議前後の質問票から、結論を導く推論の枠組みを参加者が共有しているか、意見が異なっても理由については理解可能か、集団としてすべての論点を考慮に入れた推論ができているかを全体として計測する。例えば、気候変動懐疑論者グループのそれが非懐疑論者に比べ有意に低いなどの研究が可能になったという。
数学的に複雑だが、オンラインでの計算が可能とのこと。
『熟議民主主義研究手法』所収(7章)。
単なる合意や意見変容の度合いではなく、集団として共有された推論構造を持てたかという熟議の理性度(主観間一貫性)を測る指標の紹介。
論点と政策選好についての各人の熟議前後の質問票から、結論を導く推論の枠組みを参加者が共有しているか、意見が異なっても理由については理解可能か、集団としてすべての論点を考慮に入れた推論ができているかを全体として計測する。例えば、気候変動懐疑論者グループのそれが非懐疑論者に比べ有意に低いなどの研究が可能になったという。
数学的に複雑だが、オンラインでの計算が可能とのこと。
仏気候変動会議自体の話題性とユニークさ、研究の規模(ランデモアも参加)などの点でも注目に値する研究であり、多くの示唆に富む。例えば、主催者側が専門家選定などでフレーミングの影響を与えたという事実は、制度設計上の重要な指摘であろう。
特に興味深いのは、会議が提案を国民投票にかける権限を与えられていたにもかかわらず、熟議を経ていない一般市民はまだ「啓蒙されていない」として、参加者がこれを拒否した事実である。これが規範的に、抽選代表制に対するいわゆる「ショートカット」批判(ラフォン)を想起させるとの指摘は非常に示唆的である。
仏気候変動会議自体の話題性とユニークさ、研究の規模(ランデモアも参加)などの点でも注目に値する研究であり、多くの示唆に富む。例えば、主催者側が専門家選定などでフレーミングの影響を与えたという事実は、制度設計上の重要な指摘であろう。
特に興味深いのは、会議が提案を国民投票にかける権限を与えられていたにもかかわらず、熟議を経ていない一般市民はまだ「啓蒙されていない」として、参加者がこれを拒否した事実である。これが規範的に、抽選代表制に対するいわゆる「ショートカット」批判(ラフォン)を想起させるとの指摘は非常に示唆的である。
30名の研究者によるフランス気候変動会議(抽選制)の事例研究。全過程の参与観察、参加者と一般市民の比較調査から、政府が掲げた「共構築(Co-construction)」が実現したかを検証する。その結果、運営組織が議題設定や専門家の選択にかなりの影響を与えたものの、参加者は独立性を保持し、会議内では共構築が機能した一方、参加者と一般市民の間では相互懐疑が発生し、参加者が国民投票に反対するなど共構築は実現されなかったことを明らかにする。そこから、会議で練り上げた提案をその後、具体的にどう扱うかを事前に明確にしておく必要性を指摘している。
30名の研究者によるフランス気候変動会議(抽選制)の事例研究。全過程の参与観察、参加者と一般市民の比較調査から、政府が掲げた「共構築(Co-construction)」が実現したかを検証する。その結果、運営組織が議題設定や専門家の選択にかなりの影響を与えたものの、参加者は独立性を保持し、会議内では共構築が機能した一方、参加者と一般市民の間では相互懐疑が発生し、参加者が国民投票に反対するなど共構築は実現されなかったことを明らかにする。そこから、会議で練り上げた提案をその後、具体的にどう扱うかを事前に明確にしておく必要性を指摘している。
アンケート調査を実施するにあたって、一度は目を通す価値があると思われる一冊。考える・やるべきことが具体的かつ網羅的(倫理的配慮にも十分な紙幅が割かれている)に整理されている。
例えば、程度を尋ねる際に「どちらともいえない」を選択肢に含めるべきかどうかという個人的に長年悩まされてきた問題。日本人は特に中間回答バイアスがが強いため、ほとんどの回答者が当該問題を考えたことがあって回答できるはずと判断できる場合は使用せず、逆に複雑な問題に関する意見を求める場合は使用することが推奨される、という一応の答えも得られた。
アンケート調査を実施するにあたって、一度は目を通す価値があると思われる一冊。考える・やるべきことが具体的かつ網羅的(倫理的配慮にも十分な紙幅が割かれている)に整理されている。
例えば、程度を尋ねる際に「どちらともいえない」を選択肢に含めるべきかどうかという個人的に長年悩まされてきた問題。日本人は特に中間回答バイアスがが強いため、ほとんどの回答者が当該問題を考えたことがあって回答できるはずと判断できる場合は使用せず、逆に複雑な問題に関する意見を求める場合は使用することが推奨される、という一応の答えも得られた。
約1,200もの論文を参照して、差別を「可視化」し、外国人への差別の実態とその背景にある排外主義の発生理由、それらを減らす方法を論じる一冊。差別は、嗜好に基づくものと不十分な情報に基づく統計的なものに大別できること、「差別はそれを経験した人に害をもたらすから悪い」こと、集団間接触の増加、誤認識を修正する情報提供、移民に寛容な政策が対策として効果的ということなどが明らかにされる(例えば、自治体内の移民割合が高まるにつれ排外主義も高まるが、その割合が10%を超えると減少に転じるなど)。
結論が正反対な実証研究が多々あるなど、研究最前線のリアルな姿も。
約1,200もの論文を参照して、差別を「可視化」し、外国人への差別の実態とその背景にある排外主義の発生理由、それらを減らす方法を論じる一冊。差別は、嗜好に基づくものと不十分な情報に基づく統計的なものに大別できること、「差別はそれを経験した人に害をもたらすから悪い」こと、集団間接触の増加、誤認識を修正する情報提供、移民に寛容な政策が対策として効果的ということなどが明らかにされる(例えば、自治体内の移民割合が高まるにつれ排外主義も高まるが、その割合が10%を超えると減少に転じるなど)。
結論が正反対な実証研究が多々あるなど、研究最前線のリアルな姿も。
『熟議民主主義研究手法』所収(6章)。
熟議の質を定量的に計測することを目指して発案されたDQIの進化を紹介する論文。当初は、静的な形式面が重視されていたが、相互作用や時間・空間的な拡がりなどの動的な実質面に注目するよう改訂されてきており、機械学習による自動化の試みも有望という。ただし、集計問題(多次元性がある場合は単純集計には適さない)や、解釈主義的課題(文脈や観察者によって解釈が異なる可能性)なども指摘されており、熟議の質は単一的にではなく、目的と文脈に応じて評価される必要があるという。
『熟議民主主義研究手法』所収(6章)。
熟議の質を定量的に計測することを目指して発案されたDQIの進化を紹介する論文。当初は、静的な形式面が重視されていたが、相互作用や時間・空間的な拡がりなどの動的な実質面に注目するよう改訂されてきており、機械学習による自動化の試みも有望という。ただし、集計問題(多次元性がある場合は単純集計には適さない)や、解釈主義的課題(文脈や観察者によって解釈が異なる可能性)なども指摘されており、熟議の質は単一的にではなく、目的と文脈に応じて評価される必要があるという。
アイルランドで行われた抽選制「市民会議」(2016-18年)の録画から自動取得した38万語のコーパスを統計的に分析した論文。専門家セッションで説明されたトピックがQ&Aセッションで取り上げられ、多く話される確率が高いため、議題設定に影響を与えうることや、女性・学識経験者に比べ男性・実務家による情報の方が影響力を持つことを明らかにする。よって、参加者だけでなく専門家の選抜についても多様性と包摂性を考慮する必要があるという。
熟議セッションが対象でない(録画がない)のは惜しいが、分析手法は魅力的。相当難しそうだが、導入検討の価値はある。
アイルランドで行われた抽選制「市民会議」(2016-18年)の録画から自動取得した38万語のコーパスを統計的に分析した論文。専門家セッションで説明されたトピックがQ&Aセッションで取り上げられ、多く話される確率が高いため、議題設定に影響を与えうることや、女性・学識経験者に比べ男性・実務家による情報の方が影響力を持つことを明らかにする。よって、参加者だけでなく専門家の選抜についても多様性と包摂性を考慮する必要があるという。
熟議セッションが対象でない(録画がない)のは惜しいが、分析手法は魅力的。相当難しそうだが、導入検討の価値はある。
筆者は、サントメールによる熟議民主主義におけるくじ引きの意義を整理した上で、仏研究者によるパリ20区住区評議会の研究を紹介し、抽選メンバーの「経験的認識(慣習知)」に基づく発話が、情報捕捉的性格による熟議促進効果、事実立脚的性格による婉曲効果、個人的権利要求および党派的発言抑制効果をもたらしたことを報告する。ただし、抽選制がもたらす中立性への過度の称揚が、元々参加に積極的な活動家などを排除する例があることを、自らの調査に基づき指摘している。
排除されていない例の調査もしており、両者における熟議内容の比較検討が欲しいところ。
筆者は、サントメールによる熟議民主主義におけるくじ引きの意義を整理した上で、仏研究者によるパリ20区住区評議会の研究を紹介し、抽選メンバーの「経験的認識(慣習知)」に基づく発話が、情報捕捉的性格による熟議促進効果、事実立脚的性格による婉曲効果、個人的権利要求および党派的発言抑制効果をもたらしたことを報告する。ただし、抽選制がもたらす中立性への過度の称揚が、元々参加に積極的な活動家などを排除する例があることを、自らの調査に基づき指摘している。
排除されていない例の調査もしており、両者における熟議内容の比較検討が欲しいところ。
『熟議民主主義研究手法』論文集所収(20章)。
筆者によれば、多くの事例からの一般的相関・因果関係解明を目指す定量分析に対し、丹念なエビデンス評価を重ねていくこの定性的分析手法は、少数事例の具体的因果メカニズムを特定・説明できる。熟議民主主義研究では、①熟議の実践において決定的役割を果たしたのは何か、②どのような戦略が行動変容に影響を与えたか、③政策決定に影響した最大の要因は何か、などの先行研究で有効に使われてきた、という。
仮説検証テスト(pp. 295-6)なども含め、自分の方向性にとって非常に有益。
『熟議民主主義研究手法』論文集所収(20章)。
筆者によれば、多くの事例からの一般的相関・因果関係解明を目指す定量分析に対し、丹念なエビデンス評価を重ねていくこの定性的分析手法は、少数事例の具体的因果メカニズムを特定・説明できる。熟議民主主義研究では、①熟議の実践において決定的役割を果たしたのは何か、②どのような戦略が行動変容に影響を与えたか、③政策決定に影響した最大の要因は何か、などの先行研究で有効に使われてきた、という。
仮説検証テスト(pp. 295-6)なども含め、自分の方向性にとって非常に有益。
社会運動活動家/団体が、選挙によらずとも民主的代表としての正統性を持ちうるかの評価基準を「被影響者利害原理」に基づき提案する論文。筆者によれば、自薦代表の訴えは、授権・被影響者という二つの集団(consutituency)を作り出し、特に後者を「見える・聴かれる化」し、エンパワーするポテンシャルを持つ。そして、後者からも授権され(承認、支持、寄付、参加など)、彼らに対する答責性を担保する仕組み(反論や離脱の機会など)を持てれば民主的代表たりうる、という。
興味深い視点だが、この種の(特に言説的)授権・答責性の有効性は検討の余地がありそう。
社会運動活動家/団体が、選挙によらずとも民主的代表としての正統性を持ちうるかの評価基準を「被影響者利害原理」に基づき提案する論文。筆者によれば、自薦代表の訴えは、授権・被影響者という二つの集団(consutituency)を作り出し、特に後者を「見える・聴かれる化」し、エンパワーするポテンシャルを持つ。そして、後者からも授権され(承認、支持、寄付、参加など)、彼らに対する答責性を担保する仕組み(反論や離脱の機会など)を持てれば民主的代表たりうる、という。
興味深い視点だが、この種の(特に言説的)授権・答責性の有効性は検討の余地がありそう。
著者によれば、自治基本条例の最高規範性規定は、最高規範性自体を明示するものや遵守義務を謳うものなど6種類に分類できるが、最も有力なのが、改正手続きを厳しくする(住民投票や特別多数決を組み込む)「硬性憲法型」である。とはいえ、その規定の存在だけでは不十分で、自治基本条例を頂点とする条例の体系化など、実効性を担保する運用上の仕組みも必要である。また、市民参加や情報公開といった市民の権利の根拠を定めることによっても、最高規範性は高められる、というのである。
著者によれば、自治基本条例の最高規範性規定は、最高規範性自体を明示するものや遵守義務を謳うものなど6種類に分類できるが、最も有力なのが、改正手続きを厳しくする(住民投票や特別多数決を組み込む)「硬性憲法型」である。とはいえ、その規定の存在だけでは不十分で、自治基本条例を頂点とする条例の体系化など、実効性を担保する運用上の仕組みも必要である。また、市民参加や情報公開といった市民の権利の根拠を定めることによっても、最高規範性は高められる、というのである。
筆者によれば、全国の152の条例を対象に、内容を指標化の上、それぞれの条例を数値化し、主成分分析を行った結果、それまでの「政策テーマ型」「自治基本型」「フルセット型」という類型化に加え、「直接民主主義志向」(採用する/しないに二分化される)と「参加・参画の具体化・義務化傾向」(前者ほどの特色は出ていない)という成分での類型化が可能だという。自分が主成分分析に通じていないこともあり、分析結果の解釈が明確とは言い難いが、条例内容の指標(表4)は、今後の条例分析の参考になりうる。
筆者によれば、全国の152の条例を対象に、内容を指標化の上、それぞれの条例を数値化し、主成分分析を行った結果、それまでの「政策テーマ型」「自治基本型」「フルセット型」という類型化に加え、「直接民主主義志向」(採用する/しないに二分化される)と「参加・参画の具体化・義務化傾向」(前者ほどの特色は出ていない)という成分での類型化が可能だという。自分が主成分分析に通じていないこともあり、分析結果の解釈が明確とは言い難いが、条例内容の指標(表4)は、今後の条例分析の参考になりうる。
自治基本条例を扱う論文で必ずと言っていいほど言及される一冊。
第I部は、一職員が自治体学会の地方分科会に出席したことから、木佐北大教授(当時)の研究会などに縁ができ、後に町長となる逢坂もそこに参加。その後の紆余曲折を経て、手弁当の「自治基本条例プロジェクト」が発足して独自の草案を練り上げ、町による条例案作成、議会での審議・可決を経て、日本初の自治基本条例「ニセコ町まちづくり基本条例」が誕生するまでの約9年間のルポルタージュ。第II部では、自治基本条例の意義、必要性、論点、今後の展望などが一般論として論じられる。
自治基本条例を扱う論文で必ずと言っていいほど言及される一冊。
第I部は、一職員が自治体学会の地方分科会に出席したことから、木佐北大教授(当時)の研究会などに縁ができ、後に町長となる逢坂もそこに参加。その後の紆余曲折を経て、手弁当の「自治基本条例プロジェクト」が発足して独自の草案を練り上げ、町による条例案作成、議会での審議・可決を経て、日本初の自治基本条例「ニセコ町まちづくり基本条例」が誕生するまでの約9年間のルポルタージュ。第II部では、自治基本条例の意義、必要性、論点、今後の展望などが一般論として論じられる。
自治基本条例も扱う重要参考文献候補であり、全体像把握のための最初の流し読み。
政策法務を「法を政策実現の手段と捉え、政策実現のためにどのような立法、法執行、訴訟評価が求められるかを検討する理論及び実務における取り組み」と定義し、政策法務の基礎(第1部)、政策的検討の理論(第2部)、法的検討の理論(第3部)、政策法務の実践(第4部)という流れで解説する教科書的一冊。
行政学や政治学、政策学とも異なるという「政策法務学」という学問領域を耳にしたのは初めてであり、まずはその違いが腑に落ちるまで理解することが必要。
自治基本条例も扱う重要参考文献候補であり、全体像把握のための最初の流し読み。
政策法務を「法を政策実現の手段と捉え、政策実現のためにどのような立法、法執行、訴訟評価が求められるかを検討する理論及び実務における取り組み」と定義し、政策法務の基礎(第1部)、政策的検討の理論(第2部)、法的検討の理論(第3部)、政策法務の実践(第4部)という流れで解説する教科書的一冊。
行政学や政治学、政策学とも異なるという「政策法務学」という学問領域を耳にしたのは初めてであり、まずはその違いが腑に落ちるまで理解することが必要。