Ehēcatl
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読書した本を流していきます フェリシモの色鉛筆のコンセプトに触発されて、 毎日1本づつ色鉛筆から連想を得た短編集を書いてます #500色鉛筆の乱筆 のタグで検索して下さい
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フェリシモの500色色鉛筆を揃えた記念
「500色鉛筆の一本一本に想いを馳せる」というテーマでスタートしました
一つの投稿につき1本分テーマとして書き、番号順で進めていきます
ただし、初めての取組の散文書きなので、乱筆乱文が多めです
ご了承くださいまし

今までの乱筆をまとめて追う形は下のハッシュタグからどうぞ
#500色鉛筆の乱筆
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「ばっかみたい」
カッカと怒りを溜め込みながら行きつけの飲み屋の引き戸を開ける
奥から二つ目の指定席に座ると
「大将、いつものー」
おでんのセットと角ハイを注文する
これを頼む時は臍を曲げてると大将は知ってるので、大将は苦笑いをしている
「飲み過ぎなさんな、ほい、大根はサービスね」
よく染みた大根を盛り付けている大将をよそに、不貞腐れた顔をカウンターで突っ伏している

「なんかあったんかい?」

「あのクソ上司がまた仕事を捩じ込んできたのよ
受けれる量という物を考えて欲しいのよねあのバカ上司」

「笑える日が来るさ、ほい、角ハイね」
氷がからりと鳴りながらくいっと飲んだ
#500色鉛筆の乱筆
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冬の放射冷却が起きた朝
空気の屈折で、遠くまでの音がよく響くのである
普段は騒音で掻き消される鉄橋を渡る電車
リズミカルにガタンゴトンと音がこだまする
にしても寒い、布団の中で寝ていたい

鳥の囀りが聞こえる
割り込んできたのが烏だろう
カーっとひと鳴きした後に、一気に羽ばたいた音がする
恐らくは小鳥は散り散りになり、我が物顔で烏が鎮座したのであろう
目を細めて、瞼が重くなる

うつらうつらと二度寝から目が覚める
車の交通量が増えてきた
エンジンが蒸す音がノイズとなってくる
人が行き交う雑踏や会話が、ミックスジュースになった
胃もたれするような煩さだ
渋々起きる事にする
#500色鉛筆の乱筆
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今年も夏がやってきた
マルベリーこと桑の実農場のアルバイトで出稼ぎである
背丈もある桑は格子状に整列しており
丁寧に実をもいでいく仕事だ

昼も過ぎて、汗水を流しながら息をついていると、桑の枝葉の影から手がにゅーっと出てきた
おいでおいで、と手招きされてる
蠱惑的に映る手のシルエットに目が釘付けになる

身体を横にスライドしながら視線を移動すると、垣根の向こうから農園のおばちゃんがにこにこにている
エロさを感じてちょっとだけときめいた己に凹みつつ
「どうしたんね?」
と紳士的に振る舞う

「暑いっちゃ、飲まんね」
身が割れた桑の実入りの炭酸割りが用意されていた
#500色鉛筆の乱筆
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斜暗いオークション会場
次の商品が案内される

「オークションNo.255
アメジストをご覧下さい
この鉱物結晶の希少さは純粋さといっても過言ではないです
ゆっくり何千年、何万年と悠久の時をかけて冷やされたが為に
空気や他の鉱物といった不純物が全く含まれていない、最高級の逸品となっております」

純粋ゆえに、触媒の価値が薄い
魔術師目線の評価はこれとなく低い
しかし、魅了されるほどの透明感はあった

一千万ー
二千万ー
二千五百万ー

値は釣り上がっていく

そうこうしてるとガベルは振り下ろされた
「透明な紫水晶何の価値があろうか」
圧倒的な輝きの前では人は眩むのだった
#500色鉛筆の乱筆
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「あら、いらっしゃい」
ふらっと立ち寄った占いの館
怪しげなお姉さんの背面にはボトルを並んでおり、入店した自分を見つめていた
「ここはオーラソーマをやっているわ、お兄さんも選んでみる?」

オーラソーマは水と油、二層に分かれた色彩が詰め込まれたボトルを選ぶというもの
ボトルがずらりと並んで出される

ピンときた
下が深い紺色、上がビビットの紫色
この色彩がいいなと直感が過った

「地上に降り立ったガーディアンね」

「守護天使が舞い降りてます、
深い洞察を持っているので、感覚を研ぎ澄ましましょう
そうね、一言、考えすぎないで」
何故か図星に当てられて鳩に豆鉄砲である
#500色鉛筆の乱筆
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今夜は十五夜、まん丸お月様が昇る
夕暮れもすぎに草臥れたスーツを身に纏いながら田舎の砂利道を散歩いている

周りを見渡せば、耕作放棄地に芒が風に靡いて、鄙びた印象が強い
しかし、今宵の月明かりはここ一番で明るい光の瞬きであり、
芒に住んでいる鈴虫が大合唱をしているので、歩いていても心細くはなかった

「お一人様」という言葉が似合う年頃になってきた
周りの人は僕だけの自由に気付かない
でも、恋はしたいんだ

「聞いてくれるかい?僕の話を朝まで?」
満月に向かってふと呟いてみる

月影は慈母であり、光で抱擁している
冷たい風は頬を撫でて、独り身の恋待ちを受け入れてくれていた
#500色鉛筆の乱筆
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冬の真っ白なゲレンデは、真夏は深緑のだだっ広い広場として閑散していた
そこで、観客を集めようと夏場にフェスが行われることになる
これが、今では伝説の夏フェスの始まりとなった
自然と共生を掲げるフェスは、日本人のお祭り気質と村が解け合うまで時間が掛からなかった

小さな山間の田舎町では、珍しい音楽が齎せることになる
最新の音楽が黒船の如くやってきたのだから、この村の少年少女たちの衝撃は甚だしかった

「いぇえええい」
コールアンドレスポンスが山間部に響く
薄紫に染まる空に、レーザービームが突き抜けていく
ギターやドラムの激しいビートが刻み、
歓喜の渦に包まれた
#500色鉛筆の乱筆
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かんぱあああい!
野太い掛け声がかかる
山盛りの料理が積まれてる机の上で、ビールが注がれたグラスが交錯し、カランと鳴る音がする
野球部野郎どもの同窓会である

彼らが青春を謳歌した頃
オンボロ部室で営まれていたお菓子パーティの思い出が各々過ぎっているのだろうか
誰かが持ち込んだ駄菓子がおつまみとして混じっているのが心憎い

高嶺の花だったマネージャーは、今は主将の妻として君臨してる
マネージャーは微笑みを湛えながら、あの泥だらけだった道具を整備していた頃を懐かしんでいた

何年経っても馬鹿げた雰囲気が包み込む宴会で、その当時のまま寛げる空間となっている
#500色鉛筆の乱筆
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早朝の電車内、曙の明るさの中リズミカルに線路を走る
始発駅から乗ってる俺は、都内の乗り換え駅まで、長い時間乗車することになる
暇つぶしに周りを観察していると、まだうとうとと船の漕ぐ人もしばしば見受けられる
そう思っている隣の乗客も、目がとろんと落ちて、傾きながらこちらに寄りかかってきた
寄りかかってきたのが可愛らしい女子大生なのがラッキーだ

朝日が車内に入ってくる
窓枠に光が差し込む
光を背にしてるのか、まだ女子大生は起きないと
乗り換え駅のチャイムが流れてくる
女子大生がはっと気がついて、飛び起きた
「すみません」
だが、まだ瞳は重そうだ

乗り換えはもうすぐだ
#500色鉛筆の乱筆
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時計の針が天辺を過ぎたあたり
ガチャリ
扉の鍵を開ける音がする
二歩前に歩いて真っ暗な室内に手探りでスイッチを探す
ふらふらして中々お目当ての位置が見つからない
手を伸ばしてカチッとスイッチが入る

がちゃごちゃに物が散乱する室内が照らし出される
足の踏み場が辛うじてあるのが救いだ
そろり、そろりと猫の足のステップでゴミを掻い潜り、そのままベットに飛び込んだ
よれた制服に上着を羽織ったまま
化粧も落とさずに泥のように眠り込んだ

身だしなみ?社会人の自覚?
そんなのどうでもいい
もうへとへとなんだ
今はこのままそっとしてほしい
脳内の理性を司る部分との会話が打ち切られた
#500色鉛筆の乱筆
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憧れの共学!
大学生デビューだ!
と意気込んでいた瓶底眼鏡くん
男子校の中ガリ勉で過ごしてきた故に、女の口説き方なんぞつゆも知らず
片っ端から「付き合ってください」と初手で言っては、玉砕してきた

それを傍らでみたチャラ男
妙な熱意にほだされて、「ちょっと見てな」と瓶底眼鏡くんを誘った
「そこの彼女、可愛いね
お茶でもどう?」
軽く微笑み、キラースマイルで悩殺していく

「豆知識は効果的に使うといいよ」とチャラ男がアドバイスをおくると
「なるほど、豆知識は効果的に使うといいんですね!」
真っ直ぐに瞳を輝かせる瓶底眼鏡くんに、苦笑いをするチャラ男
「まだまだかかりそうだ」
#500色鉛筆の乱筆
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扉を開けたら、遠距離恋愛中の彼女が立っていた
電話口の沈黙から、彼女に何かあると思って勇んでいた所だった
「かっちゃん…来ちゃった」
名前を呼ばれて彼女を見ると、涙が堰を切れたかのように溢れていた
わんわん泣いている彼女に上着を被せて話を聞いた
男性上司のパワハラセクハラに耐えかねていたようだ
「そんなとこ辞めちまえ!結婚して俺のところに来い」
咄嗟にでた言葉に、「はい」という言葉が返ってきた

翌朝、泣き腫らした彼女は会社に辞表を叩き付ける為に一度帰ることになった

「じゃあ、また」
束の間の別れが惜しい
「また、じゃないでしょすぐ来るんだから」
彼女は笑顔で手を振った
#500色鉛筆の乱筆
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「でねー、今日上司がさぁー」
・・・取り止めのない彼女からの電話だ
通話料は定額だから心配はないとはいえ、かれこれ1時間も話かけてくる
遠距離恋愛中の彼女と約束した「毎週土曜に一度は連絡をする」
出立する新幹線のホームで決めたことだった

にしても、今日はおかしい
所々でふつりと言葉が詰まっているのだ
妙な違和感に耳をそばだてて眉を顰める
「・・・なにかあったか?」
けらけらと笑って応える彼女
しかし、その声からは空元気な気がしてならなかったのだ

「今すぐ会いに行く」
そう返事をして電話を切ると
上着を羽織って、玄関へと向かった
そして、扉を開けた瞬間彼女が立っていた
#500色鉛筆の乱筆
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私の旦那は巨漢である
身長も2m近くあり、朴訥でぶっきらぼうなので、誤解を受けやすい
140cm後半の小柄な身長の私と並んで歩けば、天女が鬼を引き連れているかのように映るだろう
なんでこんなに身長差があるのに結婚したの?と初見の人にはよく言われる

しかし、私は知っている
旦那は私を愛してるを行動で示してくれる
しゃがんではおでこにキスをしてくれたり
私は旦那の大きな腕に包まれてお姫様抱っこをしてくれたりする

旦那を見つめると自然と上目遣いになるので、耳が赤くなっていくことも知ってる
そして、下から見上げた旦那は、堀が深くてギャップに時めくことも知っているのだ
#500色鉛筆の乱筆
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ここに、アイドル歌手のCDがある
頬を膨らませて伏せ目がちでこっちを向く姿
胡粉のベースにピンクのチークを乗せているのか、遠目からみれば血色が良く、ほんのり透明感がある
プルルンと摘みたくなる頬に
まるで、幼児がいじらしげに、突っぱねているようである
なのに、目鼻立ちがすらっとして、大人の色気混じりの視線がこちらに向く
所謂ゆるふわ系ファッションに
「うわーかわいいー
ジャケット買いをするかー」と
発売当時の男性諸君は思ったに違いなかった
昭和アイドル全盛期を過ぎた平成の過渡期の時代に発売されたこのCDは
燦然と輝くアイドルの系譜を今に続くことを伝える貴重な一枚である
#500色鉛筆の乱筆
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某アリーナで行われたアイドルのコンサート
一挙手一投足が観客の目を輝かせる
ダンスする衣装にも、彼女達のこだわりを感じる
新曲のために一から織ったという色彩豊かな生地に
すらりとしたスタイルが手先足先まで届くように、型紙をとって立体的に造られているそうだ

曲の曲の合間には他愛のない話から
次のセンターが誰か?というバチバチの火花が飛んだり
マイクトラブルのハプニングすら一体感をもって乗り切った

乙女心は「かわいい」にくすぐられ、この舞台に立ちたいと夢を見る
現実から切り離され、ただ、「推したい」という欲が渦巻くこの空間が「尊い」と思ってしまうのがオタクなのだった
#500色鉛筆の乱筆
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寝静まった深夜帯
ラジオのチューニングを合わせる
ざざっとノイズの向こう側から、音楽と共に声が流れ始めた
「さぁ、今夜も始まりました、〇〇ラィディオ〜♪」
若干のしゃがれ声が特徴の女性DJは、深夜帯のオカルト的な人気を博している番組を一人で取り仕切っている

「今日のトークテーマは「愛してますか?」
『愛は触れ合い』だと、私は思うのよね」
ハスキーボイスにとくんと胸が打つ

徐に番組のメッセージ欄を開く
訥々と、打っては消して、ラジオの向こう側へと伝えようと投稿した

「ラディオネーム××さん」
名前が呼ばれた
「投稿も『触れ合い』ですよ」
囁かれた一言に涙が溢れた

#500色鉛筆の乱筆
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小さい頃、巨大なテディベアは、むぎゅっと手を回して抱くと、全てを受け入れてくれるかのようだった

夢現つになった時に、ふと着ぐるみの「中の人」になったきっかけを思い出していた
この愛情のハグをする側になろうと、志してはや何年だろうか
「中の人」は汗だくになりながらも、愛を振り撒く毎日だ
今日も今日とてステージ袖のテントの中で、スタンバイをしている

「さぁ、みんなで、猫さんを呼んでみましょう!」
某熊本のもんにも引けを取らないと自負をする
猫頭を被った瞬間から猫だ

子供がダッシュで寄ってきた
むぎゅっと、抱きしめるときゃっきゃっとはしゃぐ
ああ、やはり愛はいい
#500色鉛筆の乱筆
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東北に落ち葉が風に舞い、空気が澄んで冷えていく頃
林檎が収穫のピークを迎える
太陽の日にあたって真っ赤に色づき、張りが出て艶で照る
最高級といっても差し支えない出来の林檎が生ったのである
一つ一つ傷が付かぬよう手で摘み取る農家の、出荷への待ち遠しさが溢れている
コンテナに納めた後、軽トラに乗って集荷場に運ばれる
そして、最新光学式機械によってオートメーションで選別された林檎は箱詰めされる
特に段ボール箱に印字された「特秀」の文字は、最高級品の証であるのだ
後に、林檎は東京の市場に競りに出されていく
薔薇色の林檎には期待が掛けており、農家は送り出すのだ
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お中元の桃ゼリーが届いた
桃の果肉が贅沢に大ぶりに入っている
特に桃色というよりは果汁の黄色みが半透明で増してる
見た目は新鮮切り立て桃をそのままゼリーにしました!感がする

「突っついて食べる?」
まじまじとゼリーを見てた妻に問うとこくりと頷いた

ガラスの器に、容器の隙間から空気を入れて着地をすると、プルンと弾んだ
スプーンで掬って
「はい、あーんして?」
妻は頬を赤らめた
差し出したスプーンの上のゼリーはプルプルと震えている
「あーん」といいながら口を開ける
ぱくっ
頬の他にも耳が赤くなっていく
「美味しい?」
もじもじと身を震わせて
「美味しい」とぼそりと呟いた
#500色鉛筆の乱筆
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豪華クルーズ船の旅行
日本国内の湾を3泊4日クルーズする初日
至れり尽くせりの世界を過ごす

宿泊した部屋はスイート
眺望は海が真一文字に見れるほど広い窓の開放感
ベットメイキングも皺一つなくフカフカだ

スーツケースを部屋に置いてから、デッキを散策する
プールの周りでウェルカムドリンクが振舞われていた

「搾りたてのグァバをどうぞ」

南国に向かうからか、聞き慣れない果物のようだ
ウェーターに会釈をしてスッとグラスを取る
飲んでみると、林檎と桃をミックスしたような味がした

ジャーンジャーン
出港を合図する銅鑼が鳴り響く
陸地に別れを告げ、
大航海が始まるのである
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夏の日差しが和らぐ夕方
ピンポーン
インターホンが鳴った
麦わら帽子を被った隣の奥様である

「家庭菜園でできた西瓜、生りすぎて食べきれなくなっちゃった、持っていって頂戴」
「あらまぁ、じゃあこのお菓子食べてって、こっちも食べきれないのよね」

田舎あるあるである
野菜のお裾分けという名の物々交換で一種の経済圏が成り立っていると言っても過言ではない

幼児では両手に抱えきれない爆弾西瓜
齧り付いては真っ赤に顔を汚していた

大人になり、子供の頃は物々交換の品として実家に来ていた西瓜が百貨店で仰々しく包まれて売られていた
5000円の西瓜がそんなに高いんだ?と二度見をした
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行きつけの果物屋さんでの買い物
今日は蜜柑を買いに来た
「大将、いい蜜柑あるかい?」
「お高級だが、蜜柑はあるで!」
と大将が奥に引っ込んだ
一寸待つと「クレメンティン」と書かれた段ボールを掲げて出てきた
中を見ると、見慣れた温州みかんよりも小ぶりな品種の蜜柑が個々に包装されていた

「美味いでぇ、これは「隠し玉」や」
すすっと剥いて大将は一房渡してきた

一口食べてみると驚愕である
甘さのパラメーターに全振りした蜜柑だったのだのだ

「・・・大将?!」

「美味いやろ」
したり顔の大将である
「ごっつう高いが、美味いやろ」

掌に包まれたこの神々しい蜜柑は甘美であった
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「はい、息を吸いながらー
そのまま横ーにのばすー」

マットの上では老若男女様々な人たちが同じ伸びたポーズを取っていた
日曜の公園で行われる、ヨガ教室の一幕である

ヨガ講師を勤めてる私
自然に被われた空間でやるヨガが一番好きだからこそ、やってきた

さて、ある日のこと、ヨガの講習を終わるときに「マダム」が声をかけてきた
老年の顔の奥に凛とした瞳が聡明さがあるのでマダムと呼ばれている

「これ、おばちゃんからのお裾分け」

瓶につめられたオレンジピールがウインクしながら手渡される
「この前好きって言ってたから」

たわいのない会話を覚えてくれていたマダムに嬉しさを伝えた
#500色鉛筆の乱筆
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今日は百貨店で九州物産展が開かれている
陳列棚には宮崎県産の完熟マンゴー「太陽の卵」が置かれていた
某若いタレントがテレビでマンゴーを猛烈にアピールしていることを思い出す
弾ける笑顔でマンゴー片手にマンゴーの良さを熱弁していた
なんでも、完熟したマンゴーは自然に落ちるので受け止めるネットが掛けてあるのだとか
ミーハーな俺は、彼女の熱意に推されて、ものの試しにとマンゴーを手に取ってみた
熟れた甘味がもう立ち込めている
なんとねっとりとした香りなのだろう
それは行ったこともないのにも関わらず南国特有な雰囲気を想起させる
まだ味わってもないのだが「太陽の卵」と名は体を表していた
#500色鉛筆の乱筆