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猫好き🐈‍⬛青い空でも夜中にこっそりと散歩にでかけるみたいに詩を書きます。せっかくうまれてきてくれた詩だからここに置いていきます。
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#詩　「春とトースト」
🍞🍯🐝
トーストに落ちていく はちみつの 速度も変わって 春 爪先で こち こち と たたく 池を覆った 薄氷みたいな あのときの 傷のかさぶた 有明の月のような 傷のかさぶた
March 2, 2025 at 12:27 PM
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#詩　「はなふぶき」
空から 花びらとして 落ちてくる 一人称と 二人称 わたしときみ きみとわたしが ひらり ひかり ひだり ひらり ひかり みぎ ワルツみたいに ゆれながら 無数に垂れる ひのひかりと こずえの影の 帯をくぐって ここへ こころへ 落ちてくる ひらり ひかり ひだり ひらり ひかり みぎ この世界の音が鳴り止むまで わたしときみ きみとわたしが 花びらとして あとから あとから 落ちてくる いつかすべての花びらが舞い散ったら 無数の花びらが舞い散ったら この世界はきっと 凪いだ海のように たったひとつの鏡になって 空の瞳を映し出す 空はなにを思い出すのだろう 行方を探すわたしの手を きみの手が握る そしてまっすぐにわたしの目を見る いち に さん いち に さん そう言って にっこりと 笑って 合図をおくる わたしはうなずいて ほほえみをかえす きみが一歩踏み込んで わたしは一歩足を引く ひらり ひかり ひだり ひらり ひかり みぎ 記憶が還る港に打ち寄せる波を 互いの服の裾にして わたしたち ワルツを踊る ひらり ひかり ひだり ひらり ひかり みぎ この世界の音が鳴り止むまで 一人称と 二人称 わたしときみ きみとわたしが 一人称と 二人称 わたしときみ きみとわたしが 空から
February 28, 2025 at 9:57 AM
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#詩　「まどろみりずむ」
線路沿いの道 寝息をたてている踏切 水色のフェンス 立ち入り禁止の陽だまり まるでガラスケースの中 どうしてだろう しづごころなく あなたが生きた日々が降っている あなたがした瞬きの分だけ降っている 素肌のような春の陽は子守歌のように もういないあなたの胸にやさしく手を置いていて とんとんと音もなく叩いている あなたがよく眠れるようにと 私の瞼もそのリズムに合わせて瞬きをしている とんとんと とんとんと もういないあなたの鼓動を その波を 光のヴェールにかえて とんとんと とんとんと 春
February 15, 2025 at 12:08 PM
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#詩　「きみがため」
❄︎🥬❄︎
まだねむるきみをのこして ゆきのふる はるののへいく ひとりきりでいくみちのうえで まばたきは うかしたてのちょうのように やわらかい すべてのことばのよはくのような しずけさで あたりはみちて そらは ならされるまえの すずとしてある しゃらしゃらと それがなったのを わたしはきいたことがある わたしは わたしが こえをださずに はじめてないたひのことを おもいだした そのなみだは ははおやにふりかえってもらうためのもの ではなく なにかがいやだと あらわすためのものでもなくて ただただ まっすぐみつめるめから まひるのながれぼしのように こぼれて きえた ほおにのこったそのきどうのかんしょくは いまでも すいへいせんや ちへいせんとおなじように そのむこうがわに だれかのけはいをつくりだしている いきをはく しろくなる こえとこきのあいだ しゃらしゃらとそれはなる いきをはく しろくなる こえとこきのあいだ しゃらしゃらとそれはなる　 わかなは ましろのなかに やさしく てんてんと ともり わたしは もんしろちょうのように それらを じゅんじゅんに たどっていく ぬれたつちに てはあかくなる はじめ さすようないたみだったものは いまではもう ひかりになっていて せかいは めをとじても まぶしかった かえったら これで きみに ごはんを つくる きみがたべやすいように おかゆをつくる あたたかな ひをおこして なべにみずをはって すこしのしおでしたゆでをして とりだしたら つめたいみずで かるくしめて おわんによそった おかゆのうえにそれらをのせる ちゃんとおぼんとはしおきもつけて そして りょうてをあわせて きみと いただきますをする きみと いっしょに ごはんをたべる このほしの このうちゅうの ごはんをたべる あとすこしだけ もうすこしだけ たちのぼるゆげごしに わたしたち このうちゅうの ほしでいましょう あとすこしだけ もうすこしだけ ただそれだけを ねがって わたしは いま ゆきのふる はるののにいます
February 14, 2025 at 9:41 AM
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#詩　「うたたね」

猫の写真を見ていたらできた詩🐈‍⬛
どんどん、詩が長くなっていく。
日が伸びるみたい。
ねこがねこではなく まどべがまどべではなく れーすのかーてんがれーすのかーてんではなく ひかりがひかりではなく いすがいすではなく きょうがきょうではなく ここがここではなく わたしがわたしではなく きみがきみではない そんなばしょで わたしたちは ずっとまえに であっていた おたがいのひとみを へやのなかにある てんたいとしてみつめて いっせーのーで こいにおちた だれもどこにあるのかしらない えきをめぐって がたんごとんと そのばしょは そのへやは れっしゃのような ひとつののりものとして いまも このうちゅうを このときを たびしている がたんごとんと ゆれ ゆれる ゆれた ゆれて まどべで ことばが ねこみたいに けづくろいをして それから きもちよさそうに のびをする めをとじ めをとじる めをとじた めをとじて れっしゃがここちよくゆれる わたしは たくさんのゆめを くぐりぬけていく まだだれにもみられていない ゆめ だけど いつかみたことがある ゆめ また そのぎゃくや はこにしまわれた ゆめも こなざとうのせつげんを ころがっていく どーなつみたいに たったいちどのけっしょうを みにまとっていく とおくの とおくで れーすのかーてんがゆれている わたしはこいびとのなまえを おもいだす ひとりのみちで ひとつのうたを うたいだすみたいに そのなまえの ひびきや いろを おもいだす うたってどこにあるんだろう そんなことをおもう わたしはこいをしていて はるのどろのような りんかくがほどけるような まどろみのなかで わたしはこいをしている そうおもえること つぎめをさましても こいをしているとおもいながら ねむりにおちていくこと それほどすてきなことはない きがついたら うたたちがあそぶもりのなかに わたしもまよいこんでいた それは ずっとずっと いきて ずっとずっと しぬこと れーすのかーてんがゆれている それは ずっとずっと いきて ずっとずっと しぬこと めをあけ めをあける めをあけた めをあけて あくびをしたら ねこもあくびをかえして そのひとみをみつめたら しらないてんたいが ひとつ へやのなかにうかんでいた てーぶるのうえには さらにのったどーなつ わたしはこーひーをいれに だいどころへむかう ねこもいっしょについてくる わたしはほほえんで とおくにある ひとつのうたを くちずさむ そのひびきと そのいろを おもいだす
February 7, 2025 at 3:39 PM
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#詩　「ふきん」
よくわからないものを書きたくて🐈‍⬛散歩するみたいに自由に🐈🐈🐈
さっきまで 春先の薄暗く、ひんやりとした台所にあった 布巾は 今 ベランダで 光をはね返しながら 魂のように揺れている 私は魂のことについてはよく知らない けれど、この体のなか 宇宙よりも暗いこの体のなかに それがあるとして また、それを取り出せるとしたなら 陽の光の内に入れてみたいと思う つめたい水に赤くなった手 絞った布巾を広げて はたいてしわを伸ばす 窓の外には巨大な柱のような光 別に外に干す必要なはなかった いつもならそうはしなかった でも今日は外に干してみた そして今それは光の中で揺れている 私の体は誰もいない台所のように しんとして どこか悲しいくらい 清潔なものとしてある かつてそこにあった幼さ あるいは乾燥した野菜くずが挟まっているコンロのような ひたむきな生活感を そっと愛しむ今 流れ込み 吸い込んだ 網戸越しに流れ込んでくる風の匂いに 記憶と幻の四つ辻で あなたの微笑みが椿のつぼみのように ゆっくりと だけど一斉にほころんでいく 窓の外では 布巾が 風に揺れている この世のすべての光を 跳ね返しながら エンドロールが流れ終わったあとみたいなベランダで 私はメモ帳に先の丸くなった鉛筆で書き込みをする 紙の上に鉛筆を走らせる それは文字ではなく淡く柔らかな傷なのかもしれないけれど 今ここに その音を響かせる どこか遠く 昔々 まだ名前のない人が あるいは もう名前のない人が 春先の薄暗く、ひんやりとした台所の扉を開いた そうです つめたい縁甲板の上 その素足は柔らかな感触に触れました よく見るとそれは椿の花でした いくつもいくつも落ちた椿の花なのでした 白い素足は ほのかに赤く色づいて ずっとそのままだった そうです そのひとはその足のまま 草原も 砂浜も 雪原も 歩いていった そうです 淡く赤く 桃色もある その足は 愉快に ときおり 切なく でも 軽やかに 世界に リズムを 読点を つけて いって 最後の句点は両足で着地して両手を広げて笑った そうです そして土に還っていきました 春が来ること 花がほころぶこと それは喪失によってもたらされる リボンがほどけることで箱が開くように 祝福と言う鍵穴には喪失という鍵があてがわれている 私もかつて鍵穴だった 次は私が鍵になる そう、いつかあなたの 春になる だけどこの手はまだ赤く冷たい そして さっきまで 春先の薄暗く、ひんやりとした台所にあった 布巾は 今 ベランダで 光をはね返しながら 魂のように揺れている
February 2, 2025 at 12:54 PM
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#詩　「うたたね」
うたたねをする この星の うなじに照る AM11:05のひかり
January 28, 2025 at 6:10 AM
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#詩 「星の子」
🐈‍⬛🐈🐈
　うたたねをする 　この星の子の 　うなじに照る 　AM11:05のひかり
January 26, 2025 at 1:26 AM
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#詩 「もみじ」🍁🍁🍁
透明な炎 マッチに 灯して 近づける 葉先に 幾千の葉 一斉に色づいて 乾いて 軽やかに なっていく いのち、いのち、いのち 風に舞った 幾万の いのち 河になって 街を流れる 硬い、硬い、硬い コンクリート に 火を放つみたいに 君は降りしきる 落ち葉 に 長靴で水たまりを踏むこどものよう に 踏み出して 鳴らす、鳴らす、鳴らす その笑顔は神様から くすねた 透明な炎 どうか 私の裾に 灯して、灯して、灯して 何よりも 軽やかに 罪悪感なんて とおく、とおく、とおく くる、くる、くる と まわる 四季みたいに 私を 燃やして、燃やして、燃やして
January 20, 2025 at 9:38 AM
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#詩　「ケンケンパ」
「ほんにおまへもあの時は 此の世の光のたゞ中に 立って眺めてゐたつけが……」 詩集を閉じて顔をあげる 午後1時38分 たぶん去ったわけじゃない それは光そのものだった そして私たちもそう 私たちは光だった 短い冬の昼間に 降り立った 光だった 真夏の入道雲 公園の芝生 タロイモの葉 に飛び込んだ あの光だった 色とりどりのラグ ビロードのソファ 公園のブランコ 薄暗い物置 梢の下 海が眠る621号室 みんながやってくる前の草原 ケンケンパするみたいに 渡り歩いた 私たちは光 そして記憶とは光の標本のこと でもちゃんと生きていて ピンで留められてはいない 振り返れば 光たちが おしゃべりをしている とても楽しそうに 小さくてそして大きなその部屋のなかで 今、目の前にある一方通行の渡り廊下は実は 未来と過去のどちらにも続いていて（未来と過去は同じ方向にあって） 私たちは絶えず近づいている　 触れることはなくとも絶えず近づいている 詩集を閉じて顔をあげる 午後1時38分
January 6, 2025 at 11:26 AM
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今年のテーマは「移動」ということで、まずは山手線を何回かに分けて歩いて一周してみることに🚃🚃🚃
駅は通過点で道のりは自由🐈‍⬛
1日目は東京駅スタート。
東京駅 新丸の内ビルディング アップル丸の内🍎 銀杏の葉がまだほとんど残っている木
January 3, 2025 at 12:10 PM
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#詩　233「winter scarf」 🧣
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森の中 細かな雪が サラサラと降っている 世界中の本を一遍に ひっくり返して そこから言葉が 一斉に零れ落ちるみたいに降っている 私はただそれをじっと見つめている なにが書かれているのかはわからない でも ただただ 綺麗だなと 思う 森の木々は喪服のように黒く もういない者たちを偲んでいる みんな目を閉じることで 遠くに行った者たちに呼びかけている 赤いマフラーをつけた私だけが一人 まばたきをして 降りつづける雪を見ている 音は すべてのみ込まれて 無音で とてもとても 大きな 宇宙みたいな 無音で 私の瞬きの音が 木霊するかのよう もしかしたら この雪の一粒一粒は 赤ん坊なのかもしれない 名前を付けられることのない赤ん坊たち きっと私も同じだった 私もかつて誰かのまつ毛に降り立ったことがある 遊ぼう　 声が木霊した 一羽の鳥が羽ばたくように空気が震えて 私の声帯は熱く熱を帯びていた 遊ぼう そう声が木霊した 雪は空に舞った まるで逆再生するみたいに はるか上空に雪は舞った
January 2, 2025 at 10:31 AM
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#詩 「まばたき」
夜の大切さを思って
あなたもこの景色を見ていた そう思うことのさみしさは 新雪についた足跡 それは不在の証明で さらにその足跡は雪が降って消えるか 今積もっている雪自体が消えてしまうか どちらが消えるのかわからない そんな折り重なったさみしさだ 黄金色の部屋の中 瞬きをすると 夜が一歩 また一歩と近づいて来る ベランダに干したままの洗濯物が風に揺れている 誰にも知られずに雪は降る その瞬間を私は目にできない 雪が降るのは 本当に暗い真夜中 全ての瞼が閉じられた真夜中 そのような真夜中を皆 胸の中に持って生きている 忘れるためではなくて きっとのりこえるためでもない ただ生きるために 胸の中に持っている 誰も知らない壁に西日が触れる 私は まばたきをする 一歩 また一歩 夜が近づいてくる
December 27, 2024 at 1:59 PM
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#詩 「魂の移動」
🚃🚃🚃
こんにちは。元気にしていますか？ 私は今、列車のなかで、いるかいないかもわからない、あなたに手紙を書いてみています。 どうしてかはわからないのだけれど、いるかいないかわからない、あるいはどこにでもいる、またはどこにもいないあなたに手紙を書かなければと思い立ったのです。 これから何を書けば良いのか自分でもさっぱりわかっていません。 この手紙の終りまで書ききれる気はしていないのが正直なところなのだけれど、それでも書き出してみる、ただそれだけが重要な気がしたのです。 それは私が今、移動中ということと関係しているのかもしれません。 移動すること、本来、魂の本質はそこにあるのではと私は思うのです。 そして私というものは、一つの駅にすぎないものなのかもしれません。 自己同一性という概念は誤りとは言わないまでも不完全なもの、文脈に依存するものなのでしょう。 魂は移動する。 私とは遥か後方の駅、あるいはこれからやってくる見知らぬ駅のこと。 そして駅と駅の間には名前のない街や平原がたくさんある。 魂はそれらをやさしく眺めている。 なんとなくそう感じます。 魂のことなんて考えたこともなかったのだけれど、今ここ、列車の窓辺の席にいる私のことを私と呼ぶのは少し違う気がして、魂と仮に呼んでみたらしっくりきたのです。 きっとどこかの駅で降りたら、こんな感覚はなくなってしまうのでしょうね。 だからこそ、今あなたに手紙を書いているのかもしれません。 いや違う。 そうじゃない。 だめですね、つい癖で物事に終わりを、因果を、美しい着地を与えたくなってしまいがちです。 だからこそとか、したがってとか、逆に、しかしとか、そういった接続詞はおばけみたいなもので、付き合い方には気をつけないと。 つなげずにいるということだって、つなげることと同等に意味を持つことがあるのだから。意味というより世界という言葉の方が近いかしら？ 私とあなた、その響きの前に接続詞はきっとない。 （便宜上、私という言葉を使いました。これもいらない弁明ですね） つながりが不明でも、 つながりなんてなくても、 どのような文脈も越えて、私たちは互いに光を当てている。 そんな風に思います。 あなたの光はここにある。 そう思ったら、なんだかとてもしなやかに生きれそうな気がします。 しなやかさ、やわからさ、なめらかさ、魂とはきっとそのような性質のもので、その性質は 失われることのないものです。 だからでも、したがってでも、そのためでも、それならばでもなくて きっと大丈夫。 私たちは大丈夫。 そんな風にできています。 だからでも、したがってでも、そのためでも、それならばでもなくて ずっとずっとしなやかに生きましょう。 そしてしなやかに死んでいきましょう。 だからでも、したがってでも、そのためでも、それならばでもなくて その日まで、どうかお元気で。 どうか、ずっとずっとお元気で。
December 24, 2024 at 3:57 PM
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#詩　「月と私」

　　　　🌕
ガラス戸を開けてベランダに出る 吐く息が白い 羽織った服の襟元を寄せ合わせる 月を探す ちょうど真上 見上げると 庇の端ギリギリに隠れるか隠れないかの位置に月 用意したスツールに腰をおろす 目線を落とすと 部屋から持ってきたハーブティーに 月が映り込んで揺れている 意外と表面を静止させるのは難しくて 手のひらにおさまるその小さな湖面に 月はでたらめな指揮棒のような軌跡をえがく 今年最後の満月をちゃんと一人で見上げる それは何故だか私にとて大事なことであるような気がして そして、今まで見上げてきた月のこと、月を見上げていた私のことを思い浮かべる 実家の庭にいた私 夜の浜辺で防波堤に寝ころんでいた私 駅のホームにいた私 アスファルトの上で振り返った私 月を見ている間はそこにちゃんと私がいたんだと思う 月を見続けている間は消えたりしない 命が約束されているのだと感じる 月を見ているといつも 部屋にもどるタイミングがわからなくなる 自分と別れるということが難しいのと同じように どうして人は自分と月を切り離すみたいな形に住みかを作ったのだろう そんな風にすら思ってしまう 蝶々結びの紐を引っ張るように 輪郭がするすると解けていく 私というものはさなぎの殻だったのかもしれない 今、ここにあるのは解けた私の輪郭からすり抜ける 1匹の名前のない蝶なのかもしれない そうだったら素敵だなと思う そして 私たちは新しい体の動かし方を、羽の広げ方を練習する そんな風に生きたいなって 思う 月を見上げているときそこにいるのは月と私、私たちという一人称複数形の命。 どちらか一方だけでは表しきれない。 どちらかが独立して存在していない。 どちらか抜きでは名指しできない。 月を見上げている間、月は私と無関係に空に浮かんでいるのではないし、私も月と関係なく椅子に腰かけていない。 コップをのぞき込む 中身は空っぽになっていて 外気に露出した指は冷え切ってしまっている 蝶は逆再生で殻のなかに戻る しばらく待ってみても また外に出てくる様子はない 私はしかたなく部屋に戻る 月と同じ屋根の下で眠れたなら 森も海も星たちも 招き入れて 一緒に眠れたなら 空の飛び方もきっと ずっと忘れないままでいられるのに そんなことを考えながら 私は今日も私としてベッドに潜りこむ 私は今日も私として眠りに落ちる ちゃんと落ちる また戻ってこれるようにと 遠くに日々の篝火を灯しながら
December 24, 2024 at 3:55 PM
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#詩 「海になる人」
かつて地球に降った1000年の雨 きっとそれがあなたの心の始まりだった あなたの微笑み 浅瀬の底に映る魚の影みたい わたしたち8月の入道雲の白みたいなシャツをまとって 空の青の深い悲しみを 脊柱にして 道の真ん中に立つ あの窓辺で鳴り続けていた風鈴みたいに にわか雨 海の近くの 松林の中 君の胸に耳をつけ 濡れたシャツ越しに聞いた1000年の雨 木立から川になって流れ出した日の光が 宙を泳いだ銀色の魚の数千の鱗に跳ねかえって 無数のガラスになって散らばった 裸足の私たちだけど 怖くなかった 私たちはもう何も恐れなかった 本当に美しいものは汚されないし 傷つかないこと知っていたから スタートラインみたいな白い堤防の上に並んで あなたの顔を覗き込む 浅瀬の底には魚の影が映っている きらめく緑波 潮風の匂い ここがきっと最初の記憶 最後の記憶と結ばれる場所 手のひらにのせる巻貝の螺旋は紙吹雪舞うパレードの足音として響いて 瞬く水平線上 巡る風の中で幾千の風鈴が手を叩くみたいに揺れている
December 2, 2024 at 2:51 PM
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#詩　「海を梳く」
　ごめんね 　僕はただ 　笑うことしかできなかった 　さみしいというつぶやきが 　ピアノの音色であればよかった 　2人でピアノの前に座って 　ぎこちない指で鍵盤をポロポロ弾いて 　たまにコードが鳴ったときに 　目をあわせて 　笑えたならよかった 　今、目の前に 　海のように 　広がっている 　この鍵盤に 　私は 　両の手を置くよ 　靴を脱いで 　裸足になるみたいに 　波に指をひたして 　海を 　梳く 　みたいに 　ごめんね 　僕はただ 　笑うことしかできなかった 　さみしいというつぶやきが 　ピアノの音色であればよかった
December 1, 2024 at 5:59 PM
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#詩　「犬歯」
かわいい君 が にかっと 笑う ときに のぞく 犬歯が好き だってそれは 遠い昔 まだ武器もない時代 食べるか食べられるかの時代に 名前もない 午後 窓枠の外にただ消えていく雲のように 名前もない 一匹の生き物 が 必死に 生きようとした 決意 だから
December 1, 2024 at 4:26 PM
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#詩
12月のアスファルト 消えた君の影 うつむくと 少しくたびれた お気に入りの靴 まるでピースが欠けたパズルみたい もしもし今何してるの って笑う君の声 最初の言葉 いつもそれだった 別に何もしてないよ そんなやりとり嫌いじゃなかった 二人で行ってた夜中のコンビニ 今ではもう行かないけど きっと今夜も照らしてる 駐車場の白線のなか 二人の影だけ寄り添っている 私は結構元気でいるよ 窓を開けて月をみてるよ ねえ、知ってる？ この光は一度月に触れた光だってこと ねえ、知ってる？ 君の指先、私の心に触れていたこと
November 24, 2024 at 2:05 PM
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#詩
かなしかったの きみはそらをとべるひとだったから わたしはじぶんのあしもとをみて とりたちのことをわすれようとした うれしかったの きみがわたしのもとにおりたったこと かなしいけどうれしかったの きみのはねをわたしはずっとおぼえてる たかくたかく とぶはねを わたしはそっとうたにして そらのそこをあるいてる あおくあおく なるむねを きれいでちいさなすずにして ちりんちりんとならしてる たかくたかく とんでいて あなたのはねはかがやくから ことばもこおるせいそうけんで
November 24, 2024 at 2:03 PM
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#詩
神様もこんな気持ちだったのかな 線香花火の向こうに君をみて思う 暗闇の中 2人しゃがんで 火を付けて 笑った後の沈黙のなか 大好きだなって思っていたよ 神様もこんな気持ちだったのかな 手をふって見送った駅のホームで1人 硬いベンチに じっと座って 白い息吐いて 乗るあてのない電車の前 元気でいてねって願っていたよ 君はどんな気持ちだったのかな 私は今日、宛名のない手紙をポケットに入れたよ
November 24, 2024 at 2:02 PM
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#詩
あたたかなアスファルト 伸びる白線 数を数えて振り返る こちらを見ている 君を見て思い出した はじめて一人で見た空と海の色 私たちに歌があるのは こんなに一人ぼっちだから ハロー グッバイ ハロー グッバイ 春色のカーディガン羽織って ギター鳴らして 私は 迷子になって泣いていた 誰かの心 抱きしめている
November 24, 2024 at 2:01 PM
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#詩
おやすみ きみのこえと ぶらんけっとで よるはきれいなねこだった ねことぼく すこしずつなかよくなって あたまをなでたら ごろごろと のどをならした よなかにめをさましても こわくないよ てをのばせば そのやわらかなけなみに ふれるから どしゃぶり いいおとねと ひとみをとじている そのかおがすきだった あめのおと ひとつずつあおくひかって まばたきをしたら ぽろぽろと なみだがおちた かさのないまちにいても いやじゃないよ みみをすませば あのおおらかなきみに あえるから ねこのなまえおぼえていますか？ そんなかきだしのてがみをかくよ きみからもらったせかいだよ きょうもちゃんといきをしてるよ
November 24, 2024 at 2:00 PM
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#詩
シガレット 目を閉じたら あの日の窓辺で ずっと夜が続いていた ポケットの中のシガレット 取り出して 口に咥えて 火をつける 煙越しの世界ぐらいで ちょうどいい ほら 煙の向こうで まつ毛に光 君に花 世界はそんなふうに 揺れて 揺れて 揺れて いる 手をほどいたら 窓辺の向こうに そっと朝が近づいていた ポケットの中のシガレット 取り出して 口に咥えて 火をつける 煙越しの私ぐらいで ちょうどいい ほら 煙の向こうで 薄闇にうかぶ 君の肌 世界はそんなふうに 咲いて 咲いて 咲いて 散る
November 24, 2024 at 1:59 PM
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#詩
白い花を胸に挿したまま ガラスの指先で 海を呼ぶ いくつもの名前が 混ざったその青色が さようならの後を生きる僕らの 足をぬらすよ 何度も何度も 寄せては返すよ 黒い服の裾はぬれたまま 烏のくちばしは 空を飛ぶ いくつもの名前が 還ったその藍色で さようならの前を生きる僕らは 言葉を記すよ 何度も何度も 消えても記すよ
November 24, 2024 at 1:59 PM