冬の蠅/梶井基次郎
女生徒/太宰治
春琴抄/谷崎潤一郎
銀河鉄道の夜/宮沢賢治
眠れる美女/川端康成
城の崎にて/志賀直哉
砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない/桜庭一樹
ティファニーで朝食を/カポーティ
ライ麦畑でつかまえて/サリンジャー
ロリータ/ナボコフ
科学的思想が蔓延している現代において、地球空洞説やUFO、舞踏病などタイトル通りアナクロニズム(=時代錯誤)的な現象、思想についてのエッセイ集である。僕はこの本をかなり気に入っている。僕は科学を学んでいる身であるが、それは一種窮屈なものであり、そこにまだ囚われていない人間の自由な発想は非常に魅力的であった。冒頭で紹介される自分を将軍だと思い込んでいた明治の精神病患者「蘆原将軍」は中々興味深く、種村季弘もかなり親近感を抱いていたようで、その筆致は踊っている。空飛ぶ円盤の古い記録の紹介や、今では奇妙な地球空洞説を唱えた様々な人物の紹介も面白かった。 (1/2)
科学的思想が蔓延している現代において、地球空洞説やUFO、舞踏病などタイトル通りアナクロニズム(=時代錯誤)的な現象、思想についてのエッセイ集である。僕はこの本をかなり気に入っている。僕は科学を学んでいる身であるが、それは一種窮屈なものであり、そこにまだ囚われていない人間の自由な発想は非常に魅力的であった。冒頭で紹介される自分を将軍だと思い込んでいた明治の精神病患者「蘆原将軍」は中々興味深く、種村季弘もかなり親近感を抱いていたようで、その筆致は踊っている。空飛ぶ円盤の古い記録の紹介や、今では奇妙な地球空洞説を唱えた様々な人物の紹介も面白かった。 (1/2)
ゴーレム、人形、ホムンクルス、機械人間、それら怪物の神話から現在の芸術に至る系譜、人間が神のごとく人間を創造する行為、人形に恋をする行為に潜む思想の連なりを考察していく。デカルトの少女人形や、「ファウスト」のホムンクルスなど、興味深い題材は色々あったが、中でも僕の目を惹いたのは「ピュグマリオンの恋」だった。題材は、ピュグマリオンが彫刻した象牙の乙女に恋をし、女神に生命を授けてくれるよう祈り、その人形を妻にめとったギリシャ神話である。種村季弘そこから江戸川乱歩の「人でなしの恋」などにもみられる偶像崇拝、無時間性の信仰、機械性愛を読み解く。
ゴーレム、人形、ホムンクルス、機械人間、それら怪物の神話から現在の芸術に至る系譜、人間が神のごとく人間を創造する行為、人形に恋をする行為に潜む思想の連なりを考察していく。デカルトの少女人形や、「ファウスト」のホムンクルスなど、興味深い題材は色々あったが、中でも僕の目を惹いたのは「ピュグマリオンの恋」だった。題材は、ピュグマリオンが彫刻した象牙の乙女に恋をし、女神に生命を授けてくれるよう祈り、その人形を妻にめとったギリシャ神話である。種村季弘そこから江戸川乱歩の「人でなしの恋」などにもみられる偶像崇拝、無時間性の信仰、機械性愛を読み解く。
悪夢のような映画。セリフや物語は抽象的で、時間軸も空間も曖昧。登場人物は違う時間にいると思いきや、カツラを取って前の時間に戻ってしまうし、場面は変わらないまま気づけば別の空間へと移動してしまう。突然裁判の状況になり周りに指を指され「有罪」と連呼されるシーンは悪夢そのもので、カフカの世界のようだ。最近、吉田喜重の映画を見て思うのだが、映画とは悪夢のようなものであるべきかもしれない。
「エロス+虐殺」に見られる精緻な構図はここにも見られるが、鏡や机、ピアノなどの光の反射を利用した構図が数多く見られる。そして、カメラはより動きが多くなっている。
悪夢のような映画。セリフや物語は抽象的で、時間軸も空間も曖昧。登場人物は違う時間にいると思いきや、カツラを取って前の時間に戻ってしまうし、場面は変わらないまま気づけば別の空間へと移動してしまう。突然裁判の状況になり周りに指を指され「有罪」と連呼されるシーンは悪夢そのもので、カフカの世界のようだ。最近、吉田喜重の映画を見て思うのだが、映画とは悪夢のようなものであるべきかもしれない。
「エロス+虐殺」に見られる精緻な構図はここにも見られるが、鏡や机、ピアノなどの光の反射を利用した構図が数多く見られる。そして、カメラはより動きが多くなっている。
衝撃だった。吉田喜重の映画に、僕は完全に、胸を打たれてしまった。鏡や窓枠、木の枝の隙間などを乱用した、計算的な、緻密なパズルのように組み立てられ、余白の美を感じさせる、斬新な構図。窃視症的なカメラワーク。現在と過去が交錯し、生きている人と、死んでいる人、現在の人と、過去の人を会話させる時空構造。愛と革命の物語。文学的で、切実なセリフ。僕が求めていた映画は、これだと思った。
イメージの氾濫、悪夢のような時空間。澁澤龍彦は『映画は、本質的に非合理の表現』としていたが、まさに、この映画は非合理そのものだ。
衝撃だった。吉田喜重の映画に、僕は完全に、胸を打たれてしまった。鏡や窓枠、木の枝の隙間などを乱用した、計算的な、緻密なパズルのように組み立てられ、余白の美を感じさせる、斬新な構図。窃視症的なカメラワーク。現在と過去が交錯し、生きている人と、死んでいる人、現在の人と、過去の人を会話させる時空構造。愛と革命の物語。文学的で、切実なセリフ。僕が求めていた映画は、これだと思った。
イメージの氾濫、悪夢のような時空間。澁澤龍彦は『映画は、本質的に非合理の表現』としていたが、まさに、この映画は非合理そのものだ。
自伝。僕は「悪童日記」をまだ読んだことがないが、この「文盲」という題名に惹かれてこの本を手に取った。人生を時系列順に細かく記述するのではなく、小さな記憶の断片が集積されている。僕は文体が好きだった。淡々としたリズムだが、淡白ではない。透き通った詩情が漂っている。なんでも読み、作った「お話」を語って聞かせるのが好きな幼少期は、作家になるべくしてなったと感じさせる。そして、難民としてスイスに行き着き、母語ではなくフランス語で書くことになる経緯。故郷を離れ、一度「文盲」になった著者は、フランス語で書くことをこう述べる。
『ひとりの文盲者の挑戦なのだ。』
自伝。僕は「悪童日記」をまだ読んだことがないが、この「文盲」という題名に惹かれてこの本を手に取った。人生を時系列順に細かく記述するのではなく、小さな記憶の断片が集積されている。僕は文体が好きだった。淡々としたリズムだが、淡白ではない。透き通った詩情が漂っている。なんでも読み、作った「お話」を語って聞かせるのが好きな幼少期は、作家になるべくしてなったと感じさせる。そして、難民としてスイスに行き着き、母語ではなくフランス語で書くことになる経緯。故郷を離れ、一度「文盲」になった著者は、フランス語で書くことをこう述べる。
『ひとりの文盲者の挑戦なのだ。』