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何かを書くのが好きです
薄紅の水面に小さく赤い穴が映る。手を伸ばせば知らないところに届きそうなほど、ぽっかりと空いてしまっている。水平線は、時間と共に潮の満ち引きでゆらゆらと揺れる。鏡面は緻密に、そして繊細に風景を描き出す。浜辺に落ちるのは片割れを探す蛤。一枚しか存在しないそれを探す貝殻は、数えきれない程の時間をたった一人で過ごし続ける。あの水平線の向こうに煌めく灯りがふと恋しくなってしまう。不意の降雨は思いがけない落涙を引き起こす。降り頻る雨の音、地に落ちる水滴の冷たさに身体が強張る。凍えそうな夜に怯えてしまう前に、あの夕凪の静謐を取り返したくて、手を合わせて空に祈りを捧ぐ。一刻前の海面は、天球のように美しかった。
June 3, 2025 at 6:53 PM
真夜中、街が静寂に沈む頃。街灯の光だけが、おぼろげながら夜道を照らす。音のない世界には、いつも存在する小さな光源だけが存在しない。今日は、月が太陽と共に旅をしていたから。一ヶ月に一度の彼らの逢瀬は、ひどく幻想的ではあるけれど、彼らも仲違いをすれば影を落としてしまうらしい。これを世の中は日食と呼ぶのだとか。されど、普段人々を惹きつける月がない天球で、星々は舞い、星座を形作る。明るい月は、何千倍、何万倍も眩い星でさえ、その輝きを曇らせてしまうから。月の代わりに星々に照らされる道も、その煌めきと同じように瞬いている。下を向いていたら見えなかったもの。今日だけは、月のない満天の星空に見惚れていよう。
May 30, 2025 at 11:25 PM
May 24, 2025 at 7:32 AM
May 22, 2025 at 6:45 PM
世の中、変わらないものなんてないと頻繁に言われる。昔は、“世界“が変わるのが当たり前だったというけれど、今はそうでもないらしい。三日月と呼ばれる白い円弧が、冷たくも静かに足元を照らす。静謐の中で宙に舞う夜桜だけは、何年経っても変わらないものか。幾度もの夜明けと朝焼けを経ても、空は浅葱と虹と青藍と、時々薄墨を繰り返す。いっそこの一瞬の景色のすべてを盗み去ってしまえたら、私以外の誰もが、穏やかな春を過ごせるのに。いつか散ることを知りながら、それでも美しく咲き誇る。私もきっとそうやって前を向き続けてきたのだ。不安に怯えながらも、痛みとともにここまで歩いて来たんだろう。進んできた道程はすぐそこにある。
May 22, 2025 at 6:45 PM