さぶ妄想用
@sabuhitori.bsky.social
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Xから妄想を移動 エルリ中心・アイコンヘッダーちゅみさん画 https://www.pixiv.net/users/307324/novels
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——チッ
舌打ちにルームメイトの機嫌の悪さを悟る。散らかした自覚はあるのでばつが悪い。この舌打ちを封じる方法は、あるにはある。かつてはそれをよく使っていた。今思えばずるい手だ。記憶のない彼と出会い二週間。今はまだその手は使えない。小さな舌打ちに再会の喜びを感じながら、いそいそと片付けに取り掛かる。
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女主人の遊びに付き合わされ木苺を摘む。ご機嫌とりも楽じゃねえなと、ちらりと隣の男の顔を窺った瞬間、指先に鋭い痛みが走った。木苺の棘だ。皮膚にぷつりと赤い玉が浮かび、膨らんでいく。ハンカチで拭うより先に手首をとられた。指先は男の口の中に消えた。なにしやがる、その一語が喉から出ない。
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そろそろランプのオイルが切れそうだ。だが立ち上がる時間も惜しい。中央に送る文書を今夜中に書き上げたい。ふいに視界が暗くなる。ついにオイルが尽きたか。いや違う、目元を覆う圧とぬくもりは。
「今夜も徹夜か。下に悪影響だ。寝ろ」
目蓋に伝わるぬくもりは一切の抵抗も許さないと物語っていた。
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たまに彼からメッセージが届くことがある。だいたいが深夜だ。
『起きてるか』『起きてるよ』『そうか、なら早く寝ろよ』
ある時彼は不安なのだと気付いた。いまだ彼の中にぬぐいきれない男の"死"があるのだと。
『一緒に暮らさないか』
夜明け前、メッセージを送った。彼からの返事を男は待っている。
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ラジオから流れてきたのは大昔の曲で掃除の手を止め耳を傾ける。何百年も前からある曲だ。当時この旋律に合わせて男とステップを踏んだこともあった。「おや、懐かしいな」庭で水やりをしていた男が戻ってくるなり反応を示した。「一曲お相手願えませんか?」箒を置いて男の手をとる。
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眠る男の腕はなめらかで逞しい。抱き潰されるというのがしっくりくる、そんな抱かれ方をした。初めて会った男だった。初対面だというのに顔も声も仕草も合わさる肌も、男のひとつひとつに全身がいちいち反応した。お前みたいな好い男どこかで出会っていたら忘れるはずがないのにな。なぜか胸が苦しい。
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読んでみろと差し出された封書は資金援助の申し出だ。「うまい話だが臭うな」なにやら裏がありそうな内容だ。しかし男は乗る気のようだ。「護衛は俺だけか」「多いと警戒される。頼んだぞ」「は、簡単に言いやがる」一級品の茶葉で乗ってやると封書を突き返す。博奕好きな男は人の悪い笑みを浮かべた。
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キスをするのはこれで二度目だ。一度目は物言わぬ唇だった。男の唇は氷のようだった。そして今、二度目をすませた。初めて知った男のぬくもりにひどく揺さぶられた。あの日、胸の中で凍りついたものが溶けて溢れ出る。大きな手に頬を拭われる。もっとよこせと強請った唇は二度目よりもずっと熱かった。
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出版社より本が届いた。パラディの歴史書だ。元調査兵団の彼も少しばかり関わった。ページをめくると真新しいインクの匂いがする。調査兵団の記述で指を止めた。そこに第十三代団長について綴られている。男の事績のみが淡々と。
書の中のどこにもない男の生きた表情は彼の心の襞にだけ刻まれている。
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エとリの関係、二人がお互いのことを知らないことだらけなのに、厚い信頼を寄せあうほどにはお互いのことを知っているっていうのがすごくいい
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壁外調査後以外では普段はきわめて短い彼の入浴スタイルが変化したのは男の怪我がきっかけだった。湯の始末は俺がやると当番の兵士を戻らせて二人きりの浴場で男の身体に泡を乗せる。右腕の傷口に触れぬよう慎重に頭の先から爪先まで丁寧に洗い清める。
ありがとう。
男がささやく。静かなひと時だった。
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身体にぴたりと沿う黒は動きを妨げない。暗躍するためだけに作られたものだ。増えたベルトにもすっかり慣れた。男から贈られたクラバットは身につけない。この装備に白はそぐわない。代わりに黒の下に、ループタイを下げている。肌に伝わる冷たさはやがて熱を帯びて馴染む。男の魂を連れ、闇を駆ける。
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ライナーとジーク
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虫の音だけが響く夜、敷地内の見回りで遅くまで灯りがこぼれる窓がある。誰の部屋か思い出すまでもない、団長の部屋だ。見上げた窓枠の内側にふいに人影が映る。団長だろうか。ふいにカーテン越しに揺れる影は二つに分かれた。錯覚かと目を凝らすより先に灯りが落ちた。傾いた細い月を共に足を進めた。
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ここの女主人は変わり者だ。ダンスひとつ取ってみても同性でペアを組ませる。女側はどうすりゃいい。見上げれば、リードすると大きな手が添えられた。この世で最も信頼している男に身を委ねホールを回る。「長い曲だな」「良い曲だ」「…まあ、悪くねぇ」男を間近に感じステップを踏むごとに感情の波が揺れる。
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無性に肉が食べたいという男に連れられて大学時代から馴染みの焼肉屋で腹を膨らませた。その後近所のサウナで汗を流した。そうなればあとはビールだ。ビールを嚥下する健康的な喉仏に突然ぐらりときた。男も同じ気持ちだったか。一気にビールを流し込み二人は銭湯を出た。玄関を閉めと同時に貪り合った。
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「君を不快な気分にさせるかもしれないが、君とのキスが初めてとは思えない」金色の睫毛に縁どれた青は困惑以上に好奇心で輝きその中心にぴたりと彼を置く。「やはりどこかで会ったことが?」「さあな。だが、この先まで続けているうちに何か思い出せるかもな」弧を描く濡れた唇を男の唇に押し当てた。
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キスの代わりにリの唇に手のひらを軽く押し当てるエなどいいと思う
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現代AU・モブ視点
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世界的人気俳優の突然の結婚発表に世界中がわいた。黒髪の外国籍の一般男性。あらゆるメディアやファン、アンチもが躍起になり二人の過去を探ったが、接点はまるで見つからない。空港で向けられた出会いの質問に「翼を持つ彼を一目見たときから」と俳優は碧眼を細め、最愛の人の待つ地へと飛び立った。
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モブ視点

私には前世の記憶がある。この学校には記憶の有無に関わらず馴染みの顔が多い。目の前の教師二人も。残念ならが二人とも壁の中の世界の何ひとつ憶えていない。それでも昔と同じように自然と並んでいる。当時、垣間見ることもなかった微笑み合う姿も今ではすっかり日常の光景だ。平和である。