軟体動物多様性学会【公式】
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会の広報に加え、軟体動物学の普及啓発を目的として貝類の様々な話題を中の人(福田 宏)が縦横無尽に呟きます。分類学上の情報などは特記しない限り全て中の人の見解です。英文誌 𝘔𝘰𝘭𝘭𝘶𝘴𝘤𝘢𝘯 𝘙𝘦𝘴𝘦𝘢𝘳𝘤𝘩(MR;オーストラレイシア軟体動物学会と共同で)、和文誌 𝘔𝘰𝘭𝘭𝘶𝘴𝘤𝘢𝘯 𝘋𝘪𝘷𝘦𝘳𝘴𝘪𝘵𝘺(MD)を刊行中。 http://marine1.bio.sci.toho-u.ac.jp/md/index.html?page=/md/m
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当会発行の和文誌 Molluscan Diversity (MD) 7巻が今月末刊行見込みとなり、表紙と目次が確定しました。会員各位には刊行され次第郵送されます。早くにご投稿くださった著者の方々には大変長らくお待たせしました。

今回は、同誌史上最も厚い200頁超に13篇の多彩なオリジナル報文を掲載し、中には今後の高い需要が期待される、長大かつ情報量が途轍もなく多い記事が含まれます。刊行された暁には、各記事の内容をこの場で簡単にご紹介いたします。
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MR新着。ベトナムでドラゴンフルーツを食害し、枝や果実へ甚大な被害を与えるタママイマイ 𝘼𝙘𝙪𝙨𝙩𝙖 𝙩𝙤𝙪𝙧𝙖𝙣𝙣𝙚𝙣𝙨𝙞𝙨 (Souleyet, 1842) の、綜合的害虫管理に向けた繁殖生態の把握。

最も繁殖するのは気温が25℃の時ながら、広い範囲の温度で高い孵化率を示した(つまり、気温が多少変動しても繁殖力はさほど低下しない)。混合餌を与えるとドラゴンフルーツ単独よりも繁殖力がより高まり、孵化期間も短縮する。

農地での個体群密度のピークは、水分と植生が最も豊富に存在する乾季から雨季への移行期である。
doi.org/10.1080/1323...
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MR新着。豪州南西部Goodga Riverで、絶滅が危惧される 𝙒𝙚𝙨𝙩𝙧𝙖𝙡𝙪𝙣𝙞𝙤 𝙞𝙣𝙗𝙞𝙨𝙞 𝙞𝙣𝙗𝙞𝙨𝙞 Klunzinger, Whisson, Zieritz, Benson, Stewart & Kirkendale, 2024(カタハリヌマガイ科 Hyriidae)がグロキディウム幼生を放出する様子とその形態を観察。

人工的に設置した魚道の上流部に見られる本種の生貝の位置を観察すると、そこへ遡上してくる宿主の魚類との接触機会が最大となるように埋在しており、魚道が幼生の加入に貢献している可能性があるという。
doi.org/10.1080/1323...
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MR新着。南シナ海の海馬冷泉 (Haima cold seep) から尾腔綱の巨大な新種 𝘾𝙝𝙖𝙚𝙩𝙤𝙙𝙚𝙧𝙢𝙖 𝙣𝙖𝙜𝙖 Liu et al. を記載。この冷湧水域の尾腔類としては 𝘊. 𝘴𝘩𝘦𝘯𝘭𝘰𝘰𝘯𝘨 Chen et al., 2024に次ぐ2種目の発見。

両者は骨針の形態(Figs 3と"5": Fig. 4と5のキャプションが誤って入れ違いになっています)が大きく異なるものの、分子系統解析の結果によれば両種は姉妹種の関係にある。

今回の新種はホロタイプの体長が131 mmに達するとのことで、確かに尾腔類としては破格の大きさです。
doi.org/10.1080/1323...
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MR新着。ベンガルヌマガイを用いての淡水真珠養殖において、真珠の品質と宿主の生存率向上をともに追求した続報。ポリ-D-リジンの効果を論じた前回の論文(RP)と同じく、インド・アッサム地方の研究チームによる著作です。
doi.org/10.1080/1323...

今回は水素化ケイ素(シラン silane)でコートした核を用いると、 宿主の生体への適合性・生存率および真珠の質(光沢と滑らかさ)のいずれにも劇的な効果があると実証。

画像4枚目のFigs 29, 30を見ると、シラン不使用(29)と使用したもの(30)とでは光沢の強さが確かに全く異なり、ここまで顕著な差が生じるとは驚きです。
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山と溪谷社のnote「ヤマケイの本」で不定期連載している書評シリーズの第3回が、本日公開されました。今回読んだ本は「図鑑」と「同定」を巡るあの名作です。

文中にも書いた通り、この本を読むうちに実に様々なことを思い浮かべるに至り、勢い余って長くなってしまったため2回に分けて、今回はその前半です。後半も遠からず公開される予定です。
note.com/yamakei90_/n...

過去の2回:
『野生生物は「やさしさ」だけで守れるか?』
note.com/yamakei90_/n...
『自宅で湿地帯ビオトープ!~生物多様性を守る水辺づくり』
note.com/yamakei90_/n...
【研究者の推し本】『図鑑を見ても名前がわからないのはなぜか?』 書評=貝類学者・福田宏〈前編〉|ヤマケイの本
今回で3回目となる貝類学者・福田 宏先生の不定期書評連載。福田先生は『新種発見!』の著者で貝類の分類学者、そしてXの生物好きに広く知られるアカウント「軟体動物多様性学会(@SocStudMollDiv)」の中の人です。 『野生生物は「やさしさ」だけで守れるか?──命と向きあう現場から』、『自宅で湿地帯ビオトープ!~生物多様性を守る水辺づくり』に続いて、今回はあの名著、『図鑑を見ても名前がわからな...
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MR新着。ミャンマーのミェイク (Myeik) 地域で食用として養殖されている牡蠣(𝘔𝘢𝘨𝘢𝘭𝘭𝘢𝘯𝘢 𝘣𝘦𝘭𝘤𝘩𝘦𝘳𝘪 (Sowerby II, 1871) および 𝘚𝘢𝘤𝘤𝘰𝘴𝘵𝘳𝘦𝘢 𝘤𝘶𝘤𝘤𝘶𝘭𝘭𝘢𝘵𝘢 (Born, 1778))の中に、ネコノアシガキ属 𝙏𝙖𝙡𝙤𝙣𝙤𝙨𝙩𝙧𝙚𝙖 Li & Qi, 1994の未同定種が意図せず混入していると判明。

このため、自然環境下からしっかり同定せずに稚貝を採って養殖対象とすると、招かれざる種が蔓延ってしまって結局は非効率的なので、養殖においても分類学の知識が大切、と指摘している貴重な報告です。

doi.org/10.1080/1323...
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ヒロクチカノコは古くから知られた種ながら未記載種です。MD7巻の岩崎他の報告 pp. 108–112 で詳述しました。

最古の文献記録は Martens (1860) による横浜産で、それ以来長く本種に対して用いられてきた種小名 𝘤𝘳𝘦𝘱𝘪𝘥𝘶𝘭𝘢𝘳𝘪𝘢 Lamarck, 1822 や 𝘷𝘪𝘰𝘭𝘢𝘤𝘦𝘢 Gmelin, 1791 は東南アジア〜豪州北部に分布する、殻口が血のように赤く染まる別種を指します。

今回の報告で図示した個体は、「越後」(新潟県)産とされる驚きの標本(科博所蔵の岩川友太郎標本、1909年以前採集)です。この標本の発掘により分布北限(山口県萩市)が大幅に更新されました。
𝘋𝘰𝘴𝘵𝘪𝘢 sp. ヒロクチカノコ. 越後 [≒ 新潟県] 産, 図示標本はすべて別個体 (国立科学博物館所蔵 NSMT-Mo 917; 岩川友太郎標本, 1909年以前; 石田惣撮影). スケールは 10 mm. After 岩崎他, 2025: Moll. Div., 7: 108, fig. 2.
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MD4〜7巻巻末の「入会のご案内」に記されている会費振込先の口座番号に脱字がある(末尾の「4」が脱落している)と発覚しました。お詫びして訂正いたします。ご指摘くださった皆様、ご迷惑をおかけし申し訳ありませんでした。ご指摘に感謝申し上げます。この件は当会ホームページにも掲載しています。
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MD7巻発刊に伴い、6巻の電子版無料公開を解禁しました。当会HP(URLはここのプロフ欄)の Molluscan Diversity>6巻1号・2号>各記事表題>要旨表題を順にクリックするとダウンロード画面が現れます。ここ数年で引用頻度が非常に高いPonder体系の和名対応表(2号に掲載)も全体を閲覧いただけます。
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誤字がありました。
諸言→緒言
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MD7巻の原著のトリを飾るこの記事は、本邦当代の貝人オールスターの著者陣による全118ページの大作です。

長い諸言とそれに続く章では和名の意義を再考し、稀少な未記載種こそ和名が必要であることを強調するとともに、本文で16種 (or亜種) を新称しています。掲載種一覧表を以下に挙げます。
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岩崎敬二・石田 惣・柏尾 翔・亀田勇一・久保弘文・齊藤 匠・澤田直人・芳賀拓真・早瀬善正・平野尚浩・福田 宏 2025. 日本産軟体動物の稀少な未記載種の形態的標徴, 分布ならびに棲息環境. MD, 7: 93–210.
要約 絶滅の危機にある,または将来その可能性が高くなると推定される日本産軟体動物の116未記載種・種名未確定種(二枚貝綱12,腹足綱104)の形態的標徴(近似種との識別点を含む),分布および棲息環境の現状をまとめた。また,未記載種であっても,その存在自体の認識と生物多様性保全等に資するためには和名が必要であることを論じた。以下16種または亜種の和名を新称する:シュスシオガマ,アマミヤマキサゴ,トカラヤマキサゴ,ドウクツノブエガイ,セキガハラゴマオカチグサ,オオコゴマオカチグサ,タキチグサ,アツミシブキツボ,イリオモテミヤイリガイ,タヌキノムシロ,ジュウロクケシガイ,イラブキセルモドキ,ヒシャゲキビガイ,アパラギベッコウ,トシドンナメクジ,ヒトリッコナメクジ。
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山崎大志・伊藤 舜 2025. 宮城県加美郡加美町におけるムツヒダリマキマイマイおよびナメクジ属の一種 (腹足綱: マイマイ目) の記録. MD, 7: 89–92.
要約 宮城県加美郡加美町の山地において,𝘌𝘶𝘩𝘢𝘥𝘳𝘢 𝘥𝘦𝘤𝘰𝘳𝘢𝘵𝘢 (Pilsbry & Y. Hirase, 1903) ムツヒダリマキマイマイ(form 𝘵𝘰𝘣𝘢𝘪 S. Hirase, 1929 トバマイマイ型)および 𝘔𝘦𝘨𝘩𝘪𝘮𝘢𝘵𝘪𝘶𝘮 sp. ナメクジ属の一種(ハナタテヤマナメクジもしくはその類似種)が得られた。宮城県における陸産貝類相は,北部沿岸域で詳細な報告がなされている一方で,内陸部における知見は限られている。上記2種の分布情報は宮城県内陸部の陸産貝類相解明に寄与するだけでなく,それぞれの分布域把握にも重要と考えられるため,産出状況を報告する。
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川村康平・早瀬善正 2025. 愛知県の石灰岩洞窟内に棲息するシタラ科 (マイマイ目: カサマイマイ上科) の一種. MD, 7: 83–87.
要約 シタラ科の一種の棲息が愛知県豊橋市の石灰岩洞窟である嵩山蛇穴(すせのじゃあな)で確認された。本種は頭部−腹足の全体が白色で,眼は黒色色素を欠く。真洞窟棲シタラ科の生貝発見は,沖縄島中部の石灰洞に続く2例目となる。同様の種群の日本での生貝産出例はほとんどないため,今回の種が発見された経緯と棲息状況,形態的特徴を報告する。
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馬場雄司・上地健琉 2025. 大阪府におけるヒメヒラマキミズマイマイ (モノアラガイ目: ヒラマキガイ科) の記録および本種の標徴の再評価. MD, 7: 75–81.
要約 大阪府の3市町5地点(能勢町3地点・池田市1地点・岸和田市1地点)において絶滅危惧種ヒメヒラマキミズマイマイが水田・耕作放棄地・側溝に生息しているのを確認した。このうち2地点は畑耕作の開始により生息地が消失した。このことから,一部の地域では本種が絶滅した可能性が示唆され,生息地のモニタリングや新たな生息地の探索が望まれる。また,本種と類似するヒラマキミズマイマイとの比較を行い,殻形態の4形質(殻径,殻高,殻口を除く体層高,巻き数)において差異があることを確認した。これらの標徴により,ヒメヒラマキミズマイマイの分布や生息状況,生態などに関する知見が集積されることが望まれる。
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福田 宏 2025. 佐多岬の浜辺に打ち上げられたマボロシリュウグウボタル (新腹足目: マクラガイ上科: リュウグウボタル科). MD, 7: 63–73.
要約 九州西岸(五島列島〜大隅諸島)固有の稀少種マボロシリュウグウボタルの死殻が,1973年,鹿児島県佐多岬での打ち上げ採集で得られた。これは本種がビーチコーミングで見出された唯一の例である。本種の分布と棲息深度を文献記録に基づいて総括する。本種は漸深海底のみならずより浅い潮下帯にも産し,水深20–150 mの範囲に棲息すると考えられる。
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中野智之 2025. 投げ釣りで釣れたマクラガイ (新腹足目: マクラガイ科) と貝類採集法としての釣りの可能性. MD, 7: 59–61.
要約 和歌山県田辺市の堤防においてゴカイを餌として投げ釣りをしていたところマクラガイが釣れたので,その状況を報告する。貝類採集の一つの手法としての釣りの可能性について論じる。
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亀井裕介・福田 宏 2025. 真洞窟棲絶滅危惧貝類ホラアナゴマオカチグサ種群 (新生腹足類: クビキレガイ上科: カワザンショウ科) の福岡県における60年ぶりの再発見. MD, 7: 53–57.
要約 福岡県田川市の石灰岩洞窟(岩屋第一鍾乳洞)からホラアナゴマオカチグサ種群の生貝を見出した。これは同県産のこの属としては60年ぶりの再発見である。本種群は洞窟ごとに種分化していることが指摘されており,今回見出されたものも未記載種の可能性が高い。
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内野 透・布部淳一・德丸直輝・野元彰人 2025. 高知県宿毛市で発見されたオイランカワザンショウ (腹足綱: カワザンショウ科). MD, 7: 45–52.
要約 高知県宿毛市の松田川河口域においてオイランカワザンショウが発見された。本種はこれまでに南西諸島のみで記録されており,九州以北からは初の記録となる。また,本種の分布域の北限および東限を大きく更新するものである。松田川における本種の生息状況を報告するとともに,本種の分布北限が近年になって北上した可能性について議論した。
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澤田直人・齊藤 匠・福田 宏 2025. 山梨県河口湖におけるマメタニシ (新生腹足類: クビキレガイ上科: エゾマメタニシ科) の産出. MD, 7: 41–44.
要約 エゾマメタニシ科の淡水貝類マメタニシは全国的に減少傾向が強い。山梨県河口湖からの文献上の明確な記録は見当たらないが,本研究で1987年,1992年および2021年に同湖で採集された標本が検討された。その結果,河口湖のマメタニシは1990年代以降に急速に減少し,2000年代以降に移入された同科の外来種コガシラマメタニシと競合している可能性が示唆された。河口湖のマメタニシが在来の個体群であるとは言い切れないものの,本個体群は絶滅に瀕しており,高い保全上の価値を有すると考えられる。
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福田 宏 2025. 山口県萩市で採集されたニシキサザエ (古腹足類: ニシキウズ目: リュウテン科), および 𝘊𝘢𝘭𝘭𝘰𝘱𝘰𝘮𝘦𝘭𝘭𝘢 Kira, 1959 の分類学的地位. MD, 7: 27–39.
要約 山口県萩市三見漁港でニシキサザエが採集された。これは本種の最北にして日本海側最東の記録である。この機会に本種の分類,形態,分布の既往知見を総括した。𝘛𝘶𝘳𝘣𝘰 Linnaeus, 1758 リュウテン属の亜属である 𝘊𝘢𝘭𝘭𝘰𝘱𝘰𝘮𝘦𝘭𝘭𝘢 Kira, 1959 は本種を単型によるタイプ種として設立されたが,その分類学的地位は現在まで不明瞭であった。この亜属は適格名であり,𝘊𝘢𝘳𝘴𝘸𝘦𝘭𝘭𝘦𝘯𝘢 Iredale, 1931 キイチゴサザエ亜属 (= 𝘌𝘶𝘯𝘪𝘯𝘦𝘭𝘭𝘢 Cotton, 1939 ナンゴウサザエ亜属) の新参異名とみなされる。
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福田 宏・池田 等・石田 惣・芳賀拓真 2025. アコヤエビス (古腹足類: ニシキウズ目: エビスガイ科) の学名 𝘈𝘬𝘰𝘺𝘢 𝘢𝘬𝘰𝘺𝘢 (Y. Hirase, 1922) の適格性と有効性,ならびに胎殻・頭部−腹足・歯舌・顎板の形態. MD, 7: 11–25.
要約 𝘈𝘬𝘰𝘺𝘢 𝘢𝘬𝘰𝘺𝘢 アコヤエビス(エビスガイ科)は主に本州中部〜四国沖の太平洋と九州西部沖の東シナ海において漸深海底から知られる。本種の学名(記載時は 𝘊𝘢𝘭𝘭𝘪𝘰𝘴𝘵𝘰𝘮𝘢 𝘢𝘬𝘰𝘺𝘢)の著者と公表年は今日まで大半の文献で「(Kuroda in Ikebe, 1942)」とされてきた。しかし,同綴の学名は平瀬與一郎による1922年刊行の『貝千種』(四)が初出で,そこでは描画を伴うことからその学名は国際動物命名規約第4版の条11.4.3および 12.2.7により適格名であり,しかも本種を指す4つの異名のうち最古参であるため有効名である。したがって 𝘈𝘬𝘰𝘺𝘢 𝘢𝘬𝘰𝘺𝘢 の著者と公表年は (Y. Hirase, 1922) とするのが適切である。以下の3学名はいずれも無効な新参異名である:𝘊𝘢𝘭𝘭𝘪𝘰𝘴𝘵𝘰𝘮𝘢 (𝘊𝘢𝘭𝘰𝘵𝘳𝘰𝘱𝘪𝘴) 𝘬𝘴𝘶𝘻𝘶𝘬𝘪𝘪 Ikebe, 1942 スズキエビス;𝘊𝘢𝘭𝘭𝘪𝘰𝘴𝘵𝘰𝘮𝘢 (𝘊𝘢𝘭𝘰𝘵𝘳𝘰𝘱𝘪𝘴?) 𝘢𝘬𝘰𝘺𝘢 Kuroda in Ikebe, 1942;𝘈𝘬𝘰𝘺𝘢 𝘴𝘩𝘪𝘯𝘢𝘺𝘢𝘬𝘢 Habe, 1961 ユウビエビス(シナヤカエビス)。本種の形態は従来殻と蓋しか報告例がなかったため,胎殻・頭部−腹足・歯舌・顎板を検討したところ,エビスガイ亜科に属す他の属と概ね類似していた。
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山田真悠子・小野廣記 2025. 島根県隠岐諸島におけるスリガハマ (二枚貝綱: マルスダレガイ科) の産出記録. MD, 7: 5–10.
要約 マルスダレガイ科二枚貝類の希少種スリガハマの日本海側における分布北限はこれまで不明瞭であった。今回,島根県隠岐で本種が確認され,これは同県新記録であるとともに日本海における信頼できる分布の北限を示す。
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柏 雄介・阿部 司・福田 宏 2025. 岡山県におけるヒレイケチョウガイとイケチョウガイの交雑種とみられる個体 (二枚貝綱: イシガイ目: イシガイ科) の確認. MD, 7: 1–4.
(要約は画像のALTをご覧ください。以下同様)
要約 岡山県南部の児島湖に流入する倉敷川周辺の水路にて,イケチョウガイ属の棲息が確認された。形態から外来種ヒレイケチョウガイと日本在来のイケチョウガイの交雑種の可能性がある。同じ産地で成貝・幼貝ともに見られたため,個体群として維持されていると推測される。本種が確認された環境は底と岸がコンクリートの水路の水深50–60 cmで,部分的に礫が5–10 cm程度堆積し,流速は1 cm/s以下であった。児島湖周辺には人為的移入由来のイケチョウガイが棲息している可能性があり,ヒレイケチョウガイ移入の影響が懸念される。
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本日、Molluscan Diversity (MD) 7巻の印刷が完了して事務局に納品され、直ちに発送手続きに入りました。会員各位のお手許へは数日中に届けられるはずです。

そこで今後数日の間、各掲載記事の簡単な内容を朝昼晩1篇ずつご紹介します。それぞれ和文要約を画像のALTに貼り付けますので、ご覧いただけると幸いです。
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今回は、同誌史上最も厚い200頁超に13篇の多彩なオリジナル報文を掲載し、中には今後の高い需要が期待される、長大かつ情報量が途轍もなく多い記事が含まれます。刊行された暁には、各記事の内容をこの場で簡単にご紹介いたします。