榊原すずみ 広報・エディター・ライター/「SOU.」運営
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取材や執筆、編集もするBtoB企業の広報してます。 文芸・週刊誌、ライフスタイル誌、フリーランス、女性誌などで編集・執筆してました。「ハフポスト日本版」を経て、“メディア”ではなく“場所”榊原すずみの「SOU.」を運営。 投稿は個人の見解です。所属先とは関係ありません。 #未婚 #子なし #アラフィフ #広報
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本書は性的マイノリティ当事者ではなく、それを知った親の目線で描かれる、稀有な作品なのではないでしょうか。

“普通”にこだわるからこそ、捻れていくものが、この世には多すぎる。
普通なんてないんだって前提に立てば、もっと優しい社会になるというのに(性的マイノリティの話に限らず)。

“普通”信仰なんてぶっ壊れてしまえばいい。
#読んだ本
『娘について』
キム・ヘジン 著
古川綾子 訳
亜紀書房 刊

“普通の人”なんて、この世にはいないんじゃないだろうか。

主人公の60代の老女は、普通に育てたつもりの娘がまともに結婚せず、同性のパートナーと親密に暮らしていることに混乱し、頭を悩ませています。

自分の育て方が悪かったせいで、“普通”には育たず、レズビアン(本書中では明確にこの言葉は、あえて使われていないけれど、婉曲的な描写で伝わって来る)になったのではないかと自分を責めます。

その一方で、娘もそのパートナーも、ありのままに自由に暮らしているように映り、主人公をより混乱させていくのです。
人生には何が起きるかわからない。
よくそんな風にいうけれど、まさにそんな世界観が展開されていきます。

主人公のように、43歳になっても、現実と改めて向き合って、精神も身体も成長させることができるのなら、50歳が見えてきた私にも、まだまだ何が起きるかわからないかもね。

そんなアグレッシブな気持ちで読了しました。
#読んだ本
『最初之悪い男』
ミランダ・ジュライ 著
岸本佐知子 訳
新潮クレスト・ブックス 刊

まさか、こんな結末になるなんて!

43歳で、孤独、仕事にも没頭できているわけではない、つまり、私よりちょっと歳下で、私と同じように絶望がチラつく日々を送っている主人公。

独り言と妄想で、自らを慰めるものの、周囲からはちょっと浮いている存在。

主人公にめっちゃ感情移入できるかと思いきや、物語は、思わぬ方向へ、どんどん転がっていきました。

これもある意味、“人生という名のアドベンチャーストーリー”なのかもしれません。
登場人物が多いので混乱するかと思いきや(本の冒頭に登場人物一覧が出てくるので、心して読みはじめた)、一人ひとりのキャラクター、役割が明確に描かれているので、そんな心配も不要でした。

不眠の都・東京という設定もちょっとリアルでしょ?

吉田篤弘さんのいつもの作品とちょっと違うトーンの物語、一読の価値ありです。
#読んだ本
『天使も怪物も眠る夜』
吉田篤弘 著
中央公論新社 刊

登場人物、多数。
事件勃発場所、多数。
それが、最後のひとつの結末に向かっていく様が見事で、一気読みでした。

吉田篤弘さんというと、喫茶店と古本が出てくる、穏やかなトーンの物語ばかり、これまで読んできたけれど、本作はそれらと一線を画すミステリー要素がふんだんに盛り込まれた、アドベンチャーストーリーです。

壁によって分断された未来の東京で、人々は不眠に苛まれている。
そんな未来の東京で、眠り姫を目覚めさせるのは一体誰かーー。

こう書いてるだけでも、なんだかわくわくしてきてしまいます。
そうして、時代、いいえ、日常が作られ、それらが積み重なって時代になっていくんだな、なんてことを感じ入りながら読了しました。

あえて、詳しい内容は書きません。
とにかく読んで、この作品の素晴らしさに驚いてほしいです。

実は、自分のことを本好きだと言っている割には、ポール・オースター作品を読むのは今回が初めて。
他の作品を読む楽しみが増えました。
だからこそ、読書はやめられない。
#読んだ本
『インヴィジブル』
ポール・オースター 著
柴田元幸 訳
新潮社 刊

素晴らしい作品だった。
素晴らしい作品すぎて、びっくりした。
こんな本に出合えるなんて、読書好きでよかったと心から思いました。

ある男が書いた自伝を巡って、時代や語り手、視点が交錯する複雑な作品ながら、自伝に書かれた謎がなぞを呼び、いろいろな人を巻き込み物語は進んでいきます。

人生ってなんなんでしょうね。
ひょんなことから交わる人生もあれば、一生交わることなく終わるだれかの人生もあって、一人ひとりの人生が絡み合うことで、大きな時間のうねりが生まれ、出来事は起き、時には一度交わった物の終わりを迎えたりする
わくわくしていられるのは、あくまでも自分が経験したことではなく、しかも100年以上前のお話だからで、じっさいその場にいたら、きっと震え上がっていたでしょう。

ただ人を怖がらせるために書かれたのではなく、幽霊譚を大系的にまとめている点も、わくわくさせられた理由かもしれません。

歴史的な大事件やお国柄か宗教と幽霊譚の関わりが垣間見れるのも特徴です。

幽霊を信じている人も、信じていない人も、100年以上前に人々を怖がらせた幽霊達の存在に触れてみませんか?
#読んだ本
『夢と幽霊の書』
アンドルー・ラング 著
ないとうふみこ 訳
作品社 刊

おばけなんて ないさ おばけなんて嘘さ♪ なんて歌もありますが、本書は初版は1897年、著者のラング氏はルイス・キャロルも所属していた 、心霊現象研究協会会長も務め、『シャーロック・ホームズ』で有名なコナン・ドイルとも親交がある有名な方です。

私は、幽霊や心霊現象を体験したことはないけれど、あっても(いても)おかしくないなと思っているタイプです。

だから、幽霊屋敷や人々を教父に陥れる幽霊たちの話が、これでもか!と詰まった本書をわくわくしながら読み終えました。
そんなアンサクセスフルなストーリーが地球上から消える日を私は願っています。

前向きな主人公の綴る言葉が軽妙で、一気読みするほど、おもしろかったので、ちょっとエネルギーを補充したい気分のときなんかにおすすめの一冊です。
この主人公は、本当にすごいと思う。並外れた行動力があり、頭もいい。観察眼に優れ、ユーモアも持ち合わせています。

だからこそ、成功を手にし、こうして日本語訳されるような本も出版できたのでしょう。

でも、多くの場合は、本書の主人公のようにはいきません。
行動したくてもできないし、必要なサポートにも繋がれず、助けてくれる友人も少ない。
分掌を書く才能に恵まれて居る訳ではない。

本書の主人公は素晴らしいし、希望とユーモアに溢れる、格差について考えるためにも読まれるべき一冊だと思います。

ただその実、サクセスストーリー
裏側には数多野アンサクセスフルな物語が存在しているのが現実です。
#読んだ本
『メイドの手帖 最低賃金でトイレを掃除し、「書くこと」で自らを救ったシングルマザーの物語』
ステファニー・ランド 著
見たい理子 訳
双葉社 刊

サクセスストーリーは、残酷だと私はいつも思います。

DVにあい、ホームレス生活を経験し、最低賃金でメイドをしながら、子どもを育てる主人公。

狭い家、貧しい暮らし、いつもお腹を空かせている……。

アメリカの格差社会の中で、貧困層の人たちの暮らしは、みな一様に悲惨です。

そんな主人公が、才能を開花して、周囲のサポートにも恵まれ、友人にも恵まれ、自らの手で格差を乗り越えていくサクセスストーリーである本書。
二度寝チャレンジに失敗して、早朝から、本を読んでいたら、お腹が空いてきた。

今朝は5時起きだったから、3時間経過で、8時起きの人にとっての11時くらいだもの、お腹も空くか。

今日は本を読む以外なにもしない日と決めてるので、コンビニでも行きますか。
#読んだ本
『すべての、白いものたちの』
ハン・ガン 著
斎藤真理子 訳
河出書房新社 刊

静かで、美しき、祈り。

叙情的な言葉を通して、祈りにも似た筆者の「いのち」への眼差しが全編を通じて貫かれています。

いのちは美しくもあり
儚くもある。

それが「白」いものたちを綴ることで浮かび上がってきます。

斎藤真理子さんの訳も美しい。

ワルシャワの惨劇の惨たらしさも、白で語ることでまた違った一面を見せる。

言葉の持つ無限の可能性を感じられる一冊です。
当時の家柄を大事にする点や女性はなるべく早く結婚し、子どもを産むのが幸せとされていた風潮など、当時の時代の空気感も楽しめる1冊です。

Alice好きなら、絶対に読んだほうがいいですよ。
よりAliceが愛おしくなること請け合い。
#読んだ本
『不思議の国のアリスの家』
ヴァネッサ・テイト 著
小林さゆり 訳
柏書房 刊

好きなんです、Alice。
いろんな方が挿絵を描いた、いろんな版の『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』を蒐集しています(今はあえて散財しないようにやめてるけど)。

Aliceの子孫が綴ったAliceの物語だなんて、読まない訳にいかないじゃないですか!

物語はAlice姉妹の家庭教師の視点から、ルイス・キャロルとAlice一家の交流や物語が生まれるまでを虚構や想像を織りまぜて描かれていきます。
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毎日電車に揺られながら、筆者の窪 美澄さんが綴る主人公の心理描写に私の心も揺れていました。

一人で生きていく覚悟を決めているけれど、それでも女でありつづけたいという思いが自分のなかにまだあることを再認識させられ、新たな発見でした。

甘い恋愛小説はもう読めなくなってしまった、私のような年代の方でも、揺さぶられる恋愛小説でした。
#読んだ本
『私は女になりたい』
窪 美澄 著
講談社文庫 刊

通勤のお供に、鞄に文庫本を1冊入れています。
毎日少しずつ読み進めるのも、これまた楽しみ。

身にしみる1冊でした。
主人公と私は同年代。

迫り来る老いと失われていく若さと、いつ生理が終わるのか女性としての自分を見つめる時期。

仕事はあるし、毎日充実しているし(いまの私は双極性障害に加えて適応障害戻って患っているけれど)、パートナーの必要性ももう、それほど感じていない(というか、私はもう諦めている)。

そんな女性の目の前に現れた年の離れた男性。
私はまだ女であると、ある意味で覚醒する主人公。
積読本ならぬ読んだ積本(読んだ本は感想を記録しているので) が溜まって、ソファの片隅を占領している。

これらをゼロ二するのがゴールデンウィーク中のノルマ。
・特に男性の正社員率は30代半ばごろには9割を超え、他世代と遜色ない水準に。
→女性はどうなっている、正社員率と賃金の高さは関係ない
・上のバブル世代との昇進格差もあり、処遇面でも「不遇の世代」
→非正規雇用が多く、キャリアを積めず、低賃金で正社員をしている人が多く、未だ非正規も多い

非正規世代の現実を、ちょっと軽く考えすぎた記事だと思った。

こんな甘い状況じゃない。

非正規世代が定年退職する頃には、生活保護者であふれ、財政も大変なことになる。

なにより、生きられない人が出てくる。
www.nikkei.com/article/DGXZ...
年金なき氷河期世代の支援は形骸だ 老後の理不尽こそ対策を - 日本経済新聞
夏の参院選をにらみ、石破茂政権や野党が就職氷河期世代の支援策づくりを急いでいる。だが「不遇の世代」に追い打ちをかける年金の目減り問題に取り組まないなら、どんな対策も形骸でしかない。首相は4月19日、氷河期世代など就労に困難を抱える人への支援策を練る閣僚会議を近く設置すると表明した。2026年度政府予算案の編成に向けた経済財政運営の指針「骨太の方針」に盛り込むのだろう。国民民主党や立憲民主党も氷
www.nikkei.com
オリーブオイル、高い!
パスタ、高い!
お米、高い!

冷凍うどんに少し救われてる。
生きるって何事にも正解はなくて、日々を積み上げていっても、実はそこに何も残らない、本書のタイトルではないけれど、“がらんどう”だけが残されているんじゃないか、そんな危うさと不安感を読み手に投げかけて来る作品。

それにしても、この著者さんは、きめ細やかな心理描写が本当に上手だ。