背後に気配を感じる。また“アレ”についてこられていることに気づいた。ここまでしつこいと、その真意につい興味が湧きそうになってしまう。後ろを向くと予想通り小さな姿がそこにあった。
「ねぇ、君…」
こちらを見上げる小さな瞳と目が合う。
『なんで僕についてくるわけ?』
途中まで言葉が出かかったが、声にするのはやめた。こちらから声なんてかけて、万が一変に懐かれては嫌だったから。
前を向き直し行き先を変え執務室の方向へ歩みを進める。迎えに来るのを待っていたらいつになるかわからない。さっさとアレを引き渡してしまおう。
背後に気配を感じる。また“アレ”についてこられていることに気づいた。ここまでしつこいと、その真意につい興味が湧きそうになってしまう。後ろを向くと予想通り小さな姿がそこにあった。
「ねぇ、君…」
こちらを見上げる小さな瞳と目が合う。
『なんで僕についてくるわけ?』
途中まで言葉が出かかったが、声にするのはやめた。こちらから声なんてかけて、万が一変に懐かれては嫌だったから。
前を向き直し行き先を変え執務室の方向へ歩みを進める。迎えに来るのを待っていたらいつになるかわからない。さっさとアレを引き渡してしまおう。
「俺にとって季節の行事というのは、それにかこつけて兄さんと何かしらのコミュニケーションを図るためのものなのに、今とある異分子にそれが脅かされている」
「もうちょっと簡潔に」
「イベントごとの時期になるともちゃ野郎の顔が思い浮かんで嫌だ」
「自業自得では?」
「なんで俺が季節のイベント特集の売り場を見ながら“そういや去年は…”ってアイツのことを思い出さにゃならんのだ」
「知らないよ。恋じゃないの」
「俺にとって季節の行事というのは、それにかこつけて兄さんと何かしらのコミュニケーションを図るためのものなのに、今とある異分子にそれが脅かされている」
「もうちょっと簡潔に」
「イベントごとの時期になるともちゃ野郎の顔が思い浮かんで嫌だ」
「自業自得では?」
「なんで俺が季節のイベント特集の売り場を見ながら“そういや去年は…”ってアイツのことを思い出さにゃならんのだ」
「知らないよ。恋じゃないの」
「あざらしがバズってると聞いたんだけど!!」
「ああ、今話題のライブ配信のやつね」
「だからうちの子たちもライブ配信しようって言ったのに〜」
「あの子たちは普通のあざらしとはちょっと違うし、こっちの言うことも敏感に理解する子たちだから、常に誰かに見られてるとわかってる状態で生活するとなると大変だしね…」
「うん…そこを考えると仕方ないのよね…でも」
「でも?」
「あざらしちゃんたちのかわいさを世に知らしめたかった…!!」
「生き物としてのあざらしがかわいいのはすでに世の常識だから今更だと思う」
「あざらしがバズってると聞いたんだけど!!」
「ああ、今話題のライブ配信のやつね」
「だからうちの子たちもライブ配信しようって言ったのに〜」
「あの子たちは普通のあざらしとはちょっと違うし、こっちの言うことも敏感に理解する子たちだから、常に誰かに見られてるとわかってる状態で生活するとなると大変だしね…」
「うん…そこを考えると仕方ないのよね…でも」
「でも?」
「あざらしちゃんたちのかわいさを世に知らしめたかった…!!」
「生き物としてのあざらしがかわいいのはすでに世の常識だから今更だと思う」
京浜「普段もちゃくんにはあれだけ怒ってるのにヒヨコたちにそういうのされるのは良いんだ」
じゅに「あんなムカつくもちゃ野郎と兄さんの愛らしいヒヨコを一緒にするな!!!」
京浜「どこでキレてんの」
じゅに「いいか、よく考えてみろ。仮にヒヨコがもちゃ野郎と同じ仕組みだとしたら、あれは小さい兄さんが俺に抱きついたり(タックル)、頭に乗ったりしているということになる」
京浜「はぁ」
じゅに「な?」
京浜「ゴリ押しで納得させようとするのもだし、都合の良いところだけ一緒にするのもどうかと思う」
京浜「普段もちゃくんにはあれだけ怒ってるのにヒヨコたちにそういうのされるのは良いんだ」
じゅに「あんなムカつくもちゃ野郎と兄さんの愛らしいヒヨコを一緒にするな!!!」
京浜「どこでキレてんの」
じゅに「いいか、よく考えてみろ。仮にヒヨコがもちゃ野郎と同じ仕組みだとしたら、あれは小さい兄さんが俺に抱きついたり(タックル)、頭に乗ったりしているということになる」
京浜「はぁ」
じゅに「な?」
京浜「ゴリ押しで納得させようとするのもだし、都合の良いところだけ一緒にするのもどうかと思う」
「あ、ねえ。さっき東北上官が探してたよ」
「僕を?」
「焦ってる様子だったけど、君また何か言ったんじゃないの」
「心外だなぁ。決めつけはよくないよ」
「それならいいけど…ってどこ行くの。上官だったらあっちの方に…」
「急ぎの用事だったら向こうから来るでしょ」
「自分から会いに行く気はないわけね…」
「あ、ねえ。さっき東北上官が探してたよ」
「僕を?」
「焦ってる様子だったけど、君また何か言ったんじゃないの」
「心外だなぁ。決めつけはよくないよ」
「それならいいけど…ってどこ行くの。上官だったらあっちの方に…」
「急ぎの用事だったら向こうから来るでしょ」
「自分から会いに行く気はないわけね…」
「ふと思ったんだけど」
「なんだ?」
「君がいつも言ってるもちゃくんって500系の人型みたいなものなんだよね?山陽上官を小さくしたみたいな姿の」
「そうだな」
「それに確か君、前に北陸上官のところにもそういうのがいるらしいって言ってたじゃない」
「ああ…」
「じゃあ君のお兄さんのところにも同じようなのがいたりはしないの?」
「え?」
「いや、新幹線があって同じような生き物もいるなら、小さい東海道上官みたいなのもいるのかなって…」
「お前天才か?」
「しまった。余計な発想を与えない方がよかったかもしれない」
「ふと思ったんだけど」
「なんだ?」
「君がいつも言ってるもちゃくんって500系の人型みたいなものなんだよね?山陽上官を小さくしたみたいな姿の」
「そうだな」
「それに確か君、前に北陸上官のところにもそういうのがいるらしいって言ってたじゃない」
「ああ…」
「じゃあ君のお兄さんのところにも同じようなのがいたりはしないの?」
「え?」
「いや、新幹線があって同じような生き物もいるなら、小さい東海道上官みたいなのもいるのかなって…」
「お前天才か?」
「しまった。余計な発想を与えない方がよかったかもしれない」
「今回の議題は“はやぶさは何故宇都宮についていくのか”についてだ」
「なんで僕参加させられてんの?」
「前回は はやぶさの自由行動をどう管轄するかについて策を練ったが、今回はその行動の理由に着目しようと思う」
「まあ改善しようとする心がけは悪くないか…」
「まず野生のペンギンは普段の生活圏におらず得体の知れない人間を見ると、敵か味方か判断するためについてくるという話もあるそうだが、はやぶさたちは生物としてはある意味特殊な存在で、生まれた時から人間に囲まれた生活を送っている。なので、こうした事例には当てはまらないのではないかと私は思」
「講義?」
「今回の議題は“はやぶさは何故宇都宮についていくのか”についてだ」
「なんで僕参加させられてんの?」
「前回は はやぶさの自由行動をどう管轄するかについて策を練ったが、今回はその行動の理由に着目しようと思う」
「まあ改善しようとする心がけは悪くないか…」
「まず野生のペンギンは普段の生活圏におらず得体の知れない人間を見ると、敵か味方か判断するためについてくるという話もあるそうだが、はやぶさたちは生物としてはある意味特殊な存在で、生まれた時から人間に囲まれた生活を送っている。なので、こうした事例には当てはまらないのではないかと私は思」
「講義?」
「迷惑かも」の気持ちが勝ってどうしても贈り物を渡せない陽子さんと説得するさんようさん
「大丈夫だって」
「そうかしら…」
「よく考えてよ、例えば俺がお高めの花屋で買った良いブーケと東海道がその辺で摘んだねこしゃらしだったら多分ねこじゃらしの方がアイツは喜ぶんだから」
「…その考え方でいくと私があげても喜ばないじゃない」
「アッ違う違う、説明が良くなかった。アイツは“良い物をもらえるか”より“誰にもらうか”を重視する男だよって言いたいの」
「……」
「ね?そういうことだよ」
「じゃあやっぱり私があげても困らせるだけじゃない…?」
「伝わんないなぁ」
「迷惑かも」の気持ちが勝ってどうしても贈り物を渡せない陽子さんと説得するさんようさん
「大丈夫だって」
「そうかしら…」
「よく考えてよ、例えば俺がお高めの花屋で買った良いブーケと東海道がその辺で摘んだねこしゃらしだったら多分ねこじゃらしの方がアイツは喜ぶんだから」
「…その考え方でいくと私があげても喜ばないじゃない」
「アッ違う違う、説明が良くなかった。アイツは“良い物をもらえるか”より“誰にもらうか”を重視する男だよって言いたいの」
「……」
「ね?そういうことだよ」
「じゃあやっぱり私があげても困らせるだけじゃない…?」
「伝わんないなぁ」
「うち、基本的に一番風呂は向こうが入るんだけど」
「ふーん」
「たまに“先に入っていいぞ”って譲ってくれることがあって」
「へえ」
「で、それが冬場に多いからなんでかな〜って思ってたら」
「うん」
「冬の浴室って寒いじゃん?俺に先に使わせてあっためさせるつもりで譲ってることに気づいたんだよね」
「一回怒っていいんじゃないの」
「いやいや流石に毎日じゃないよ、めちゃくちゃ寒い日だけだから」
「それで“じゃあオッケー”にはならないんだよ」
「うち、基本的に一番風呂は向こうが入るんだけど」
「ふーん」
「たまに“先に入っていいぞ”って譲ってくれることがあって」
「へえ」
「で、それが冬場に多いからなんでかな〜って思ってたら」
「うん」
「冬の浴室って寒いじゃん?俺に先に使わせてあっためさせるつもりで譲ってることに気づいたんだよね」
「一回怒っていいんじゃないの」
「いやいや流石に毎日じゃないよ、めちゃくちゃ寒い日だけだから」
「それで“じゃあオッケー”にはならないんだよ」
「原点回帰って大事だと思わないか」
「?」
「現状に慣れるとどうしても気が緩んでくるだろ?」
「そうだな?」
「時には初心に立ち返って新鮮な気持ちを思い出す必要があるんじゃないかと」
「まあ言いたいことはわかるが…さっきから何の話だ?」
「アイツのことを撫でようと躍起になっていた頃を忘れてすっかり腑抜けちまったお前の話だ」
「なんっ…なんっだお前!!!」
「原点回帰って大事だと思わないか」
「?」
「現状に慣れるとどうしても気が緩んでくるだろ?」
「そうだな?」
「時には初心に立ち返って新鮮な気持ちを思い出す必要があるんじゃないかと」
「まあ言いたいことはわかるが…さっきから何の話だ?」
「アイツのことを撫でようと躍起になっていた頃を忘れてすっかり腑抜けちまったお前の話だ」
「なんっ…なんっだお前!!!」
「はやぶさの自由行動について何か対策を練ろうと思う」
「どうしたの急に」
「これ以上迷惑をかけるのは流石に宇都宮に悪い気がして」
「逆に今まだ許されてると思ってるところがすごい。この前もしこたま怒られてたのに」
「はやぶさの自由行動について何か対策を練ろうと思う」
「どうしたの急に」
「これ以上迷惑をかけるのは流石に宇都宮に悪い気がして」
「逆に今まだ許されてると思ってるところがすごい。この前もしこたま怒られてたのに」
「今までの私ってだいぶ気が抜けてたと思うのよ」
「はあ」
「だからね、いつ何時9州に見られても恥ずかしくない淑やかな所作を目指そうと思うの」
「無理では?」
「もう少し歯に衣着せてくれる?」
「いやまあ、やる気になってるなら止めませんけど…具体的にはどんな風に?」
「変なことしないように気をつける」
「フワフワしてんなぁ」
「今までの私ってだいぶ気が抜けてたと思うのよ」
「はあ」
「だからね、いつ何時9州に見られても恥ずかしくない淑やかな所作を目指そうと思うの」
「無理では?」
「もう少し歯に衣着せてくれる?」
「いやまあ、やる気になってるなら止めませんけど…具体的にはどんな風に?」
「変なことしないように気をつける」
「フワフワしてんなぁ」
陽子さんが9州さんに渡せなかったチョコの供養先にされ続けている本線と、そんな本線にめちゃくちゃ怒られている陽子さん
「あのね本線」
「なんでしょうか」
「このチョコ…もらってくれる?」
「…渡す相手を間違えてませんか」
「えへへ…」
「えへへじゃない!なんでまた俺の所に持ってくるんですか!!」
「だって渡せなかったんだもの!!」
「開き直るんじゃない!!!」
陽子さんが9州さんに渡せなかったチョコの供養先にされ続けている本線と、そんな本線にめちゃくちゃ怒られている陽子さん
「あのね本線」
「なんでしょうか」
「このチョコ…もらってくれる?」
「…渡す相手を間違えてませんか」
「えへへ…」
「えへへじゃない!なんでまた俺の所に持ってくるんですか!!」
「だって渡せなかったんだもの!!」
「開き直るんじゃない!!!」