アルファポリスにて小説を書いてますฅ•ω•ฅ
超短編(不定期投稿)はコチラのタグから → #夜の隅で猫が鳴く
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キャスター付きの椅子の背もたれに顎を乗せ、さながら遊園地のコーヒーカップのように回転しながら考えた。
仕事で昇進すること?
理想の相手と結婚すること?
趣味が充実していること?
どれも素敵なことのようで、同時になんか違うな、と思った。
幸せって重たい言葉だ。こうしてクルクル回ることだって難しくなりそうなほど。
「幸せ」を渇望しながら、あたしは今のお気楽で身軽な人生だって気に入っているのだ。
「重き荷はごめんだしなぁ…」
床についた足が机にぶつかって、冷めた珈琲の水面が「甘いこと言うなよ」と言わんばかりに波立った。夜は深く、深く更けていく。
#夜の隅で猫が鳴く
キャスター付きの椅子の背もたれに顎を乗せ、さながら遊園地のコーヒーカップのように回転しながら考えた。
仕事で昇進すること?
理想の相手と結婚すること?
趣味が充実していること?
どれも素敵なことのようで、同時になんか違うな、と思った。
幸せって重たい言葉だ。こうしてクルクル回ることだって難しくなりそうなほど。
「幸せ」を渇望しながら、あたしは今のお気楽で身軽な人生だって気に入っているのだ。
「重き荷はごめんだしなぁ…」
床についた足が机にぶつかって、冷めた珈琲の水面が「甘いこと言うなよ」と言わんばかりに波立った。夜は深く、深く更けていく。
#夜の隅で猫が鳴く
「ずっとともだち」
僕だけの物語を、と思いながら綴りました。
「ずっとともだち」
僕だけの物語を、と思いながら綴りました。
「奈美子、この歌好きなん?」
「え、別に。なんで?」
「いや、今口ずさんでたから」
「え」
自分でもわかるくらい顔を歪めた私を、航太は不思議そうな顔で見つめた。
「全っ然、好きじゃないから」
「そこまで言うことなくね」
きょとんとした目にくしゃりと皺を寄せて、航太が吹き出す。幼い表情に言い知れない罪悪感が湧いた。私は思わず顔を逸らした。
今では知らぬ人のいないほどの知名度を誇る男性アイドルグループのデビュー曲を、私は本当に、一度だって自分の意思で聴いたことはなかった。
私が飽きるほど聴いたのは、こんな甘い声ではない、少し掠れた低音の――
「奈美子、この歌好きなん?」
「え、別に。なんで?」
「いや、今口ずさんでたから」
「え」
自分でもわかるくらい顔を歪めた私を、航太は不思議そうな顔で見つめた。
「全っ然、好きじゃないから」
「そこまで言うことなくね」
きょとんとした目にくしゃりと皺を寄せて、航太が吹き出す。幼い表情に言い知れない罪悪感が湧いた。私は思わず顔を逸らした。
今では知らぬ人のいないほどの知名度を誇る男性アイドルグループのデビュー曲を、私は本当に、一度だって自分の意思で聴いたことはなかった。
私が飽きるほど聴いたのは、こんな甘い声ではない、少し掠れた低音の――
「あーごめん、ちょっと待って」
スマホを耳に当てた先輩は「もしもしー?」と気の抜けた声を上げながら立ち上がった。
「――うん、うん…え?え、マジ?」
ここからでは相手の声は聞こえない。だが、先輩の眉根にみるみる皺が寄っていくのが見えて、俺はビールの缶をそっと置いた。只ならぬ雰囲気であることは、酔いに頭を火照らせた俺にも分かった。
#夜の隅で猫が鳴く
「あーごめん、ちょっと待って」
スマホを耳に当てた先輩は「もしもしー?」と気の抜けた声を上げながら立ち上がった。
「――うん、うん…え?え、マジ?」
ここからでは相手の声は聞こえない。だが、先輩の眉根にみるみる皺が寄っていくのが見えて、俺はビールの缶をそっと置いた。只ならぬ雰囲気であることは、酔いに頭を火照らせた俺にも分かった。
#夜の隅で猫が鳴く
「トナカイみたいだね」
不意に彼女が呟いた。
「トナカイ?」
「鈴が鳴ったみたいな音がするから」
そう言われれば、そんな風に聞こえる気がしないでもない。
「確かに。フロント赤いしね」
だとしたらこの古ぼけたトナカイは、僕らに自由をプレゼントしに来たに違いなかった。
#夜の隅で猫が鳴く
「トナカイみたいだね」
不意に彼女が呟いた。
「トナカイ?」
「鈴が鳴ったみたいな音がするから」
そう言われれば、そんな風に聞こえる気がしないでもない。
「確かに。フロント赤いしね」
だとしたらこの古ぼけたトナカイは、僕らに自由をプレゼントしに来たに違いなかった。
#夜の隅で猫が鳴く
水平線を指さして、君は朗らかに言った。
「大変じゃないか。いつかって?」
「そうね、私が死ぬ頃かしら」
じゃあ、そんなに遠い未来の話じゃないじゃないか。
零れかけた言葉を慌てて飲み込んだ。君は変わらず笑っている。ツンとした潮風が僕を刺した。
#夜の隅で猫が鳴く
水平線を指さして、君は朗らかに言った。
「大変じゃないか。いつかって?」
「そうね、私が死ぬ頃かしら」
じゃあ、そんなに遠い未来の話じゃないじゃないか。
零れかけた言葉を慌てて飲み込んだ。君は変わらず笑っている。ツンとした潮風が僕を刺した。
#夜の隅で猫が鳴く
社会というのはさ、変わらないから強大なのだよ。コロコロ変わるものに力なんてありはしないのさ。
君が何をどうしたいのかは知らんがね、いや説教のつもりじゃないんだ。ああほら、そう人の話を聞かないところ、キミの欠点だぜ」
#夜の隅で猫が鳴く
社会というのはさ、変わらないから強大なのだよ。コロコロ変わるものに力なんてありはしないのさ。
君が何をどうしたいのかは知らんがね、いや説教のつもりじゃないんだ。ああほら、そう人の話を聞かないところ、キミの欠点だぜ」
#夜の隅で猫が鳴く
《えー 誰だろ》
《めちゃくちゃ気になるんだけど!》
聖夜を楽しむ人々の笑い声の合間に、せっつくような通知音が聞こえる。
《俺だったらいーなー(笑)》
スマホから顔を上げる。眩く点る青い光が、目に痛かった。
「…どうだろうね、と」
この画面の向こうにいるのが、君じゃなければよかったのに。
#夜の隅で猫が鳴く
《えー 誰だろ》
《めちゃくちゃ気になるんだけど!》
聖夜を楽しむ人々の笑い声の合間に、せっつくような通知音が聞こえる。
《俺だったらいーなー(笑)》
スマホから顔を上げる。眩く点る青い光が、目に痛かった。
「…どうだろうね、と」
この画面の向こうにいるのが、君じゃなければよかったのに。
#夜の隅で猫が鳴く