ゆべ
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ゆべ
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30↑ものかき◆3L雑多◆SaGa/FF/JOJO/吸死/mgbk/ﾂｪﾚ/OP◆CP＆左右完全固定派◆F/Bご自由に◆CoC/マダミス◆🐯❤️‍🔥にお熱◆実ｼ兄🎮wkbn🎸品行ඞ最推し🦅
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ゆべ @yubetuee.bsky.social · 14d
ローコラ/深更を越えて（転生現パロ/全４頁）

Xのローコラ版マンスリーお題様
x.com/lc_1month?s=...
より11月度のお題「傷跡」「甘い」で一本🐯❤️‍🔥

「……ハハ、そんなもんだよ」
　だいじなやつには、だれだって。
Unauthorized use, reproduction, or AI learning is prohibited. 無断使用・無断転載・AI学習禁止 ※26歳×39歳ローコラ（転生現パロ） 　わずかな空気のふるえがこの瞼を引き起こした。覚醒へと向かう耳が、く、と、喉の奥で呼吸を詰まらせる音を拾い上げる。 「……コラさん？」 　暗幕を閉め、灯りも落とした夜半の寝室、隣でねむっていたはずの彼が身を起こして背を丸めている。自らも半身を起こし、開ききらない喉で愛称を呼べば、うずくまる姿勢のまますこしこちらへ顔を向けた彼は、あ、ああ、わるい、起こしたな、と、途切れ途切れに声をこぼしていった。 　その手が、左胸の布地をきつく掴んでいる。 「──痛むのか？」 　駆け巡ったあらゆる可能性に狼狽するまま、いつからだ、どんな痛みだ、背中は痛まないか、と、問いが口から次々に転げ落ちていく。顧みた時計は暗闇の中に丑三つを浮かび上がらせており、これからの段取りに巡らせかけた思考は、しかし、ちがう、そうじゃあねえから、と、ただただ首を横に振る彼に霧散した。 「おまえの……考えてるような、やつじゃあねえから」 　だから、だいじょうぶだ。なにやらやけに確信を持ったくちぶりに、一拍だけ間を置いた脳が、それは、どういう、と、反射的に問う。心当たりがある痛みであるというのなら、昼間になにか怪我のひとつでもこしらえていたのだろうか。ならばべつに隠す必要はなかろうと、手を伸ばして脇のランプを灯したおれは、ふわりと照らされた彼のかんばせに滲む脂汗に、息を呑むこととなった。 重たげな金の前髪の下、うつむきがちであったあかいひとみが持ち上がり、この視線とぶつかっては揺れる。 「……見せてみろ、コラさん」 「……いいって、だいじょうぶだから。そのうちおさまる──」 「おれは医者だ」 　勝手に判断するな。この期に及んで逃げを打とうとする彼を遮り、胸を掴んだままのその手に手を重ねる。力がこもりすぎて冷え、ふるえすら帯びているそこをじっとくるんではその目を見つめれば、詰めていた呼吸を小刻みにいくつか吐き出した彼は、静かにいちど、深く息を吐いて、観念したように軋む手を寝間着から外した。 　しわくちゃになった生地を伸ばすようにそこを撫で、灯火の影にならぬよう横たわってもらっては、ぷつりぷつりと釦を外していく。さてどんな怪我を隠していたものかと、うっすらと汗に湿った寝衣をそっと捲って──そうして、冷や水を浴びせられたような気分になった。 「……ああ、だから、いやだったんだよ……」 　苦痛の中でも、この顔が凍りついたことくらいはよくわかったのだろう。苦々しくこぼす彼にも、おれは愕然と、仄白い皮膚に刻まれた刺創の痕へ指を伸ばしていた。世を転じてふたたび邂逅し、こころも肌をも合わせる仲となってからこれまで、その身体には今世で作った些末な傷しかなかったというのに、この淡い夜燭に照らし出された左胸にはたしかに、深々と、ナイフの突き立った痕跡があらわになっていた。 　いつか、どこかのこの手が、憎悪と狂乱のまま突き立てたナイフの痕にちがいなかった。 「これは……」 「……数年に一回、こうなる。それだけだ」 　寝て起きたら、消えてるんだ。だから、だいじょうぶって言ったろ。わななく喉をも見透かしたように、彼が言葉少なに事情を説明しては、ぽんぽん、と、この頭を撫でる。しかしそのやわらかな声すら絶え絶えで、ぐ、と時折喉の奥を詰める音さえくるしげで、おれは、語らぬことで庇い立てをしてくれたあの前世の彼が、その無音の能力の中、どれほどの痛みを堪え忍んでいたのか、思い知らずにはいられないのだ。 （『──痛くもなかった』） 　痛えのは、おまえのほうだったよな。さんざめく記憶の彼方、星空の下で、熱いしずくとともに降ってきた彼の思いのたけがよみがえる。痛くなかったなんて、そんなわけがなかったのだ。いくら彼が頑丈だとて、痛みに強いと豪語していたとて、そんなわけが、あたりまえにあるわけがないのだ。 　だのに、彼は、そのうえで、そうかたちづくってくれたのだ。おれへの愛を。 「……おまえが気にすることなんて、なんにもねえんだぞ」 　おれだって、おまえを、めちゃめちゃに痛めつけてたんだから。引き絞られる胸に、重ねて告げられる自嘲の混ざる思慮が、あたたかく寄り添ってくる。きっと背中側のほうが大きいはずのその傷痕へ、ようやっと指を沿わせたおれは、な、だから、おあいこだ、などと、眉根を寄せながらも目を細めて笑んでみせる彼に、すっかり締めつけられてしまった喉をこじ開けて、振り払えぬ呵責ごと声を絞り出していた。 「……甘すぎるだろ」 「……ハハ、そんなもんだよ」 　だいじなやつには、だれだって。頭のおおきな手が、頬に滑り落ちる。いつもより温度の低いそれは、それでもたしかに、ぬくもりをこの頬に染み込ませてくれるのだ。詫びどころか報いも追いつきやしない口惜しさに、せめてとひきつれたその皮膚を手のひらで覆う。じっくりと押し撫でれば、は、と、こぼれる吐息とともに、きもちいい、と、まなじりがややも緩む。 「コラさん」 「うん……？」 「……痛むときは、いつでも言ってくれ」 　あんたがねむるまで、こうしたいから。傷痕をゆっくりとさすりながら、隣に寝直してはさむかろうと毛布を引き上げる。虚を突かれたようにすこし瞠目した彼は、じゃあ、そうするかな、と、ほころんだ声で、この手の祈りを受け取ってくれた。 　ふつりと灯りを落とす。いつしか、寝室にはゆるやかな寝息が戻っていた。 深更を越えて 2025.11.30 BGM：Flower Dance/DJ OKAWARI
Reposted by ゆべ
yeahnekotachi.bsky.social
漫画展示で参加いたします‼️
大好きなキドキラのwebオンリーに参加できて嬉しいです😭✨✨楽しみだー！！
#ドキラン1st
December 10, 2025 at 2:08 PM
yubetuee.bsky.social
ローコラのロくんはねちねち事を進めるという話を前にしたが高め合っている間に時々静止するような間があってひと息ついてんのかと視線を戻せばぼうっとたまらなさそうに自分を見つめているロくんがいて見惚れられていたと気づくコさん 慣れてきた頃にはン、と笑んでその頬を指の背でくすぐると良い
December 11, 2025 at 4:14 PM
yubetuee.bsky.social
ローコラでさ、記憶のあるロくんがいくら話してもやんわり他人行儀で記憶のなさそうなコさんに、めげずに会う約束を取り付けたけど当日まさかの高熱で行けないと連絡した数十分後、家のドアが叩かれて出たら髪振り乱して靴も半分脱げた蒼白なコさんが息せき切っていて覚えてたのかと安堵して気を失う回
December 10, 2025 at 11:48 PM
yubetuee.bsky.social
ロくんって絶対にだれかにかしずいたりひざまずいたりする質じゃあないしさせるのもすきじゃあなさそう（好敵手を屈服させるのはすき）なのにコさん相手だと泥に膝をつくことも厭わないしせかせか世話を焼くのもすきそうなの、バグのようでいのちをくれたコさんの愛に報いたい表れなのでやはりローコラ
December 10, 2025 at 12:35 PM
yubetuee.bsky.social
かんわいすぎて尊 ふわふわ……·͜·ᰔᩚ
December 10, 2025 at 10:49 AM
Reposted by ゆべ
sorahachi111.bsky.social
hearts
December 8, 2025 at 9:23 AM
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ローコラのロくん、結構口を曲げるくせがありそうなんだけど書類を前にそんな顔をしているロくんに「またンな顔してら」とコさんがでっかい片手でほっぺむにっと挟んでは「ちょっと息抜きしに来な」いいだろ、と言い置いては珈琲の香りのする廊下に消えるのでさてはさびしくなったなと書類を片すロくん
December 9, 2025 at 2:46 PM
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ローコラのコさんが瞼を焼く光に目を覚ませば先に起きてたロくんが暗幕を開け寝台に腰かけては自分の頭や頬を撫でてきており、ぼんやり見上げれば身を屈めてちゅ、と触れるだけのくちづけと共にあいしてる、なんてほほえみをくれるので「……先におはようだろ」とかすれた喉でくつくつわらうコさんの朝
December 8, 2025 at 3:11 PM
yubetuee.bsky.social
ぐらにふの美影がめちゃめちゃ無感情顔マスコット好きの身に刺さるんですが多分おにたや🍙も点目だから刺さっているのもある あとメインキャラのそばに居るちっちゃいやつがすきなのでﾘﾗ…だったら🐥がすきだしイカクだったら🦞がすき
December 8, 2025 at 2:29 PM
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かっこよすぎて卒倒
December 8, 2025 at 1:36 AM
Reposted by ゆべ
junkboh.bsky.social
December 7, 2025 at 8:56 PM
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ローコラで小説を読んでいたコさん、ロくんにそれおもしろいか、と聞かれておうなかなかおもしろいぞ、と答えるもそのそばからｱｯいや、でも、まあ微妙かも、とか言いよどみだすのでなにかと思えば「だってちょっと際どいシーンもあったし……」と白状するのでいくつだと思ってんだと苦笑するロくん
December 7, 2025 at 4:28 PM
yubetuee.bsky.social
ローコラで６歳ロくんがお隣の大学生コさんに「しろとくろのぼうしをかぶってるやつのなかでだれがすき？」とぶかぶかの帽子ぎゅっと引っ張りつつ聞いて「ﾝｯﾌ、えェ〜？　うーん、そうだなァ、ロォかなァ〜」との答えにﾆﾏｧｰ…てしてほしいし二十年後もネタにされてほしい（台詞はス〇ス〇パロ）
December 7, 2025 at 2:32 PM
yubetuee.bsky.social
変な声出た😂まだ見てないロくん……これから見るロくん……🥹💖あんまりよくわかってなさそうなにゃんこらさんかわわ🐱🫶
December 7, 2025 at 12:58 PM
Reposted by ゆべ
crzgg65.bsky.social
パロ
December 6, 2025 at 3:48 PM
yubetuee.bsky.social
ほんとにかわいいやつめだ🥰🥰🥰だれかが育んだ肯定感……🥹💖
December 7, 2025 at 12:55 PM
Reposted by ゆべ
yeahnekotachi.bsky.social
テンプレお借りしました‼️キドキラ
December 7, 2025 at 9:49 AM
yubetuee.bsky.social
mgbkDLCやるの巻( ᐛ )

www.youtube.com/live/QU-08pD...
メグとばけものDLC パペットたちの記憶～ばけものたちの記憶
YouTube video by ゆべのセーブポイント
www.youtube.com
December 5, 2025 at 12:39 PM
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ローコラのコさん、自分のほうがでかいし歳上だしいい歳だしでいまさらまあそういうことにビビる質でもねえなあと思いつつ「やさしくしてくれよ？」なんて冗談めかして言って二時間後

……言っといてよかったァ……と布団にもぐりながら破裂しそうな心臓を抱えるコさん ちゃんと相当我慢をしたロくん
December 5, 2025 at 11:22 AM
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ローコラのロくん、ズボンの尻が破れるなど恥ずかしいタイプのドジをコさんがしたら必ず上着を巻いてやるなどさっと隠してくれるしセクシーであればあるほどその対応速度がおそろしいほど速いと良いしたまにあんまり状況がわかってないのほほんコさんに「べつに良」「良 く な い が ？」とキレてる
December 3, 2025 at 2:58 PM
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ローコラの傷痕のはなし書いたばかりでなんなんですがおまえもしかして愛でコーティングしてるだけでしんどそうなコさん書くのすきだろと問われればハイ……となる でもそのしんどさがこころを許したひと＝ロくんにより寄り添われ緩和して元気になるまでがすきなのでゆるしてほしい 夜明けの者です
December 2, 2025 at 2:59 PM
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かんばしくなさすぎるから2/1は見送るか やること詰まりすぎてる
December 2, 2025 at 2:37 PM
Reposted by ゆべ
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ローコラ/深更を越えて（転生現パロ/全４頁）

Xのローコラ版マンスリーお題様
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より11月度のお題「傷跡」「甘い」で一本🐯❤️‍🔥

「……ハハ、そんなもんだよ」
　だいじなやつには、だれだって。
Unauthorized use, reproduction, or AI learning is prohibited. 無断使用・無断転載・AI学習禁止 ※26歳×39歳ローコラ（転生現パロ） 　わずかな空気のふるえがこの瞼を引き起こした。覚醒へと向かう耳が、く、と、喉の奥で呼吸を詰まらせる音を拾い上げる。 「……コラさん？」 　暗幕を閉め、灯りも落とした夜半の寝室、隣でねむっていたはずの彼が身を起こして背を丸めている。自らも半身を起こし、開ききらない喉で愛称を呼べば、うずくまる姿勢のまますこしこちらへ顔を向けた彼は、あ、ああ、わるい、起こしたな、と、途切れ途切れに声をこぼしていった。 　その手が、左胸の布地をきつく掴んでいる。 「──痛むのか？」 　駆け巡ったあらゆる可能性に狼狽するまま、いつからだ、どんな痛みだ、背中は痛まないか、と、問いが口から次々に転げ落ちていく。顧みた時計は暗闇の中に丑三つを浮かび上がらせており、これからの段取りに巡らせかけた思考は、しかし、ちがう、そうじゃあねえから、と、ただただ首を横に振る彼に霧散した。 「おまえの……考えてるような、やつじゃあねえから」 　だから、だいじょうぶだ。なにやらやけに確信を持ったくちぶりに、一拍だけ間を置いた脳が、それは、どういう、と、反射的に問う。心当たりがある痛みであるというのなら、昼間になにか怪我のひとつでもこしらえていたのだろうか。ならばべつに隠す必要はなかろうと、手を伸ばして脇のランプを灯したおれは、ふわりと照らされた彼のかんばせに滲む脂汗に、息を呑むこととなった。 重たげな金の前髪の下、うつむきがちであったあかいひとみが持ち上がり、この視線とぶつかっては揺れる。 「……見せてみろ、コラさん」 「……いいって、だいじょうぶだから。そのうちおさまる──」 「おれは医者だ」 　勝手に判断するな。この期に及んで逃げを打とうとする彼を遮り、胸を掴んだままのその手に手を重ねる。力がこもりすぎて冷え、ふるえすら帯びているそこをじっとくるんではその目を見つめれば、詰めていた呼吸を小刻みにいくつか吐き出した彼は、静かにいちど、深く息を吐いて、観念したように軋む手を寝間着から外した。 　しわくちゃになった生地を伸ばすようにそこを撫で、灯火の影にならぬよう横たわってもらっては、ぷつりぷつりと釦を外していく。さてどんな怪我を隠していたものかと、うっすらと汗に湿った寝衣をそっと捲って──そうして、冷や水を浴びせられたような気分になった。 「……ああ、だから、いやだったんだよ……」 　苦痛の中でも、この顔が凍りついたことくらいはよくわかったのだろう。苦々しくこぼす彼にも、おれは愕然と、仄白い皮膚に刻まれた刺創の痕へ指を伸ばしていた。世を転じてふたたび邂逅し、こころも肌をも合わせる仲となってからこれまで、その身体には今世で作った些末な傷しかなかったというのに、この淡い夜燭に照らし出された左胸にはたしかに、深々と、ナイフの突き立った痕跡があらわになっていた。 　いつか、どこかのこの手が、憎悪と狂乱のまま突き立てたナイフの痕にちがいなかった。 「これは……」 「……数年に一回、こうなる。それだけだ」 　寝て起きたら、消えてるんだ。だから、だいじょうぶって言ったろ。わななく喉をも見透かしたように、彼が言葉少なに事情を説明しては、ぽんぽん、と、この頭を撫でる。しかしそのやわらかな声すら絶え絶えで、ぐ、と時折喉の奥を詰める音さえくるしげで、おれは、語らぬことで庇い立てをしてくれたあの前世の彼が、その無音の能力の中、どれほどの痛みを堪え忍んでいたのか、思い知らずにはいられないのだ。 （『──痛くもなかった』） 　痛えのは、おまえのほうだったよな。さんざめく記憶の彼方、星空の下で、熱いしずくとともに降ってきた彼の思いのたけがよみがえる。痛くなかったなんて、そんなわけがなかったのだ。いくら彼が頑丈だとて、痛みに強いと豪語していたとて、そんなわけが、あたりまえにあるわけがないのだ。 　だのに、彼は、そのうえで、そうかたちづくってくれたのだ。おれへの愛を。 「……おまえが気にすることなんて、なんにもねえんだぞ」 　おれだって、おまえを、めちゃめちゃに痛めつけてたんだから。引き絞られる胸に、重ねて告げられる自嘲の混ざる思慮が、あたたかく寄り添ってくる。きっと背中側のほうが大きいはずのその傷痕へ、ようやっと指を沿わせたおれは、な、だから、おあいこだ、などと、眉根を寄せながらも目を細めて笑んでみせる彼に、すっかり締めつけられてしまった喉をこじ開けて、振り払えぬ呵責ごと声を絞り出していた。 「……甘すぎるだろ」 「……ハハ、そんなもんだよ」 　だいじなやつには、だれだって。頭のおおきな手が、頬に滑り落ちる。いつもより温度の低いそれは、それでもたしかに、ぬくもりをこの頬に染み込ませてくれるのだ。詫びどころか報いも追いつきやしない口惜しさに、せめてとひきつれたその皮膚を手のひらで覆う。じっくりと押し撫でれば、は、と、こぼれる吐息とともに、きもちいい、と、まなじりがややも緩む。 「コラさん」 「うん……？」 「……痛むときは、いつでも言ってくれ」 　あんたがねむるまで、こうしたいから。傷痕をゆっくりとさすりながら、隣に寝直してはさむかろうと毛布を引き上げる。虚を突かれたようにすこし瞠目した彼は、じゃあ、そうするかな、と、ほころんだ声で、この手の祈りを受け取ってくれた。 　ふつりと灯りを落とす。いつしか、寝室にはゆるやかな寝息が戻っていた。 深更を越えて 2025.11.30 BGM：Flower Dance/DJ OKAWARI
November 30, 2025 at 2:54 PM
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眠気
December 1, 2025 at 11:09 AM
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ローコラ/深更を越えて（転生現パロ/全４頁）

Xのローコラ版マンスリーお題様
x.com/lc_1month?s=...
より11月度のお題「傷跡」「甘い」で一本🐯❤️‍🔥

「……ハハ、そんなもんだよ」
　だいじなやつには、だれだって。
Unauthorized use, reproduction, or AI learning is prohibited. 無断使用・無断転載・AI学習禁止 ※26歳×39歳ローコラ（転生現パロ） 　わずかな空気のふるえがこの瞼を引き起こした。覚醒へと向かう耳が、く、と、喉の奥で呼吸を詰まらせる音を拾い上げる。 「……コラさん？」 　暗幕を閉め、灯りも落とした夜半の寝室、隣でねむっていたはずの彼が身を起こして背を丸めている。自らも半身を起こし、開ききらない喉で愛称を呼べば、うずくまる姿勢のまますこしこちらへ顔を向けた彼は、あ、ああ、わるい、起こしたな、と、途切れ途切れに声をこぼしていった。 　その手が、左胸の布地をきつく掴んでいる。 「──痛むのか？」 　駆け巡ったあらゆる可能性に狼狽するまま、いつからだ、どんな痛みだ、背中は痛まないか、と、問いが口から次々に転げ落ちていく。顧みた時計は暗闇の中に丑三つを浮かび上がらせており、これからの段取りに巡らせかけた思考は、しかし、ちがう、そうじゃあねえから、と、ただただ首を横に振る彼に霧散した。 「おまえの……考えてるような、やつじゃあねえから」 　だから、だいじょうぶだ。なにやらやけに確信を持ったくちぶりに、一拍だけ間を置いた脳が、それは、どういう、と、反射的に問う。心当たりがある痛みであるというのなら、昼間になにか怪我のひとつでもこしらえていたのだろうか。ならばべつに隠す必要はなかろうと、手を伸ばして脇のランプを灯したおれは、ふわりと照らされた彼のかんばせに滲む脂汗に、息を呑むこととなった。 重たげな金の前髪の下、うつむきがちであったあかいひとみが持ち上がり、この視線とぶつかっては揺れる。 「……見せてみろ、コラさん」 「……いいって、だいじょうぶだから。そのうちおさまる──」 「おれは医者だ」 　勝手に判断するな。この期に及んで逃げを打とうとする彼を遮り、胸を掴んだままのその手に手を重ねる。力がこもりすぎて冷え、ふるえすら帯びているそこをじっとくるんではその目を見つめれば、詰めていた呼吸を小刻みにいくつか吐き出した彼は、静かにいちど、深く息を吐いて、観念したように軋む手を寝間着から外した。 　しわくちゃになった生地を伸ばすようにそこを撫で、灯火の影にならぬよう横たわってもらっては、ぷつりぷつりと釦を外していく。さてどんな怪我を隠していたものかと、うっすらと汗に湿った寝衣をそっと捲って──そうして、冷や水を浴びせられたような気分になった。 「……ああ、だから、いやだったんだよ……」 　苦痛の中でも、この顔が凍りついたことくらいはよくわかったのだろう。苦々しくこぼす彼にも、おれは愕然と、仄白い皮膚に刻まれた刺創の痕へ指を伸ばしていた。世を転じてふたたび邂逅し、こころも肌をも合わせる仲となってからこれまで、その身体には今世で作った些末な傷しかなかったというのに、この淡い夜燭に照らし出された左胸にはたしかに、深々と、ナイフの突き立った痕跡があらわになっていた。 　いつか、どこかのこの手が、憎悪と狂乱のまま突き立てたナイフの痕にちがいなかった。 「これは……」 「……数年に一回、こうなる。それだけだ」 　寝て起きたら、消えてるんだ。だから、だいじょうぶって言ったろ。わななく喉をも見透かしたように、彼が言葉少なに事情を説明しては、ぽんぽん、と、この頭を撫でる。しかしそのやわらかな声すら絶え絶えで、ぐ、と時折喉の奥を詰める音さえくるしげで、おれは、語らぬことで庇い立てをしてくれたあの前世の彼が、その無音の能力の中、どれほどの痛みを堪え忍んでいたのか、思い知らずにはいられないのだ。 （『──痛くもなかった』） 　痛えのは、おまえのほうだったよな。さんざめく記憶の彼方、星空の下で、熱いしずくとともに降ってきた彼の思いのたけがよみがえる。痛くなかったなんて、そんなわけがなかったのだ。いくら彼が頑丈だとて、痛みに強いと豪語していたとて、そんなわけが、あたりまえにあるわけがないのだ。 　だのに、彼は、そのうえで、そうかたちづくってくれたのだ。おれへの愛を。 「……おまえが気にすることなんて、なんにもねえんだぞ」 　おれだって、おまえを、めちゃめちゃに痛めつけてたんだから。引き絞られる胸に、重ねて告げられる自嘲の混ざる思慮が、あたたかく寄り添ってくる。きっと背中側のほうが大きいはずのその傷痕へ、ようやっと指を沿わせたおれは、な、だから、おあいこだ、などと、眉根を寄せながらも目を細めて笑んでみせる彼に、すっかり締めつけられてしまった喉をこじ開けて、振り払えぬ呵責ごと声を絞り出していた。 「……甘すぎるだろ」 「……ハハ、そんなもんだよ」 　だいじなやつには、だれだって。頭のおおきな手が、頬に滑り落ちる。いつもより温度の低いそれは、それでもたしかに、ぬくもりをこの頬に染み込ませてくれるのだ。詫びどころか報いも追いつきやしない口惜しさに、せめてとひきつれたその皮膚を手のひらで覆う。じっくりと押し撫でれば、は、と、こぼれる吐息とともに、きもちいい、と、まなじりがややも緩む。 「コラさん」 「うん……？」 「……痛むときは、いつでも言ってくれ」 　あんたがねむるまで、こうしたいから。傷痕をゆっくりとさすりながら、隣に寝直してはさむかろうと毛布を引き上げる。虚を突かれたようにすこし瞠目した彼は、じゃあ、そうするかな、と、ほころんだ声で、この手の祈りを受け取ってくれた。 　ふつりと灯りを落とす。いつしか、寝室にはゆるやかな寝息が戻っていた。 深更を越えて 2025.11.30 BGM：Flower Dance/DJ OKAWARI
November 30, 2025 at 2:54 PM