灯夜
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灯夜
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憑依型物書き。20↑
フォロワーは推し。遠慮なく贔屓します。
カルジナ村に現在居住。
アイコンは友人のたきひら様より。
べったー:http://privatter.net/u/akariyo1991
ついふぃーるhttp://twpf.jp/akariyo1991
タイッツー：https://taittsuu.com/users/akariyo1991
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（3/3）
「何を言っている？　二人とも、今日帰れると思っているのか」 「うん？」 「カルナ？」 　カルナも背が高いほうだろうが、バーソロミューもパーシヴァルもカルナより大きい。ジナコはそろそろ見上げていて首が痛くなってくるほどだ。目つきの悪くなりがちなカルナが下から見上げる図は想像以上に人相の悪いことになっていそうだが、二人は首を傾げるばかりでホッとする。 「あ～、うちに泊まってもっとお話しませんかって言ってるっスよ」 「えぇっ！　そんな、ご迷惑をおかけするには」 「身内や友達では本当によくあることなんで……。一階奥の休憩室で毛布で雑魚寝だし、マジでなんのお構いもしないけど、それでよければドーゾ」 　ドゥリーヨダナやアシュヴァッターマンが遊びに来たとき、アルジュナたち双子が飲み勝負で潰れたときなど、花屋の奥の休憩室は雑魚寝部屋に変わる。こうしてカルナが家まで招くのは信頼の置ける者ばかりなので、出不精のジナコでも、もう慣れてしまった。 「……本当にいいのでしょうか？」 「私としては、信頼できる屋根と毛布があるだけでも天国なのだけど……」 「えと、バーソロミューさん？　貿易商さんってそんなに過酷なお仕事なんスか……？」 「あぁ失礼、レディに聞かせる話ではなかったね。お言葉に甘えてしまっても？」 「ア、ハイ」 「ありがとう、ミズ・ジナコ」 　流れるようにバーソロミューがジナコの手を取って唇を寄せようとした。それをカルナがはたき落とす。 「バーソロミュー、それは看過できん。野宿が好みか」 「おっと、重ねて申し訳ない。海外の癖が抜けていないようだ」 「よく言う、伊達男め。こちらだ、ついてこい」 「んじゃおやすみなさーい。ボクはヘッドフォンしてゲーム三昧からの寝落ち予定なんで、近所迷惑じゃなきゃ騒いでもオッケーっスよー。明日寝坊しないでねー」 「感謝しますジナコさん、おやすみなさい」 「パーシヴァル、あまりジナコを見るな目の毒だ」 「カルナさん！　もう一言！」 「はいはい、パーシヴァルは見た目も中身も良い男だものね、カルナもちょっとヤキモチ焼いちゃうよね～。さぁカルナ、早く君の城を案内してくれたまえ、どっちだい？」 　そう言いながら、店の方へと三人は歩を進めていった。 　それを見送り、ジナコはへらりと笑う。 「お正月は、楽しいのが一番っスよね」 　自身も心置きなく夜ふかしを楽しむべく、部屋へと出戻った。
January 2, 2025 at 3:29 PM
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（2/3）
　ジナコとて、一人の時間が嫌いではない。降って湧いたお節おやつゲームの自堕落正月コラボ開催チャンスに少し胸が踊っている。 「感謝する。商店街の居酒屋ではどうだ。むしろお前も一緒に」 「男の友情に挟まる女ほど空気読めなくはなれないっスね。いいから早く返事してあげな」 　なにより、カルナのたまの我儘ぐらい、快く聞いてあげたい。それが彼の友人関係であるならなおのこと。 　その心意気が伝わったのか、カルナはポチポチと文字を打った。 　 『妻から許可が出た。商店街の居酒屋なら行ける』 『寛大な奥様に感謝を！　出る準備をするよ！』 『正月に長時間奥方を一人にするわけにはいかないから、カルナの家の近くというのは良い案だ。店の予約だけ頼まれてくれるかい？』 『承知した。それと、パーシヴァル』 『うん？』 『ジナコは寛大というより広大だ。物理的に横に』 『……カルナ、独身で機微に疎い私が言うことでもないかもしれないが、君はもう少しデリカシーというものを学んだほうがいいと思う』 『伊達男の私もパーシヴァルに賛成するよ。奥方へは「急な予定を許してくださり本当に感謝しています。遅くなりすぎないよう気をつけます。何かあればすぐにご連絡ください」と一言一句違わず告げて頭を下げてくれたまえ』 　 　その後で、バーソロミューの名刺の写真が届いた。続いてパーシヴァルからも名刺写真が届く。 　黙って夫の背に制裁を入れたジナコは、それを見てポツリと呟いた。 「律儀だ……すご……」 　それを見たカルナが、名刺をしまっている箱から同じものを取り出し、机に並べて言った。 「急な予定を許してくださり本当に感謝しています。遅くなりすぎないよう気をつけます。何かあればすぐにご連絡ください」 　そうして正座をして頭を下げた。見事な土下座だった。馬鹿正直な行動に無性に笑いがこみ上げて、ジナコはゲラゲラと笑ってしまった。 　 　 　そうしてカルナが出かけたのが夕方。明日が出勤のメンバーもいるらしいので、日付が回らないぐらいには帰ってくるかとジナコは思っていたが、カルナは想定よりも少し早く、想定外に二人を連れて帰ってきた。 　もっと正しく言うと、酔った三人が互いに支え合いながら帰ってきた。 「ただいまジナコ」 「おかえうわっ重っ！　ちょっと！」 　夜はこれからという時間帯で出迎えたジナコに、機嫌の良いカルナが抱きついた。バタバタとジナコがかけられた体重に抗っていると、三人の中で一番背の高い男性が話しかけてきた。 「どうもこんばんは……えぇと、アザラシの奥様」 「こらっパーシヴァル！」 「ハァ！？」 「あぁいや違う、いえ違いませんが違います、申し訳ありません失言でした。私はパーシヴァル・ド・ゲールと申します」 「自己紹介が遅れました、バーソロミュー・ロバーツと申します。以後お見知りおきを」 「あ、ドモ……夫からお噂はかねがね……」 「こちらも奥様のお噂はかねがね……」 「奥様なんて……え、それがアザラシ？」 「はい、あ、いいえ……いえ、はい……」 「パーシヴァル、君見た目以上に酔ってるだろ」 「面目ない……」 「かく言う私も、乗り継ぎに失敗しない自信はないんだよな……どこか安いホテルでも」 　そこで、ジナコに抱きついて沈黙していたカルナがのそりと身を起こし、二人の服の裾を掴んだ。
January 2, 2025 at 3:29 PM
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パバナっち＋カルジナ花屋夫婦設定で初書き。
夏の奏章3でパバナっち（トリオ名もかわいい）に脳を焼かれました。
ずっと仲良くしておくれパバナっち。

『お正月の楽しみ』
（1/3） #文庫ページメーカー
印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。付記に「お正月の楽しみ」、「トーヤ」と記載されています。 以下は本文の内容です。 「……ほう、帰ってきていたのか」 　正月休みにリビングでのんびりと寛いでいると、カルナの端末がメッセージの着信を知らせた。 　ぽろりと呟いた彼の声が、珍しくもわかりやすく嬉しそうで、ジナコはちらりと視線を投げる。 「どったの？」 「この夏、オレが研修旅行に出向いたのを覚えているか」 「うん」 「その先で得た新たな友人が二人ほどできたのを話しただろう」 「あー、えっと、ぱー……パーシヴァルさんと、バーソロミューさんだっけ？」 　留守番をしていたジナコは『花屋組合の研修旅行で何をどうすればそんなトンチキかつアクロバティックな珍道中になるのか全く理解できない』と感想を抱いた夏のことを思い浮かべる。詳しい内容も聞くには聞いたが正気度が削られるので敢えて思い出さない。留守番していて本当に良かったと思ったことだけは覚えている。だが、夫を誤解せず楽しく付き合ってくれる友人が増えたことは喜ばし かった。 「そうだ。バーソロミューは貿易商ゆえ一年の大半を海で過ごす男なのだが、たまたま近くに寄港したらしい」 「へぇ、そうなんだ」 「見てみろ」 　カルナがジナコへ端末の画面を寄せてくる。『ぱばな！』と銘打たれたグループチャットに、ポコポコとメッセージが浮かび上がっていた。 　 『ここどーこだ？』（港の写真） 『お疲れ様バーソロミュー。今は陸にいるんだね、どこだろう』 『陸は陸でも、海外じゃないんだよな～。○○っていうカルナの家の最寄り港！』 『バーソロミュー、おかえり、だ。そこがオレの最寄り港なのか……寡聞にして知らなかった』 『ただいまカルナ！』 『最寄り駅やバス停みたいに言うのはバーソロミューぐらいだと思うよ、カルナ』 『ひどい冤罪だ、他の船乗りも同じこと言うよ！　それはともかく、半月ぐらいここにいるんだけど、どこかで食事でもどうかな？　三人で会えれば一番嬉しいけど、カルナやパーシヴァルは今の時期忙しそうかな』 　 「パーシヴァルさんって何してる人だっけ？」 「やつはＳＰだ。ボディガードや警備の仕事をしている」 「あぁ～……。お正月は忙しそうっスねぇ……」 　なぜ貿易商とＳＰと花屋が組合研修旅行で仲良くなれたのかは、野暮なのでジナコは突っ込まないことにした。 「うちのお休みは三日までだから、どうだろうねぇ」 　ぴこん、と新たなメッセージが入った。 　 『今日の夜なら行けるよ！　クリスマスイブから元旦まで連勤だったから、今日は休みなんだ。明日の昼からまた出勤だけど』 『なんて過酷なシフトなんだいパーシヴァル。今の会社に愛想を尽かしたら、う ちにおいで。私の秘書兼ボディガードとして雇ってあげよう』 『大丈夫、この仕事も楽しいしやりがいがあるからね』 『それが一番いいことだ』 『だが、些か○○は遠くて……。カルナの花屋さんあたりなら、ゆっくり話す時間が取れると思うんだが』 『私のフットワークの軽さを甘く見られては困るね。私はどこでもいけるよ』 『すまない、ありがとう。既読はついているようだが、カルナの都合はどうかな。奥方とも相談しなければならないだろうし』 　 「ジナコ」 「いーよいーよ、行っといで」 　ひらひらとジナコは手を振った。特に何か予定があるわけでもない。それぞれの実家にも最低限の義理は果たしているし、初詣も済ませている。今日の夜の予定など、カルナが作ったお節を食べてなんとなく正月番組を眺めてゲームをして、と通常運転になるだろう。
January 2, 2025 at 3:29 PM