アシタの風
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アシタの風
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おもに読書記録と感想
緑内障により20年前より全盲
※読書はKindle&iPhone読上機能で耳読
※無言フォロー失礼します
※DMお返しできません
オー!ファーザー
伊坂幸太郎
#読了
いや面白い!
何しろ著者が著者なので[特異な家族形態への世間の無理解][大家族内での主導権をめぐる衝突][そんな中で自らの血筋に苦悩する高校生]などという展開には絶対になり得ないだろうとは思っていたがまさかここまである意味理想的な家族が描かれるとは
とにかくギャンブル大好き女性大好き格闘技大好き勉学大好きの4人の父親が誰もが素晴らし過ぎる
あとはたとえ紙上でも主人公が最後に見る自分と3人の父親が喪服で佇む幻影の未来が一日でもできれば永遠に訪れないことを祈るばかり
November 9, 2025 at 8:43 PM
生殖記
朝井リョウ
#読了
32歳何事にも主体性が全く感じられないある男の毎日を常に彼と共に生き彼を見てきた[誰か]が語る
どこかで[生殖器が主人公の作品]などと聞いていたため長らく手にするのを止めていたのがなるほどこういう訳だったとは
しかし以前[正欲]を読んだ時にも感じたこの著者の感性文章変換力ともいうべき文章力にはあらためて敬服驚嘆
おそらくはこの作品と出会い多くがそれまでの苦を楽に変え
ある者は終焉を迎えさせようとしていたその生を継続へと転じさせたのではと
November 8, 2025 at 9:33 PM
新人女警
吉川英梨
#読了
主人公は11年前市内で起きた女性3人惨殺事件の唯一の目撃者
そんな彼女はやがて地元八王子で警察官となり交番勤務の傍ら今日も犯人を追う
地元情報満載の展開に興味を抱きつつもやはり気になるのは職務分掌や法律規則を無視した勇み過ぎる彼女の勇み足
これがなければ現実感も増したのだろうがしかし考えてみると目撃者である前に眼前で友を凶器に奪われた一人の女性としてその信念は時にそんな雑多を軽く飛び越えてしまうのだろうなと
November 7, 2025 at 8:29 PM
なまえは語る
新津きよみ
#読了
人に一生付いてまわるまさに切っても切れない仲だけに上手に気持ちよく付き合いたいのが名字を含めた自分の名前
しかし現実にはそもそも名前は自分では決められないところに結婚諸々の改姓もありいろいろと
そしてこれはそんな名前で損して得して泣いて笑った8つの物語
中身はというといかにも著者らしい思わず背筋が寒くなるホラー系から心が温かになるホッコリ系まで多種多様
ここでもいくつかの作品に出てくるいわゆる選択的別姓制度問題
もうそろそろこの国も世界へ向けて一歩を踏み出してもらいたいと個人的には思うのだが
November 6, 2025 at 8:10 PM
相方と久し振りに電車で出かけ何気なく車内の吊り輪に触れたら
あれっ、何か変!
ちなみに車内の床面は緑色の若草風
シートは茶色のシカ顔模様で
背もたれの上からはシカの角が伸びているようです
November 6, 2025 at 12:42 PM
豆腐の角に頭ぶつけて死んでしまえ事件
倉知淳
#読了
そういえば昔、富山の五箇山で日本一堅い豆腐というのを食べたことが
とそんなことを思い出しながらタイトルに惹かれ手に取った全6篇
意外な?名探偵に驚いたのが[猫丸先輩の出張]
ミステリーながらニコデレしてしまったのが[夜を見る猫]
ということでどれもが伏線回収やオチがしっかり効いていて大いに満足
ところで猫に猫丸先輩にゆるキャラねこめろんくんとえらく猫が主張してくるなと思っていたらどうやら著者は大の猫好きとのこと
これはどうりでお祖母ちゃんと静かに暮らす猫の仕草が1000%可愛く描かれているはず
November 5, 2025 at 8:37 PM
神の値段
一色さゆり
#読了
コンサバターシリーズなど何冊か既読の著者のデビュー作
主人公が働くのは何もかもが秘密のベールに包まれた謎の創作者[無名]の作品を取り扱うギャラリー
そんなある日倉庫内で女性オーナーが撲殺死体で発見される
著者自身もかつてギャラリー勤務ということで経験に基づいた精緻な描写にミステリーながら気分はいつしか専門書モード
マネーゲームの様相すら呈するオークションシーンに果たしてモノの価値とは何ぞやと
この作品と二人きりで生活したい
誰のためでもなくただ自分のためだけに
そんなオーナーの言葉が重く響く
November 4, 2025 at 8:23 PM
すごい科学論文
池谷裕二
#読了
ネコの「ゴロゴロ」の正体
「生成AI」は透明な夢を見るのか etc
そんなちょっと笑えてそれでいて思わず唸ってしまう研究論文を集めた現役研究者のエッセイ集
もともとが雑誌連載記事ということであくまでも軽く表面を擦る程度なのがあまり深く掘り下げられても門外漢にはお手上げということでちょうどいい塩梅に
中には成果が期待できない馬鹿馬鹿しい等諸々の事情で殆どが継続を断念する傍らめげずにコツコツ研究を続けそれが大発見になんていうものもありいやいややはり科学は面白いなと
November 3, 2025 at 8:21 PM
ムシカ 鎮虫譜
井上真偽
#読了
それぞれに未来に躊躇いを抱えた音大サークルの男女5人が辿り着いたのは音楽の神が祀られている神社があるという瀬戸内の無人島
しかしそんな彼らを突然の大量の虫が襲う
以前に読んだ巨大化した蟷螂が人を襲う某作品のような最初から最後まで全編にわたっての虫虫虫を予想していたのが音楽というフェルマータが多少は恐怖を薄めてくれたのか以前のような読後トイレに行けなくなるような事態は何とか回避
いかんせん浅学非才の身では同時並行的に進行する複雑な展開になかなか理解が追いつかずまたいつの日か再読できればと
November 2, 2025 at 8:26 PM
そこに工場があるかぎり
小川洋子
#読了
一瞬同姓同名のどなたか他の方の作品かと思ってしまったかの小川洋子さんの大人の工場見学エッセイ
しかし著者の手にかかると安寧の地を見つけ佇む工場の機械も待つ人の笑顔を夢見ながらその時を待つ材料や製品もが静かに黙示ながら背中で語る職人と共に言葉を発し豊かな表情を見せる物語の登場人物となり得てしまうのだから何とも不思議
あらためてこの国は決して巨大資本でも何でもないそんなしっかり地面に根を張り建つ小さな巨人が支えているんだと
November 1, 2025 at 8:34 PM
毒殺魔の教室
塔山郁
#読了
30年前ある小学校で起きた児童による同級生毒殺事件
そして今あらためて当時の関係者の証言により明らかにされてゆくあの時の真実
それぞれが抱く不揃いな世界や正義が齎した悲劇の終幕に思いは複雑
多少の惰性感は覚えつつも著者デビュー作を興味深く最後まで堪能
October 31, 2025 at 8:09 PM
2025年10月の読了は29冊でした
今月も
 けものたちは故郷をめざす /安部公房
 主よ、永遠の休息を /誉田哲也
など深く考えさせられるものがいくつも
初めましての中では
 魔女裁判の弁護人 /君野新汰
がなかなか
あと
 絶縁病棟 /垣谷美雨
などは今後も楽しみなシリーズ
#10月の読了本
October 30, 2025 at 10:26 PM
キッチン常夜灯 夜ふけのオニオングラタンスープ
長月天音
#読了
シリーズも第4巻を迎えビストロで出される美味しそうな料理やお客様を迎える2人の笑顔は次第に主菜の座を訪れた人のこれまでと今、そしてこれからに譲り主菜に安らぎという彩りを添える極上の副菜へ
そして今作の主菜たる主人公は40歳を超え充足感と少しの寂寥感と共にチェーンレストランの店長として日々を送るいつき
変わらなくてはとの思い
変わることへの不安
そんな自らに問い自らの心の声を聞いてみたいと思う時、都会の片隅で点る常夜灯は凝り固まった心を解してくれる何よりの魔法になるのかも
October 30, 2025 at 8:14 PM
黄色い部屋の秘密
ガストン・ルルー
#読了
かの[オペラ座の怪人]の著者による1907年発表作品
古城の密室で起きた令嬢襲撃事件の解決に名乗りを上げたのは18歳の新聞記者ルールタビーユ
そんな彼は[論理の輪]の名のもと思考と実証を駆使して次々その時そこであったことを明らかにしてゆく
密室トリックの古典的名作ということで幾つもの驚嘆は覚えつつも個人的には果たしてそんなに都合良く展開するだろうかとの疑問的思いが浮かぶ部分も
片田舎の古城であることも相まり全くの闇が支配する往時の夜だったからこそ成し得た所業だったのだろうか
October 29, 2025 at 8:39 PM
暗黒女子
秋吉理香子
#読了
名門私立女子高文学サークルが舞台のゴシックホラー&ミステリー
5人の会員が順に発表してゆくカリスマ前会長を地獄に追いやった[このうちの誰か]を唯々静かに弾劾してゆく創作短篇で次第に先鋭感を増してゆく定例会
やがてそれでもなおどこかで[洒落にならない]程度に抑えられていた展開は遂には新会長の総括で本物の地獄へ
いや怖かった
果たして彼女たちにとって神秘の喪失とはそこまでの罪だったのだろうか
October 28, 2025 at 8:37 PM
主よ、永遠の休息を
誉田哲也
#読了
悲しい
それが読み終わっての素直な感想
警察詰めの記者である鶴吉は十数年前に起きた幼女掠取陵辱事件の実録動画の存在を知り取材を開始する
そんな鶴吉と彼が足蹴に通うコンビニの店員である桐江の二人の視点で展開してゆくあの時からのその後
読み終えてみれば彼女だけでなく彼女も彼女も、そして彼も彼も皆、被害者であり犠牲者だった
一人の男が破壊してしまったあまりに多くの幸せに優しさに温かさに願わくは主が永遠の休息を与えんことを
October 27, 2025 at 8:37 PM
ものだま探偵団 ふしぎな声のする町で
ほしおさなえ
#読了
小学生の少女がかつて母親が暮らした街で体験するちょっと不思議な出来事
何気なく読み始めたのがいつのまにか没入し気付けば最後のシーンでは某読書管理アプリでのジャンル分け児童書に中老年が涙モード
物に宿る魂の声を聞くことができる少女が同じ能力を持つ仲間と協力し思いを助ける展開に魂云々、八百万云々別としてモノ云わぬ存在への心配りの優しさを想う
October 27, 2025 at 12:08 AM
虹を待つ彼女
逸木裕
#読了
自然な形で人と対話する人工知能の開発に従事する主人公
そんな彼がモデルとして新たに選んだのは数年前に衝撃的な方法で自殺したゲームクリエーター美少女だった
2016年の作品ということで発表から10年近く
既に生成AIが世界を席巻し中には作品に出てくるような弊害も
テクノロジーが表面に出ながら作品展開の基礎となるゲームクリエイター美少女の過去をめぐるミステリーの部分ではそれらをもっても全てを推し量ることなど不可能な人の思いが奥底に
読後あらためて人と生成AIとの未来の関係について考えてみる
October 25, 2025 at 5:40 AM
カラス殺人事件
サラ・ヤーウッド・ラヴェット
#読了
英国の片田舎で荘園領主が撲殺され近くで蝙蝠の生態調査をしていた学者が容疑者に
やがて彼女はその専門知識を駆使し独自に真犯人を追うことに
自身も研究者ということで生態云々についてはかなり詳しく語られるも如何せん浅学非才の身では何とも
取調段階で完全にビデオによる可視化と弁護人の帯同が実践されている風景にはそれらが一部あるいは全く未着手のどこかの国もぜひ見倣っていただければと
背景にある英国あるいはヨーロッパの階級社会も気になるところ
October 24, 2025 at 12:30 AM
昨日の深夜、というか今日の午前1時過ぎにポストしたブラウザーベースの Blue Sky クライアント TOKIMEKI で[いいね]の数を読まなくなったという件
今し方開いてみたらちゃんと元通り読めるようになっていて
おまけに今まで[ボタン]としか読まなかったものまでが[引用]と読むようになりびっくり
とかく視覚障害者の環境は大手のデベロッパーでもあまり考慮されないだけに
もし開発者さんがポストを見て修正してくださったのなら心からの感謝です
October 23, 2025 at 2:49 AM
協力者ルーシー
越尾圭
#読了
懲らしめてとの言葉を遺し殺人魔の凶刃の前に散った最愛の妹
やがて成長した姉は復讐のため警察の特別協力者として犯罪組織に潜入し犯人を追う
初志の貫徹のためにはどんな危難にも僅かの躊躇も覚えないその姿勢には心配などを超えもはや清々しささえも
社会問題化している貧困ビジネス現場を舞台に身元の発覚さえ恐れず度重なる暴力や謀略に抗し犯人を追い詰めてゆく緊張感の連続する展開に時間も忘れて一気に最後まで
続巻も出ているようでそちらの方も楽しみなところ
October 22, 2025 at 10:06 PM
Blue Skyアプリが視覚障害者のスマホ環境では相当に使い辛いということで使用しているブラウザーベースのクライアント tokimeki.blue
昨日午後から夜にかけて何があったか知らないが、それまで「いいね1」のように読み上げていた「いいね」の数を読み上げなくなり、ただただ「like」だけに
一応手間をかければ確認はできるものの、自分が「いいね」を押しているかどうかもわからないだけにこれはちょっと不便
ちなみに家人に見てもらうと画面には表示されてるとのこと
October 22, 2025 at 4:39 PM
ダーウィンの暗号
M.A.Rothman
#読了
遺伝子科学の暴走が惹き起こした恐怖の支配する世界
度重なる実験研究により遺伝子進化アルゴリズムの解析に成功した巨大製薬企業研究員のホアン
がほぼ時を同じくして国内外で動物に起因する不可解な事件が連続して発生する
頭の中では全くのSFと理解していながらここ数年の現実世界の情勢からもしかして近い将来?あるいはもう既に?との思いが何度も
国家や巨大企業などの思惑が激しく交錯する展開に寝食も忘れて一気に最後まで
ハッピーエンドに静かに優しく寄り添う不穏な陰が何とも
October 21, 2025 at 10:51 PM
この世界からは出ていくけれど
キムチョヨプ
#読了
社会の多数者とそこに入れない者そこから外れてしまった者の対話が主題のSF全7篇
互いに理解を試みつつそれで補えない部分があり続けることへの葛藤
ただ物語の終わりはどれもが限りなく静かで優しい
唯々未来を祈りたくなるそんな作品たち
そして思えば盲者の自分と晴眼者の相方もそんな世界の住人
例えば同じ場所に立ってみて頭に地図が浮かび来る自分とそこからの近遠景が基準の相方の間には必ず補えない部分が
だがそれでも何とか対話を続けられているのは人にはそれをも超える力があるということか
October 20, 2025 at 9:54 PM
町内会死者蘇生事件
五条紀夫
#読了
せっかく殺した横暴町内会長がピンシャン生き還った
ということで蘇りの秘術が伝わる町を舞台に殺人犯が蘇生犯を追う風変わりミステリー
全くのコメディーかファンタジーかと思っていたのが地域間格差など現実の社会問題も描かれ中には深く黙考することも
殺人犯タル青年部有志が真実に肉迫するに連れ次第に明らかになってゆく町が背負ってきた重い過去
最後に心に去来したのは深い哀しみとやるせなさ
October 19, 2025 at 9:29 PM