山内さんが靴下を履いたとき、妙な違和感を感じた。靴下の中に何か入っている。硬い感触だったので、小石だろうか。靴下を裏返してみる。歯が出てきた。思わず叫ぶ。あれ。うまくしゃべえなひ。なんへはほう。ははふえへふはふふぁへへふぁひ。

#青空

「こめどろぼうがにらんでいる」

「プロポーズ！をおごそかにする顔面こそをうらみかえしています！」

「なげやりな声をさっとだせ」

「いつからかやけどして始末するべき　淫とも」

「3845971」

田辺さんの7歳の娘が、隣の住人から学校の帰り道にもらった折り鶴の中に書かれていた文言。

#青空怪談

江川さんの恋人の真矢さんは、もう4時間も冷蔵庫の扉を開けて中を見つめている。電気代が心配だ。

#青空怪談

ナンパした女性とホテルに来た。部屋のドアを開けると、そのドアノブで首を吊っている自分の遺体があった。そうだった。

#青空怪談

電車が動かない。神谷さんが乗車して、もう20分は経つ。扉は既に閉まっている。ずっと気付かなかったのも不思議だった。他の乗客は、皆スマホを見ていて、特に慌てる素振りもない。イヤホンをしてYouTubeを見ていたから、車内アナウンスを聞きそびれてしまったのかと思った。イヤホンを外してみる。車内アナウンスが聞こえる。「只今、中央線で遅延が発生しております」やはり遅延か。「遅延が只今、中央線で発生しております」理由は何なのだろう。「中央線で遅延が、只今発生しております」早く帰りたい。

#青空怪談

無数のカラスが嘔吐しながら渋谷上空を飛んでいた。香山さんはその様子を眺めながら、カラスも酔っ払うのかなと思った。その日を境に、アルコール中毒者の断酒集会に人間は参加できなくなった。

#青空怪談

ベランダに置いたアサガオの観察のために木下さんがベランダに出ると、先にフードを被った男性がアサガオを観察していた。

#青空怪談

スーパーの駐輪場に停めていた自転車のカゴの中に骨が入っていた。宮本さんは気味が悪くて、その骨を触ることができなかった。ヤクルトくらいの大きさの骨だ。なんの骨かは見当もつかない。ティッシュペーパーで掴んで処分しようと思ったが、それでも気持ち悪くてできなかった。だから宮本さんは、それからずっと骨をカゴに入れたまま自転車に乗っていた。どうしても触ることができなかった。3月8日、宮本さんはヤクルトくらいの大きさの骨を喉に詰まらせて窒息死しているのを発見された。

#青空怪談

コインランドリーで洗濯乾燥が終わるまでの間、田島さんは備え付けの椅子に座って、スマホでゲームをしながら待っていた。スマホから視線を上げ、洗濯機を見る。あと6分で終了の表示。丁度もう一戦ゲームが出来そうだ。「こうかいされました」えっ。どこからか声がした。室内には自分以外、誰もいない。洗濯機の回転する音だけが静かに響いている。気のせいだろうか。気のせいでなければ不気味だ。田島さんは残り6分表示の洗濯機を強制終了して、洗濯物を回収する。まだ洗濯物が乾いていなかった。やっぱりちゃんと乾燥しないとダメだったか。後悔した。洗濯物は血で濡れていた。田島さんは10分間だけ乾燥を追加した。

#青空怪談

今日から#青空怪談と題して、創作怪談をなるべくポストしていきます。

日常のちょっとした空き時間に、SNSを意味もなくスクロールしてしまう受動的な態度を律するために、"創作"のための予備運動のつもりでやってみます。発信せねば精神。

字数制限が300字なので、Xよりも気楽に出来そうです(一行怪談に近い感覚)。

怖いことを考える創作の脳トレ、くらいの気持ちで眺めてくだされば幸いです。

ウチの犬で試したらどちらもバケモノになってしまった。

実写化したら2匹ともホラー映画に向いている犬。

とりあえず犬。