爪先のほうから色は剥がれゆくあやめを描く思いはどんな
爪先のほうから色は剥がれゆくあやめを描く思いはどんな
まっすぐに氷を噛みつつ立っている冷たい床に爪先立ちに
まっすぐに氷を噛みつつ立っている冷たい床に爪先立ちに
ひらいては駄目なことだったのか窓に真白き花だけ置いて
ひらいては駄目なことだったのか窓に真白き花だけ置いて
引き延ばすための言葉と色のないけむり 顔つきは憶えていない
引き延ばすための言葉と色のないけむり 顔つきは憶えていない
八つ手の葉のいちばん奥にあるからと鍵の在処を教わった春
八つ手の葉のいちばん奥にあるからと鍵の在処を教わった春
間近まで来ているはずが箱の中出られないならそれでいいような
間近まで来ているはずが箱の中出られないならそれでいいような
鬱と言うときのその鬱さまざまで鳩のおなかは固いか冷やいか
鬱と言うときのその鬱さまざまで鳩のおなかは固いか冷やいか
あねおとうと輪郭いまだぴっとりと濡れてふくらみたがって痒い
あねおとうと輪郭いまだぴっとりと濡れてふくらみたがって痒い
つじつまを合わせたつもりの左手のなかに残っている浮遊感
つじつまを合わせたつもりの左手のなかに残っている浮遊感
青い手に引かれてぼうっと見てしまう争いの果ての世界の映画
青い手に引かれてぼうっと見てしまう争いの果ての世界の映画
歌うこと 濡れてぬくとい骨たちに響かす深い藍色のこと
歌うこと 濡れてぬくとい骨たちに響かす深い藍色のこと
ひとことですむことを何度言わせる 獰猛な夜を見ていたいのに
ひとことですむことを何度言わせる 獰猛な夜を見ていたいのに
油彩画の古びた青のしんとして前向くひとを座らせる椅子
油彩画の古びた青のしんとして前向くひとを座らせる椅子
恋うる力ときどき鞣すようにねむるこの部屋にあわく訪れてひとは
恋うる力ときどき鞣すようにねむるこの部屋にあわく訪れてひとは
ミュートしているLINE STOREのスタンプの犬のスタンプを買う 風の夜
ミュートしているLINE STOREのスタンプの犬のスタンプを買う 風の夜
消耗し切っているからやめて押し返すため上げてゆく腕の重たく
消耗し切っているからやめて押し返すため上げてゆく腕の重たく
本当のことを言ってもこわれない 櫂の音ざわめきと混ざらず
本当のことを言ってもこわれない 櫂の音ざわめきと混ざらず
ウィリアム・モリスの襞の暗い場所 掻き寄せる花のなかにうまれる
ウィリアム・モリスの襞の暗い場所 掻き寄せる花のなかにうまれる
失くしたらどうなるだろうゆうかげにどうしてこんなにずれるんだろう
失くしたらどうなるだろうゆうかげにどうしてこんなにずれるんだろう
うつくしくなる思い出の黒い犬背なかのぬくいかなしみの犬
うつくしくなる思い出の黒い犬背なかのぬくいかなしみの犬
隅にいたひと席を立つとき動く濃い影、濡れた葉のような影
隅にいたひと席を立つとき動く濃い影、濡れた葉のような影
出来たことつよくよろこび手を叩く子どもが隣りのテーブルにいる
出来たことつよくよろこび手を叩く子どもが隣りのテーブルにいる
朝の陽の色なく差しこんでくるゆえ羽根を持たない昨日も今日も
朝の陽の色なく差しこんでくるゆえ羽根を持たない昨日も今日も
開いては閉じるつめたい石の扉 いつも、それで、大丈夫だったよ
開いては閉じるつめたい石の扉 いつも、それで、大丈夫だったよ
抱え込んで離さぬつもり油揚げ光ってすこし泣けてくる夜に
抱え込んで離さぬつもり油揚げ光ってすこし泣けてくる夜に