岩永華
LightNews LightNews
iwanagahana.bsky.social
岩永華
@iwanagahana.bsky.social
4 followers 7 following 24 posts
百合！ アイドル！ チョコレート！
Twitterとは別の宇宙にいる岩永華のアカウント。
Posts Replies Media Videos
iwanagahana.bsky.social
日記です。寿司の意志。
それを受信したのは、駅から帰る途中、信号を待っている時だった。 （寿司、たべて） 私の脳内に流れ込んできたのは、寿司の意志だった。 全国にある回転寿司チェーン店の配置が脳のニューロンの分布に酷似していることは、脳科学界では周知の事実である。加えて、最新の研究によると、人間が寿司屋へ訪れ、寿司を食べ、また別の寿司屋を訪れる行動そのものが、ニューロン同士を流れる電気信号の役割を担っているという。 つまり、人間は寿司によって作られた巨大な脳の中のシナプスであり、私たちが寿司を食べれば食べるほどその脳は活性化する。 そんなこんなで、寿司脳は徐々に意志を持ち始めているらしい。 たべて） 「いやあ、今日はちょっと…… 」 （寿司、きらい？） 別に好きでも嫌いでもないけど、今夜は絶対にオリジン弁当のタルタル のり弁を食べたい気分だ。白身フライのことしか考えられない。 「また今度ね」 信号が変わったので、足早に横断歩道を渡る。 （そこ、みぎ、まがる） 「行かないってば」 右へ曲がればくら寿司へ着いてしまう。無視して十字路を真っ直ぐ歩く。 （そこ、寿司、ちがう！） 声が私の中で大きく反響して、視界がぐにゃりと歪み始めた。寿司の意志が物理世界に干渉しているのだ。進めども進めども、通り抜けたはずの十字路が何度も現れる。これだから上位存在って嫌なんだよ。 （みぎ、まがれ） 勝手なことばかり言うな！　こうなれば根比べだ。私は意地になって、全速力で走り始めた。とにかく、この道を真っ直ぐ行けばオリジン弁当が見えてくるはずだ。足がもつれ、転びそうになっても前へ進み続ける。 寿司の声は止まない。ぐわんぐわんと揺れる頭の中で、祈るように、白身フライのサクサクとした衣とタルタルソースを想い続けた。 満腹になると気分が良い。 本当はもっと食べられたけど、今回は八皿で我慢しておいた。この店は一皿が一二五円からなので、安い皿が八枚だと会計が千円になってキリが良いのだ。あと二皿食べてビッくらポンを二回やっても良かったけど、一度当たれば充分か。 コートのポケットの中で当たりのカプセルを転がしながら、私はほくほくとした気持ちで店を後にした。 寿司って、最高！
February 18, 2024 at 2:01 PM
iwanagahana.bsky.social
焼き永華
February 16, 2024 at 12:47 AM
iwanagahana.bsky.social
日記です。残業パン。
2024-02-08『残業パン』 今日は残業だった。 ヘロヘロになって最寄り駅まで帰ってくると、薄暗い駅前通りをパン屋さんの灯りがふわりと照らしていた。 窓に貼られたポップには「全品３０％引き！」の文字。この店は、閉店間際になるとパンが安くなるのだ。 中へ入ると、ほぼ空になったトレーの上に点々とパンが置かれている。 トングを持って近づくと、一瞬、パン達の間に緊張が走るのが見えた。 沈黙の後、彼らが見せる反応は様々だ。連れて帰ってと言わんばかりに飛び跳ねたり、反対にトレーの隅へ逃げて息を潜めたり。 その様子に、ああ、パン屋へ来たのだなあと、思わず口元が緩む。 買ったのは、とびきり元気なクリームパン、眠たげな蒸しパン。お店のビニール袋を片手にウキウキと家路を歩く。今日は天気が良かったので、月が綺麗に出ていた。 「ほら、お月さまだよ」 袋の口を少し開け、パン達に見せてやる。 応えるように、クリームパンが身体を揺らし、袋がガサガサ鳴った。蒸しパンは寝息を立てている。私がトングで掴んでもウトウトしていた位だ、 どこでも眠れるタイプなのだろう。 小腹が空いた。蒸しパンをちぎって食べ歩く。甘くてふわふわで、よく見たら月と同じ色をしている。なんだか嬉しい気持ちになった。 帰宅して、お風呂を済ませて一息つくと、私はすっかりクリームパンの存在を失念していた。冷蔵庫の中から音がするぞ？と思い扉を開けると、 キンキンに冷えたクリームパンが怒髪天を衝く勢いで大暴れ。それで、ようやく思い出したのだ。 「ごめんってば」 倒れたジャムの瓶や割れた卵を片付け、なだめすかす。クリームパンはお皿の上で押し黙ったまま、動かない。 思い切って、表面をコチョコチョとしてみる。効いていない。と思ったのも束の間、よく見たらプルプル震えて耐えている。私が先に笑うと、ク リームパンもゲラゲラと身をよじった。夜食にするには惜しかった。 この文章を打っている現在、クリームパンは私の肩の上にちょこんと座って、スマートフォンの画面を覗き込んでいる。 ひとまず今夜は一緒に眠って、明日の朝ご飯にでもしよう。もしかしたら、おやつになるかも知れない。 それでは、おやすみなさい。
February 8, 2024 at 3:57 PM