主人公キリアンに降りかかる嫌なことの8割は本人の気質からくる自業自得なんだけど、本人がそれを認められないことでより孤立し攻撃的になっていき、また攻撃的になっていることを認められず…という負のスパイラルが延々と続く。｢都合のいいように世界を見る｣とか｢妄想に逃げ込む｣とかではなく、現実を見ているからこそ肥大化した見栄によって現実がどんどん悪意あるものに見えてしまう。つらい。

批評とかで｢筋肉版『ジョーカー』｣的な言葉が使われていて、そう言いたくなるのも分かる味なんだけど、ボディビルダーというある種の肉体的強者を題材に置くことで｢肉体が凄かろうがなんだろうが一方的に求めるだけで他者に心を開かない人間に良いことは起きないですよ…｣という残酷さと優しさの答えで最終的な感触はかなり違ってくる。感情移入はできるけど｢ジョーカーは俺だ｣とは思わせない作りというか…

資本主義大破壊商店、チラシもいい。12/28は破壊された資本主義を供養したりするイベントがあるらしいので、おれもトラブルがなければ行きたいと思います