杉本@むにゅ10号
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杉本@むにゅ10号
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主に国内ミステリ小説の感想を週に一冊くらいのペースで書きます。過去の感想は https://bit.ly/3Uz9GUK で公開しています。
≫論理の桎梏に組み上げられた者たちは宿命から逃れることができず、謎解きは遅すぎる後悔に過ぎない。だからこそ「地の涯て[ランズ・エンド]」には作者の変化を感じた。ピースがひとつ違えば、別の誰かの視点で人生をみつめなおしたなら。きっと私たちはいつまでも未熟なまま、大人にはなれない。
November 9, 2025 at 9:07 AM
≫「千夜行」では複雑な血縁関係がもたらす愛憎が絡みあい、ワーグナーの調べとともに破局へ突き進む。未熟な子供たち、そして同じくらい未熟で情けない大人たち。ジグソーパズルのピースのように何気ない描写を詰めていき、完成したと思った途端に別の視点が示され、組み木だったとわかる。≫
November 9, 2025 at 9:07 AM
≫五編を収める短編集。言葉遊び、思い出に刻まれる美しい光景、生きることそのものが罪であるかのような切迫感がそろった表題作はこれぞ七河迦南と言う他ない。「魔法のエプロン」は母子家庭の深刻な境遇を描き、「わたしとわたしの妹」では微笑ましい小学生の日記から闇が滲みでる。≫
November 9, 2025 at 9:07 AM
≫美味しそうな食事とバトルと謎解きがごちゃ混ぜの「忍法虚構推理」はさすがの面白さ。帯に“九郎と琴子の運命に、ひとつの答え。”とあるのは伊達ではなく、終局の近さを予感させられる。本来ならどうにもならないものをどうにかすれば、けっきょく皺寄せが我が身に返ってくるということか。
November 3, 2025 at 8:54 AM
≫という「忍法虚構推理」が後半を占め、前半は九郎に焦点をあてた短編二作を収める。何者かに襲われた男が逃げこんだ廃ビルで出会ったのは、高校時代にクラスメイトだった九郎だった「廃虚に出会う」。宙に浮かぶ生首の幽霊が出没するという家の真相を確かめる「まるで昔話のような」。≫
November 3, 2025 at 8:54 AM
≫この作者には声という要素が重要なのかもしれない。人類の命運や宇宙の広大さにくらべれば、人間存在など塵にも等しい。絶望的な孤独に打ちのめされそうになる。けれどその広がりは虚無ではなく、懐かしい者たちの声に満ちている。たとえ宇宙の果てでも、背中を押してくれる声が聞こえる。
November 1, 2025 at 10:15 AM
≫未来の歴史や超光速通信の理論など細部が練られ、深宇宙を舞台にした壮大な雰囲気を味わえる。それでいて零司とディセンバーとのかけあいはコミカルで読みやすい。惑星開拓などしている暇もなく、次から次に想定外の事態が起きて緊張感が途切れない。シリアスさと軽妙さが絶妙にせめぎ合っている。≫
November 1, 2025 at 10:15 AM
≫長い冷凍睡眠から目覚めた夜河零司は、地球から十光年先にある惑星に降り立つ。宇宙開発コンペティションの課題として水源を探すうちに、参加メンバーの銃殺死体を発見する。減らず口の宇宙船制御AI、ディセンバーとともに零司は真相を突き止めようするが、他のメンバーも次々に襲われ。≫
November 1, 2025 at 10:15 AM
≫【!踏みこんだ記述になるが!】建物と人を重ね、強大な敵を創造するというこのシリーズの特色が頂点に達した感がある。巨大な建物に人は圧倒される。けれど、その建物も人間が設計したもの。どれだけの歳月と労力をかけようと自分の想いを形にせずにいられない業に、凡人はただ呆然とするしかない。
October 26, 2025 at 5:10 AM
≫ピラミッド棟竣工から吊鐘棟が落下するまで実に四十年にわたる、病院にまつわる怪事件の数々が語られる。精神医療の悲惨な実態が描かれ、その一方で年齢不詳のなにやら秘密ありげな女性が登場し、虚実が混交していく。どれだけひどい悪夢でも、そこには現実を確かめるための手掛かりがある。≫
October 26, 2025 at 5:10 AM
≫建築&探偵事務所の共同経営者である蜘蛛手啓司と宮村達也は、大木総合病院の実施設計と監理を請け負う。階段状ピラミッドのごとき本館の最上階にある吊鐘棟が落下、閂で閉ざされた室内から死体が発見される。調査のためドローンを飛ばした蜘蛛手は、室内に誰もいなかったことを確認しており。≫
October 26, 2025 at 5:10 AM
≫ロズウェルのUFO事件に陰陽師だのユング心理学だの種々雑多なものが集まり、まるでSFか幻想小説を読んでいるかのよう。無慈悲に人を殺す物理トリックは運命そのものであり、巨大なものが消えるさまは人間存在を卑小なものにする。そのとき謎解きは信仰であり、ささやかな抵抗でもある。
October 13, 2025 at 8:14 AM
≫ポーの遺稿に描かれた山小屋の消失をどのように説明づけるか。アンソロジー『本格王2024』に選ばれた「未完成月光 Unfinished moonshine」。千年の時を越えてくりかえされる消失「藤色の鶴」。何人もの人々が同じ、館が消える夢を見るのはなぜなのか「シンクロニシティ・セレナーデ」。≫
October 13, 2025 at 8:14 AM
≫キャラクターは軽妙だけど、扱っているテーマは重い。少数の声も重んじるという民主主義の理想が多数決の現実となり、裁判制度さえ浸蝕されたならどうなるか。ポスト・トゥルースの風潮への抵抗なんだろうけど、どこかミステリ批判にも感じる。虚構は、現実とはなにか問い続ける責任を背負っている。
October 12, 2025 at 9:30 AM
≫法学部生の貞末悠人は、子供の頃に親しんだじいちゃんがいる老人ホームを訪れる。テレビで流れていた裁判の生中継で、紳士探偵と呼ばれる佐伯鷹羽の推理を耳にすると、間違っているとじいちゃんが断言する。かつて探偵として活躍していたじいちゃんは、元弟子と法廷で推理対決することに。≫
October 12, 2025 at 9:30 AM
≫村の奇妙な風習に隠された意味が徐々に明らかになる。超自然的な力、そして大人たちの閉鎖的で差別的な価値観、どちらとも少女たちは闘わなければならない。恐ろしいけれど、懸命に抗う少女たちの青春模様は美しくもある。歴史書には綴られることのない声なき慟哭の積み重ねの果てに現在がある。
October 5, 2025 at 9:34 AM
≫2003年と1991年の出来事が交互に綴られる。十二年に一度、未年に早蕨部[さわらべ]村では祭りがある。十二歳を迎える少女たちが巫女となり「おひつじ様」を迎えるべく社で舞う。だが、その裏には恐るべき秘密があった。禁忌を犯した少女たちは十二年後、祭りの日に再会しようと約束する。≫
October 5, 2025 at 9:34 AM