私たちには自由な裁量が多すぎる

あと地味に厄介なのは、「冪乗」が常用漢字外であることを意識してか、「べき乗」と書いたり「ベキ乗」と書いたりすることもあるということ。英語では同じ「power」なんだけど、日本語だと表記が揺れまくるというおもしろい例ですね。

その結果、累乗は自然数をいくつか掛け合わせる演算で、冪乗は自然数を含む実数をいくつか掛け合わせる演算である、というように（おそらく勘違いから）使い分けされるようになったんですよね！
とはいえこの使い分けは厳密なものではなくて、あくまでそういう傾向があるというだけの話なんですけど、実際に「累乗　冪乗　違い」などのワードで検索すると、このような使い分けかたを紹介しているサイトが多く出てくるようになってます。

そしてこの並列が、「冪乗」と「累乗」を奇妙に使い分けることにつながった。
そもそも冪乗（累乗）は同じ数をいくつか掛け合わせる演算のことなんだけど、これを「累乗」として習う中学から高校前半では、この演算は自然数の範囲でしか行わないんですよね。マイナス乗とかは行わないということ。
でも「冪乗」という語を見聞きするようになる高校後半から大学では、ちょうどこの演算を実数の範囲まで拡張するんですよ

このため、義務教育である中学生で範囲で学ぶ冪乗は「累乗」として置き換えられることになった。いっぽう、大学レベル以上の数学ではこの常用漢字の縛りの影響を受けなかったので、「冪集合」や「冪級数」のように「冪」が使われ続けたんですよね。その結果、高校〜大学では同じ意味の語である「冪乗」と「累乗」が並列に存在してしまっている。

このように常用漢字への置き換えの影響を受けた科学用語のうち、一番おもしろいのが「累乗（るいじょう）」の話。累乗はもともと「冪乗（べきじょう）」と呼ばれていたんだけど、この「冪」が常用漢字外の字であるとして「累」へ置き換えられてしまったんですよね

共役複素数、共役二重結合、共役輸送などの多くの理学系分野で用いられる「共役」も同様で、もとは「共軛」と書かれていた。とはいえ現代では、軛は字から意味を推測できるほどよく見られるアイテムじゃないからいいか。

ヤバい旅程になるに決まってるので誰かを付き合わせるのは忍びない　でも一人は不安すぎるな

なんなら楽しいのは歩き始めの15kmくらいだけであとはずっと嬉しくないし、帰り道のことを考えるとさらに嫌な気持ちになるのに、なんかまたやっちゃいましたね……

こんなに深谷駅が神々しく見えることは二度とないだろう
到着……