ユビキノマメタ
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2回しか呟いてなかったのか
December 24, 2025 at 1:09 PM
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現パロ高校生竹鉢
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↓の続き
https://bsky.app/profile/mamemameta99.bsky.social/post/3lbpimhmesg2q #新書ページメーカー https://sscard.monokakitools.net/pagemakers/shinsho/shinsho_bg.php
印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。 付記に「いいふうふのひ　竹谷の場合」、「ユビキノマメタ@mamemameta99」と記載されています。 画像情報：generated by 新書ページメーカー / Photo by somephoto / フォント：はんなり明朝（2021） 以下は本文の内容です。 「はちってさ、三郎と仲いいよね？」 　竹谷八左ヱ門がそんな声をかけられたのは、昼休みのことだった。とうに弁当は食べ終えて、おやつ代わりの総菜パンを口に突っ込んだところだったので、すぐに返事ができない。むぐむぐと咀嚼している間に声をかけてきた人物をマジマジと見上げる。 　クラスの中心人物と言っても過言ではない明るく朗らかなタイプの女子である。はちという愛称で呼ぶのを許す程度の親交はあるが、きっと卒業から数年も経てば名前も顔もおぼろげにしか思い出せなくなるだろう。八左ヱ門にとってはその程度の相手だ。 「んぐ。まぁ、そうだけど」 　ようやっとパンを飲み下し、口を開けた。そのついでに指に付いたマヨネーズをぺろりとなめる。それで？　と視線で話を促しつつ、またひとくちがぶりとパンに食らいついた。 「あたしさぁ、最近三郎のことが気になるっていうか……」 　恥じらいつつ話す女子は視線をさまよわせながら髪をくりくりといじっている。だから何なのだと無言を貫けば、じれた女子は目の前に手を合わせて懇願を始めた。 「だからお願い！　三郎との仲、取り持ってくれない？」 　雰囲気で察して欲しいという姿勢ではなく、自身で言葉にしてきた点は評価できる。けれど、それだけだと八左ヱ門は思った。くしゃりと手の中でパンの袋が鳴いた。 「気になる程度なら、俺のが三郎のこと好きだな！」 　あえて冗談っぽく、満面の笑みを浮かべて返す。ぽかんとした女子の表情に八左ヱ門は留飲を下げた。 「三郎は俺にそういうことされるの嫌がると思うし、自分で頑張れ、な？」 　遠回しの拒絶を置いて八左ヱ門は席を立った。すでに中身を飲み干していた紙パックとパンの袋をゴミ箱に投げ入れて、廊下へと出る。 「自分で頑張れ、か」 　女子に投げかけたその言葉は八左ヱ門自身にも深く刺さった。
November 25, 2024 at 9:44 AM
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竹鉢
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続くかも #文庫ページメーカー https://sscard.monokakitools.net/pagemakers/bunko/bunko_bg.php
印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。 付記に「いいふうふのひ　鉢屋の場合」、「ユビキノマメタ（@mamemameta99）」と記載されています。 画像情報：generated by 文庫ページメーカー / Photo by somephoto / フォント：はんなり明朝（2021） 以下は本文の内容です。 　珍しく委員会のない日だった。 「あ、三郎！　今帰りか？　一緒に帰ろうぜ！」 　鉢屋三郎はたまたま廊下で出くわした竹谷八左ヱ門に声を掛けられる。まるで大型犬が尻尾をふって駆けてくるような様相を見て頬が緩みそうだ。断る理由がないどころか、ひそかに沸き上がる歓喜をかみ殺して諾と告げた。 　他愛のない話をしながら階段を降り、下駄箱に向かう。たったそれだけのことがひどく嬉しいのは八左ヱ門に隠せているだろうかと三郎は思った。 　この気持ちは自他ともに相棒であると言ってはばからない不破雷蔵には既に見抜かれている。たまたま今日は家庭の用事があると言って既に帰宅しているのは知っているが、ここに彼もいてくれたらどんなにか喜んでくれることだろう。 　それくらい三郎は八左ヱ門のことを好いていた。世間ではいい夫婦の日だのいい夫妻の日だのと言って盛り上がっているが、三郎はそんなものは望まない。もしも八左ヱ門に好い人がいるのであれば潔く身を引く覚悟もできている。 　でもそれまでは、彼の熱を感じられるほどに近いところにいても許されて欲しい。それが三郎の唯一の願いだ。 　けれど、その三郎の密やかでささやかな願いは、あっけなく鳴りをひそめることとなる。 「あ、はち！　それに三郎、今帰り？」 「え、あぁそうだけど？」 　声をかけてきたのはクラスのいわゆる元気で朗らかで誰でも好きになるようなタイプの女子だ。とは言え、学級長として名前まで覚えているけれども、名字でしか呼ぶ理由のない相手にすぎない。 「あの、さ！　はち、今からちょっといいかな？」 「なに？　ここじゃダメな話？」 　否が応でもわかってしまう雰囲気に、三郎の心は冷えた。 　少しイラついたような剣呑な言葉を返す八左ヱ門の頭を三郎ははたく。 「ダメに決まってるだろ。俺は先に帰るから行ってこい」 　声は震えていなかっただろうか。そればかりに気を取られながら八左ヱ門のそばをすり抜けて下駄箱へ向かおうとする。否、すり抜けたはずだった。 　八左ヱ門の手が今までにない強さで三郎の腕を掴む。まるで逃がさないとでも 言いたげなそれに、三郎は困惑して足を止めた。 「えっと……はち？　この前の話だけど……」 　ほらみろ、声をかけてきた女子も困惑しているじゃないか。腕に力を入れて振り払おうとするものの、さらに八左ヱ門の腕の力は増すばかり。正直痛いほどだ。 「おい、八左……！？」 　ぐいと不意に腕を引かれてバランスを崩す。次に気づいたときには八左ヱ門の手が腰にまわって引き寄せられていた。 「俺、その話断ったよな」 　ひどく冷たい声だった。八左ヱ門がこんな声を出すのは年に数回あるかないかのこと。つまり、相当怒っている。 　何が八左ヱ門の堪忍袋の緒を切らせたのか全く検討がつかない。事態の終息を図ろうにも、腰に絡み付く腕の熱さが三郎の頬を熱し思考まで溶かしていくようだった。 「じゃあ、そういうことだから。三郎行くぞ」 「え、あ、いいのか……？」 「いいんだよ。俺たちは用事ないから」 　呆然と立ち尽くす女子の前を通るときも八左ヱ門の腕が離れることはなかった。
November 24, 2024 at 5:07 PM