玖凪咲夜
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玖凪咲夜
@perlelapin.bsky.social
二次創作用アカウント
リ傭/囚墓/配墓など好きなものを書く雑食。
きらきらと嬉しそうに瞳を光らせて、📮がそこに立っていた。
白い髪に赤い瞳、そう、今の⌛️と⛓️と全く同じ髪色をした青年が口を開いた。
「結婚おめでとう!おとうさん、おかあさん!」
December 22, 2025 at 2:22 PM
「ただ、おまえが離れるのが寂しくておまえに手を出したから忘れてしまったのか?妻のちょっとしたおいたくらい見逃してくれたっていいだろう?おまえをこの大きさに育つまで手放したんだから」
優しく手を撫でる手が持ち上がって⛓️の頬を撫でた。先程から一切逸らされない⌛️の瞳は、ずっと⛓️のことを見つめ続けていた。
ばたばたと忙しなく廊下を走る音が聞こえて肩を跳ねさせた。
「婚姻前におまえの子供を産んだ私をはしたない女だと思っても構わないが、子供はずっとおまえがこの村に帰って来るのを指折り数えて待っていたんだ。優しくしてやってくれ」
ばたん!大きな音を開けて障子戸が開かれる。
December 22, 2025 at 2:20 PM
ずっとずっとこの日を待ったのだと心の底から嬉しそうに執拗に丁寧に尾を撫でながら女が笑う。喉から手が出るほど欲しがったはずなのに、何故今こんなに恐ろしいと思うのだろう。
「小さなお前が親元に帰りたいと泣くから。大人になったら戻って来るからその時結婚しようねと約束をしたから。人間は出会って一年経ったら結婚すると教えてくれたのもおまえだった。六月の花嫁は一生幸せになれると言っていたよな?だから去年の六月に戻ってきてくれて、本当に嬉しかったんだ!」
知らない⛓️の話を楽しげに⌛️が話すのに首を振った。そんなことは知らないし覚えてもいない。幼少期の記憶は⛓️の頭の中にはなかった。
December 22, 2025 at 2:13 PM
臍から下、あるはずの二本の足が消え失せ、白く太い艶やかな鱗を纏った蛇の尾が生えていた。
白く色の抜けた髪を⌛️の手が優しい手付きで撫でるのにゾッとして⌛️の手から逃れようと身を捩っては、嫋やかな細い手が見かけによらない力で⛓️を抱き上げ仰向けに抱え直した。
「⛓️、尻尾が生えたばかりで動きづらいだろ?後で📮が手伝いに来てくれるからな」
「一体これは、なん、なんなんだ…!?」
非科学的な現象に目眩がした。尾を白い手が嬉しそうな様子で撫でながら、当然だろう?と当たり前のことのように⌛️が子供に世の道理を教えるように言う。
「巫女の夫はかみさまなのだから、私の夫たるお前がこうなるのは当たり前のことだろう」
December 22, 2025 at 2:08 PM
昨日神様とやらと婚姻を果たすと言ったのは君だろう、とか。
何故⛓️がここに居るのに疑問を抱かないのだ、とか。
言いたいことは色々あったが、言葉を返す前に突然身体が前に傾ぎ、手を伸ばした⌛️の胸元に倒れ込む。
「⛓️、僕のかみさま。ずっとずっとこの日を楽しみに待っていたんだ。約束を果たしてくれて嬉しい」
艶やかに女が笑う。赤い目がきゅうと細まって弧を描く。見たことのある瞳、そう、爬虫類によく見られる瞳孔の動きだった。
何故倒れたのか。下半身を動かそうとしても何故か反応が無い。恐る恐る背後を振り向いて、「ひっ、」と喉が小さな悲鳴を漏らす。
December 22, 2025 at 2:02 PM
目的を果たし少しずつ鎮静化していく脳で考える。
疲れ果てて眠る⌛️は相変わらず美しく、自身の体液塗れの身体を見るだけでまた欲情しそうなほど。
隅に置かれた鏡台の中に映る自分と目が合って「は?」と声が漏れる。
そのまま慌ただしく鏡台に近付く、焦った顔の自分と同じ顔をした男がこちらを見ていた。
白い髪に赤い瞳をした、自分と全く同じ顔をした男が、そこに居た。
「ン、」
背後から⌛️の声がして肩を揺らす。
ゆっくり振り向けば目をこすりながら起き上がる⌛️がこちらを見て嬉しそうに微笑んだ。
「⛓️、おはよう。昨日は良い夜だったな」
「は、」
一体この女は何を言っているのだ。
December 22, 2025 at 1:58 PM
ーーーーー朝日が昇るまで、⛓️は⌛️の身体を貪り続けた。段々と小さくなる嬌声がぱたりと止み、小さな寝息へと変わっていく。
陽の差し込み始めた室内で、闇夜に隠された⛓️の罪が暴かれる中で、ふ、と我に帰って思った。
『かみさまとやらは、結構部屋に来なかったな』、と。
⌛️の夫たる神様が現れたなら、きっとこんなふうに朝日を迎えるまで⌛️と睦み合い続けることは叶わなかっただろう。途中で妨害に遭うこと前提で、彼女を汚すところを目撃させるはずだったのに。
December 22, 2025 at 1:51 PM
「かみさま?」
小さな声が部屋に響く。
喜色の孕んだ女の声、喉から手が出るほど欲しいと望んだ彼女の声に、沈黙したまま静かに近付いて用意された寝具の上に座り、闇の中を手探りで彼女の形を辿った。
顔に触れ指先で唇を探しそこに口付ける、身体を一瞬こわばらせた彼女も、嬉しそうに⛓️の身体に手を回して口付けを甘受した。
ーー嗚呼、もう戻れない。
熱望した女の身体を隅々まで暴き、望みのものを手にしたはずなのに、何処か冷静な頭はそうぽつりと一つこぼして沈黙を選んだ。
December 22, 2025 at 1:47 PM
束の間取り返した理性が⛓️を押し留める先で、ふわりと鼻先を香が通った。甘い香りは障子の向こうから漂い、その香りは彼女が好んで使っている香の香りとよく似ていた。
この先に自分の知らぬ男に抱かれる仕度を済ませた彼女が居るのだと思うだけで一気に本能が理性を塗り潰す。
夜の帳が下りた今、明かりのない真っ暗闇の中では相手が誰だかわかるまい。静かに戸を横に滑らせ中に入り込む。戸を閉じれば微かに木のぶつかり合う音が鳴って、部屋の中から服の擦れ合う音がした。
December 22, 2025 at 1:43 PM
そんなだから、こうして⌛️に心を奪われたものに自分自身を傷つけられてしまうのだ。
なんとか音を立てずに部屋の前まで辿り着いた。誰もいない静かな部屋、障子越しの部屋は暗く、誰の声もしなかった。自分の心臓の音が部屋の向こうまで聞こえやしないかと思うほど大きく激しく脈打つ。そっと扉に手をかけた。
『本当にいいのだろうか』
とに手をかけたまま、一瞬考える。このまま引き返して何もなかったように📮の家へ戻り、朝まで布団に潜ってやり過ごすこともまだ叶う。
彼女も傷付かず、かみさまとやらと婚姻を果たしたのだと笑って、ただ⛓️だけが失恋の傷を抱えてそして何事もなくここに戻らないという手もあるやだ。
December 22, 2025 at 1:37 PM
神社の敷地内は篝火が焚かれている以外に人気はなく、曲がりなりにもこの社に祀られている神と巫女の婚姻の日取りだというにも関わらず人ひとりいなかった。神社と言っても寂れた小さな村の神社だ、巫女である⌛️が1人あれば大体が済むのだと前に言っていたのを思い出す。丁寧に磨かれた木製の廊下に靴を脱いで上がる、音を立てないようそっと目的地へと向かった。
不用心なのか、⛓️への全幅の信頼を置いているからなのか、⌛️は婚姻の日のことを詳らかに話した。日取りから時間、場所に至るまで全てを。
「だから…余所者を信用してはいけないと言ったのに」
December 22, 2025 at 1:32 PM
これは親切にしてくれた彼女への冒涜行為だ。彼女の信頼を裏切り心も体も傷付けるだけの行い、📮だって夜が明けて事が明るみになれば、⛓️への純粋な好意に満ちた眼差しを侮蔑のそれに変えるだろうことは明白だった。
そうなるとわかっていて、一年間積み上げた交友を、親愛を、投げ捨てるのだと理解していてもなおどうしても止められなかった。
どうしても⛓️は⌛️が欲しかった。
神と契るのだという巫女はなれば清廉でなければなるまい。神と契る前にその花を散らしてしまえばきっと、神との婚姻など結ぼうとは思うまいーーそんな浅はかな考えを持ってして、⛓️は⌛️の住まいに侵入することを決めたのだ。
December 22, 2025 at 7:43 AM
遂にその日が来た。
奇しくも思い返せば丁度彼女と出会った季節だとカレンダーを見て思い返す。潜り込んでいた📮から借りた部屋ーー最早今となっては⛓️専用の寝室の布団から抜け出し、服を着替えた。
裏口から外に出る。空を見上げれば、
月のない夜空は星が瞬き、数少ない街灯が点々と道を照らしている。草の匂い、じゃりじゃりと小さな小石を踏みながら土で固められた道を歩く。
彼女が案内してくれた神社までの道、通い慣れてすっかり覚えてしまった路順を一歩一歩踏みしめながら、激しく脈打つ心臓を服の上から撫でる。
これから⛓️がやろうとしていることは、間違いなく道理に反した行いだった。
December 22, 2025 at 7:36 AM
📮と話をしてもなお収まらないこの胎の煮えたぎるような怒りを鎮める為に早々に床に着いた私の頭の中に過ぎるのは、彼女が話した婚姻の日。
この日に神様と契りを交わすのだ、真夜中に二人きりでと頬を染めて話した彼女の幸せそうな表情に、頭の中で幾度も爪を立てた。

私をこんなふうにしておいて、神などという得体の知れないものと婚姻などさせるものか。
眠れぬ夜を過ごす頭の中で、どうしてやろうかと夜が明け日が昇るまで思考を巡らせ続けた⛓️の瞳は、獰猛に鋭く尖り、最早正常な精神を失っていた。
December 22, 2025 at 4:51 AM
「かみさま、神か、じゃあなんだい、アンドルーは蛇と結婚するってのかい?」
彼女が巫女を務める神社で祀られているのは白い大蛇の姿をした神だった。
神社に置かれている木で作られた大蛇の像はそれはそれは精巧で生きているようであったが、この現代社会において神の存在を真剣に語るものは皆等しく頭の可笑しい、または心を壊した人間であるのではないだろうか?
『かみさまが巫女と契りを交わすというのは、そういうことです』
いたって真面目に話す📮に何処も可笑しい様子はなく、本当に神の実在を疑っていないようだった。
December 22, 2025 at 4:47 AM
『そんな与太話が本当にあってたまるものか』そう思いながらも📮の手で書かれた文字に目眩がした。
『風習などではなく、巫女とかみさまがずっと前に約束したことです。かみさまが帰って来たら巫女と婚姻を結ぶ、と。巫女はずっと前からその時を楽しみに待っていたのです。僕も巫女とかみさまが結婚するその日を楽しみに待っていたので嬉しいです』
満面の笑みで差し出された文章、ならば彼女は小さい頃から神という『何か』と婚姻の契約とやらを結んでいたというのだろうか?オカルトめいた話に頭痛がしてくるのに頭を抑える。
December 22, 2025 at 4:39 AM
神に嫁ぐだなんてそんな迷信、現代社会に在っていいものではないし、昔話になぞらえて言うのであれば口減らしや生贄の類だろう。この村は異様に何もかもが旧時代的で古臭くはあるが、流石にそこまで馬鹿馬鹿しい話が伝わっている筈がない。
きっと何かの暗喩や儀式の敬称なのだとそう一種の期待を込めて問い掛ければ、帰ってきたのは輝かんばかりの満面の笑みだった。
さらさらとペンが紙の上を幾度も走る。今までにない長さの文面にまさか、と小さく溢す。
December 21, 2025 at 3:50 PM
しかし、⛓️が結構な頻度で通っていたにも関わらず、その兆候は一切見られなかったし、⌛️は嫁ぐほど親しくしている相手がいるにも関わらず⛓️が来れば必ず会いにきたし、自分が住まうのだという神社にも招き、中を案内すらしてくれた。ーーー勿論、その時は必ず📮を伴い、彼女の名誉のために二人きりになることは避けたけれど。
「私は結構この村に通い、君達と親しくしていたつもりだったけれどーーーこの村の風習には一切知見が無いものだから、驚いたんだ。巫女が神に嫁ぐとは、一体どういう意味なのか、📮、君は知っているかい?」
December 21, 2025 at 1:36 PM
『何かありましたか?』
📮が紙を見せてくる。何がありましたか。嗚呼、あったとも。とびきり脳が拒否反応を示すほど怒りを抱いたあの瞬間を思い出して奥歯を噛み締める。
自分でも余りに理不尽な怒りだと分かっている、されどすっかりイカれてしまった脳みそは現実をうまく処理できないでいた。
「あ、ああ。少し驚いたことがあってねーーー⌛️が、結婚するのだと聞いたものだから」
普通の男であれば『誰だ』と問い詰めることもできよう。ここに通い詰めて幾人かの他の住人にも顔を合わせることがあったし、彼女ももしその中の誰かと家庭を持つならその素振りを見せていただろう。
December 21, 2025 at 1:32 PM
ようやく脳みそが起動し直したのは📮の心配そうな顔が⛓️に向けられたのに気づいた時だ。
通い慣れた📮の家のリビング、床に置かれた年季の入った丸いテーブルは茶色の木材で出来ていて、村人が趣味で編んだのだという繊細な白いレースのテーブルクロスが掛けられている。
机に置かれた食事は既製品を温めたもので、これは料理の苦手な📮が出してくれるもてなしの品だった。
そこに置かれたクッションに座った状態で我に帰って苦笑する。脳が衝撃に固まっている最中でも、身体はどうやら普段通りの行動を取っていたらしい。
December 21, 2025 at 1:28 PM
気の許せる優しい住人、顔を見れば、話せば渇望してしまう美しい人。
季節が巡り、気付けば長期休暇はすっかりこの不便なはずの村で過ごすようになった頃、穏やかな日常を破壊したのは、頬を染め嬉しそうな顔で⌛️が告げた一言だった。
「⛓️、祝ってくれ!」
結婚するのだ、と美しい人は言った。
これまで積み重ねてきた親愛を持って、⛓️の手を握った人はこれまでで一番美しい顔で笑った。
「私のかみさまと結婚するんだ、巫女にとって、こんなに素晴らしいことがあるか?」
幸せそうに笑う彼女に、自分はきちんと答えを返せただろうか。
怒りに煮え立つ私の脳みそは、その瞬間を覚えてはいなかった。
December 21, 2025 at 12:08 PM
頷きながらも頭の中で思い浮かべるのはあの二人の顔だった。
古風で素朴な村の住人の二人はこのデジタル社会においてスマートフォンは愚かフィーチャーフォンすら持っていないという。📮の家に置かれた丸い輪のついた黒電話に、資料でしか見たことのなかった物に出会えたことに逆に感動すらした程だ。
『村の中で生活するにはこれで十分』なのだと愛犬を撫でながら満ち足りた顔で笑う📮の顔は全く嘘をついているようには見えなかったし、⌛️も『顔を見て話せるのにそんなもの必要あるのか?』と⛓️の持つスマートフォンを見て興味なさげに首を傾げていた。
すっかり⛓️の心の中に住まう住人は、会いに行かないと話すことすら出来ないのだ。
December 21, 2025 at 8:59 AM
⛓️を知る者が誰も居ないあの村の居心地は恐ろしい程に良く、大学が無ければずっと居座っているだろうだなんて思ってしまうほどだった。
どうぞ泊まって行ってください、と帰ろうとする⛓️を引き止める📮の善良な人間の笑み、⛓️が来たことを聞きつけて顔を出してくれる⌛️の嬉しそうな表情、何も得るもののない他愛無い会話等、本来⛓️にとって無価値に等しいものですら楽しいと思えるのだから、二人との相性が酷く良いのだろうと思う。
また今週末会う約束をしている二人の顔を思い出し微笑む⛓️に、気味悪げに🎨が顔を歪め後退った。
「何ニヤついてんの気持ち悪い。後で先生のとこ顔出しときなよ」
「ああ、そうするよ」
December 21, 2025 at 8:28 AM
「最近付き合いが悪いじゃないか。いや別に君が付き合いが良かったことなんてそうそう無かったけど。休みの日にも研究室に入り浸ってたのに、最近めっきり来なくなったって⚡️先生がぼやいてたよ」
大学ですれ違った🎨に引き止められそうだっただろうかと目を瞬かせる。そういえば最近はこの間迷い込んだ村に一宿一飯の恩義を返そうという名分を掲げて定期的に遊びに行っているから、休日はすっかり先生の研究室に行かなくなってしまっていた。
「あ、ああ……そうだったかもしれない。最近は少し別に気になることがあってね、そちらに時間を割いているんだ」
December 21, 2025 at 5:45 AM
おしまい。
December 10, 2025 at 4:27 PM