燎原
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20↑腐。💥🥦(左右相手固定にょた有)。字書き。フォローは成人済、腐垢であることがわかる方のみお願い致します。確認できない方は外させていただきますので、予めご了承ください。
数秒考えてからコーラに手を伸ばした。そうしてふと、子供の頃を思い出す。俺と🥦の仲がそこまで拗れていない……まだお互いの家に遊びに行っていた頃はよく、おばさんがジュースを出してくれた。俺が炭酸を好きだと知った時から、出てくるのはいつも炭酸だった。🥦は炭酸が苦手で飲めなかったのに……。
あれは俺のためだけに用意してくれていたんだよなと懐かしく思いながらおばさんをちらりと見ると、懐かしそうに目を細めて俺を見ていた。
「怪我の具合はどう?」
「まだ本調子ではないですけど、痛みとかはだいぶ、よくなってきてて……でもリハビリはまだだめって言われてます」
「無理は駄目だよ?」
「……はい」
February 12, 2026 at 10:19 PM
場所を移そうかと言われて、izkが眠る病室から少し離れた待合室に向かった。なんとなく窓際の席を選んで座ると、背後にいたはずのおばさんがいつの間にかいなくなっていた。柄にもなく動揺していると、近くからガコン、ガコン、と音が聞こえてくる。聞き覚えのあるその音にもしや……と思っていると、🦜おばさんがひょこりと姿を現した。
「💥己くん、どれがいい?」
「あ、いや……」
「遠慮しなくていいのよ?……あ、もしかして……先生にだめって言われて飲めないもの、ある?ごめんね、訊いてから買えばよかった」
「いえ、大丈夫、です。……じゃあ、ありがたくいただきます」
緑茶、缶コーヒー、コーラが並んでいる。
February 12, 2026 at 10:19 PM
「あの……じゃあ俺、出直すんで」
一方的な後ろめたさ、罪悪感が押し寄せてくる。俺は、この人の子供を……。
「💥己くん、もしよければ……少しだけお話できない?」
「え……」
「話しておきたいことがあるの」
いつかしなければならない。そう、考えてはいた。それが今日になっただけだ。
「……はい」
この人の大切なひとを傷付けた。その罪の告白を、俺はしなければならない。
February 6, 2026 at 5:03 PM
確かに、おばさんの容姿は変わった。子供の頃はすらりとしていた身体は全体的に……ふくよかになった。でも、雰囲気は変わらない。怒りの感情なんて知らないような柔らかい笑みはあの頃のままだ。
「せっかく来てくれたのに、ごめんね。あの子いま、診察が終わって寝ちゃってるの」
「そう、ですか……」
これまでも何度か、🥦が寝ていることはあった。そんな時はベッドの横に椅子を置いて起きるのを待っているか、出直すかの二択から選択してきた。とはいえ、出直すことはあまりない。ただじっと、🥦の寝息に耳を傾けて、時折寝顔を見る。何の意味も無い時間だけど、俺にとっては有意義だ。
でも、今日はおばさんがいる。
February 6, 2026 at 5:03 PM
重苦しい感情を抱えたまま、病室の前に立つ。暗い顔なんて見せられない。消えるだけの残り火を胸に前を向いた🥦が、清々しさすら感じられる顔で笑っているから。だから、俺も……。
暫く逡巡して、平常心でいればいいと結論を出す。良くも悪くも長い付き合いだ。無理に表情を作れば気付かれる。🥦は、そういうことには殊更敏い。
扉に手を伸ばす。もう少しで取っ手に指が触れるというところで、扉がひとりでに開いた。
「あ……💥己くん……」
病室から出てこようとしていたのは、🥦の母親である🦜おばさんだった。
「こうして会うのはひさしぶりだね。……憶えてるかな、🥦の」
「おぼえて、ます、あの……、ご無沙汰してます」
February 6, 2026 at 5:03 PM
深呼吸を繰り返して、落ち着いてから歩き出す。一歩一歩、踏みしめるように近づいていく。
『元々なかったもの』
『惜しいとかはないよ』
『すごい夢を見させてもらったなって』
あの日からずっと、思考の隙を突いてリフレインする声が今もまた、俺の中に降り積もる。それでいいのかと言いそうになる度に、どの口がと挟まる心の声が本音を塞ぐ。
十年以上、傍に居た。十年以上、本質から目を背けた。そして十年以上、虐げた。消えない事実と罪だ。『競い合って追いかけていく』なんて、よく言えたものだ。
簡単に諦めんな。ヒーローになるのが夢だろ。……そんなこと、言えるわけがない。言っていいはずがない。俺に、その資格はない。
February 6, 2026 at 5:03 PM
【補足設定的なもの】
謎軸なので、原作軸ではないです。原作軸の💥は自立してる🥦の隣に立ってるのが好きそうだなって思います。私の掌は高速回転するので原作軸でそうじゃない話も書いたりしますが。
🥦が「一人で立つこともできなくなってしまった」と言ってますが、立てます。ただ、立つと💥の幸せオーラが沈殿するから立とうと思わなくなっちゃっただけです。
あと、トイレは連れて行ってもらうだけです。介助はされてません。🥦がブチギレるため、💥は手出しできません。一度🥦を本気で怒らせてしまい、家を出て行かれそうになったのでその辺は慎重な💥です。
お風呂では全身隈なく洗われます。拒否権はありません。
February 5, 2026 at 7:03 PM
斯く言う僕にもわからない。なにもかもを委ねてしまえるこれを、果たして愛と呼んでいいのか、どうなのか。
「いつか答え合わせできる日が来るといいね、💥っちゃん」
チリン。
急かすように鳴らし続ける鈴の音に、慌ただしい足音が重なる。
早く来て。もう一人で立つことも出来なくなってしまった僕を……歪みの無い優しい瞳で見つめる君が見たいから。

【終】
February 5, 2026 at 6:35 PM
蕩けるような笑みを浮かべながら、甘い声で肯定されてしまった。この関係はきっと間違っている。そう思うのに、💥っちゃんとなら正しい道を踏み外してしまってもいいと……愚かな僕はこの時、率直にそう思ってしまったんだ。
チリンチリン、チリン……、チリン……。
溺愛という名前の裏側に貼り付く執着と依存。幸か不幸か、僕のそれと💥っちゃんのそれはぴったりと嵌まって噛みつき合い、離れられなくなってしまった。
「愛の形は人それぞれだけど、僕たちのこれは……愛なのかなぁ」
💥っちゃんはまだ、僕に向ける感情が愛かどうかわからないと言う。僕に触れる優しい指には好意が滲んでいるというのに。なんとも不思議だ。
February 5, 2026 at 6:35 PM
何度目か数えることをやめた行為の後に尋ねると、💥っちゃんは目を丸くした。そんなに驚くようなこと訊いたかな?と不思議に思っていると、「俺っておまえのこと好きなんか?」と逆に問いかけられて、今度は僕が目を丸くしていたと思う。
「好きじゃないのに抱いて、好きじゃないのにお世話するの?」
「……やりてーって思ったことしてるだけ」
考えてやっているというよりは、衝動的なのだと💥っちゃんは言った。僕を見ているとお世話したくなって、次第に自力で何かをさせたくなくなって、可能な限り役割を奪いたくなったそうだ。そして、いつしか劣情を抱くようになった、らしい。
「💥っちゃんはそれで幸せなの?」
「ん、……幸せ」
February 5, 2026 at 6:35 PM
仕事を探そうとした時も、一人でトイレに行こうとした時も、お風呂に入ろうとした時も、ご飯を食べようとした時も……幼なじみの💥っちゃんはそう言って、僕の手となり足となり、嬉しそうに笑った。
「なんにもしてないとダメ人間になっちゃうよ」
僕が初めてそう言って💥っちゃんの行動をやんわりと窘めた日、僕と💥っちゃんは身体の関係を持った。何度も「なんで?」と尋ねる僕に💥っちゃんは「これがizkの役目」と答えては腰を打ち付け、僕の中に熱を放った。翌日の僕は足腰が立たず、嗄れた声で碌に喋ることも出来なかった。そんな僕を見て、💥っちゃんは至極幸せそうだった。
「💥っちゃんはさぁ、僕のことが好きなの?」
February 5, 2026 at 6:35 PM
それ以外に何があるのかと睨みつけると、男の顔になった妖が満足そうに舌舐めずりをした。
「おまえを娶るって、初めて見た時から決めてたんだよ」
不覚にもその表情に見惚れてしまった僕は、男が生まれ育った家に連れ込まれてそのまま契りを交わすことになってしまった。抵抗しても太刀打ちできなかったのだから仕方がない。けれど、無理矢理身体を暴かれたにしては痛みがなかったから……悪い相手ではないのかもしれないと、今は思っている。
「生みの親が死んだ後は妖として生きる。少し待ってろ、🥦」
そう言っている男の隣は存外、居心地がいい。
「待つかどうかは💥っちゃん次第だよ」
しばらくは居てあげてもいいかな。

【終】
January 31, 2026 at 10:56 PM
それで納得するわけにはいかない。
「それなら……っ、なんで今までおとなしくしてた?!」
「この身体と魂がくっつき過ぎて離れねぇからだ。ある程度成長するまでは待たねぇとだろ?」
「待つ……?」
「おまえを押し倒して組み敷くことができる身体が欲しかったんだよ。初めて見たあの瞬間からずーっと、おまえを食いたくて仕方なかったからなァ」
言葉と噛み合わない穏やかな笑みに怖気が走る。可愛いと思ったあの日を、手を振り続けた日々を悔やむことになるなんて、思いもしなかった。
「僕を食べて……力を取り戻そうとでも思ってるのかっ」
「ハア?……あー、何か勘違いしてんなァ?」
「何をだよ……っ」
January 31, 2026 at 10:56 PM
焦り始めた僕を鼻で笑い、可愛さの欠片も無い表情で子供は口角を上げた。
「この世に生きる妖がおまえだけだと思ったら大間違いなんだよ」
そんなはずはない。人間の子供と同じような速度で成長する妖なんて聞いたことがない。そう思うのに、僕の妖力を食ったと言う子供からは得体の知れない気配が漂い始めている。
「大昔にやらかして封印されてた。数百年越しに外に出られたが、肉体なんて滅びてた。だから適当な女の腹に棲みついて、人間のガキとして身体を得た。筋書きとしちゃぁ立派だろ?」
「そんな、こと……できるわけ」
「ねぇって?前例が無いならありえねぇっつーのは視野が狭すぎんじゃねーの?」
尤もらしい話だけれど、
January 31, 2026 at 10:56 PM
苛烈な赤い瞳を怪しく光らせて僕を見ていた。
喉を掴まれたまま、引き摺られるようにしてどこかに連れていかれる。碌に抵抗も出来ないことが不思議でならなかった。子供が僕に何かをしたのは明白で、必死に対抗策を練ってみる。けれど、妖力を全て封じられたかのように何も出来なかった。
「無駄だからやめとけ。おまえの妖気は俺が食ってる」
「……は?」
意味が分からなかった。人間が妖の力を封じ込めることはある。祓うこともある。けれど、『食う』などという表現は今まで一度も聞いたことがない。
「おまえもそれなりに強ぇけど、俺よりは下だわ」
美味ぇから俺はいいけど、とまで言われ、寒気がした。
「説明しろ……っ」
January 31, 2026 at 10:56 PM
「離してよ」
「ハッ、引き剥がしてみろやクソ雑魚妖怪!」
「……粋がるのは勝手だけど、たかが十数年しか生きてない人間の小童風情が僕に勝てるとでも?」
僕にも多少は自尊心というものがある。人間の子供にいいようにされて黙ってはいられない。多少は痛い目を見ればいい。そして、僕のような存在から離れてほしい。そんな気持ちもあって、彼の手首を掴んだ。
「……どうした?人間のガキは勝てねぇんじゃなかったのかよ?」
嘲りを含んだその声に、何かされたのだとすぐに気付いた。慌てて手首から手を離してみるが、首をさらに絞められて顔を歪ませてしまった。
「油断し過ぎなんだよ、バーカ」
勝ち誇った顔で微笑んだ子供は、
January 31, 2026 at 10:56 PM
「……ざけんな」
「え?」
感情が籠っていないのに……背筋がぞくりとするような低い声だった。本能とでも言えばいいのか。初めて、身の危険を感じた。
反射的に振り返ると、喉に圧迫感が与えられた。息が詰まるのと同時に殺気のようなものを感じ、それが目の前にいる人間の子供から発せられていると気付いた時には背後の木に身体を押し付けられていた。
「はぁ、……何のつもり?」
「こっちの台詞だわクソが。忘れろだァ?」
何が気に入らなかったのだろう。分からないが、首を掴まれているのは不快だった。人間と違って呼吸が止まって苦しいだとか死にそうだとはならないけれど、この状況を許容できるほどの器は持っていない。
January 31, 2026 at 10:56 PM
「……ンだよ」
「そのうち、僕のことも視えなくなるよ」
「……は?」
神職の道に進み、修行をすれば開花するかもしれないけれど……この子にそれが必要とは思えない。妖と人間はもう、交わらずともいいのだ。
僕が人間について学ぶ必要も、本当はもう、無いのだ。
「もう手を振るのはやめるから、僕のことは忘れるといいよ」
着物を掴む手をゆっくりと外して、初めて、人間の子に背を向けた。ああ、これで僕は……この子供が老いていく姿を、死んだ姿を、目にしなくて済むのだな。
そう思い、漸く気付いた。僕はその日が来ることを、ずっと恐れていたのだと。
January 22, 2026 at 6:04 PM
それがどうしたというのだろう。分からずに首を傾げると、呆れたように溜息を吐かれた。
「ただ出掛けただけなのか、住処を移したのか、……それとも消えちまったのか。誰にも確認できねーんだよ」
それはそうだろう。見えないモノは初めから存在しないのと同じ。無かったモノが何処に行ったのか尋ねられても、誰も答えられやしないだろう。
「そもそも、知る必要が無いだろう?君以外に見えないということは、僕という存在が人間には不必要だという証明だ」
「なら、なんで俺には見えンだよ」
「偶々だよ。神職の家系ではないから祓う力も無いし、引き寄せるような体質でもない。感覚が鋭いだけだろうね。放っておけばきっと……」
January 22, 2026 at 6:04 PM
苛立ちが目にも口調にも手にも表れている。どうやら虫の居所が悪いらしい。数日留守にしただけだというのに、何がそんなに気に入らないのだろう。断りを入れようにも、僕達は話したことすら無いというのに。
「人の営みを眺めに遠出しただけだよ。人間同士はどんな話をしているのか、前から気になってたんだ」
妖同士の会話はどんなだっただろう。あまり思い出せないけれど、人間のように天気の話や体調の話はしなかったのは確かだ。妖は病になどかからないし、晴れようが雨が降ろうがどうということもない。
「出掛けるって、一言くれぇ言えねェのかてめェは」
「……僕が君に?どうして?」
「おまえ、俺にしか見えねェだろうが」
January 22, 2026 at 6:04 PM
「おい、てめェどこほっつき歩いとった」
人間って本当に不思議だ。手を振ってくれた可愛さがある日突然無くなったかと思えば、数日会わない間に胸倉を掴んでくるようになるのだから。
「僕にこんなことしていいのか。……祟っちゃうぞ」
「ア”?やってみろやクソが」
「……ゴメンナサイ、しません……」
そもそもそんな器用なこと、出来ない。僕は妖であって、神仏の類ではないからだ。祟りや呪いは専門外。掛け方も解き方も知らない。
人間を攫って嫁にしたとか喰ったとかそういう話なら一昔前にはよく聞いたけれど、僕はどちらも興味が無かったからあまり詳しくはない。
「チッ、くだんねーこと言ってねぇで答えろ」
January 22, 2026 at 6:04 PM
いつからか、僕から手を振ってもあの子は振り返してくれなくなった。もう僕が視えていないのかと、あの子が手を振ってくれた日から定位置になった大木から離れるようになった。けれど、猫のような目はいつも僕を探してくれる。だから視えてはいるのだろう。
あの子を見ていると、人間について知りたくなった。人間が数多くいる場所に赴いては会話に耳を傾け、人間について学んだ。溢れかえる人間の数に驚きはしたけれど、その中の誰一人として僕のことが視える者はいなかった。
塒を離れて数日後、無性にあの子の顔を見たくなった。思えば、出会った頃から毎日欠かさずあの子を見て、手を振っていた。急にやめると寂しいものだと感じた。
January 20, 2026 at 8:55 PM
考えてみては、そうなったとしても何が変わるのかと自嘲する。そんなつまらない日常が終わる日を、僕はただ待っていた。
あの子供もどうせ、いつかは視る力を失ってしまうに違いない。そう思ってみても、その子から目を離せなかった。久し振りに存在を認められた僕は、なんだか生まれ変わったような不思議な気持ちだった。
人間の成長は早い。どんどん姿形が変わっていく。妖のような命の長さはなく、瞬く間に消えてしまう。その儚さを疎む妖も、慈しむ妖も昔はたくさんいた。今は僕ひとり、あの子供を遠くから眺めては未来を憂いている。
「あのこはどれほど生きるんだろう……」
高校生になったあの子は、今日も僕を見てくれた。
January 20, 2026 at 8:55 PM