さば味噌
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さば味噌
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読んだ本の感想をつぶやきます。
ジェーン・スー『介護未満の父に起きたこと』筆者父の82歳から87歳までの記録を綴った新書。介護されるまででもないが人の助けなしには生活できない、そんな親との関わりを赤裸々に記している。介護とはフジロックであり、父はミック・ジャガー、娘はイベンターであるという理念のもと心を消耗させないようビジネスライクに親の老いと向き合っている様はもはや痛快。87歳にもなるとペットボトルの蓋が開けられず、ダンボールも開けられなくなるから支援物資も無駄になるという恐ろしいエピソードに震えた。
September 24, 2025 at 8:06 AM
東野圭吾『マスカレード・ライフ』ホテルを舞台に起きる事件に元刑事のホテルマンとフロントアテンダントがバディで臨む。映画化が見えるようなドラマティックな展開で飽きずに読み進められる。要所要所に泣き所を持ってきているので、劇伴が聞こえるよう。作者の文章も簡潔で描写が的確なので読んでいてストレスがない。秀逸なエンタメ作品だった。
September 21, 2025 at 6:14 AM
町田その子『蛍たちの祈り』虐待を受けて育つ過程で人が当たり前に持っているものを摘み取られてしまった人々が、自分が大人になりどう折り合いをつけて生きていけば良いのかを綴っている。
大人の自己保身や自己愛により虐げられた子供たちは、自身の埋まらない喪失感と収まらない怒りと向き合いながらどうにか生を続ける。
「たかが数十文字で左右できると思うなんて傲慢がすぎる」という一文が印象的。
September 10, 2025 at 8:35 AM
小川洋子『サイレントシンガー』沈黙を守る集落で、自分を持たないが故にどんな歌でも歌える少女がいた。集落では声を発せず皆指文字を使う。限りない静寂に支配された世界で静かに生きる少女。タイトルに全てが集約する、静の世界の物語は読後に少しのざわめきを残して去っていく。心を平らにしたい人向きの一冊。
September 6, 2025 at 7:44 AM
有川ひろ『クロエ とオオエ』宝飾店の息子とジュエリー作家の元モデルの宝石にまつわるラブストーリー。軽いタッチでコミカルに進むので、サクサク読める。ジュエリー、アクセサリー好きには楽しい一冊になっている。作中に登場するアクセサリーがInstagramで見られる仕掛けもあって楽しい。
August 31, 2025 at 8:16 AM
寺地はるな『リボンちゃん』夢も持てずただひたすらに真面目に日々を過ごす主人公。頭には必ず大きなリボンをつけると決めている。
伯母が営むテーラーを手伝ううちに、オーダーメイドの下着を作って届けるという夢が見つかり邁進する。
「特別な天才」になれずに生きにくさを抱えるが道を踏み外せるほど不真面目にはなれない。傷も凹みもかかえながら人生を大事に歩く人への応援歌となる一冊。
August 24, 2025 at 6:35 AM
森博嗣『イデアの影』S&Mシリーズ、Vシリーズなどとは対極に置かれる一冊。理系的な叙述は一切なく、どこまでも耽美で退廃的な描写が続く。
まるで谷崎潤一郎だなと感じていたが、それもその筈谷崎潤一郎没後50年記念作品だった。森博嗣のお家芸である裕福な育ちの良いお嬢様が主人公なので、様式美が好きな人には面白いかもしれない。死の捉え方を変えれば生きるのが楽になるというメッセージが込められている。
August 17, 2025 at 8:01 AM
吉田修一『国宝 青春篇/花道篇』映画化で話題の上下巻。極道の息子が歌舞伎役者に拾われ、人間国宝になるまでを書く。
先に映画を見たせいで、場面場面に映画の美しいカットが思い出されるが小説と映画はもはや別物。映画の方が生肌感があり、小説の方が重厚感がある。巻末の解説も歌舞伎の演目について簡潔に書かれていて初心者にわかりやすい。芸道で生きる青年がどう狂っていくのかを美しい語り口で書いており圧巻だった。
August 10, 2025 at 5:12 AM
青山美智子『チョコレート・ピース』チョコレートに纏わる短編集。2視点から同じエピソードを描写し、チョコレートと恋を書く。
内容はかなりぽエティカルで、小説というよりは独白集である。抽象的なエモ写真もところどころに挟まれていて、とても感傷的な気分になることができる。
淡い恋、甘くも苦いお菓子、戻らないあの日などにグッとくる層におすすめの一冊。
July 30, 2025 at 7:35 AM
伊坂幸太郎『パズルと天気』各アンソロジーに寄稿した短編集。昔話などにルーツを持ったエピソードを現代で展開する、わちゃわちゃとした物語。目立つのはその軽快さで、特に山も谷もない。
とにかくライトに読書を楽しみたい時におすすめ。私はしっかりと軸を持った話が読みたい時期だったのでノットフォーミーではあった。
July 23, 2025 at 7:17 AM
中山祐次郎『医者の父が息子に綴る人生の扉をひらく鍵』現役外科医の筆者が人生で落ちた落とし穴の詳細、避けなければいけない事などを赤裸々に綴ったエッセイ。選択とは選んだ道を正解にするために現実世界を曲げるほどの努力をすることだ、という一文が心に残った。また、物事を側面から解決しようとせず正直に素直に正面突破しろ、と言う教えも腑に落ちた。
July 16, 2025 at 8:14 AM
星野源『そして生活はつづく』2009年に発刊された星野源初のエッセイ集。とてもくだらなくてとても面白い。家の外で読んではいけない。最新エッセイ「いのちの車窓から2」と比較すると、別人が書いているのではと疑うほどテイストが違う。小学生男子が喜ぶような下ネタをメインに据えて、人が持つ焦燥感絶望感超えられない自意識などの繊細な部分も書いている。とにかく何も考えずに笑いたい時、ぜひ。
July 9, 2025 at 6:10 AM
中山祐次郎『救いたくない命 俺たちは神じゃない2』外科医のバディが手術室や外来で活躍する。患者が凶悪殺人犯や自殺者だった場合、命を助ける意味はあるのか。
一刻を争う手術中に、外科医としての自分と人としての自分が葛藤する。
July 6, 2025 at 8:02 AM
村山由佳『PRIZE』直木賞を渇望する作家と、作家に心酔する編集者が賞レースにのめり込むことで狂っていく。数字では表されない表現という評価軸で戦い、騙し合い、罵り合う。賞という形のないものに対する執着はこんなにも怖いものなのかと戦慄する。作中小説は正直陳腐に思えてしまったが、女の妄執を見事に描いている。
July 4, 2025 at 7:58 AM
伊藤真『考える練習』司法試験受験指導塾の塾長がとく、考える技術についての本。
IRACという考え方が斬新だった。Issue、Rule、Application、Conclusionの頭文字をとったもので、問題点・規則・あてはめ・結論という思考法だ。法的三段論法という考え方をすることで、法律家が日常的に使うとのこと。考え方の癖をつけることで論理的思考を身につけることができるという。
June 25, 2025 at 8:22 AM
中山祐次郎『幸せな死のために一刻も早くあなたにお伝えしたいこと』現役の外科医が綴る、自分の死についてのエッセイ。「死」を想う時、大抵の人は人の死について考える。しかし逃げられない自分の「死」とも向き合わなければならない。大抵は死は突然で前触れなく突きつけられるものだ。式を自分で選択しなければならない時もやってくる。高望みはせず「幸せのハードル」を下げる準備をしていってほしい、というのが著者からのメッセージである。
June 17, 2025 at 7:56 AM
ジェーン・スー『きれいになりたい気がしてきた』コラムニスト、ラジオパーソナリティとして有名な筆者がアラフィフを迎えて自分の美しさと向き合うエッセイ。世間の歌う美の型にはまれないものはどうやって自分の「綺麗」と向き合えばいいのかのヒントが満載。自己肯定感や自己受容をどのように手に入れてアラフィフ世代の美を手に入れれば良いのか。メディアが推し進める美と自分が満足できる美はそもそも同一ではないことに気づいてからがスタートだ。
June 11, 2025 at 7:48 AM
午島志季ほか『夜明けのカルテ』医師作家によるアンソロジー。中山祐次郎目当てで手に取る。時間の都合で中山祐次郎のみの読了。救急にある刺殺患者が運び込まれる。失血もひどく生死の境目にある。手術中に実は15人を刺殺した加害者だと判明し、大量の輸血をしてまで救命する意味があるのか外科医は葛藤する。
June 5, 2025 at 9:41 AM
中山祐次郎『医者の本音』外科医の筆者が「なぜ医者の態度はいつも冷たいのか?」「医者がかかりたくない医者とは」など、患者と医者の間に存在する溝について語り尽くす。医者の懐事情や問診時に伝えて欲しいことなど、気になっていたけど聞けないことなどにも深く切り込んでいく。死生観についての章がとても印象的だった。医者が選ぶ最善の死に方も知ることができる一冊。
June 2, 2025 at 8:24 AM
小野寺史宜『ディア・オールド・ニュータウン』脱サラして両親が営んでいた蕎麦屋を継いだ主人公。幼馴染のパティシエと共に日本そばとスイーツの店を盛り立てていく。馴染みのお客さんとの軽快な掛け合いや飾り気のない主人公の思考は肩の力が抜けていて安心できる。大事なことは2回言う筆者の文章も親しみやすく、何も考えずに人の営みを感じられるほのぼのとした一作。
May 19, 2025 at 9:38 AM
恩田陸『珈琲階段』4人組の男性が珈琲を飲みながら怪談を共有していく。話に付随して不思議な現象が起こり、ゾッとする。
恩田陸は自分がホラー向けの作家だと自覚したそう。本作は日常に潜む怪談なので怖いものはない。とにかくサビがない短編集なので、なかなか難航した。
May 17, 2025 at 2:58 AM
中山祐次郎『俺たちは神じゃない』同期外科医2人がタッグを組み日々忙しなく起こる手術やアクシデントを乗り越えていく。「泣くな研修医」シリーズと同じく外科医局が舞台のため親和性があって面白い。あとがきがポエティカルで面食らった。
May 10, 2025 at 5:55 AM
アンディ・ウィアー『プロジェクト・ヘイル・メアリー』ハリウッドで映像化が決まっているSFの金字塔。太陽の低温化を防ぐプロジェクトに巻き込まれた科学教師が異星生命体とともに知力と技術で燃料となるマクロファージを繁殖させ、燃料を生み出す話。かなり物理や科学に突っ込んだ内容なので、背景が想像できない私はおとなしく映像化を待った方が良かった。異星生命体とのコミュニケーションと友情はとても可愛い。
May 6, 2025 at 4:13 AM
アンディ・ウィアー『プロジェクト・ヘイル・メアリー』タイトルの美しさに惹かれて手に取った。人類滅亡の危機に際し、たった3人を宇宙に送り、太陽熱を取り戻すプロジェクトに参加した科学教師。長い睡眠状態から目覚めると、そこには孤独が待っていた。異星人との交流や止まる宇宙船など未知との遭遇が時間軸を行ったり来たりしながら描かれる。これはハリウッドで映画化してもらった方がわかりやすいかもしれない。
April 16, 2025 at 7:55 AM
町田その子『月とアマリリス』事件記者だった主人公は、ある記事をきっかけに少年一人の命を奪うところだった。主人公が加害者として告発した少年も、また被害者の一人だった。自分の記事によって命を奪ってしまいかねなかったという重責に耐えられず九州の実家に戻るが、そこで同級生が絡む悲惨な事件の記事を書くことになる。
自文の引用が多く、作者はこのセリフを読者に届けたいのだということはわかる。が、少々無粋かなという印象もあった。主人公は結局事件記者の道へ戻るのだが、その立ち直りが傷を負わされた者の深淵を無視した傲慢さがあり、受け取るのが難しい一冊となった。
April 5, 2025 at 8:48 AM