「…げんや、げんやなのか？」
誰かの声がする。…あの夢を見ているかの気持ちになる。
重たい瞼をあげ、上を見る。そこには俺の知らない男の人。なんだろう、すごく変な気持ちになるけど、モヤモヤしてる気持ちとは違う。男の人は俺を見てなんだか、変な顔をしていた。触れてみたいと思って俺は手を伸ばす。男の人はハッとした顔で俺に近づき、起こしてくれた。
「げんや！げんや！！しっかりしろ！！！兄ちゃんがなんとかしてやるからな！！！」
俺はげんやじゃないよ、って言いたかったが声が出ない。あ、暗くなっちゃう…もう少しこの人を見ていたかったのに…いつもワクワクしてることが今日はちょっとモヤモヤな気持ちになった

…どれだけ走ったのだろう。外に出たことがない俺にはここがどこだかわからない。ただひたすらに走った。走って走って走り続けた。
途中何かに引っ掛かり足がもつれ、転んでしまう。逃げなければ殺されるのに体が思うように動かない。…そういえばなんで体濡れてるんだろう…？そっか、これが雨なんだ。本で読んだな…。なんだか、ブルブルする…これなんだろう

…生き残れ、生き残れ、生き残れ！！！！
＊＊＊＊に謝るまでは死ねない！！！！
ふと、ピリッとした気持ちになる。そうだ、俺は死ねない。死んじゃいけないんだ。
視界がクリアになる。俺は男に思いっきり頭突きした。死にそうな俺が反撃してるとは思わず、男は首にかけてた力を緩めた。その隙を見逃さず、仕返しとばかりに手首を噛みちぎった。痛みに悶絶し俺を投げ飛ばした。投げ飛ばしたのがベランダの近くだったため、俺はフラフラしながらもベランダから飛び降りた。
「うぐっ…」
受け身には成功したが体に強い衝撃が加わる。だが、痛みに構ってる暇はない。捕まれば殺される。俺は体に鞭を打ち走った。

略

俺の世界には俺、女の人、知らない男の人がたくさん、その人たちが置いていく本。そして目を瞑ると会えるワクワクする人でできている。本の中には海？や空があるらしいけど想像ができない…きっとワクワクするものなんだろうな…

略

男が何か言っている。だが、首を絞められ息ができない。あ、これ死ぬんだ。って自分でもわかった。あいつらが置いてった本に確かそんなことが書いてあった。ﾀﾋんだら俺はどうなるんだろう…
あぁ…でも最後にもう一度、あの人に会いたかったな…