斑鳩天Q
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斑鳩天Q
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ボイロ劇場だいすき。
ニコニコ動画でSCP解説・ボイロ劇場の製作などで細々活動しております。
基本的に本の話かボイロの話しかしません。

ニコニコ:
https://www.nicovideo.jp/user/43820659
つべ:
https://www.youtube.com/channel/UC9GkvSLtwwxE-ZwLQqn4kow
読了。
『三体』の劉慈欣による第二短編集。

表題『時間移民』は人口問題のため人工冬眠により「未来への移民」を行うことを選んだ人々が辿る未来世界の曼荼羅絵巻。シニカルな視座から描かれた未来像と冷厳な眼差しの奥底にある温かい人間観が好対照。

『夢の海』『歓喜の歌』は上位存在の芸術家が地球を訪れる、という筋書きながら対照的な結末を辿るふたつの物語。人類がハタ迷惑な芸術家の壮大な後始末をさせられる、というペーソス溢れる余韻を残す『夢の海』が好み。

どこまでも抒情的かつ詩的で私的な『思索者』ストーリーテリングがお見事な『鏡』も実に佳作。

総じてSF的冷たさと人間臭い温かさの配合が絶妙。
大満足!
November 13, 2025 at 12:28 AM
読了。
「静かになるまでに〇分かかりました」「雷が鳴ったらヘソを隠せ」「いつ?何時何分何秒?地球が何回まわったとき?」のような慣用表現を膨らませた奇想天外なアイデアストーリーを10篇収めた短編集。

「雷が鳴ったらヘソを隠せ」は雷様に奪われ歴史の闇に消えたヘソを追う考古学的ヘソハンターのお話、「いつ?何時何分何秒?地球が何回まわったとき?」は指定した地球の回転数の時間にタイムトラベルさせてくれる不思議な店の話、といった塩梅。

ショートショートの名手だけあってどの短編もキレ味鋭く濃密。

お気に入りは「雨女」を雨女養成学校を舞台にした青春劇に仕立てた『雨の粒たち』。

実に楽しい短編集だった。
November 10, 2025 at 11:12 AM
読了。
異類婚姻譚を軸に各国の民話・伝承を比較分析することで、大衆の意識下の共有価値や世界観を浮き彫りにする比較文化学の著作。

人と異類、すなわち動物や幽霊・妖怪、精霊や神格の類が婚姻関係を結ぶという話は世界中に民話として存在する。各国のそれを網羅的に紹介しながら比較検討し底流にある民族性・ひいては日本人の持つ宇宙観を分析していくといった趣旨。

つる女房・グリム童話・美女と野獣のようなメジャーなものからカミールやパンジャブのような馴染みのない民話まで実に幅広く材を取る。

共有点の洗い出しや類話のグループ化など実に丁寧な仕事ぶり。
ボイ劇の資料として読んだ一冊だがかなり興味深く読めた。
November 6, 2025 at 2:49 PM
読了。
怪談を蒐集し一冊の本に纏めようとしていた作者が次第に怪異に巻き込まれてゆく…という筋のモキュメンタリーホラー。

編集者と共に『書店怪談』と題する、全国の書店員の実体験を蒐集した怪談本を企画していた作家の「私」。人脈をツテに全国の書店員から怪談を集めるうち、まったく違う地域の店舗から寄せられた怪談に存在する奇妙な共通点に気づく。

取材を続けるうちに浮かび上がってくる謎めいた相似、身の回りで起こる不可解な出来事、少しずつ浸食されてゆく日常…

和製ホラーらしいジワジワ忍び寄るイヤ~な恐怖を丁寧に描いたホラー。一つ一つの挿話の完成度も高く、いい感じに背筋を冷やしてくれる。

怖かった!
November 2, 2025 at 10:07 AM
読了。
江戸の芝居小屋を舞台に、鳥屋と元名女形のバディが怪事件に挑むミステリーシリーズ第二段。

『仮名手本忠臣蔵』公演中に首を折られ両耳に棒を突っ込まれた変死体が客席で見つかる怪事件、探偵役として声がかかったのは前作で芝居小屋の変事を解決した捻くれ者の元役者と真正直な鳥屋の凸凹コンビ。

芝居と現実、人と妖、男と女、すべてが曖昧に溶ける役者たちの世界、夢とも現とも朦朧たる奇妙な事件が紐解かれる。

外連味たっぷりの道具立ても楽しいが、前作に引き続く主人公バディが中々の名コンビ。耽美に片足突っ込みながら根は真っすぐな二人の関係性が実に気持ちいい。

ジャンル定義不能、奇妙な味わいの江戸推理譚。
October 29, 2025 at 10:13 AM
読了。
ジュヴナイルの名手によるYAミステリー。

提示される謎は極めてシンプル。
「観覧車に乗った少年がゴンドラの中で消失した」という、正直なところ現代ミステリーのメインディッシュとしては弱いもの。

それを補って余りあるのが瑞々しい心理描写、ユーモラスながら時に生々しい人間臭さを見せる登場人物、そして丁寧に編まれたロジックによる精緻な謎解き。
子供の目から見た世界をきめ細やかな内面描写と共に描き出してゆく筆致がぐんぐん物語に引き込んでくれる。

ここまでシンプルな謎解きをここまで魅力的な作品に仕上げる、まさに名人芸。素朴ながら絶品の三ツ星コックのオムレツのような贅沢な一品。

面白かった!
October 22, 2025 at 12:59 PM
読了。
ネット黎明期からゼロ年代までのネット怪談・ホラー系ミームを民俗学の観点から網羅的に分析・整理した一冊。

民俗学者がガチでネット怪談を分析してみた、といった趣向。
口承される「民話」と共有される「ミーム」、そのどちらもが同様に民俗学の対象となりうる「民俗」である、というのは面白い観点。

国内のネットホラーから4chan系のミーム、洒落怖からSCP・バックルームまで網羅的に起源から伝播のメカニズムまで分析した労作。
テレビ下北沢の「日本国尊厳維持局」まで言及している徹底ぶりはなかなかに凄まじい。

この分野の礎たりうるだけの価値ある基礎研究といっていい一冊だと思う。
興味深く読めた。
October 18, 2025 at 11:47 AM
読了。
アリバイ崩しに完全特化したミステリーシリーズの第二段。

タイトル通り、アリバイ崩し専科のミステリー。ドラマや情感を完全にそぎ落としドライな味わいに仕上げたパズラー短編5話を収録。

アリバイ崩しの定石を崩しサプライズを仕掛けてくる構成が楽しい『時計屋探偵と一族のアリバイ』、犯人が同時に発生した二つの事件の有力容疑者となることでアリバイを構築するという趣向が面白い『時計屋探偵と二律背反のアリバイ』の二編が特に好編か。

完全にアリバイ崩しに全振りした構成のためやや人を選ぶだろうが、パズラー寄りのミステリー愛好家には最高のご馳走といった感じの短編集。

なかなか楽しく読めた。
October 16, 2025 at 9:38 AM
読了。
このミス大賞受賞のミステリー。

誘拐事件から始まり二転三転する先の読めないサスペンスを、迷惑ドライバー専門の車泥棒三人組、誘拐されたベンチャー起業家、妻との関係に悩む刑事、頼りないが好人物の七光りの若社長の四つの視点を巡りながら物語っていく。

道具立ては伊坂幸太郎作品っぽいが、テイストはむしろ堅実で地に足のついた推理小説といった感じの味わい。散りばめられた伏線を細かく拾っていく王道の構成、ニヤリとさせられる叙述トリック、先の読めない展開から意外な真相、そして綺麗にまとめながら余韻を残す結末ととにかく綺麗にまとまった一作。

丁寧に構成された丁寧なミステリー。面白かった!
October 14, 2025 at 7:09 AM
動画次パート33分くらいまで編集完了!
繁忙期も落ち着いてきたしボチボチ動画作りも再開したいですなー
October 11, 2025 at 1:07 PM
読了。
『カササギ殺人事件』に続く入れ子構造ミステリー第三段。

物語中に登場する作中作に絡んだ殺人事件が起きる、という二重小説的趣向。

今作に登場するのは大作家一族のはぐれ者が書いたミステリー。明らかに一族の面々をモデルにした登場人物のその小説には、家長であり世界的に愛された大作家の死が一族の誰かによる殺人だったと告発するかのようなアナグラムや暗喩が仕込まれていた。
謎を解き明かそうと原稿と奮闘する主人公、しかし現実世界で殺人事件が起き…

極上のミステリー二本立てで楽しませてくれる一粒で二度美味しい傑作。
クリスティへの見事なオマージュであり、最高峰の犯人当てミステリー。
一気読み必須!
October 7, 2025 at 11:04 AM
読了。
面白い面白いと評判のこの小説にいよいよ手を付ける。
いや面白かった!!!

方々から絶賛は聞こえてくるが「ネタバレが目に触れる前に読め」と誰も内容を教えてくれないことに定評のある一冊。
なるほど、確かに真っ白な状態で読んだ方が楽しめるタイプの小説だ!

というわけで情報量0な紹介。

まず上巻、引き込まれるシチュエーションから少しずつ状況が明らかになっていく王道の構成、卓抜なSF的アイデア、魅力的な主人公とサブキャラ達と実に隙がない。そして後半のあの展開からのSF的クソデカスケールアップ!

続いて下巻。
もうね。最高。最の高。至福の読後感です。

秀作!情報ゼロのまま読んで頂きたい!
September 16, 2025 at 12:31 PM
読了。
怪談作家二名のコラボによる怪談集。収集物から創作まで28編の短編怪談を収める。

ホラーを勉強したいと思って色々手を出しているのだが、著者の一人である呪物蒐集家で怪談作家の田中俊行さんが最近すき。
この方はとにかく怪談の構成がお上手。行間を使った余韻の残し方が絶妙に上手く、軽妙で重々しくなりすぎない語り口も嫌味がなくて実に良い。

得体の知れない不気味さと正体の分からないままの薄ら寒さが嫌な後味を残す田中俊行『彼女の痕跡』
大きく持たせた行間が雄弁にドラマを語り嫌な想像力を膨らませてくれる高田公太『ものおと』
の二編が特に秀逸と感じた。

面白かったし大変勉強になった。
こわかった!
September 5, 2025 at 11:56 AM
読了。
表紙に惹かれてジャケ買いしたミステリー。
リピーターお断りという奇妙なルールを持つホテルを舞台に、それぞれ秘密を持つ泊り客の間で不可解な死亡事故が起き、真相に迫る内にやがてホテルに隠された秘密が明らかになっていき…という王道の構成。

純粋にミステリーとして読むとやや平凡。真相はありがちだし登場人物の抱える「秘密」も正直ちと弱い。
一方で湿度高めの人間ドラマとして読み解けばなかなか味わい深くはあるのだが、登場人物それぞれの掘り下げがいささか弱くやはりちょっと物足りず。

主人公がどうにも好きになれない人柄。探偵役がここまで共感しにくい人物だとちょっと辛い。

平凡。可もなく不可もなく。
August 30, 2025 at 11:56 AM
カエルくんが畑の散水栓で水浴びをしておった
暑いもんね…
August 21, 2025 at 8:31 AM
読了。
カウンターカルチャーに多大な影響を与えた1970年代のユートピア小説。
アメリカ北西部が自然回帰的な循環型社会国家「エコトピア」として独立。アメリカ人の記者である主人公がその現地のルポルタージュを試みる、という筋書き。

物質主義的な大量生産・大量消費社会華やかなるころのアメリカの対極として描かれるエコトピアは、70年代頃のグリーンムーブメントの旗印的な社会像を提示する。

さすがに今読むと古さを感じるし、エコロジー社会への素朴すぎる憧憬はいささか鼻につく。ルポタージュ調の小説ゆえに展開に乏しく、思想的な内容ゆえにドラマに欠ける。

名著ではあるが時代を感じるというのが正直な感想。
August 19, 2025 at 10:14 AM
読了。
『自由研究には向かない殺人』三部作著者の新作。

RV車で旅行中の6人の学生たち、道に迷いタイヤがパンクしとお決まりのトラブルに見舞われた彼らを襲う突然の銃撃。
パニックに陥る彼らに狙撃者は語り掛ける。「お前たちの中に秘密を抱えた者がいる、命が惜しければ夜明けまでにそれを明かせ」
高まる疑心暗鬼の中、徐々に露わになる6人それぞれの秘密と本性。
狙撃者の正体は?目的は?
恐怖の一夜が幕を開ける。

"意外な犯人"の提示への伏線が特にお見事。そこから某人物の振る舞いが腑に落ちる形で事件の全体像が見えてくる構成も実に巧い。

テンポの良い文章と畳み掛けるような展開で一気読みさせてくれる一冊。
August 16, 2025 at 12:39 PM
動画次パート30分くらいまで編集完了
繁忙期入っちゃったけどコツコツ作ってるわよ
August 10, 2025 at 12:17 PM
読了。
サリンジャーの青春小説。思春期ゆえの煩悶に直面する二人の兄妹を主人公に、若者のぶつかる現実と理想の相剋を瑞々しく描く。

純粋な青春小説というより思想小説という感じの趣きの強い一冊で、交わされる思索的な会話はサリンジャーの世界観・宗教観を紐解く端緒となりえるだろう。

サリンジャーは初見なのでもう何冊か読んでから判断すべきだろうが、もう少し若い時に読んでたら面白かったかもしれないなぁ、というのが率直な感想。
つまらなかったというわけではないが、さすがにこの歳になってから読むと少々青臭さを感じてしまう。

連作の一部を単行本化したものらしいので、全体を読んだら印象が変わるかもしれない。
August 9, 2025 at 12:17 PM
読了。
恩田陸による短編集的なホラー小説。
シリーズの一部らしいがあまり気にならず単独で楽しめる内容だった。

物好き揃いの旧友四人が「珈琲怪談の会」と称して喫茶店を巡りながら旧交を温めつつぽつぽつ怪談を話してゆく、というまったりした構成の怪談小説。
説明のつかない不可思議を次から次へと物語るうちいつしか不可思議と日常の境界は滲み、彼らの周りにも不可思議が忍び寄り・・・という王道の構成。

ひとつひとつの怪談の質も高いが、間を繋ぐ味のあるオッサン四人の掛け合いがなかなか味わい深い。

まったりとした空気感に静かな怖さがある独特の味わいのホラー。美味しいコーヒーをお供に読みたい一冊。
August 5, 2025 at 2:28 PM
読了。
アイスランドのミステリー、刑事エーレンディルシリーズ8作目。

写真を探す二人の人物から物語は幕を開ける。
一人は復讐者。幼少期に自分に性的虐待を加えた義父からその残酷な行為のトロフィーである写真を取り返すため、義父の殺害を目論む。
一人は脅迫の被害者。奔放な性生活を隠し撮りされ強請られる彼女は、脅迫者から何とか写真を取り返そうとする。
無縁に思われた二人の物語は意外なリンクを見せ始め…

無思慮な欲望に身を焼かれ道を踏み外した人々を巡る、強欲が招く悲劇の連鎖についての物語。

強欲に浮かされた者たちの結末はいずれも救いがないが、峻厳さを湛えたラストシーンは静謐で切なく、美しい。
August 1, 2025 at 11:07 AM
動画次パート27分くらいまで編集完了ー
解決編は一本の動画でまとめるつもりだったけど長くなりすぎちゃうのもアレだしどーっすっかなぁ…
July 28, 2025 at 2:13 PM
読了。
昭和48年刊行のミステリーのアンソロジー。

横溝正史、高木彬光、山田風太郎、陳舜臣に坂口安吾となかなかに豪華な顔ぶれ。

何故か『幽霊の顔』『心霊殺人事件』と交霊会を舞台にした殺人を扱う作品が2作も収録されている。たまたまカブったのかあえて競合させたのか、アンソロジーでここまで類似した作品が収録される例はわりと珍しい。

出色は山田風太郎『お女郎村』か。作者らしいケレン味の利いた登場人物造形が上手く機能したタイプの短編で、関係者全員の思惑が入り乱れる事件からの意外な真相提示が鮮やか。

さすがに内容的にはややクラシックな趣の作品が多いが、古典としてそこそこ粒揃いで楽しめる一冊だった。
July 26, 2025 at 12:37 AM
読了。
言葉の語源を紹介する軽い読み物。こういう本すき。
何点か面白かったものを。

●シルエット
語源は人名。18世紀のフランスの大蔵卿で、徹底した緊縮財政を敷くも圧倒的不人気で失脚。肖像画なんて安物の白黒絵で十分だとする彼の発言を揶揄して影絵をシルエットと呼んだのが始まり。
悪名が定着して21世紀まで残ってしまった気の毒なパターン。

●キセル
電車の無札乗車。語源はタバコを吸う煙管で、火皿と雁首の「両端だけ金を使っている」に因む。洒落が効いている。

●少子化
なんと新語として紹介されていた言葉。刊行1999年の本なので、この頃から社会問題として可視化されていたというのが分かり興味深い。
July 25, 2025 at 2:29 AM
動画次パート24分くらいまで編集完了ー
July 22, 2025 at 3:31 PM