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アル菊

例えば今、私が突然この人のことを刺したら。彼は怒るのか、悲しむのか。
……はたまた「やっぱりね」と不敵に笑うのだろうか。
「菊?どうかした?」
「いいえ、なんでも」
取り上げられた刀の代わりに、腕をその首に差し出してみる。
すかさずそれは掴まれて、ぐいっと彼に引き寄せられた。
January 25, 2026 at 2:00 PM
アル菊

鼻唄を溢しながら服を着ていく彼の背中を、マットレスに身を預けたまま眺めてみる。
ぱちり、とひとつ瞬く。立派な筋肉の上に幾筋か走る紅い線が見えた。
『爪、立てていいよ。君からの傷なら大歓迎だからね』
リフレインした声と言葉に頬が熱くなる。
私がつけた、傷なのだ。あの人に、私が。
January 25, 2026 at 2:00 PM
アル菊

今日の菊は機嫌がいい。温泉に浸かっては瞼を下げて「あー、癒されますねぇ」と、ご飯を食べては噛み締めるように「あー、美味しさが沁みますぇ」と、畳に寝転んではふにゃりと笑って「あー、至れり尽くせりですねぇ」と。
「あー!可愛いんだぞ!」
「急になんですか?」
……酷いよ!
January 25, 2026 at 1:59 PM
アル菊

ツリーは大きいものを。電飾をたくさん巻き付けて、飾りもいっぱい。そして頂上には特大の星を。机の上には七面鳥に、ローストビーフ、コーラのボトル、スタッフィング、エッグノック、そして今年は赤くしてみたケーキ。
うん完璧だ!あとは招待状を片手にチャイムを鳴らす君を待つだけだね!
January 25, 2026 at 1:59 PM
アル菊

大きな掌に包まれる度、私は安心する。そして同時に恐ろしくもなる。
ほら、と差し出されるものには確かに愛があるけれど、もし、私の手がもっと大きかったら、私がもっと背が高ければ。きっと貴方はそれを向けてはくれないから。
貴方は誰かを導きたいだけで。たまたまそれが、私だっただけ。
January 21, 2026 at 2:33 PM
アル菊

あなたの瞳は澄んでいる。蒼くて煌びやかで、そして清々しい。それは夏の爽やかなソーダのよう。嗚呼、貴方の中でシュワシュワと弾ける泡になれたなら、私はどんなに幸せだろうか。そのまま貴方と溶け合って……。
けれど、気泡は結局混じることはない。留まることなく、消えてしまうのだ。
January 20, 2026 at 1:23 PM
アル菊

君はいつまで経ってもキスに慣れない。2人っきりの部屋。2人っきりのソファ。感動的なフィナーレを迎えた恋愛映画。
唇をそっと近づけると途端に目をキュッと瞑って息を止めて、プルプル震えるんだ。その様が可愛すぎて、俺は笑いを堪える。
早くとろんとした目を見せてほしいな。
January 17, 2026 at 8:33 PM
アル菊

「いたっ!」
左の薬指に激痛が走って、噛みつかれたのだと遅れて認識した。
「何して」
咄嗟に引こうとした手は強く掴まれたままで。アルフレッドは熱を持つ傷口の上から舌を這わせた。
「……っ」
熱さと痛みで肩が跳ねる。
「予約しておいたからね」
うっそりと笑う彼に、背筋が凍った。
January 14, 2026 at 8:13 AM
アル菊

地平線からゆっくりと漏れ出る紅。
「やっとですね……」
そっと細められた瞳に浮かぶ涙がオレンジ色に輝いている。口に含んだら、きっと甘い味がする。
不意に風が吹いて菊がきゅっと瞼を閉じた。ころりと落ちた粒がマフラーに吸い込まれるのを見て、なんだか勿体無いなと思ったんだ。
January 1, 2026 at 1:13 PM
アル菊

並んで歩くと少しリズムの違う足音が響く。それが案外好きだった。
突然アルフレッドの指が袖口を摘む。
握らない。それでも、意識してしまう距離。
「人に見られますよ」
「見られたら離すんだぞ」
言葉とは裏腹に、それは触れたまま。ここで私から小指を絡めたら、彼はどうするのでしょう。
January 1, 2026 at 9:26 AM
アル菊

すごく怖い夢を見た。
だって菊が俺のことをすごい目で睨んでた。そして言ったんだ。「貴方なんて嫌いです」
俺は何も言えなかった。ただ口をぽかんと開けて突っ立ってて。
君は背を向けた。

バクバク鳴る心臓を抑えて横を見る。穏やかに眠る頬に指を滑らせた。
「嫌わないで」
お願いだ。
December 29, 2025 at 12:42 AM
アル菊

「まだ恋はしません」
いつだったか、菊はそう言っていた。それがずっと頭に残ってる。
なんの話をしてたのかはもう覚えてないんだけど、そのときの菊の柔らかい笑顔は忘れられない。
まだ、ってなんだろう。始めようと思えばできるってこと?その相手がいるってこと?ねぇ……。俺じゃだめ?
December 26, 2025 at 7:11 AM
アル菊

「うーー!寒いんだぞ!」
拗ねたような声がして、皿を片づけていた手を止めて玄関に向かう。自然と微笑んでいた。
「いらっしゃい」
「菊!」
パッと明るくなる顔がくすぐったい。長い腕にぎゅうぎゅう抱き締められる。
「あったかーい!」
今夜は鍋ですかね。冷蔵庫の中身を思い浮かべた。
December 25, 2025 at 4:15 PM
アル菊

ふと温もりをおでこに感じた。一瞬だったのに不思議とすごく心地が良かったから、もう一度を求めて手を伸ばした。何かが触れて、焦ったような声がした。グイッと引っ張ると急に重みを胸元に感じた。
「んー?」
うっすら目を開けると頬を俺に掴まれた菊が赤くなってこっちを見てたんだ。
December 24, 2025 at 8:42 AM
アル菊

「火星に行ったら……ですか」
「うん!何したい?」
天体望遠鏡を覗きながら一瞬だけ視線を振り向けた彼は、どこか凪いだ顔をしていた。
「そうですね。普通に地質調査とか」
「えー!!君、夢がなさすぎるんだぞ!」
唇を尖らせる。子どものようだ。
「そういう貴方は?」
「そりゃもちろん!探検さ!」
ニッコリと笑うだけで、周囲がパッと明るくなる。星々の煌めきなんか霞むほど。
「君と一緒にね」
そして甘やかに細められた視線。緩んだ口元は隠さなかった。
「光栄ですね」
「何処だって君と一緒なら楽しいんだぞ」
ああ、貴方の瞳に映る場所なら何処へでも。
December 20, 2025 at 12:51 PM
アル菊

「たまには君からキスして?」
悪戯っぽく揺れる瞳に吸い寄せられて、詰まった言葉は呼吸を止めてしまう。あと少しのところで停滞する彼の顔に、自然と顔に熱が集った。
「ね?」
ああ、そんなに可愛らしく乞われては堪らない。
「目、閉じてください…」
「嫌だよ」
唇が触れるまであと──。
December 20, 2025 at 12:05 AM
アル菊

「おはよう」
目覚めにニコニコと上機嫌な顔。居た堪れなくて、掛け布団の中に避難する。さながら鎖国だ。
「カイコクシテクダサーイ!」
バッと剥ぎ取られ、その暖かな体が抱きついてきた。裸の胸板に顔が赤くなる。昨日本当に私たちは……。
ああ恥ずかしい!なのに、舞い上がるほど幸せだ。
December 19, 2025 at 1:34 PM
アル菊

「お天道様が見てますから」
菊はたまにそう言う。それを言われたからどうってことないけど、その時の菊はなんだか神聖に見えるんだ。だからつい手を伸ばしてしまう。
「ねぇ菊。ここにいてよ」
「……いますよ?」
訳がわからないって顔だね。でもさ、俺はお天道様なんかより君がいいな。
December 19, 2025 at 5:46 AM
アル菊

「アルフレッドさん」
その声は清流の中から届いた。もっと正確に言えば、そう聞こえた。
「なに?」
「呼んでみただけですよ」
その声は多分な幸福を含んでいて、なんだかくすぐったい。その音色で奏でるのが俺の名前なんて、もっとくすぐったい。
「ねぇ菊」
だからね、今度は俺が呼ぶんだ。
December 18, 2025 at 3:22 PM