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ジョジョの奇妙な大学教員こと亘理陽一
こういう指摘を、『英語教育』誌その他で、テスティングを専門とする英語教育関係者、あるいは都の中等教育に関わる研究者が指摘したことはあっただろうか。大学入試への外部試験問題のときに既に一度、英語教育関係者の大半は私の中で死んだが、学校英語教育が滅ぶまで死に続けるのかもしれない。

>大津由紀雄・南風原朝和(編)『高校入試に英語スピーキングテスト?: 東京都の先行事例を徹底検証』岩波書店. amzn.to/3SPbwR4
November 28, 2023 at 2:32 AM
例えば「このように、制度的にESAT-Jを不受験となってしまう生徒がいて、それらの受験者に対する措置において、事前に予測できるような系統的な誤差が生じることは、入学者選抜の方法として公平性に欠けると言わざるを得ません。いわば、制度に組み込まれた不公平が存在することになります」(p. 26) とか「また、たとえば79点と65点は段階別評価ではともにBとなり、数値換算では同じ16点となります。それなりに時間をかけて実施し、採点して得られた得点差をこのようにつぶすことは、テスト結果の持つ情報量をみすみす捨てることになり、コストの無駄遣い以外の何ものでもありません」(p. 29)とか。
November 28, 2023 at 2:31 AM
(3) コンパクトながら重要な人物や概念、史実が網羅されている。その柔らかくも大事なところを逃さない語りに感心しきり。資料も豊富で、特に学校と社会の歴史の第2部がアツい。細切れの教採対策本で勉強するぐらいなら、授業のテキストでなくとも本書を読んだほうが良い。

(4) ただし、Further Readingsの文献の難易度はまちまちでキュレーションが必要。細かい所で、言語教育の立場から言えば、第13章の「翻訳アプリを使えば、言語の壁を超えた協働も可能です」(p. 219)というのは単純化し過ぎというか、言葉足らずだなと思うけども。

とにかくいい仕事!
October 25, 2023 at 2:37 PM
(1) コンパクトな記述に即して「文献にチャレンジ」に挙げられた文献の的確さ。著者たちの造詣の深さに起因するのだろうが、最新のものまで含めて、ハズレのない選りすぐりの文献が並ぶ。これを追っかけて読んでいくだけで良い教育学者が育ちそう。

(2) 構成の巧みさ。章の扉のQuizで初学者の関心を引き、節内の問いで深く考えさせる。冒頭で関連する章を図解し、章をまたぐクロスリファレンスや言及も豊富。教育学の授業の担当者が全ての領域に研究レベルで詳しいことも稀だろうが、本書を通じて参考文献に当たっていけば良い授業ができるだろう。
October 25, 2023 at 2:37 PM
前に日本教育学会で、英語教育に巣食うパーフェクショニズムが桎梏となってるよ的発表をした際、それはどちらかといえば各個人の実存主義的言語観の内にある課題を指摘するもので、本質主義的側面にはあまり目配せをしていなかったことに気づいた。英会話学校の広告に代表されるような形で現出する「母語話者主義」は、authenticityの本質主義的概念の側に根差している。母語話者を至上の存在として、完璧な言語の使い手でない限り自らは劣った存在だと考える言語(教育・学習・使用)観を脱却するためには、こちらも見なければならないんだな。
September 13, 2023 at 3:30 PM
Will and Pinnerは、(Willの研究に基づいて)これまでのauthenticityの議論を6つに分類している。(1) テクストの…、(2) テクストの受容の…、(3) 実世界との対応の…、(4) 教室の…、(5) 個人の振る舞いにおける…、(6) 文化的…。次いで、authenticityの政治的側面が取り上げられ、日本の英会話学校の広告が批判されているのはこの側面。そこでauthenticityの本質主義的概念と実存主義的概念が導入され、サルトルやハイデガーを引きつつ、哲学的概念としてのauthenticityが検討される。
September 13, 2023 at 3:30 PM
さしあたりKramsch先生の前書きと、Will and Pinnerの第1章を読んだが、これだけでも引き取って考えるべきこと盛り沢山で頭が満腹だ。

(白人の)英語母語話者講師とバイリンガルの日本語話者講師とフィリピン人講師に値段の差をつけてアピールする日本の英会話学校の広告が取り上げられて、(企業名を"SenseiSabetsu"と言い換えた上で)痛烈に批判されていた。
September 13, 2023 at 3:29 PM
あと、途中の内容からすれば、やはり
伊藤 亜紗 (2022).『体はゆく できるを科学する〈テクノロジー×身体〉』文藝春秋. amzn.to/3RhY2wc
には言及あって然るべき。
September 13, 2023 at 7:39 AM
かようにして、「英語の」や「何ができる」について各論者が自身の実践や信念であれこれ語る一方で、(特に小中高の)「教室」に対する解像度の粗さから、質疑応答・意見交換では、20年ぐらい前にとっくに通り過ぎたような話が展開されていて、掲げられているタイトルの輪郭と切実さに比して、残念に思った。

>ことばのまなび工房(監修)・若林茂則(編) (2023).『英語の教室で何ができるか』開拓社. amzn.to/3sT2dVa
September 13, 2023 at 7:29 AM
全体として、副題にある「貧困・校内暴力・いじめから、不登校・発達障害問題」といった切り口から子どもたちの「排除・周縁化」を描き出そうとした戦後教育史なので、好みは分かれそうだし、個々の記述に疑問を持つこともあるだろう。そういう評価ができることが一つの達成とも言えるので、教職課程の学生は独力で読み通すのはややハードルが高いかもしれないが、授業で批判的に取り上げてくれると嬉しい。
August 5, 2023 at 1:44 PM