両親がパレスチナ人で現在はトロント在住の著者による、故郷を逃れカナダで生活するパレスチナ移民や難民を描いた9篇の短篇集。
ユーモアのある、しかし不条理な話の中に、同じく入植者に土地を収奪され住む場所を追われたカナダ先住民を敬う眼差しが含まれていた。
悪い冗談のような現実が迫る、最後の一篇「人生を楽しめよ、カポ」の絶望が苦しい。
両親がパレスチナ人で現在はトロント在住の著者による、故郷を逃れカナダで生活するパレスチナ移民や難民を描いた9篇の短篇集。
ユーモアのある、しかし不条理な話の中に、同じく入植者に土地を収奪され住む場所を追われたカナダ先住民を敬う眼差しが含まれていた。
悪い冗談のような現実が迫る、最後の一篇「人生を楽しめよ、カポ」の絶望が苦しい。
謎めいた語り手が「あなた」に向かって呼びかけながら綴る、50年にわたるエジプトのある家族の話。語り口がすごく良かった。
ただ、クィアロマンスといえど不倫の話には全く興味がないのと、家族やコミュニティの期待に応える人生に疑問を持たず生きてきた男に遅れてやってきた揺らぎや葛藤というテーマは、男性のこういう話は私はもういいかな……という気持ちが正直あったのだが、語り口は今年ベスト級に好きだった。
中盤まで隠されている物語のテーマそのものでもある語り手の「あなた」への呼びかけ、各人の心情が立ち上がる語りが素晴らしかった。
謎めいた語り手が「あなた」に向かって呼びかけながら綴る、50年にわたるエジプトのある家族の話。語り口がすごく良かった。
ただ、クィアロマンスといえど不倫の話には全く興味がないのと、家族やコミュニティの期待に応える人生に疑問を持たず生きてきた男に遅れてやってきた揺らぎや葛藤というテーマは、男性のこういう話は私はもういいかな……という気持ちが正直あったのだが、語り口は今年ベスト級に好きだった。
中盤まで隠されている物語のテーマそのものでもある語り手の「あなた」への呼びかけ、各人の心情が立ち上がる語りが素晴らしかった。
デビュー時から作家や評論家や読者に的外れな非難や誹謗を浴びせられ続けてきた山田詠美と松浦理英子の対談もすごい。「私じゃなかったら自殺してるよ」とは松浦理英子の談だが、凄まじい女性蔑視と無理解、呆れ返るほどの低次元さにクラクラする。
『三頭の蝶の道』で、作者の山田詠美を思わせる人物である山下路美が、愛想のない自分と他の女性作家を比べて侮蔑してくる男性記者に対して「なんという薄汚ない親愛の情か」と思い出すたびに腹が立ってたまらなくなると述懐するシーンが鮮烈に甦った。
デビュー時から作家や評論家や読者に的外れな非難や誹謗を浴びせられ続けてきた山田詠美と松浦理英子の対談もすごい。「私じゃなかったら自殺してるよ」とは松浦理英子の談だが、凄まじい女性蔑視と無理解、呆れ返るほどの低次元さにクラクラする。
『三頭の蝶の道』で、作者の山田詠美を思わせる人物である山下路美が、愛想のない自分と他の女性作家を比べて侮蔑してくる男性記者に対して「なんという薄汚ない親愛の情か」と思い出すたびに腹が立ってたまらなくなると述懐するシーンが鮮烈に甦った。
収録されているのは、佐多稲子、円地文子、河野多惠子、石牟礼道子、田辺聖子、三枝和子、大庭みな子、戸川昌子、津島佑子、金井美恵子、中山千夏と、2018年に実施した瀬戸内寂聴。
無いものねだりだけど、収録許可が降りなかった森茉莉や有吉佐和子に富岡多恵子、病気で訪問が叶わなかったという倉橋由美子も読みたかった……。
収録されているのは、佐多稲子、円地文子、河野多惠子、石牟礼道子、田辺聖子、三枝和子、大庭みな子、戸川昌子、津島佑子、金井美恵子、中山千夏と、2018年に実施した瀬戸内寂聴。
無いものねだりだけど、収録許可が降りなかった森茉莉や有吉佐和子に富岡多恵子、病気で訪問が叶わなかったという倉橋由美子も読みたかった……。
女性作家たちが如何にして小説に向き合い格闘してきたか、各々の社会への眼差しと文学論とともに時代の精神が現れたものすごく貴重な記録で、同時に超面白い対話です。
インタビュー形式とはいえ、これはインタビュアーであるイルメラ・日地谷=キルシュネライトさん(ドイツ人日本文学研究者)と作家による「対話」であり、43年が経った今こそ必要な記録……という酷い現状が辛くもあるけれど。
女性作家たちが如何にして小説に向き合い格闘してきたか、各々の社会への眼差しと文学論とともに時代の精神が現れたものすごく貴重な記録で、同時に超面白い対話です。
インタビュー形式とはいえ、これはインタビュアーであるイルメラ・日地谷=キルシュネライトさん(ドイツ人日本文学研究者)と作家による「対話」であり、43年が経った今こそ必要な記録……という酷い現状が辛くもあるけれど。
エピローグでの結びの言葉に、現在のひどい状況に絶望しているだけではだめだと改めて思うことができました。素晴らしい本をありがとうございます。
エピローグでの結びの言葉に、現在のひどい状況に絶望しているだけではだめだと改めて思うことができました。素晴らしい本をありがとうございます。
「母と娘たちの狂女の歴史」で語られる、母キム・ギョンヒョンさんの半生。『アヒル命名会議』でお母さんが寄せた言葉を読んでいたが、訳者の斎藤真理子さんが仰るようにこのエッセイで「点がつながり人生が線に」なる。お母さんとお姉さんと著者とこのひどい社会の、あまりに苛烈な話が数年越しに再読した今もまだ咀嚼できない。
「母と娘たちの狂女の歴史」で語られる、母キム・ギョンヒョンさんの半生。『アヒル命名会議』でお母さんが寄せた言葉を読んでいたが、訳者の斎藤真理子さんが仰るようにこのエッセイで「点がつながり人生が線に」なる。お母さんとお姉さんと著者とこのひどい社会の、あまりに苛烈な話が数年越しに再読した今もまだ咀嚼できない。
本書では、為政者たちが「反共」を掲げることで自身を正当化し、権力を強化するために都合の良い方便としていかに利用し続けてきたか、現在に至るまでの80年間が語られる。
日本でも何年も前から権力者が己を利するために在りもしない「敵」を作り出して「分断」と対立を利用する状況が繰り返されているが、そのやり口で効果が上がってしまうこと、不正義がまかり通る現実にいつも愕然とする。
本書では、為政者たちが「反共」を掲げることで自身を正当化し、権力を強化するために都合の良い方便としていかに利用し続けてきたか、現在に至るまでの80年間が語られる。
日本でも何年も前から権力者が己を利するために在りもしない「敵」を作り出して「分断」と対立を利用する状況が繰り返されているが、そのやり口で効果が上がってしまうこと、不正義がまかり通る現実にいつも愕然とする。
後日その候補者が当選したことも、何重にも辛い。
後日その候補者が当選したことも、何重にも辛い。
(近い将来、「なんでも出来るじゃん」と倫理観の無い作り手が現れてヤバイやらかしをして、裁判沙汰になりようやく業界の皆が反省し出す……みたいな悲観的な想像をしている、というような話もしていた)
(近い将来、「なんでも出来るじゃん」と倫理観の無い作り手が現れてヤバイやらかしをして、裁判沙汰になりようやく業界の皆が反省し出す……みたいな悲観的な想像をしている、というような話もしていた)
今年の『このホラーがすごい!』にランクインしていた国内編ベスト20作のうち、自分の既読は15作だったが未読の5作には作者のSNSでの冷笑仕草が無理すぎて読まなかった本もいくつかあるし、今後も読まないと思う。
今年の『このホラーがすごい!』にランクインしていた国内編ベスト20作のうち、自分の既読は15作だったが未読の5作には作者のSNSでの冷笑仕草が無理すぎて読まなかった本もいくつかあるし、今後も読まないと思う。
なんか変だなあとは思ったものの、てっきり未読の前作『ボタニスト〜』の話をしているのかな?と思ってしばらく読み進めていた。
なんか変だなあとは思ったものの、てっきり未読の前作『ボタニスト〜』の話をしているのかな?と思ってしばらく読み進めていた。