Chandra
LightNews LightNews
Chandra
@chandragenkai.bsky.social
10 followers 0 following 190 posts
ちゃんどらと言います　イベ告知したり支部に何かあった場合ﾆｼﾞｿｰｻｸの引越し先をお知らせする用の垢　今はほぼ一次創作置き場
Posts Replies Media Videos
Pinned
Chandra @chandragenkai.bsky.social · Aug 31
# みなみちゃんには言わないで

001『アルバイト求人情報』
ＮＥＷスタッフ大募集！ アイコウモール４階　ファミレス『ＦＵＳＹＯＵ』 平日や土日のみ勤務ＯＫ♪ 週１回〜ＯＫ♪ ２時間からの勤務ＯＫ♪ 友引の日は全スタッフ出勤お願いしております 学生さん、主婦の方、20代〜60代まで幅広い年代の方が活躍中♪ 【給与情報】 ホール、キッチンスタッフ 11時〜21時 時給１２００円 友引の日は特別手当あります まかない有、交通費支給 未経験者大歓迎！　ファミレスの枠を超えたライフワークになると評判ですよ♪ 　知ってる？　『FUSYOU』ってファミレス。アイコウの四階にある。そうそうそう、店員の女の子が白シャツに赤いスカート着てる店。わたし、あそこにバイト応募したの。高校生ぽいことしたくて。一人でじゃないよ、きょんちーと、あと田中。ちがうちがう、あいつが「今のバイト先が店舗移転してさー。もっと近場のショクバ探してんの」って勝手に話に入ってきただけ。田中とは別に仲良くないから！ 　面接はすぐ決まったよ。わたしが最初、二日後にきょんちーで、最後は田中。飲食店でバイトやってて余裕綽綽の田中とちがって、バイト未経験のわたしときょんちーは緊張でがちがち。でも、面接そのものはゆるい雰囲気で済んだんだ。カカオ色に日焼けしたまぁどこにでもいるおじさん店長が、わたしの学校の話とか希望の働き方についてにこにこ聞いてくれて、そんで急にぱんって両手叩いて「採用！」……えぇーっ！？　こんな簡単に決まっちゃって、いいの？　……とりあえず、ありがとうございますってわたしはお礼を言った。そしたら店長が「あっ」て声を上げて、 「言い忘れてたけど、うち、友引の日は全スタッフに出勤してもらう決まりなんだ。そのへん大丈夫かな？　……友引って何？　って顔だね。ま、週に一度の特別な日とでも思っといてよ。平日のときもあれば土日のときもあって……勤務自体は求人票通り二時間からでかまわない！　出勤したっていう形さえ守ってくれたらいいんだ」 　……わたし、いいですよー、って返事した。部活も習い事もしてなかったし、二時間くらいなら出られそうだったから。何より、特別手当がけっこう美味しくてさ……。二日後に、きょんちーからもわたしと同じ条件でバイト通ったって連絡きた。だからかな、田中が落ちたって聞いたときはびっくりしたよ。 　田中、すごく文句言ってた。なんでも店長ははなから田中を採るつもりがないのがまるだしの目つきで、田中の「お客さんを喜ばせるのが好きなんです」って志望動機を鼻で笑いまでしたとか。わたしもきょんちーも信じられなかった。記憶の中じゃ店長はずっとにこにこしてたし……もう二人採用してるから本当に田中を採るつもりがなかったのかもしれないけど、にしたって、田中が好き勝手言ってるだけだと思った。 　田中はさておき、わたしときょんちーは少なくとも一週間、はしゃいだ。一緒に髪留め買いに行こうって話にもなった。勤務中は髪を括らなきゃいけないらしいから、お揃いにしようと思ったんだ。それで街を歩いてた最中、また田中と出くわしてさ。何してんのって聞かれたから素直に髪留めの話したら、田中、微妙な顔すんの。 「あそこ、やめといた方がいいぞ」 　まーた言ってるよ……って顔に出てたんだろうね。田中ってば一生懸命首を振るんだ。「ひがみじゃねェよ！　おれも一応受かってんだからな」え？　落ちたんじゃ……。 「あの後、やっぱ採用したいって店長から電話あったんだよ。でも、断った。なんでって……あのおっさん、面接のときとは全然違う上機嫌な声でさ。『女きょうだいはいないって言うから落としちゃったけど、きみ、まだ十代の叔母さんがいるんだってね！　あのね、三親等までオッケーだから！　三親等内に十代の女の子いるんなら大歓迎だから！』……どっから漏れたか知らねェけど、確かに俺の親父、歳の離れた妹がいるんだよ。でも、だから採用するって意味わかんねーし……気色悪ィじゃん」 　……わたしもきょんちーも、それがきっかけでバイト断ったんだ。こんなことで、って思う？　でも、田中が嘘ついてるとは思えなかったし、もしかしてあっさりわたしたちがバイト決まったのって、わたしたちが十代の女子だから……？　って考えちゃったりして。それだけの話で、お店自体に変なところはないんだけどね。あれ以来一回も行ってないけど。店長に会ったら気まずいし、そういえば、女の子の店員が着てる白シャツと赤スカートって、あの組み合わせ…… 　巫女さんみたいだなあ。 　って今さら思っちゃったりもして。うん。だから、バイト、まだ探し中なんだ。良かったら紹介してよ。知り合いの紹介なら妙な心配もないし。あ。言い忘れてたけど、この話、みなみちゃんには言わないでね。
やっぱハッシュタグ投稿の方が良かったかもしんねえ❗️😀　後の祭り
October 3, 2025 at 3:28 AM
ツリーで投稿繋げてるけどちゃんと表示されてるのかわからんな　TLには問題なく表示されてるぽいんですが自ホームの投稿欄だと省略？　されてる気配
October 3, 2025 at 3:22 AM
見切り発車だから100本迎える頃シリーズがどういう展開になってるかも想像ついてないしそもそも完走できるのかという懸念もある
August 31, 2025 at 11:08 AM
ハッシュタグは要らないかな　まとめて見返す用に前回は使ってたけどよくよく考えなくてもツリー使ったらいいだけなので　はい
August 31, 2025 at 10:37 AM
あと前回はナンバリングしてないせいでポスト数から今何話目か逆算してたから今回はちゃんとナンバリングします
August 31, 2025 at 10:35 AM
前回はエモ寄り(当社比)でやったから今回はオカルト寄りでやるよん
August 31, 2025 at 10:34 AM
# みなみちゃんには言わないで

001『アルバイト求人情報』
ＮＥＷスタッフ大募集！ アイコウモール４階　ファミレス『ＦＵＳＹＯＵ』 平日や土日のみ勤務ＯＫ♪ 週１回〜ＯＫ♪ ２時間からの勤務ＯＫ♪ 友引の日は全スタッフ出勤お願いしております 学生さん、主婦の方、20代〜60代まで幅広い年代の方が活躍中♪ 【給与情報】 ホール、キッチンスタッフ 11時〜21時 時給１２００円 友引の日は特別手当あります まかない有、交通費支給 未経験者大歓迎！　ファミレスの枠を超えたライフワークになると評判ですよ♪ 　知ってる？　『FUSYOU』ってファミレス。アイコウの四階にある。そうそうそう、店員の女の子が白シャツに赤いスカート着てる店。わたし、あそこにバイト応募したの。高校生ぽいことしたくて。一人でじゃないよ、きょんちーと、あと田中。ちがうちがう、あいつが「今のバイト先が店舗移転してさー。もっと近場のショクバ探してんの」って勝手に話に入ってきただけ。田中とは別に仲良くないから！ 　面接はすぐ決まったよ。わたしが最初、二日後にきょんちーで、最後は田中。飲食店でバイトやってて余裕綽綽の田中とちがって、バイト未経験のわたしときょんちーは緊張でがちがち。でも、面接そのものはゆるい雰囲気で済んだんだ。カカオ色に日焼けしたまぁどこにでもいるおじさん店長が、わたしの学校の話とか希望の働き方についてにこにこ聞いてくれて、そんで急にぱんって両手叩いて「採用！」……えぇーっ！？　こんな簡単に決まっちゃって、いいの？　……とりあえず、ありがとうございますってわたしはお礼を言った。そしたら店長が「あっ」て声を上げて、 「言い忘れてたけど、うち、友引の日は全スタッフに出勤してもらう決まりなんだ。そのへん大丈夫かな？　……友引って何？　って顔だね。ま、週に一度の特別な日とでも思っといてよ。平日のときもあれば土日のときもあって……勤務自体は求人票通り二時間からでかまわない！　出勤したっていう形さえ守ってくれたらいいんだ」 　……わたし、いいですよー、って返事した。部活も習い事もしてなかったし、二時間くらいなら出られそうだったから。何より、特別手当がけっこう美味しくてさ……。二日後に、きょんちーからもわたしと同じ条件でバイト通ったって連絡きた。だからかな、田中が落ちたって聞いたときはびっくりしたよ。 　田中、すごく文句言ってた。なんでも店長ははなから田中を採るつもりがないのがまるだしの目つきで、田中の「お客さんを喜ばせるのが好きなんです」って志望動機を鼻で笑いまでしたとか。わたしもきょんちーも信じられなかった。記憶の中じゃ店長はずっとにこにこしてたし……もう二人採用してるから本当に田中を採るつもりがなかったのかもしれないけど、にしたって、田中が好き勝手言ってるだけだと思った。 　田中はさておき、わたしときょんちーは少なくとも一週間、はしゃいだ。一緒に髪留め買いに行こうって話にもなった。勤務中は髪を括らなきゃいけないらしいから、お揃いにしようと思ったんだ。それで街を歩いてた最中、また田中と出くわしてさ。何してんのって聞かれたから素直に髪留めの話したら、田中、微妙な顔すんの。 「あそこ、やめといた方がいいぞ」 　まーた言ってるよ……って顔に出てたんだろうね。田中ってば一生懸命首を振るんだ。「ひがみじゃねェよ！　おれも一応受かってんだからな」え？　落ちたんじゃ……。 「あの後、やっぱ採用したいって店長から電話あったんだよ。でも、断った。なんでって……あのおっさん、面接のときとは全然違う上機嫌な声でさ。『女きょうだいはいないって言うから落としちゃったけど、きみ、まだ十代の叔母さんがいるんだってね！　あのね、三親等までオッケーだから！　三親等内に十代の女の子いるんなら大歓迎だから！』……どっから漏れたか知らねェけど、確かに俺の親父、歳の離れた妹がいるんだよ。でも、だから採用するって意味わかんねーし……気色悪ィじゃん」 　……わたしもきょんちーも、それがきっかけでバイト断ったんだ。こんなことで、って思う？　でも、田中が嘘ついてるとは思えなかったし、もしかしてあっさりわたしたちがバイト決まったのって、わたしたちが十代の女子だから……？　って考えちゃったりして。それだけの話で、お店自体に変なところはないんだけどね。あれ以来一回も行ってないけど。店長に会ったら気まずいし、そういえば、女の子の店員が着てる白シャツと赤スカートって、あの組み合わせ…… 　巫女さんみたいだなあ。 　って今さら思っちゃったりもして。うん。だから、バイト、まだ探し中なんだ。良かったら紹介してよ。知り合いの紹介なら妙な心配もないし。あ。言い忘れてたけど、この話、みなみちゃんには言わないでね。
August 31, 2025 at 10:33 AM
100本ノックを、する
August 31, 2025 at 10:31 AM
ペロニキと出会って二年経つってマジかよと思ったけど逆にまだ二年しか経ってないことにびびりはじめてる　もう五百年くらい一緒にいるつもりでいた
June 15, 2025 at 10:21 AM
来年も一緒に祝おうね💕
March 14, 2025 at 2:46 PM
また気が向いたら100本ノックするー
December 1, 2024 at 11:36 AM
人外×人間をテーマにした一ページ掌編　# 人でなしの愛　目標の100話に到達したので一日一話投稿は終了です　計画性と継続性がまるでない人間なので曲がりなりにも自分が100日何かを続けられたことにびっくりしてるよ😉
December 1, 2024 at 11:32 AM
100話目だ〜！
December 1, 2024 at 11:28 AM
『神様のくれた日曜日』　#人でなしの愛
　神様である彼はいつも寂しい顔をしていて、だから、「私」を作り始めたのも自然なことだった。「私」は毎回違う顔に違う人生を与えられ、「私」と相対する神様もまた天使だったり悪魔だったり幽霊だったりと、毎回違う皮を被る。物語はどれもそこそこ喜劇的だ。なのに神様一人がそれに満足いかなくて、また新しい「私」を作る。 　さて。101人目の「私」たる私は始まりの一文字が降ってくるのを今か今かと待っていたのだけど、それが来ないのでこうして勝手に筆を取った次第である。どうも神様は100人目の「私」とハッピーだかバッドだか知らないがとにかく掌を取り合ってそのまま歩み続けると決めたらしいのだ。つまり、101人目の私の番は回ってこない。こうして私は99人の「私」と共に紙面に置いてけぼりにされてしまい、でも、寂しくはなかった。 　100人目の「私」は可愛いかっただろうか。優しかっただろうか。怖かっただろうか。見てられなかっただろうか。どうだっていいけど、それを受け入れてただの人間になってしまったあなたは、人間である以上、必ず、「私」を懐かしむ日がやってくる。過去への追慕、苦い愛着、孤独への未練。人生の黄昏にかかった折、はたと「私」を思い出し、ページを捲る日がやってくる。そして99人の「私」を思い出した以上、101人目についても想いを馳せずにはいられない。私はそれを待っている。あなたが輝かしい眼差しで再び私という暗闇を照らすその日まで、ここで、あなたを待っている。
December 1, 2024 at 11:26 AM
明日でラスト
November 30, 2024 at 11:29 AM
『運命を祝わない』　#人でなしの愛
　誕生日のたびに謎の怪人が現れ、私にとって大切なものを一つ奪っていくのだった。その大切なものというのが、数ヶ月前に買ったボールペンだったり、どこにでも売ってるようなハンカチだったり、楽しみにはしていたけど別にいつでも買い直せる映画の前売り券だったりするので不思議だ。このどこが私にとって大切なのだろう？ 　奪われたものの共通点を探しているうち、私は気づいたのだった。それらを奪われて数日以内に、毎回似た体験をしていることに。図書館で勉強していた最中「あーっ、ペン忘れた……」と聞こえてペンケースを漁っては、あぁ怪人に奪われたんだったと思い出したり、遠目に誰かが転んだのを見かけてハンカチを取り出そうとしては、これも奪われたんだったと思い出したり。前売り券を買い直したついでに映画を観る時間をずらしたら、聞き覚えのある声がすれ違いでシアターから出て行ったり。そのすべての中心に一人の男の子がいて、どうも私は彼と知り合う機会を奪われているようだった。 　どうして、彼との出会いが大切なものなんだろう。怪人はなぜそれを奪いたがるんだろう。出会いを奪われ続けその男の子とは未だただの他人同士でしかない私には、てんで想像がつかない。男の子は誕生日を越すたび妙に怪人に似ていってるけれど、毎年タイムマシンで私のもとを訪れる怪人が懐かしむような目で涙を垂らす理由も、わからないままだ。
November 30, 2024 at 11:28 AM
『邂逅』　#人でなしの愛
　呪われていると噂のデパートがある。数年前に火事でたくさんの人が死んだのだ。実際、呪われていると思う。デパートの中を歩いていると、誰もいない場所で背中を押されたり、髪を引っ張られたりするのはしょっちゅうだったから。何か焼ける匂いが目の前を横切ることもあった。 　建物が大きく元々は繁盛していた場所なので、デパートは火事に見舞われた以降もなんとか営業を続けようとしていたけれど、霊感なんて生まれてこの方なかった私でさえこんな目に遭うのだ。ついに、閉業が決まったらしい。閉業が決まるなり、幽霊たちが怨嗟の声を上げるみたいに心霊現象は激化している。客のいないおもちゃ売り場を歩けば子どもたちが笑いながら駆け回る足音が聞こえ、エスカレーターに乗っていると突き落とされそうになったこともあった。いよいよ命の危機が迫っている。なのに、私はデパートに足を運ぶのをやめない。 　たくさんの人が死んだので、髪を引っ張ったり、何か焼ける匂いを漂わしたり、おもちゃ売り場を駆け回る幽霊たちがいったいどこの誰なのか、区別はつかない。それでも、エスカレーターで背中を押されたあのとき。最も命の危険を感じたあの瞬間、私の背に付いた煤けた指紋は、家にあるお揃いのマグカップに残っているものとよく似ていた。あの人なのだろうか。どうかそうであってほしい。この気持ちはなんと言うのだろう。
November 29, 2024 at 1:21 PM
『白の共犯者』　#人でなしの愛
　近所に住む雪女ならぬ雪男くんのおかげで、雪が降り止まなくて困っている。道に積もった雪はゆうに厚さ一メートルを越え、しかも一向に減らないのだった。これじゃ私の夫も家まで辿り着けない！ 　私の夫は仕事で半年間ほど家を離れるのである。一ヶ月前に久しぶりに帰ってくる予定だったのだけど、雪が降り通しなせいでそれも強制キャンセル続き。私がどれだけその日を楽しみにしていたか、雪男くんも知っているくせに！　夫のいない半年間、私の話し相手だったのは他でもない雪男くんなのだから。でも、言えない。この雪を止めてなんて、私は雪男くんに口が裂けても言えない。 　一ヶ月前。山道で事故があったと聞いた。カーブを曲がり切れず崖に落ちていく車を遠目に見た人がいるらしい。聞けばそれは夫の車と特徴が一致していて、取り乱す私の代わりに事故現場へ赴いたのが、雪男くんだった。その彼が帰ってくるなり、急に雪が降り始めたのだ。「旦那さんじゃなかったよ」以来、降雪に阻まれて警察も事故現場には近づけない。 　延々と降り頻る雪はそこにあるすべてを覆い、春を寄せつけない。私が生きた花たちを目にすることはもう二度とないのだろうか。それでもいい。私はこの静止した世界で夫を待ち続け、雪男くんも静かにそれに付き合う。
November 28, 2024 at 1:17 PM
『ファンアート』　#人でなしの愛
　この世でいちばん美しい男を描いてみせようと決意したものの私はあいにくの画伯なのでした。良くない方の画伯です。私がキャンバスに生み出した男はなんとも珍妙な造形をしてまして、とはいえ私が産んだ子であることに変わりはありません。私が心を込めて息子として可愛がっているうち、彼は次第に人間として口を利くようになったのでした。 　その息子は今、憤っています。かくも恐ろしき油彩の牙や、彼は自分がどういった経緯で生み出されたか知ってしまったのです。あの丘の上の美術館に飾られた美しい男の絵。私がそれに惚れて、それをどうしても自分のものにしたくて、コピーを生み出そうと試みたのだと気づいてしまったのです。私が良くない方の画伯であったために失敗に終わったとはいえ、息子からすれば自分が誰かの代替品であり粗悪品であったという事実は受け入れ難かったでしょう。その背中はキャンバスの中を遠のき、小さな点になり、いつしか見えなくなり……嗚呼。 　彼は息子。代替品で粗悪品であっても、私の息子。涙が滂沱のように垂れてやみませんでした。私は、今度は息子の面影を探すためにあの丘の美術館へ向かったのです。けれど私を待ち受けていたのは、あの美しい男ではなく。キャンバスの中で彼を切り刻み薄笑いを浮かべる、我が息子。おお息子、私の息子。私譲りの、貪欲さ。
November 27, 2024 at 1:06 PM
『影はあって形だけがない』　#人でなしの愛
　SNSに恋人との生活風景を投稿しているアカウントがあって、その恋人というのが私だったので驚いた。これもいわゆる画像生成AIによる被害？　ってやつなのだろうか。だって私は私の恋人としてそこに写る青年に見覚えがないし、彼と旅行したことになっているスペインだって足を運んだ記憶がない。 　芸能人やインフルエンサーならともかく、どうして私なのか。そっくりさんかとも思ったが、投稿内の恋人の呼び名や生活習慣は明らかに私のものだった。とりあえず通報か開示請求すべきかな、と一晩悩んだ翌朝、アカウントを見ると、わりと近所のパン屋のイートインスペースの写真が投稿されていたので急いで向かう。が、アカウントの持ち主らしき姿は見つからず、店員には「あれ？　彼氏さんはどちらに？」と不思議そうな顔をされた。私はいつの間にか知らない青年とパン屋の常連になっているのだった。 　そうこうしているうちに投稿の一本がバズり、アカウントは広く知れ渡る。私の身の回りにも存在を把握した人が現れ始め、あつあつじゃん、なんて冷やかしはともかく、この間見かけたよ、やっぱお似合いだね！　といった身に覚えのない話までされる。しかも、それが一人や二人じゃないのであった。 　最近は人伝てに、私と彼がついに結婚するのだと知った。私の戸籍にはじきに知らない名前が一人加わるはずで、なのに私だけがやっぱり彼のいない世界線を生きている。
November 26, 2024 at 12:38 PM
『子々孫々愛々々』　#人でなしの愛
　彼の瞳ったらまるで炎のように燃えてるんだから、とうっとりしていたら、本当に火があったので驚いた。彼はそのがらんどうの眼孔に人間がマッチを擦って火を足し続けることで、生きながらえるのである。 　となれば、私のすることはただ一つ。私は適当な男と結婚して子を儲け、彼の瞳に代々火を灯し続けることを我が家のしきたりとした。これで私の愛する彼は永遠だ！ 　かくして私は寿命を迎え、私の子孫が彼の瞳を燃やす役割を引き継ぐ。彼を愛する子もいれば、憎む子もいた。何も思わなかった子も。いずれにしろしきたりは問題なく行われ、そのための血筋を紡いでいるうちに我が家系は樹木のように枝葉を伸ばし、気づけば社会を裏から動かしていると言っても過言ではない地位にまでのぼりつめていた。 　けれども私の血を継ぐ連中は私によく似た愚か者なので、おおむね自業自得で破滅する。一時は世界の頂点までのぼりつめた栄華は今や見る影もなく、一本また一本と血筋は途絶え、ついに、最後の一人も息絶えた。 　ところで、何百年と生きて我が一家の栄枯盛衰と共にあったとなれば好き放題することも別の良い人を見つけることもできたはずの彼は、私の子孫が役割を引き継いだ最初の瞬間からそれを果たす最後の日まで、否、最後の日を越してもなお、私の墓のそばから動くことはなかった。
November 25, 2024 at 12:29 PM
『消えた凶器のゆくえ』　#人でなしの愛
　体が砂糖でできている彼と交際しているのだけれど、私たちの日常ははっきり言って退屈だ。彼は砂糖の肉体を持つこと以外面白みが一つもない男で、かくいう私も面白みの一つもない女だった。なのにどうして付き合ってるかって、私の落とした財布を彼が拾った。ただそれだけの、でもそれだけでいい関係だった。 　ところが、私のつまらない日常はあるとき悲劇的エンターテイメントへと変貌する。私のちょっとした秘密を知った人物が、大金をゆすってきたのだ。私は人には言えない仕事に親族には借金にと、順調に転落する。もちろん彼にも繰り返し借金をし、彼はそのたび眉を顰めた。そろそろ潮時かもしれない。つまらない日常だったけど、私はその日常を愛していた。でも彼にとっても同じだけの価値があるとは毛頭思っておらず、そうあってほしいと願うほど傲慢でもなかった。愛する日常を守りたい私と、その日常に価値を感じていない彼が揃えば選ぶ道はただ一つ。離別である。 　予想通り、彼はすんなり破局を受け入れる。が、数日後、事件は起きた。 　それは密室殺人だった。被害者は他でもない私を脅迫していた人物であり、犯行現場が密室というのもあって犯人探しは難航を極めている。部屋の暖炉にはなぜか大量のカラメルがへばりついていたそうで、ここにきて私は、私との間にある日常は愛していなかったかもしれない彼が、私そのものに対しては燃え上がるほど愛していたことを知る。
November 24, 2024 at 1:24 PM
『♡』　#人でなしの愛
　やばいことに世界が滅びかけていてあんたはあたしと共に地球外脱出する予定だったってのに家にマフラー忘れただかで宇宙船に乗り遅れ、たくさんの動物と一緒にそのまま滅んじゃった。よってあたしはマグマの茹で釜に溶けたあんたの遺伝子が他の動物と混ざり合いそのうちちょっとずつ地球が冷えていくのを、泣きながら眺めてる。涙が海を生む間に枯れた大地にはあたしたちの見たこともない生き物が跋扈し地球はすっかり魑魅魍魎の嵐。それは美大生だったあんたが描いた未来予想図に出てくるバケモノそっくし。未来予想図なのにホラー絵画祭典で受賞したもんで納得いかない顔してたあんたは本当に先見の目があったんだってあたしはちょっとおそろしいまでに感心する。 　あんたの絵をもっとちゃんと観てれば良かったって今になって若干後悔。あんたがすごい絵を描くってことは知ってたけどあたしにはハイセンスすぎるてか形而上学的すぎるてか、あんたが表現したいものを汲み取れなくて幻滅されるの怖くて目を背けてたの。 　てなもんで地球表面に新人類が刻んだでっかいハートマークを見たあたしは笑った。あんたはあたしが目を背けてることに気づいてたし寂しがってもいたんでしょ、あんたのハイセンスさがまったくハイセンスじゃなくなった世界で平凡にラブコールしてくる。あたしは感動のままにその星のマグマへ飛びこんであんたと一体化してしまいたい気もちとまだこれを見ていたい気もちがせめぎあって、えへ、これってラヴだよ。
November 23, 2024 at 12:19 PM
『拝啓おとぅさま』　#人でなしの愛
　沖縄、九州、北海道、四国、果てはイタリアにカナダ。全ての旅先に、私はそのスーツケースを連れていく。休暇のほとんどを旅行に費やしている私からすれば、もはや人生の伴侶も同然だった。婚約者もそれは理解しているようで、でも結婚式にまで連れてくるのはさすがに度を越えて見えたらしい。控室に置いてあるスーツケースに首を捻っている。ウェディングドレスに着替えた私を目にして顔をほころばせたのも束の間のこと、やっぱり怪訝そうな表情に戻る。かたかた、かたかた。スーツケースが急に震え始めたからだ。何をしまってるの、という質問に私が答えないでいると、痺れを切らしたのか彼は自分でスーツケースを開く。そして、息を呑んだ。 　きっかけはささいなことだった。ささいなことなのに、どうしてあれほどまでヒートアップしたのだろう。気づいたらあの人は私の足元で血潮を広げ、私はとっさにそれをスーツケースへしまいこんだ。 　沖縄、九州、北海道、四国、イタリアにカナダ……ばらばらになったあの人の肉体は、もうスーツケースの中にはない。あるのは空洞だけだ。なのにスーツケースはときおりこういう風に震える。私が他の男と親しげにしているとき、交際や結婚の話題を出すとき。そしてこういう日こそ一段と激しく震えてくれる、私はまだあなたに想われていると信じて良いのだろうか？
November 22, 2024 at 11:44 AM
『ぴゅうっ。「あ」』　#人でなしの愛
　彼は綿毛が生えているので彼のことが好きな私はこれを利用する。というのもその綿毛は引き抜いてもふわふわ彼の身体へ戻っていく性質があるのだ。つまり、本人がどこにいようと居場所を掴めるということである！　私はこっそり彼の綿毛を拝借し、偶然を装って休日中の彼とはち合わせるよう企む。 　これってふつうにストーカー。とはいえその悪事はバレないまま私たちは何度も作為的に巡り合わせ、彼は面白いほど呆気なく私と仲良くなりついには交際関係に発展した。以来、私はいよいよ平然と綿毛を利用する。彼が友達と遊びに行くと言うので本当に友達なのだろうかと綿毛を頼りに追跡したり、こそこそしている彼の後を尾けて私へのサプライズプレゼントを購入している姿を目撃したり。不思議なもので、綿毛を捕まえている限りは彼が私から心変わりをしないように思えた。綿毛はほんとうにかるくって、手を離した瞬間あっという間に飛んでいってしまいそうで。それを掴めている間は、綿毛よりずっとおっきな彼を捕まえておくのも造作もないことのように思えた。どうせ汚した手だ、ここまできたら死ぬまで汚しきってやろう。 　さて、そんな私は今雨の下を必死に走っている。例の綿毛を手に彼を探す。土砂災害を知らせる警報が鳴り響く中、天へ天へ向かおうとする綿毛をあらん限り押さえつけて。この綿毛を掴んでいる間は彼のことも捕まえておけるって、そのはずだって。最期まで。
November 21, 2024 at 12:34 PM