去るべきを待つ月ひとつあり
机のうえにゲラをひろげ、いつもどおり窓を開けました。
去るべきを待つ月ひとつあり
机のうえにゲラをひろげ、いつもどおり窓を開けました。
かれ葉をまえに南無阿弥陀仏
気づけば、今年もあとすこし。なにもかも通り過ぎてゆく暮れである。
かれ葉をまえに南無阿弥陀仏
気づけば、今年もあとすこし。なにもかも通り過ぎてゆく暮れである。
木枯らしとおった落ち葉の川こえる
木枯らしとおった落ち葉の川こえる
老ひませる母も日を浴みまさむ
和田久太郎 1926(大正15)年12月 秋田刑務所にて
老ひませる母も日を浴みまさむ
和田久太郎 1926(大正15)年12月 秋田刑務所にて
初冬のあさをゆるくすいこむ
初冬のあさをゆるくすいこむ
岡野大嗣氏の一首 『玄関の覗き穴から差してくる光のように生まれたはずだ』より
おぼえがある。繰り返し読んでしまう。
岡野大嗣氏の一首 『玄関の覗き穴から差してくる光のように生まれたはずだ』より
おぼえがある。繰り返し読んでしまう。
和田久太郎 大正15年11月 秋田刑務所にて
和田久太郎 大正15年11月 秋田刑務所にて
和田久太郎の雑記帳より 1927(昭和2)年10月
和田久太郎の雑記帳より 1927(昭和2)年10月
永遠(とこし)へのこれが別れと冬の夜の 獄庭の闇に眼燃え居り
和田久太郎。大正14年1月23日、危篤状態で拘留停止となった友・村木源次郎を見送る。ふたりは、大杉栄虐殺への復讐を誓い、震災時の戒厳司令官襲撃を決行するが失敗、公判中だった。無期刑となった和田は、のち秋田刑務所で自死する。
永遠(とこし)へのこれが別れと冬の夜の 獄庭の闇に眼燃え居り
和田久太郎。大正14年1月23日、危篤状態で拘留停止となった友・村木源次郎を見送る。ふたりは、大杉栄虐殺への復讐を誓い、震災時の戒厳司令官襲撃を決行するが失敗、公判中だった。無期刑となった和田は、のち秋田刑務所で自死する。