奇妙な世界
@kimyonasekai.bsky.social
1.2K followers 880 following 5.3K posts
短篇小説・翻訳小説・怪奇幻想小説大好きアカウントです。ファンタスティックなものが好み。読書ブログ「奇妙な世界の片隅で」をやってます。怪奇幻想小説専門の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。ブックガイド系同人誌も作ってます。#日本怪奇幻想読者クラブを主宰しています。
Posts Media Videos Starter Packs
kimyonasekai.bsky.social
フアン親子の「敵」となる<教団>は恐ろしい組織ではあるのですが、それ以上に恐ろしいのが、<闇>の世界。あまりにも不条理で、人間世界とは隔絶した世界なのです。作中に登場する幾人かの人物たちも<闇>に囚われてしまい、二度と帰ってこれない…というあたり、本当に不気味です。
長い長篇ではありますが、読みやすさは抜群です。文学性とエンターテインメント性が上手く融合しており、ホラー小説史に残る作品といえるのではないでしょうか。
kimyonasekai.bsky.social
後半では、<教団>設立の由来や組織の目的、フアンやロサリオの過去が語られると同時に、いまだ人間には解き明かされていない<闇>の秘密も徐々に明かされていくなど、神秘的なトーンが強くなっていきます。
全体にフアン、ロサリオ、ガスパルといった家族の歴史が描かれていく形にはなるのですが、併行してアルゼンチンの歴史、それも負の歴史が背景として登場してくるのも興味深いです。国の政治的・経済的混乱の中、<教団>がいかに暗躍していたのか…といったところもリアリティを高めています。
kimyonasekai.bsky.social
<教団>は人の命を何とも思っていない酷薄な組織ではあるのですが、フアンの妻であり、ガスパルの母である故ロサリオが<教団>の上層部とつながりのある家系であった関係から、そこまで強圧的に迫害される…という形にはなりません。
組織との追いつ追われつ、といった形ではなく、ひっそりと身を潜めようとするフアン親子が描かれていきます。息子の能力発現を抑えて一般人として過ごさせてやりたいと考えるフアンと、父の行動に不信を抱き、ある種の恐怖も感じているガスパルとの不穏な親子関係が描かれる部分も読みどころですね。
kimyonasekai.bsky.social
霊能力を持つ父子の人生と運命が描かれていくという心霊的なホラー小説です。
この作品で登場する霊媒は、単純に霊を下ろすといっただけのものではなく、様々な異能を持った存在。日常的に死者の姿を見たり、テレパシーのようなもので別の人間と話せたり、果ては悪魔を召喚したりすることもできます。
その中で最大の力が<闇>を開く力。<闇>は現実とは異なる異界で、入り込んだ普通の人間はまともに生きることのできない、地獄というか冥界というか、そのような世界なのです。
そうした霊能力を持つフアンが、自らの息子ガスパルを<教団>に利用されまいと息子を守ろうと奔走する…というのが前半の展開です。
kimyonasekai.bsky.social
マリアーナ・エンリケス『秘儀』(宮崎真紀訳 新潮文庫)を読了。アルゼンチン作家エンリケスによる、霊能力を持つ父子の運命を語ったホラー大河小説です。

霊能力を持つフアンは、霊媒として見込まれ、少年の頃から<教団>に利用されていました。<教団>は、フアンの<闇>を開く力を使って、ある目的を実現させようとしていたのです。
フアンの息子ガスパルもまた、父同様の能力を発現させつつあるのを見たフアンは、病を抱えた自分の死期が近いことを鑑み、息子を<教団>の手から逃そうと考えていました…。
kimyonasekai.bsky.social
しかし、グレイスから、事情がありホテルで会うことに変更したいと聞いた夫人は、かさばるランチボックスを処分しようと、行きかう人々にそれを上げようとしますが…。
無駄になってしまいそうな食事を誰に上げようとするものの、施しは受けないとか、馬鹿にしてるのかとか言われてしまい、思うように処分できなくなってしまった女性を描く作品です。ユーモラスなドタバタ調ではあるものの、そこに社会階級とか人間の善意とかが見え隠れして、意外に社会的な要素が濃いのも興味深いところですね。
kimyonasekai.bsky.social
キャロリン・ウェルズ「銀行に来たお嬢さん」(朝賀雅子訳)
資産家の娘であるらしい女性が、銀行を訪れお金を下ろそうとする、というシンプルなお話なのですが、その女性が世間知らず、かつ一方的で銀行員との間の会話がかみあわない…というユーモア作品です。オチも冴えていますね。

キャロリン・ウェルズ「メリウェザー夫人の昼食会」(朝賀雅子訳)
甥っ子の娘グレイスと遊覧船に乗る約束をしていたメリウェザー夫人は、船で出される食事が芳しくないと考え、おいしいものを詰めたランチボックスを持っていくことにします。
kimyonasekai.bsky.social
バーバラ・ベイントン「夢見る人」(井上舞訳)
老いた母親を訪ねようと、実家に向かっていた女性は、嵐にぶつかってしまいます。家に行くには渡らなければならない川が増水していることにひるむものの、そこを渡ろうと決心します…。
母に会いたいという思いから、命の危険を顧みずに家に向かう女性を描いています。家にたどり着くまでの自然の猛威がものすごく、死を覚悟までするほどなのですが、そこで安易なハッピーエンドにならないところも面白いですね。家についてからの描写がどうも不条理かつ幻想的で悪夢のようであるところはホラー味も強いです。
kimyonasekai.bsky.social
タイムスリップ(転生?)した貴族の末裔の少年が、その時代の事件を体験する…というファンタジー作品です。現実世界でも母親思いである少年が、過去の時代でも母親を守ろうとする、というところで気持ちの良いお話となっていますね。
kimyonasekai.bsky.social
イーディス・ネズビット「左利きの剣」(井上舞訳)
名門貴族ドルランクール家の息子でありながら、経済的に苦しい立場にある少年ヒューは母親と共に古いお城に住んでいました。石壁のアーチがレンガでふさがれているところに興味を持ったヒューがそこを崩したところ、その奥から人の声が聞こえます。問いかけたところ、彼もヒューだというのです。奥に入り込んだところ、ヒューはチャールズ王の御代に生きていた少年サー・ヒュー・ド・ドルランクールとなっていました…。
kimyonasekai.bsky.social
友人の妻と不倫の恋をして、子供までなしていた男の回想と後悔を描く作品です。主人公はかなり身勝手なことをしているのですが、自分の本当の息子が命を失おうとしている場面に遭遇し、そこに後悔が生まれる…というお話になっています。
kimyonasekai.bsky.social
助けるのは小動物ばかりなのですが、彼らが単独で助けてくれるのではなく、それぞれ大きな動物の応援を頼んで助けてくれる、というところはユニークですね。

マリー・べロック=ローンズ「彼(あ)の子」(まえだようこ訳)
ヒューゴ・エルウィンは母親の勧めもあり、婚約した女性ウィニフレドの一家との顔合わせに向かっていました。穏やかな雰囲気の母との会話の途中、ヒューゴの友人ブレアの夫人について嫌味を言われ、ヒューゴは母と喧嘩してしまいます…。
kimyonasekai.bsky.social
話を求められた婦人が他の皆も話をしてほしいという流れになり、これはそれぞれの参加者が自分の話をしていくという、おそらく枠物語を想定した作品だったのではないかな、と思います。

ルイーサ・メイ・オルコット「ロージーの旅」(小谷祐子訳)
父が金を掘りに出かけている間、母と共に暮らして居た少女ロージー。母が亡くなり、一人で父を探しにいくことになります。旅の途次、心優しいロージーは様々な動物たちを助けることになりますが…。
一人ぼっちになった少女が父を探しに旅に出るというお話です。途中で様々な動物たちを助けることによって、旅の後半にその恩返しを受けることになります。
kimyonasekai.bsky.social
失敗はあるものの、皆の協力で希望を実現するという、健気な姉妹たちのお話です。はしゃぎまわる子供たちの描写が冴えていますね。

メアリー・シェリー「十八世紀物語 断章」(小谷祐子訳)
バッキンガムシャー州の屋敷に住む婦人は、友人たちを集めてパーティを催していました。仲間のひとりの婦人の数奇な人生が話題になり、その話をしてほしいということになりますが…。
物語の冒頭だけが残されたという、本当に断章といった感じの文章です。最初の話者も、生まれの部分を語り始めたところで文章が切られています。
kimyonasekai.bsky.social
ルーシー・モード・モンゴメリー「スザンナおばさんの感謝祭ディナー」(岡本明子訳)
ローラ、マーガレット、ケイト、そして「わたし」の四人姉妹は、皆それぞれの才能を持っており、それを伸ばそうとしていました。経済的に困窮しながらやりくりしている姉妹の唯一の希望は資産家のスザンナおばさんでした。マーガレットの大学進学も考えているという言葉をもとに、それを実現しようと皆で協力しようと考えていました。
ある日スザンナおばさんから、来客に合わせて料理を手伝ってほしいと言われ、ケイトと「わたし」は出かけることになりますが…。
kimyonasekai.bsky.social
ルーシー・モード・モンゴメリー「テッドの午後」(岡本明子訳)
母を亡くし、ジャクソン家に居候をしている少年テッドは、我流でヴァイオリンを弾くのを喜びとしていました。普段は家事労働に追われていましたが、ようやく休みをもらえて、ピクニックに行くことになりますが、タイミング悪く、知り合いのミセス・ロスが出かけるために、小さなジミーと一緒にいてやってほしいと頼まれます…。
貧しく素直な少年が、自らの楽しみを我慢して行った善行が幸福につながる…という物語です。幸運を手に入れながらも、飽くまで人間的な好感で人生を決めたと話す少年の素直さが良いですね。
kimyonasekai.bsky.social
ジーン・ウェブスター「パティ、大学へ行く」(やまもとみき訳)
『おちゃめなパティ』の続編から、パティの大学生活のエピソードが描かれた部分の抄訳です。ボーイフレンドが訪ねてきたところ、執事の仕事に応募してきた人間だと勘違いされて冷たくあしらわれてしまう…というユーモラスなお話が語られています。

アダ・ネグリ「運命」(岡本明子訳)
路上の貧しい少年の人生を詩的に語った詩作品です。未来の暗さを暗示しながらも、著者の同情的な視線が見えるところも魅力ですね。
kimyonasekai.bsky.social
『ほんやく日和 19-20世紀女性作家作品集 vol.5』(同人倶楽部 ほんやく日和)を読了。19世紀から20世紀の女性作家作品をジャンルもいろいろに翻訳したアンソロジーシリーズの第五弾です。

エリザベス・ゴードン文、M・T・ロス絵「花の子ども図鑑」(やまもとみき訳)
花を子供の姿に擬人化して、ユーモラスな詩を添えた作品です。花の衣装のデザインも綺麗なのですが、それぞれの花にきちんと性格付けをしているところなど、芸が細かいですね。
kimyonasekai.bsky.social
シキはさかさま重力の中を生きる存在で、ミズキいわく「第18代さかさま散歩隊の隊長」だというのです。
特撮好きの年上の男性と知り合い友人になったというミズキの話を聞いて、シキは嫉妬混じりの心配をしますが…。
空想上の友人をめぐるファンタジーなのですが、その存在がなぜか逆さまに空にぶら下がっているというユニークな存在。ミズキを愛するものの、空想上の存在であるがゆえに、その思いも宙に浮いてしまうのです。あだ名の「第18代」が適当な名付けではなく、ある秘密を抱えていた…というところで、意想外にシリアスなお話となっていて驚きます。
kimyonasekai.bsky.social
熊倉献『ブランクスペース補遺』(ヒーローズコミックス ふらっと)を読了。
見えない品物を作ることのできる少女スイと、彼女と友人になった少女ショーコの友情を描くSFファンタジーコミック『ブランクスペース』のスピンオフというか、外伝的な短篇集です。
本編の主人公ショーコとスイをめぐるエピソードも良いのですが、一番印象的だったのが「まさかさま」。
特撮ヒーロー好きの少女ミズキ。男子から告白されることが多いものの、恋愛感情が分からず全てを断っていました。ミズキには空想上の友人であるシキがいました。
Reposted by 奇妙な世界
middymiddle.bsky.social
エドワード・ケアリーの長篇小説『Edith Holler』(大傑作のホラー小説?です)は、来年出版される予定です。ずいぶん長くお待たせしてしまいましたが、訳稿はすでにお渡ししてあります。
これは原書のカバーと、エドワード・ケアリーが描いたイーディス・ハラーの肖像画(グワッシュ)。それをエドワードがプレゼントしてくれたので、額装をして書斎に飾っています。
ケアリーのファンのみなさま、もう少しお待ちください。
Reposted by 奇妙な世界
めちゃくちゃ面白そうな本買った!
『こわい話』(松田哲夫編/あすなろ書房)

『箪笥』(半村良)まで読んだんですけど、冗談抜きで叫びそうになったし、今も恐ろしさで泣きそう
kimyonasekai.bsky.social
「あなたの幸せな場所」テレンス・テイラー(福間 恵訳)
囚人の再教育プログラムを行う場所で働いていたマーティンは、そこで奴隷労働が行われているのではないかと疑っていました。現場の担当者と知り合いになったマーティンはそこで非人道的な行為が行われていることを知り、それを告発しますが…。
囚人に奴隷労働をさせていることに憤った男性がそれを告発するものの、そこには秘められた事実があった…という物語です。主人公の行動自体がすでに悪夢の中であり、最終的にタイトルの意味が分かるところも含めて非常に怖いお話となっていますね。
kimyonasekai.bsky.social
「死者の嘆き」リオン・アミルカー・スコット(押野素子訳)
双子の弟ジャマールの死で悲しみに沈むマハードのもとに、疎遠になっていた姉ソライが現れます。ソライはある草稿を渡してきますが、そこには不思議な物語が綴られていました…。
亡くなった弟をめぐって展開されるホラー作品です。非常に不条理で、正直何が起こっているのかは判然としないのですが、そのダークな雰囲気に惹かれます。作中作の「三十人のバラード」は、よみがえった死者をめぐる物語で、こちらも魅力があります。
kimyonasekai.bsky.social
「世界一最強の女魔術師(オビア・ウーマン)」ナロ・ホプキンソン(今井亮一訳)
悪魔に家族を殺されたイェンデリルは、悪魔に復讐を誓います。魔術師から教わった方法で殺そうとするものの、逆に体に寄生されてしまいます。なんとか体から引き離そうとしますが…。
悪魔に寄生されてしまった女性の物語です。この悪魔が宗教的な存在というよりは、知識を求める「先住者」的な存在で、対話も可能、というところが面白いですね。ただ、その人間とは分かり合えることはできず、どちらが生き残るのか?というサバイバルが描かれていきます。