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主に読んだ本の感想を書きます。本は古めのものを中心に年間300冊くらい。その他クラシック音楽、ノベルゲームのことを書くことも。プロテスタントのクリスチャン。山口県下関市出身、北海道札幌市在住。気軽に絡んでください。

ノベルゲームレビューブログ http://nagisanet.blog.fc2.com/
Youtube https://www.youtube.com/@nagisapiano
私は、村上春樹という作家は全然好きではないのですが、一つだけ彼が、同じ時代の他の流行作家を圧倒していると感じる点があります。

それは「時代を越えた普遍性が感じられる」ところです。流行語や時事ネタに依存せず、時代性が希薄なため、令和の話としても昭和の話としても読めるのです。

これが、綾辻行人や森博嗣になると、わずか30年前の物語が、100年以上前に書かれたアガサ・クリスティより古く感じます。クリスティの面白さが、いかに「時代に影響されない要素」で構成されているかが、よく分かります。

村上春樹は好きではない作家ですが、そういう意味で確実に後世に残るだろうなと思っています。
December 17, 2025 at 2:48 PM
三島由紀夫「美しい星」読了。今年252冊目。ある時から突然、「自分たちは地球人ではなく、別の惑星からやってきた」という確信を持った家族が巻き起こす騒動を描いた。三島がSFの書法に則って書いた、「SF風思想小説」とでも言おうか。

とにかく登場人物の言動が、大真面目であり荒唐無稽、それでいて高い理想に燃えていたりもする。こんな奇妙な小説にはなかなか出会えない。

そしてラスト。最後の最後で「もしかしてこれは本当にSFだったのでは」という読み方ができるのが、非常に面白い。「SF風思想小説」だと思っていたら、最後の最後で「思想小説風のSF」という逆転現象が起こってしまう。この構成には舌を巻いた。
December 17, 2025 at 1:28 PM
吉川英治「三国志(四)臣道の巻」読了。今年251冊目。呂布が滅亡し袁術も滅び、劉備も曹操に敗れ野に落ち延びる。その後、曹操と袁紹の「官渡の戦い」が始まるまで。俄然「三国志」らしくなってきた。

官渡の戦いは、戦いそのものは曹操に最初から有利に展開している。袁紹の度量の小ささが、物語上の都合もあろうが、曹操と常に対比して書かれているからだ。また、曹操が漢王朝を軽んじ、献帝をいいように利用する様子がエスカレート。

実は曹操の魏は、司馬懿の子孫である司馬炎により、曹操が漢王朝を滅ぼしたのと全く同じ手段で滅ぼされている。この巻の曹操の傍若無人さを見ていると、これぞ「因果応報」と思わずにはいられない。
December 17, 2025 at 1:26 PM
R.A. ハインライン「スターファイター」読了。今年250冊目。月に憧れる高校生キップは、月旅行の賞品目当てに石鹸のキャッチコピーコンテストにせっせと応募する。一等の月旅行こそ当てられなかったが、本物の宇宙服が賞品として届いた。

ハインラインと言えば「月は無慈悲な夜の女王」「夏への扉」で有名だが、この作品は「夏への扉」の次くらいに気に入った。とにかく、ヒロインであるパトリシアが可愛すぎる。

またキップとパトリシアの大冒険は波瀾万丈。わけても、クライマックスにおける、地球の運命を左右する場面でのキップの台詞は、地球人としての矜持を感じ胸が熱くなるし、ラストシーンもユーモアがあって切れ味抜群。
December 17, 2025 at 1:17 PM
私が、グレン・グールドを苦手な理由。

バッハの音楽は、対位法的な面白さももちろん無類で、グールドはそれを浮き彫りにすることに全精力を傾け尽くしているように思える。

が、バッハは構成だけの作曲家ではない。ロ短調ミサ曲、マタイ受難曲、各種カンタータは言うに及ばず、バッハの音楽には、たとえ歌詞が一切ない器楽曲であっても、信仰心、祈りがあると思うのです。

そして、グールドの演奏には、信仰心や祈りが感じられません。バッハの音楽が建造物みたいになってしまい、「音の怪物」のように感じられます。

それでも、昔に比べればグールドを「聴ける」ようにはなりましたが、積極的に聴きたいとは思いません。
December 16, 2025 at 2:41 PM
今日はベートーヴェンの誕生日。大好きな、チェロソナタ第3番イ長調op.69を聴きます。

この曲は、ベートーヴェンの全ての曲の中でも、一二を争うほど好きな曲です。特に第2楽章が絶品。初めて聴いたのはフルニエとグルダだったか、ロストロポーヴィチとリヒテルだったか忘れましたが、夜に一人心を落ち着けたい時、最高の曲です。

今日は、トルトゥルエとハイドシェックという、ちょっと通好みの組み合わせで聴きます。この二人は、シューベルトのアルペジオーネソナタが名演ですが、ベートーヴェンもかなり良いですよ。個人的にはロストロポーヴィチ&リヒテルより好みです。
youtu.be/GFfGHUiuous?...
Beethoven - Cello Sonata No. 3 in A major, Op. 69 (Paul Tortelier & Eric Heidsieck)
YouTube video by MrPalika123
youtu.be
December 16, 2025 at 12:50 PM
過去にも、Twitter(X)のデフォルトタイムライン表示が、「フォロー中」ではなく「おすすめ」になったことがあったが、またそうなりました。

しかも、Twitterの見た目や機能をカスタマイズできる「Control Panel for Twitter」や、Twitterから「おすすめ」タブを消し去る「Bye For You」を入れても、それを突破して「おすすめ」タブが初期表示として出てきます。

イーロンは、こんな鬱陶しい仕様変更をしてまで、Twitter民にもっと喧嘩させたいのでしょうか。平和なBlueskyにこもりたくなってきました。
December 16, 2025 at 11:54 AM
私の短編ノベル集「こころのしおり」の登場人物を、AIで描いてもらった絵のうち、最も出来栄えが優れているのがこれ。カフェ「ジュノム」シリーズ三部作の、陽子と琴美です。あまりにもイメージ通りすぎて、生成された瞬間にのけぞりました。

設定では、陽子と琴美は身長の高さが同じなのですが、そこ以外は作者の私の頭の中がそのまま絵になったような、「奇跡の1枚」です。

この絵を使って、短編集が作れると楽しそうだなと思っています。作るとしても、もうティラノではないので、誰も読まないと思いますが。
December 15, 2025 at 1:33 PM
シナリオは全部書き上がった長編マルチシナリオノベルゲーム「ARISA - Echoes of Memory -」ですが、色々なハードルが高すぎるため、ひとまずまた短編集を作ろうと思い立ちました。

「こころのしおり」に登場した、文芸部の先輩と手品が得意な後輩コンビ(第1章「マジカルハート」)か、カフェ「ジュノム」の女主人陽子とその娘琴美のコンビ(第17章「幸せレシピ」から第19章「幸せを運ぶカフェ」まで)のどちらかを使い、日常系ミステリーを書いてみたいなと思っています。

ちなみに、AIに作ってもらった「マジカルハート」の文芸部コンビ。トランプの柄が怪しいですが、雰囲気は結構出ているのでは。
December 14, 2025 at 11:00 AM
今日も札幌は真冬日(最高気温が氷点下)。そして午後からずっと雪。積雪の深さは今33cmです。12日の大雪で40cmまで行きましたが、今夜いっぱい振り続ければ40cmを超えるか。

この雪が解けることは、もう来年春までないのですが、今年は12月中旬だというのに、容赦がないですね……。
December 14, 2025 at 9:29 AM
川端康成「たんぽぽ」読了。今年249冊目。川端康成の最後の長編小説(未完)。人の体が突然見えなくなる「人体欠視症」という(架空の)奇病にかかった稲子は、長閑な田舎の精神病院に入院。稲子を入院させた帰り、稲子の母と、稲子の恋人久野が語り合う場面から始まる。

人を見ることができなくなった稲子が、物語読者から見えないという二重構造は、狙ったのかどうか分からないが、非常に興味深い作り。

その「見えない稲子」、そして「人体欠視症」という謎の病気を、稲子の母と久野の会話で、徐々に炙り出すような構成。炙り出し方、切り口が様々で興味深い。物語は何も大袈裟な動きはないが、二人の会話だけで全く退屈せず読めた。
December 13, 2025 at 2:32 PM
三島由紀夫「サド侯爵夫人・わが友ヒットラー」読了。今年248冊目。三島の戯曲が二篇。まず「サド侯爵夫人」。アルフォンス(サド侯爵の本名)が娼婦への傷害行為で捕まった。題名通り、アルフォンスの妻であるルネが主人公。

登場する女性6人は、それぞれが性的放縦や倫理や無邪気さなど、何かを象徴し、登場人物としての役割がはっきりしている。なのに、「物語の駒」に陥っていないのが興味深い。

太宰治だと、どうにも女性登場人物が作り物めいて見えることがあるが、三島の場合にはあまりそれが感じられないなと、今作を読んで改めて感じた。ルネのアンビバレンスな思いと苦悩が興味深く、突き放したようなラストも忘れがたい。
December 11, 2025 at 1:34 PM
江戸川乱歩「大暗室」読了。今年247冊目。私が読んだのは光文社文庫の乱歩全集の第10巻で、「怪人二十面相」「大暗室」の二篇を収録。

「怪人二十面相」は、ちょっと本が好きな人なら、誰でも小学生の頃に少年探偵団シリーズで読んだのでは。私も小学生の頃以来の再読。乱歩が少年向けに書いただけあり、文章は極めて平易(言い回しは古いが、そこが良いのだ)。すぐ読めた。

怪人二十面相の変装が万能すぎて、だんだん「今度はこいつが二十面相なんだろうな」と先読みが出来てしまうが、少年少女向けなので、そのくらいでちょうど良い。少年探偵団がちゃんと活躍し、大団円を迎えるラストも気持ち良い。令和の子供達にもお薦めだ。
December 11, 2025 at 7:34 AM
メルヴィル「白鯨(下)」読了。今年246冊目。下巻は、白鯨モービィ・ディック討伐に命を賭けるエイハブ船長の狂気が、より前面に出てくる。

上巻よりも全体に描写が冗長になり、構成にはちょっと難がある。だがクライマックスのモービィ・ディックとの対決シーンは迫力たっぷりで見応えがある。「ここが一番書きたかったんだ。構成とか、バランスとか、そんなのは知ったことか!」というメルヴィルの声が聞こえるようだ(笑)。

結末はかなり破滅的。エイハブという男の生き方を締めくくるには、相応しいオチだとも言える。なお、この物語に登場する一等航海士スターバックが、カフェチェーン「スターバックス」の名前の由来らしい。
December 11, 2025 at 7:30 AM
吉川英治「三国志(三)草莽の巻」読了。今年245冊目。この巻は、少々インターミッション的で、そこまで大きな事件は起こらない。呂布がだんだん苦境に立たされ、落ち延びていく様子が主眼。

この巻は、呂布と張飛という「三国志二大脳筋馬鹿」の激突が見ものだ(笑)。傍若無人、傲岸不遜な呂布に切れる張飛、なだめる関羽、落ち着き払った劉備という図式は、もはや様式美。

三国志を読んでいると、黄巾の乱が収まったら董卓、董卓が討たれたら李傕&郭汜、その次は袁術……という具合に、悪が倒れても倒れてもすぐ別の悪人が出てくる。これは現代も似たようなものなのかも知れないな、などと感じた。げに恐ろしきは人の欲望なり。
December 11, 2025 at 7:28 AM
窪美澄「ふがいない僕は空を見た」読了。今年244冊目。開始早々、フランス書院のエロ小説かと思えるような描写が始まって、目が点になった。

アニメキャラのコスプレが好きな人妻と、密かに逢瀬を続ける高校生斉藤卓巳。そんな卓巳を取り巻く数名の人物の物語を重層的に描いた群像劇。

卓巳の友人である良太の章が興味深かった。どうしようもないオチがつくのだが、この章の味わいが、この物語の縮図であるように思った。どうしようもない環境に翻弄され、善意は破綻する。このアイロニーが、この物語の面白さであるように感じる。友情でも恋愛でもなく、さりとてただのバイト仲間を越えた何かを感じさせる、良太と純子の関係も面白い。
December 9, 2025 at 11:04 AM
「この生田町にふさわしくないものが、一つある。気ちがい病院である」(川端康成「たんぽぽ」より)

ノーベル文学賞作家の作品から飛び出す、「気ちがい病院」というパワーワード(笑)。

筒井康隆「時をかける少女」にも、登場人物が「芳山くん(ヒロインの名前)を気ちがい病院に入れる気か」という描写があった記憶。

こういうのを「差別表現だから変更しろ」なんて言う人もいますが、作者本人が書き換えるならともかく、それは違いますよね。
December 9, 2025 at 10:00 AM
Twitterで、村田沙耶香「コンビニ人間」を「純文学」と表現している人を見ましたが、私はあれを純文学と呼ぶのは、かなり違和感を覚えます(芥川賞をとった作品ではあるものの、文章は完全に大衆娯楽小説ですが、それは置いておく)。

純文学って、別に娯楽小説の対義語ではないと思います。令和の現代に交響曲を書いたところで、それが「クラシック」とは呼ばれないのと同様、純文学には「文学的な価値の高さ」と合わせ、「時代を超越した価値」が必須だと思います。100年後にも読み継がれてこそ、初めて純文学なのでは。

純文学とは、内容や文章だけの問題ではなく、後世に残るかどうかの「古典性」の問題だと思います。
December 9, 2025 at 7:56 AM
先ほど地震がありました。札幌もかなり長時間、しかも大きめに揺れて、緊迫感が高まりました。規模も大きいですね。青森の辺りが震源地のようですが、被害が大きくないと良いのですが。
December 8, 2025 at 2:27 PM
久々に、少し「クリアレイン」。103分で、現在第3話が始まったところです。霞、哀に続いて、また新しい幽霊が出てくるんでしょうか。

文章が独特ですが、2011年のノベルゲームらしいとも言えます。
December 7, 2025 at 8:18 AM
吉川英治「三国志(二)群星の巻」読了。今年243冊目。王允の養女、絶世の美女である貂蝉に、呂布と董卓がいいように操られる様子は、読んでいると滑稽の一語に尽き、ラブコメでも見ているかのよう。

そして曹操の元には着々と名のある武将が集まってくる。荀彧、許緒、郭嘉、「悪来」典韋などなど。一方で劉備はどうも影が薄い。この巻の中心はやはり呂布。劉備が大活躍し始めるのは、諸葛亮孔明の登場を待たねばならないか。

そして呉の孫堅は早々とこの巻で退場。死に方が少々情けない(笑)。全体にまだ起伏には欠けるところがあるが、それでもテンポよく読ませてくれるのは、新聞連載小説だったからこそなのだろうな、と思った。
December 7, 2025 at 3:03 AM
C.S.ルイス「ライオンと魔女と衣装だんす」読了。今年242冊目。ナルニア国物語の2冊目。ピーター、スーザン、エドマンド、ルーシーの4人兄弟は、疎開したカーク教授の屋敷の中のたんすから、異世界ナルニアへ。雪に包まれたナルニアは、逆らう者を石に変える魔女に支配されている。

聖書の福音書を上手くファンタジーの世界に盛り込んで、娯楽作品としてレベルの高い物語に仕上げている。とにかく「絵になる」シーンが多く、読み進めるのが楽しい。

夢があり、教訓もあり、大人が読んでも子供が読んでも楽しめる物語であるという点においては、第1巻と同じ。欧米文化が育てた本物のファンタジーを読んでみたい方は、是非どうぞ。
December 4, 2025 at 2:02 PM
リチャード・バック「かもめのジョナサン(完成版)」読了。今年241冊目。ジョナサンという名前のかもめが自由自在に飛ぶことにとりつかれ、やがて群れから追放されてしまう。

私が読んだのは、作者が追加した第4章が入っている「完成版」。第3章までだけだと「自由って素晴らしい」「空を飛ぶのは気持ち良い」という程度の、少々子供向けに感じる内容だが、第4章が追加されたことで、一気に内容が深まった。

第4章は少々シニカルでもあるが、そのシニカルな味わいと、そして「自由って素晴らしい」だけではなく、「自由って危ないよね」というメッセージが合わせて込められているところに、この物語の価値があるように思う。
December 2, 2025 at 1:56 PM
今夜も「クリアレイン」。しゃべれなかった霞が喋れるようになり、58分で第1話が終わり。

序盤からそれなりに盛り上がるのですが、ちょっと展開というか、霞が喋れるようになるに至る理屈が無理やりな気がしますが、この先どうなるのでしょうか。
November 30, 2025 at 12:54 PM
有川浩「阪急電車」読了。今年240冊目。阪急電車今津線の沿線を舞台に繰り広げられる群像劇。恋の始まりあり、別れあり、書かれるドラマは様々。そしてそれぞれの物語がところどころで交差するのが面白い。昔「街」というサウンドノベルがあったが、ちょっとあんな感じ。

短編集の形式ではあるが、上述のようにそれぞれの物語は要所で交わるし、最後にはちゃんと冒頭に戻るようになっている。阪急今津線を行って帰る間に、色々な人の物語を拾い、最後に冒頭の物語が収束する構成が非常に面白いと思った。

また随所にユーモアがちりばめられており、読んでいて頬が緩む場面が多々あった。気軽に読める、エンターテインメント小説の傑作。
November 30, 2025 at 6:15 AM