無理に笑った赤い目が細くなる。この子に、この子たちに負担をかけているのが自分だという自覚が胸を締め付けた。
でも、彼女が卒業すればその先どうなるかなんて、わからない。どこか遠くへ行ってしまうのかもしれないのだ。
「おれは……嫌だ……」
駄目だ、駄目だ、という理性とは裏腹に、子どものような本音がぽろりと零れ落ちた。
「わたしも……嫌だけど……」
俯きながら発した彼女の声は、ひどくか細い。
「あの子も、心配してるよ」
彼の名前を出されて、言葉を詰まらせる。
「なら、約束が欲しい」
じっと彼女を見つめる。“約束”の意味が分からない彼女は小さく首を傾げていた。
無理に笑った赤い目が細くなる。この子に、この子たちに負担をかけているのが自分だという自覚が胸を締め付けた。
でも、彼女が卒業すればその先どうなるかなんて、わからない。どこか遠くへ行ってしまうのかもしれないのだ。
「おれは……嫌だ……」
駄目だ、駄目だ、という理性とは裏腹に、子どものような本音がぽろりと零れ落ちた。
「わたしも……嫌だけど……」
俯きながら発した彼女の声は、ひどくか細い。
「あの子も、心配してるよ」
彼の名前を出されて、言葉を詰まらせる。
「なら、約束が欲しい」
じっと彼女を見つめる。“約束”の意味が分からない彼女は小さく首を傾げていた。
それなのに、いつの間にか彼女にそれ以上の感情を抱いたことに気付いた時、ロリコンだったのかも……と彼は頭を抱えた。
それなのに、いつの間にか彼女にそれ以上の感情を抱いたことに気付いた時、ロリコンだったのかも……と彼は頭を抱えた。
「何がじゃ」
フフンと得意げに鼻を鳴らす彼女に彼は呆れた目を向けている。
「異世界に来ちゃったわけよ、わたし」
「異世界?」
「そそ。この世界のピンチに颯爽と降臨したわたしが聖女的なパワーでさっくり救ってしまうわけ」
「別に大した危機にゃ瀕しとらんぞ」
「でも、海賊とかいるんでしょ?」
彼女の世界には海賊はいないらしい。この平和ボケした様子を見るに、争いとは無縁の生活を送ってきたのだろう。
「で、聖女的なパワーとやらを見せてもらおうか」
彼の言葉を受けて、彼女は両手を天に掲げた。その格好でしばらく唸っていたが、一向に“聖女的なパワー”とやらは感じられない。
「何がじゃ」
フフンと得意げに鼻を鳴らす彼女に彼は呆れた目を向けている。
「異世界に来ちゃったわけよ、わたし」
「異世界?」
「そそ。この世界のピンチに颯爽と降臨したわたしが聖女的なパワーでさっくり救ってしまうわけ」
「別に大した危機にゃ瀕しとらんぞ」
「でも、海賊とかいるんでしょ?」
彼女の世界には海賊はいないらしい。この平和ボケした様子を見るに、争いとは無縁の生活を送ってきたのだろう。
「で、聖女的なパワーとやらを見せてもらおうか」
彼の言葉を受けて、彼女は両手を天に掲げた。その格好でしばらく唸っていたが、一向に“聖女的なパワー”とやらは感じられない。
そう言って相手が差し出してきたのはコンビニで300円もあれば買えるチョコレート。あの尻拭いをこのチョコレートひとつですべて許してやらねばならないのかと思えば腹も立ったが「気にしないで」といって受け取る。社会で生きるということはこういうことだ。
そう言って相手が差し出してきたのはコンビニで300円もあれば買えるチョコレート。あの尻拭いをこのチョコレートひとつですべて許してやらねばならないのかと思えば腹も立ったが「気にしないで」といって受け取る。社会で生きるということはこういうことだ。
「へえ、どんな?」
興味津々に問いかけてくる彼に今朝の夢を話す。完全なるファンタジーな世界で、ふたりは海軍に所属していたこと。彼が突然わたしにプロポーズしてきて、それから猛烈にアプローチを続けてきてたこと。
「ね、面白いでしょ?」
笑って問うと、彼は狐につままれたような顔をしていた。
「それで、続きは……?」
「そこで目が覚めちゃったから」
「そうか……」
何処か深刻そうな彼の表情に首を傾げる。
「どうしたの?」
彼はしばらく口をつぐんでから「実は……」と話し始めた。
幼い頃から同じ人物の人生をなぞるような夢を見ていたこと。
「へえ、どんな?」
興味津々に問いかけてくる彼に今朝の夢を話す。完全なるファンタジーな世界で、ふたりは海軍に所属していたこと。彼が突然わたしにプロポーズしてきて、それから猛烈にアプローチを続けてきてたこと。
「ね、面白いでしょ?」
笑って問うと、彼は狐につままれたような顔をしていた。
「それで、続きは……?」
「そこで目が覚めちゃったから」
「そうか……」
何処か深刻そうな彼の表情に首を傾げる。
「どうしたの?」
彼はしばらく口をつぐんでから「実は……」と話し始めた。
幼い頃から同じ人物の人生をなぞるような夢を見ていたこと。
指に巻かれた包帯に視線を落とし、ため息混じりにつぶやく。ほぼ独り言のそれは彼の耳にも届いていたらしい。
「だからそう言ってんじゃねェか」
多分、普段なら言い返してた。でも、なんだか今日はその言葉がぐさりと胸に突き刺さる。
え、嘘でしょ? と自分でも驚くくらいに一瞬で涙腺が緩んで、彼もぎょっとしていた。
「ご、ごめん……!」
謝ったのはわたし。あんななんでもないひとことでこんな風に涙を見せたことが恥ずかしいやら申し訳ないやらで。
逃げるように医療室から飛び出すと、ドアが閉まる前に「お前なァ……」と彼をたしなめる船医さんの声が聞こえていた。
/🔥に愛を詰め込みたい話
指に巻かれた包帯に視線を落とし、ため息混じりにつぶやく。ほぼ独り言のそれは彼の耳にも届いていたらしい。
「だからそう言ってんじゃねェか」
多分、普段なら言い返してた。でも、なんだか今日はその言葉がぐさりと胸に突き刺さる。
え、嘘でしょ? と自分でも驚くくらいに一瞬で涙腺が緩んで、彼もぎょっとしていた。
「ご、ごめん……!」
謝ったのはわたし。あんななんでもないひとことでこんな風に涙を見せたことが恥ずかしいやら申し訳ないやらで。
逃げるように医療室から飛び出すと、ドアが閉まる前に「お前なァ……」と彼をたしなめる船医さんの声が聞こえていた。
/🔥に愛を詰め込みたい話
そんなことを思い立ったのは午後十時。こんな時間に食べるものじゃないし、そもそも家にそんなものはない。我慢だ我慢と自分に言い聞かせたものの結局欲望には勝てず、午後十一時、わたしは部屋着のまま玄関のドアを開けた。生理前の異常な食欲に抗おうなんてのが間違いだったのだ。それに、徒歩五分の距離にコンビニがあるのがいけない。
ドアを開けると空には一面の星空。夏の終わりの秋の香りのする風が肌を撫でる。夜はこんなに涼しいのに、昼になればまた灼熱がやって来るんだろうなと思えば憂鬱だ。
そんなことを思い立ったのは午後十時。こんな時間に食べるものじゃないし、そもそも家にそんなものはない。我慢だ我慢と自分に言い聞かせたものの結局欲望には勝てず、午後十一時、わたしは部屋着のまま玄関のドアを開けた。生理前の異常な食欲に抗おうなんてのが間違いだったのだ。それに、徒歩五分の距離にコンビニがあるのがいけない。
ドアを開けると空には一面の星空。夏の終わりの秋の香りのする風が肌を撫でる。夜はこんなに涼しいのに、昼になればまた灼熱がやって来るんだろうなと思えば憂鬱だ。
「ねえ、なら、どうしてわたしは殺さなかったの?」
「あの女への復讐だ」
彼が顔色ひとつ変えずに告げた。
/好きな女の子どもを拐った🐆の話
「ねえ、なら、どうしてわたしは殺さなかったの?」
「あの女への復讐だ」
彼が顔色ひとつ変えずに告げた。
/好きな女の子どもを拐った🐆の話
隣に話しかけると、彼は「そうだな」と悩む間もなく応えた。
「別れる理由が無いからな」
付け加えられたその理由に、一瞬心臓が止まる。付き合い始めたのはなんとなくで、嫌になったらすぐにでも別れればいいという約束付き。
だから“別れる理由がない”というのは、今の状況に不服がないということで、でも、それは“わたしが好きだから”というのとは違う。害がないから、ということだ。
なのにこんなに胸が痛むのは、きっといつの間にか彼を好きになっていたからだろう。
隣に話しかけると、彼は「そうだな」と悩む間もなく応えた。
「別れる理由が無いからな」
付け加えられたその理由に、一瞬心臓が止まる。付き合い始めたのはなんとなくで、嫌になったらすぐにでも別れればいいという約束付き。
だから“別れる理由がない”というのは、今の状況に不服がないということで、でも、それは“わたしが好きだから”というのとは違う。害がないから、ということだ。
なのにこんなに胸が痛むのは、きっといつの間にか彼を好きになっていたからだろう。
あまりの情けなさにしゃがみ込んで膝に顔を埋めていると、彼女が屈んだ気配がした。違う、そうじゃない。おれの“好き”はそんな可愛いものではないのだから。
そっと細い手が頭を撫でた。六つも下の子に気を遣わせて、最悪だ。
ゆっくり顔を上げて恐る恐る彼女を見ると、にこりと無邪気な笑みがこちらを向いている。
「付き合っちゃう?内緒で」
「え?」
彼女の唐突な発言に、思わず変な声が出た。
「だってあんまり良くないでしょ?今は先生と生徒だし」
あんまりというか絶対に良くない。バレたら懲戒免職まっしぐら。それなのに。
「いいのか……?」
気付けば茨の道を征こうとしていた。
あまりの情けなさにしゃがみ込んで膝に顔を埋めていると、彼女が屈んだ気配がした。違う、そうじゃない。おれの“好き”はそんな可愛いものではないのだから。
そっと細い手が頭を撫でた。六つも下の子に気を遣わせて、最悪だ。
ゆっくり顔を上げて恐る恐る彼女を見ると、にこりと無邪気な笑みがこちらを向いている。
「付き合っちゃう?内緒で」
「え?」
彼女の唐突な発言に、思わず変な声が出た。
「だってあんまり良くないでしょ?今は先生と生徒だし」
あんまりというか絶対に良くない。バレたら懲戒免職まっしぐら。それなのに。
「いいのか……?」
気付けば茨の道を征こうとしていた。
ことあるごとにそう言っていた隣のお兄ちゃんは、新生児だったわたしを殺しかけたことがあるらしい。
お兄ちゃんはどんな人? って聞かれたら「ドジ」って答える。電柱にぶつかる、鞄の中身をひっくり返す、何もなくても転ぶ、エトセトラエトセトラ。とにかく一緒にいて退屈することがない。
母親同士が仲が良かったので、生まれてすぐのわたしに会いにお兄ちゃんはうちに来てたらしい。その時、床に敷かれたマットの上にいたわたしの真上に、お兄ちゃんが転んだんだとか。一緒に来てたお兄ちゃんの二個上のお兄さんが襟首を掴んで転ぶのを阻止したから事なきを得たけど、みんな顔面蒼白だったらしい。
ことあるごとにそう言っていた隣のお兄ちゃんは、新生児だったわたしを殺しかけたことがあるらしい。
お兄ちゃんはどんな人? って聞かれたら「ドジ」って答える。電柱にぶつかる、鞄の中身をひっくり返す、何もなくても転ぶ、エトセトラエトセトラ。とにかく一緒にいて退屈することがない。
母親同士が仲が良かったので、生まれてすぐのわたしに会いにお兄ちゃんはうちに来てたらしい。その時、床に敷かれたマットの上にいたわたしの真上に、お兄ちゃんが転んだんだとか。一緒に来てたお兄ちゃんの二個上のお兄さんが襟首を掴んで転ぶのを阻止したから事なきを得たけど、みんな顔面蒼白だったらしい。
彼女の髪が揺れた瞬間、うなじに変わった傷が見えた気がして彼は眉間に皺を寄せた。彼女はすぐにうなじを触ってから「ああ」となんでもない風に声をあげた。
「お兄ちゃんがね、たまにつけるの」
そう言って彼女はうなじを露出させる。半分ほど服に隠れてはいるが、あからさまにそれは咬合痕だ。
「たまにつけるって……お前ら、何やってんだよ」
喧嘩をして噛みついてしまうような年齢ではない。頭に一瞬あり得ない想像が浮かんだ彼は、まさかなと頭を振る。
「何って……」
そこまで言って彼女はいたずらっぽく目を細め、ひひっと笑った。
「“ハレンチ”なこと」
彼女の髪が揺れた瞬間、うなじに変わった傷が見えた気がして彼は眉間に皺を寄せた。彼女はすぐにうなじを触ってから「ああ」となんでもない風に声をあげた。
「お兄ちゃんがね、たまにつけるの」
そう言って彼女はうなじを露出させる。半分ほど服に隠れてはいるが、あからさまにそれは咬合痕だ。
「たまにつけるって……お前ら、何やってんだよ」
喧嘩をして噛みついてしまうような年齢ではない。頭に一瞬あり得ない想像が浮かんだ彼は、まさかなと頭を振る。
「何って……」
そこまで言って彼女はいたずらっぽく目を細め、ひひっと笑った。
「“ハレンチ”なこと」
でも、彼がわたしにそれを告げることは無いということも知っていた。彼は長くわたしのことを縛っていたという罪悪感があるらしい。そんなの、気にしたことないのに。
でも、わたしから彼に告白することも出来なかった。だって、わたしを好いてくれていたあの人を、あんなにも傷付けたのだから。あの時のことを思い出す度、わたしが誰かを好きだなんて口にしてはいけないのではないかと気が咎められた。
でも、彼がわたしにそれを告げることは無いということも知っていた。彼は長くわたしのことを縛っていたという罪悪感があるらしい。そんなの、気にしたことないのに。
でも、わたしから彼に告白することも出来なかった。だって、わたしを好いてくれていたあの人を、あんなにも傷付けたのだから。あの時のことを思い出す度、わたしが誰かを好きだなんて口にしてはいけないのではないかと気が咎められた。
先生のそんな掛け声で、タービンが回り始めた。キュイーンという高音は毎日聞いていても慣れない。お腹の底がゾクゾクとするような嫌な音。こんなに科学技術が発達してるんだから、そろそろ無音になってもいいと思うんだけど。
今治療中の患者さんは口が大きい、というかそもそも身長が大きいようだ。診察台からこんなに脚がはみ出た人、初めて見た。
大きな口のおかげで先生も見やすそうだし、わたしもバキュームがやりやすい。
この患者さん終わったら昼休憩だ。今日はお弁当忘れたからコンビにいかなきゃな。なんて思っていたら、目から火花が飛んだ。
先生のそんな掛け声で、タービンが回り始めた。キュイーンという高音は毎日聞いていても慣れない。お腹の底がゾクゾクとするような嫌な音。こんなに科学技術が発達してるんだから、そろそろ無音になってもいいと思うんだけど。
今治療中の患者さんは口が大きい、というかそもそも身長が大きいようだ。診察台からこんなに脚がはみ出た人、初めて見た。
大きな口のおかげで先生も見やすそうだし、わたしもバキュームがやりやすい。
この患者さん終わったら昼休憩だ。今日はお弁当忘れたからコンビにいかなきゃな。なんて思っていたら、目から火花が飛んだ。
ようやくひと息つけると気を抜いていたところに、彼の部屋のドアに鍵を突っ込んでガチャガチャと格闘している女が居たのだ。よく見れば女は真っ赤な顔をしていて、酔っ払っているのがわかる。大方、近隣住民が酔った頭で部屋を間違えているのだろう。そう予想したまではよかった。
「おい、そこはおれの部屋だ」
彼が半ば呆れたように声を掛けると、女はくるりと彼の方に顔を向けた。そして何故か急に泣きそうに顔を歪ませたのだ。
「しろぉ……? あいにきてくぇたの……!?」
断じて彼の名前は“しろぉ”なんかではない。
ようやくひと息つけると気を抜いていたところに、彼の部屋のドアに鍵を突っ込んでガチャガチャと格闘している女が居たのだ。よく見れば女は真っ赤な顔をしていて、酔っ払っているのがわかる。大方、近隣住民が酔った頭で部屋を間違えているのだろう。そう予想したまではよかった。
「おい、そこはおれの部屋だ」
彼が半ば呆れたように声を掛けると、女はくるりと彼の方に顔を向けた。そして何故か急に泣きそうに顔を歪ませたのだ。
「しろぉ……? あいにきてくぇたの……!?」
断じて彼の名前は“しろぉ”なんかではない。
隣人は金髪で大柄の男性。身体が大きいと生活音も大きくなってしまうのだろうか。我慢出来ないほどではないし、わたしもお隣さんに迷惑を掛けていることもあるかもしれないから、あまり気にしないことにしている。
暫くすると、隣から薄らと会話する声が聞こえてきた。内容までは聞こえないけれど、多分黒髪のあの人がまた来ているのだろう。お隣さんの部屋を尋ねる彼の姿はよく目撃している。
多分、恋人なんだろうなぁ。お隣さんが彼に抱き着いてるところも見たことあるし。/隣の💋さんの話
隣人は金髪で大柄の男性。身体が大きいと生活音も大きくなってしまうのだろうか。我慢出来ないほどではないし、わたしもお隣さんに迷惑を掛けていることもあるかもしれないから、あまり気にしないことにしている。
暫くすると、隣から薄らと会話する声が聞こえてきた。内容までは聞こえないけれど、多分黒髪のあの人がまた来ているのだろう。お隣さんの部屋を尋ねる彼の姿はよく目撃している。
多分、恋人なんだろうなぁ。お隣さんが彼に抱き着いてるところも見たことあるし。/隣の💋さんの話
www.pixiv.net/novel/show.p...
#OPプラス
一日一度片想いの相手とキスしないと泡になって消えてしまう呪いにかけられた🌸ちゃんの話
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一日一度片想いの相手とキスしないと泡になって消えてしまう呪いにかけられた🌸ちゃんの話
気付けばこんなに濃くなったこの気持ちを、彼はどう処理していいかわからなくなっていた。
見ているだけでよかったのだ、誰のものにもならないでくれれば。
今彼女の瞳の先にはアイツがいて、アイツも満更でもない顔をしている。
頼むから彼女を奪わないでくれ。
ずっと、ずっと、誰のものにもならないで。
/幼なじみの🐯の話
気付けばこんなに濃くなったこの気持ちを、彼はどう処理していいかわからなくなっていた。
見ているだけでよかったのだ、誰のものにもならないでくれれば。
今彼女の瞳の先にはアイツがいて、アイツも満更でもない顔をしている。
頼むから彼女を奪わないでくれ。
ずっと、ずっと、誰のものにもならないで。
/幼なじみの🐯の話
「ごめん! 悪かったって!」
必死で謝る彼を無視して、彼女は大急ぎで最低限のメイクを施している。彼が彼女のスマートフォンのアラームを寝ぼけて勝手に止めてしまったのはこれで何回目になるだろうか。彼女はその度寝坊して、こうやって怒りながら朝の支度をするのだ。今のところ勤め先に遅刻したことは無いようだが、これが続けばいつ遅刻するかわかったものではない。
「ごめん! 悪かったって!」
必死で謝る彼を無視して、彼女は大急ぎで最低限のメイクを施している。彼が彼女のスマートフォンのアラームを寝ぼけて勝手に止めてしまったのはこれで何回目になるだろうか。彼女はその度寝坊して、こうやって怒りながら朝の支度をするのだ。今のところ勤め先に遅刻したことは無いようだが、これが続けばいつ遅刻するかわかったものではない。
それから、共有の敷地もあったりする。互いの校舎の裏庭を繋げてできあがったそこは、完成当初緑の爽やかな林だったらしいが、彼女の入学した頃には魔女の森と言ってしまったほうがいいくらい鬱蒼としていた。互いの校舎を行き来するにはそこを使うのが早いらしいのだが、使っている生徒がいるという話はあまり聞かない。/幼馴染の🐯と🌷の話
それから、共有の敷地もあったりする。互いの校舎の裏庭を繋げてできあがったそこは、完成当初緑の爽やかな林だったらしいが、彼女の入学した頃には魔女の森と言ってしまったほうがいいくらい鬱蒼としていた。互いの校舎を行き来するにはそこを使うのが早いらしいのだが、使っている生徒がいるという話はあまり聞かない。/幼馴染の🐯と🌷の話