大きな枠組みの末端で理由も分からず翻弄され、色んな場所を転々としながら、それぞれの場所で誰かに出会って会話をし、いつしかそれが記憶となり、それぞれの場所が感情を伴って私という人間を形成していく。
しかし時間がどれだけ経っても、たくさん経験を積んだとしても、生まれ育ったあの場所はあのときのままの形で私という存在に強く根ざしている。
場所を失うことは自分の一部を失うことに等しい。人生で帰らなくなった場所、会えなくなった人、また故郷に帰ることができない人がいるということ。読みながらたくさんの場所と人に想いを寄せていました。

世の中の混沌に対して局所的に焦点を当てていき、愛とは何か、人はどうあるべきか、奥から湧き上がってくる自分とどう付き合うかといったように、さまざまな問いに一曲につき一つの視点を用いて解きほぐしていくような試みを持ったアルバムでした。気を衒って奇抜さで悪目立ちするのではなく、今現在自分の中にある特性や誰も持ってない部分をじっくり探り、それを優しく広げていくようなそんな印象を持ちました。「Don't Be Like That」がとても好きです。