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呉樹直己🐢さ41-42

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呉樹直己🐢さ41-42

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鬼滅全体の本ではなくてあくまで黒死牟／継国巌勝の本なので、例えば煉獄さん（煉獄杏寿郎）の名前が一度も出てこないというかなりあり得ない事態になっている（戦国時代の第二十一代炎柱は何度か出てくる）

November 20, 2025 at 1:21 PM

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表面上の出来事としては巌勝が2回オナニーしてるだけの謎の二次創作、初期案ではなんと第1章に配置されていた。実際は無茶だとわかってたからすぐ変えたけど。第1章を「国家は嫡男の性を支配する」というタイトルでバシッと始めてみたかっただけ

『月魄最佳　鬼滅の刃・黒死牟／継国巌勝批評×クィア男性学エッセイ×二次創作小説集』デザインラフ

November 20, 2025 at 1:05 PM

呉樹直己🐢さ41-42

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あと実は終式・月魄最佳の章も途中で終わる
まあでも最低限、ホマの最低限は形になってるし、あとはわたしの力不足ということで、とりあえずは満足しています

出典として記載されているURLの最終閲覧日が2025年11月17日朝4時とかなので察してほしい（入稿締切は18日朝9時）

November 20, 2025 at 12:35 PM

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【第7章　戦国武家のSRHR《性と健康に関する健康と権利》】
原作ではたった3コマで回顧されている巌勝の継国家当主時代の、妻との関係や育児の葛藤を想像。ポリアモリー表象としての宇髄天元夫妻についても触れています。

●本の中身スクショ
武人として怪我には解像度が高いからであり、特段愛情深いからではない。しかし労わりとは行動として発揮されてこそ効力を持つので、内心の愛情の多寡はさほど問題でない場面も多いのだ。出産以降も、巌勝は巌勝なりの良夫賢父を目指して、具体的な行動も怠らない。表面上は非の打ち所がない当主であり、夫であり、父であっただろうとわたしは解釈している。それでも妻は密かに寂しさを感じているし、子の愛着形成もどうもうまくいかない。これが家庭生活の難しさである。
　原作において、巌勝の妻子が登場するのはたったの五コマである。しかしその数少ないシーンからは、彼が妻子にそれなりに慕われていたことが読み取れる。巌勝は父親に殴打されて育ったが、わが子にはそうしなかったのであろう。
　
　弟との望まぬ再会によって、巌勝は刀を極めて日本一の侍になるという欲望を再認識し、欲を掴みに行く決断をする。そのためには、武家の嫡男の立場は捨てる必要があった。ここには、そもそも幼い日に剣技を仕込まれたのは立派な嫡男になるためだったのに、剣技を極めるためには嫡男の地位が邪魔になるというねじれが生じている。このねじれを巌勝がどれくらい自覚していたかは定かでない。

　さて、第七章の最後では、宇髄天元(うずいてんげん)の夫婦関係に触れて終わりにする。第一章で述べたように、継国巌勝と宇髄天元は、柱なのに殺人歴を持つ職業殺人者であり、弟と心通わなかった「不具の兄」であり、鬼殺隊加入の動機が仇討ちでないという点で共通している。婚姻が恋愛結婚でない点も同じである。しかし夫婦関係の様相はまっ

November 20, 2025 at 11:59 AM

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【第6章　嫡男の身体はトラウマを記録する】
タイトル元ネタはベッセル・ヴァン・デア・コーク『身体はトラウマを記録する』。黒死牟の心的外傷を仕方なくケアしてやる無惨の話。全部が捏造。

●本の中身スクショ
　まず最初に書いておかねばらないが、本章の二次創作で描写した黒死牟の体調不良は現代医学にて複雑性PTSDの症状とされるものを参考にして描いている。しかし完全再現ではない。加えて、現実の複雑性PTSDの症状は満月がきっかけにはなるわけではないのはもちろんのこと、定期的に規則正しく到来して予測対処できる類いのものではない。満月の月光の妖力によってトラウマが呼び覚まされるというのは、リアリティでいうと人に悪夢を見せて精神のコアを破壊する（下弦の壱・魘夢の血鬼術）といったレベルの完全なるファンタジーであり、フィクションでしかお出しできない解釈であり、まさしく二次創作である。●本の中身スクショ
き長らえていた。ヤングケアラー的境遇を脱したばかりであった当時のわたしにとって、自分を損なうことは、やっと手にした選択肢であり、行使せずにはいられない自由であった。われわれは、自分自身が自分の意志で処分可能であると示すことによって、逆説的に自分自身が自分の所有物であると自らに言い聞かせようとしていた。われわれにとって自傷は、人生の主体性を取り戻すためのポジティブな投企であったのだ。
　友人は、自ら指を切断するに等しい苛烈な自傷行為をその後も継続した結果、二〇二二年一月に、肉体のほうが先に力尽きた。つまりは自死をした。二十七歳だった。
　わたしが現在まで生き長らえているのは、彼ほどのガッツがなかったからに過ぎない。彼よりも優れた点があったからではない。現実とはこのようにつまらないものである。凡人はこのように、消極的になんとなく生きているからこそ、継国巌勝や鬼舞辻無惨のような、確固たる意志による苛烈な生が眩しく映るわけである。多少は利他的・抒情的なエピソードを与えられている黒死牟とは違って、無惨の悪行には擁護の余地がない。鬼舞辻無惨はどうしようもない悪党である。しかし、ガッツの人ではあった。生き汚いと謗られるほどの意志の強さは、わたしには眩しく映る。
　鬼舞辻無惨は、生まれたその瞬間から意志の人であった。「生まれた時には死産だと言われ　脈もなく呼吸もしていなかった」（単行本23巻　p.92）が、「荼毘に付されようという際に　踠いて踠いて　私は産声を上げた」（p.92）。凡人が自然に上げる産声すらも、無惨は意志によって切り拓いた（と造型されている）。この出生エピソードの直後に配置された「私は私が強く念じたことを必ず叶えてきた　実行してきた」（p.93）とは、鬼舞辻無惨
　ここでは無惨が七つの心臓をフル活用してスイッチングを助け、フラッシュバックに苦しむ黒死牟を助ける。身体感覚に集中するのは、トラウマケアの手法として実際に行われているものだ。

無惨が黒死牟のケアをしたことがあるとは、原作には描かれていない。二次創作はあくまでわたしの想像である。しかし逆に、無惨がケアを粗末に扱うシーンならある。最終決戦での無惨の敗因を、ケアワークを粗末に扱ったからと解釈することは、可能である。以下では、鳴女への扱いを通じて、この解釈を示す。
　無惨は普段、人間に擬態して社会に紛れて暮らしているが、それ以外の時間は無限城というアジトで過ごしている。無限城はその名の通り部屋や回廊が無限に張り巡らされている異空間で、太陽光を完璧に遮ることができる。このアジトを血気術によって作り出しているのが、琵琶を操る女鬼の鳴女である。鳴女は、初登場時（単行本

November 20, 2025 at 11:54 AM

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【第5章　鬼というユートピアとネオリベラリズム】
人間時代の無惨の妻殺しは、自己の所有感を確認するための歪んだ投企だったのではないか。『鬼滅の刃』という壮大な物語は、心に傷を負った少年炭治郎と、病に苦しむ若君無惨という、2人の子どものささやかなエゴとエゴから始まっています。

●本の中身スクショ
き長らえていた。ヤングケアラー的境遇を脱したばかりであった当時のわたしにとって、自分を損なうことは、やっと手にした選択肢であり、行使せずにはいられない自由であった。われわれは、自分自身が自分の意志で処分可能であると示すことによって、逆説的に自分自身が自分の所有物であると自らに言い聞かせようとしていた。われわれにとって自傷は、人生の主体性を取り戻すためのポジティブな投企であったのだ。
　友人は、自ら指を切断するに等しい苛烈な自傷行為をその後も継続した結果、二〇二二年一月に、肉体のほうが先に力尽きた。つまりは自死をした。二十七歳だった。
　わたしが現在まで生き長らえているのは、彼ほどのガッツがなかったからに過ぎない。彼よりも優れた点があったからではない。現実とはこのようにつまらないものである。凡人はこのように、消極的になんとなく生きているからこそ、継国巌勝や鬼舞辻無惨のような、確固たる意志による苛烈な生が眩しく映るわけである。多少は利他的・抒情的なエピソードを与えられている黒死牟とは違って、無惨の悪行には擁護の余地がない。鬼舞辻無惨はどうしようもない悪党である。しかし、ガッツの人ではあった。生き汚いと謗られるほどの意志の強さは、わたしには眩しく映る。
　鬼舞辻無惨は、生まれたその瞬間から意志の人であった。「生まれた時には死産だと言われ　脈もなく呼吸もしていなかった」（単行本23巻　p.92）が、「荼毘に付されようという際に　踠いて踠いて　私は産声を上げた」（p.92）。凡人が自然に上げる産声すらも、無惨は意志によって切り拓いた（と造型されている）。この出生エピソードの直後に配置された「私は私が強く念じたことを必ず叶えてきた　実行してきた」（p.93）とは、鬼舞辻無惨

November 20, 2025 at 11:47 AM

呉樹直己🐢さ41-42

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【第4章　鬼化と第二次性徴。あるいは炭治郎に並ぶ「ケアする長男」による、描かれなかったもう一つのケアワーク】
巌勝は、最強の正義の剣士・縁壱の育児と、最強の悪の鬼・無惨の介護という対極のケアで鬼滅世界の最重要登場人物を支えた「ケアする長男」でした。

●本の中身スクショ
くこのルールを知らない。しかし無惨の死は今や、継国巌勝のアイデンティティを瓦解させる重大事である。絶対に死なせるまいと、全身全霊で献身的に介護したに違いないのである。

　第三章で述べたように、五、六歳の巌勝は弟縁壱を、ヤングケアラー的な立場からケアした。そして今回、鬼になりたてで不安的だったはずの心身で、血を分けた親的存在である無惨をケアした。結果的に継国巌勝は、史上最強の正義の剣士・継国縁壱を育児し、史上最強の悪の鬼・鬼舞辻無惨を介護しおおせた。
　縁壱なくしては、日の呼吸術はなく、竈門炭治郎が日の呼吸由来の「ヒノカミ神楽」に覚醒しラスボスを倒す力に目覚めることはない。
　無惨なくしては、そもそも物語は大正時代まで進まない。
　継国巌勝の二つのケアワークは二つながら、『鬼滅の刃』の最重要骨子を成している。巌勝は、主人公・竈門炭治郎に匹敵する、「ケアする長男」だったのだ。

　竈門炭治郎が「ケアする長男」であることは、多数の専門家によってすでに論じられている。ここでは批評家・男性学研究者の杉田俊介の論を引用する。

　猗窩座は弱者が淘汰されるのは自然の摂理だ、と主張します。強者生存、弱肉強食。これはダーウィンの思想を通俗化した上で人間の世界に当てはめようとする、いわゆる社会ダーウィニズムと呼ばれる考え方です。これに対し、炭治郎はむしろ、全く逆に、強い者が弱い者を助けて守り続けること、それこそが「自然の摂理」で

November 20, 2025 at 11:41 AM

呉樹直己🐢さ41-42

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【第3章　ヤングケアラーの記録】
わたし自身も、亡父は指定難病により半身不随、母は身体障害者手帳取得者であり、昔はヤングケアラーっぽい状態でした。この経験は二次創作において、無惨の病苦の描写に反映されています。

●本の中身スクショ
が、初めて口を開くなり多語文で流暢に喋った。刀を初めて握った日には巌勝をはるかに凌駕する剣才を発揮した。長じても基本的には無口無表情、しかし素直で素朴な性格で、妻やのちに出会う竈門家の人々に親しまれた。コミュニケーション能力には乏しいが、一つの物事に圧倒的な才能を持つ純真無垢な青年の姿には、フィクションでしばしば（都合よく）利用されるサヴァン症候群的キャラクターの系譜をみることができる。圧倒的天才だが社会的能力にはやや欠ける彼らには、パートナーの支えが必要である。サヴァン症候群の人物を描いた最も有名なフィクションの一つが映画『レインマン』（1988）であるが、『レインマン』のダスティン・ホフマンには、弟トム・クルーズが寄り添い世話を焼いた。継国巌勝もまた、ある面では天才児をケアする兄弟だった。しかし巌勝はトム・クルーズとは違って兄（しかもただの兄ではない、戦国武家の嫡男）であったこと、弟の才能を知らずに世話していたこと、弟が持つ能力と同じものを欲しがっていたことなどが、事態を複雑にしたのである。

　加えて、巌勝のケアは、ヤングケアラー的立場からのケアであったことも重要である。ヤングケアラーとは、ケアが必要な家族の世話をしている十八歳未満の子どもと定義されている。病気・障害・高齢・幼齢などの理由で、家族の誰かが見守りや世話を必要とし、それを支える人手が充分でないときは、未成年の子どもであっても、年齢の割に重い責任を負い、要ケア者を支えることになる（註1）。当時の巌勝はヤングケアラーとして捉えることができる。巌勝の慈しみは、父からは得られなかった無償の愛として縁壱に降り注ぎ、孤独な忌み子を温かく慰撫した。縁壱を狭い三畳間から物理的にも精神的

November 20, 2025 at 11:36 AM

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【第2章　国家は嫡男の性を支配する】
“元始女性は太陽であった。真正の人であった。今、女性は月である。” とは平塚らいてうが日本最古のフェミニズム雑誌『青鞜』に書いた有名な言葉。月と性を扱った現代アート展の話を枕として、月属性の男・巌勝の性生活を想像します。

●本の中身スクショ
トの山本れいらによる連作《Reflected Sunlight（屈折した太陽光）》（2025）である。これは丸いキャンバス地に月を象ったアクリル画で、月の満ち欠けになぞらえて描かれるのは、臨月に死亡した妊婦の妊娠子宮図である。作品は、新月から満月までの六つの「月」からなる。月面にあたる明るい部分には胎児が写実的に描かれ、欠けた月の影にあたる黒い部分には、刑法第二十九条「堕胎の罪」第二百十二条から第二百十六条の条文が刻まれている。連作一枚目の絵は新月で、真っ黒な丸いキャンバスに、「第二百十二条　妊娠中の女子が薬物を用い、又はその他の方法により、堕胎したときは、一年以下の拘禁刑に処する。」とだけ書かれている。改めてこれが、遠い昔の廃法ではなく、二〇二五年現在の日本の現行法であることに驚かされる。現在行われている堕胎処置は実は特例扱いであり、二〇二五年現在のわが国において、堕胎は原則的には犯罪なのである。
　わたしがこの作品を見たのは、二〇二五年五月に東京都・天王洲アイルのTERRADA ART COMPLEX一で開催された「『元始女性は太陽だった』のか？」展においてである。山本の作品について、同展の解説冊子から一部引用する。

　山本れいらは中絶が未だに刑法で裁かれている現状が、いかに女性の自由を制限しているかを明らかにし、社会的抑圧が身体と経済の両面における自由の欠如によることを示している。女性の身体の制度的制限は、女性をしばしば現代の政治家が「産む機械」と表現するような役割に追いやる。1907年に初めて制定された日本の中絶に関する法律の枠組みは、中絶を望む女性のみを罰することによって家父長制の支配を強化した。

●本の中身スクショ
1948年の優生保護法は中絶を可能にしたが、それは戦後の人口増加を抑制し「不良な子孫」の出生を防ぐためであり、中絶は個人の権利ではなく国家の管理のための例外だった。優生保護法は1996年に母体保護法として改正され、現在、特定の条件下での中絶は許められているが、未だ妊娠22週以降の中絶は禁止されており、また既婚女性は夫の同意なく中絶することができない。

　同展において《Reflected Sunlight（屈折した太陽光）》シリーズの絵画六点は、一つの展示室を丸ごと使って等間隔に配置されていた。鑑賞者は部屋を、国家という支配的枠組みとして体験する。四角い部屋に押し込められた丸い子宮図は、生殖が個人の権利を差し置いて国家に制御されている現実を端的に暴くのである。
　なお、堕胎に性交相手の同意が必要なことや、堕胎が保険適用外で十万円もの重い経済的負担が発生することは文句なく人権侵害であるとしても、妊娠二十二週以降の中絶禁止については、健康上の理由から仕方がなく妥当であると感じる人もいるかもしれない。しかし、各国がてんでばらばらに定めている最大週数の数字も実は、多分に社会的・国策的な事情によって決定されており、純粋に健康配慮上の基準とは言い難い。その事実を示したのが、同じく二〇二五年の、七月に開催された小宮りさ麻吏奈「CLEAN LIFE」展である。東京都・新大久保のWHITE HOUSEにて開催された同展において小宮は、細胞培養にまつわるインスタレーションを展開した。テーマは人工妊娠中絶から、動物の権利を尊重した「クリーン」な肉としての培養肉、細胞の権利、ヴィーガニズム、パレスチナにおける現在進行形の虐殺など

November 20, 2025 at 11:32 AM

呉樹直己🐢さ41-42

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【第1章　職業殺人者による、最初ではない殺人としての父殺し】
巌勝が、鬼化する前からすでに武家当主、すなわち支配階級の権力の刃による多数の殺人歴を持つ職業殺人者であったことに注目。加えて、鬼滅世界を貫くネオリベラリズム性を検討します。

●本の中身スクショ
を殺されることさえなければ一生安らかに眠っていたはずの龍虎であるとたとえている（単行16本巻　p.82）（追記1）。そのような大正の少年少女たちからみると、継国巌勝は鬼化するまでもなく鬼のような男と映っただろう。巌勝だけではない、当時の武家の男性は皆鬼である。時代が数多の少年たちを鬼にしていた。それはきっと、鬼舞辻無惨が人を鬼にした数よりもずっと多い。
　いつの世も、最も陰惨な暴力は個々人の殺戮などではない。それは時代によってか、社会によってか、国家によってか、構造的に仕込まれ、不可視のうちに個人の尊厳を蹂躙するのである。不可視の構造的暴力に襲われた人間は、自身の傷を自覚することもできないまま苦しみ続ける。PTSD（心的外傷後ストレス障害）の概念は元々、ベトナム戦争（一九六五年-一九七五年）に従軍した米軍兵士が帰還後に呈した尋常ならざる心身不調を定義するために、一九八〇年にかけて見出された概念である。わが国でもまた、第二次世界大戦の帰還兵の相当数がPTSDの症状を呈していたことが近年の研究で判明している。旧日本軍兵士の男性たちは、その言いしれぬ苦痛を加害性として発露することもあった。「酒に溺れ妻子を殴打する」「雷親父」などとしてイメージされる昭和初期の暴力的な男性像は、一つには精神疾患症状でもあったのだ。二〇二四年、わが国は旧日本軍兵士の精神疾患にかんして、旧軍病院や日本傷痍軍人会に残るカルテや体験記を収集して初の調査を実施している。戦後八十年の節目である二〇二五年には、それらの調査結果を元に、国立の戦傷病者史料館である東京都千代田区・しょうけい館にて、小展示「心の傷を負った兵士」が開催された。精神疾患の兵士約一万人を収容していた国府台陸軍病院や、傷痍軍人療養所の様子が紹介されたほ

●本の中身スクショ
か、精神疾患となった戦傷病者が作った作品などが展示された。わが国における、旧軍兵士のメンタル（アン）ヘルスにかんする研究調査は、ほんの最近に始まったばかりなのである。
　言うまでもないことだが、大日本帝国軍兵士が経験した苦痛は、個々の戦争犯罪・性犯罪などの加害行為や、大日本帝国の植民地主義的暴力自体を免責するものではない。まずは個別に、加害は加害として、被害は被害として解き明かしていく必要がある。しかし最終的には必ず、必ず、加害と被害はなんらかの形で統合をみなければならない。そもそもすべての生身の人間は加害者性と被害者性の両方を持つからだ。しかしこの真理を、ただ文章として並べたところで、加害者の前に歴として存在する被害者の深い痛みの前ではなんの説得力もない。継国巌勝が産屋敷当主殺害を皮切りに数限りなく犯していくことになる殺生目的の加害でも、あるいは原始の世から令和の世まで絶えず頻発している性暴力加害でもそうで、そこには一人一人顔のある被害者の限りない痛みと無念がある。わたし自身も、性被害と総称されるであろう被害の欠片程度であればこれまでの人生で覚えがある。第一章でも述べたように、わたしが生まれた一九九五年は、北京でアジア初の世界女性会議が開催された年である。同会議で採択された北京行動綱領は、女性の人権にかんする当時最も包括的な国際文書であり、十二の重大領域の一つに「女性に対する暴力」が独立して設定された。国連安全保障理事会が旧ユーゴスラビア国際刑事裁判所を設置したのが一九九三年、ルワンダ国際刑事裁判所を設置したのが一九九四年で、それぞれ紛争下での性暴力が追訴された。本邦では一九九五年に、沖縄で米兵三名による小学生女児への集団強姦事

November 20, 2025 at 11:27 AM

呉樹直己🐢さ41-42

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これ、頑張ったから痩せたかも🎶みたいな自覚は一切なくて、体重計に乗ったら■1キロから十の位が1つ減って●4キロになってたので、3キロ太ったと思ってた

November 20, 2025 at 2:25 AM

呉樹直己🐢さ41-42

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●ラガンブックス　ブース:D49-50
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デザイナーの若生さんによる、 “目に見えているのに意識の外にすぐ出てしまうような、グラフィックデザインとして認識されにくい存在へ焦点を当て” たビジュアルブック。不可視化されがちな存在を掬い上げるという問題意識があるのかなと思いました。
c.bunfree.net/c/tokyo41/49...

[文学フリマ東京41・ノンフィクション|写真・映像] raganbooks

文学フリマ東京41(2025/11/23(日) 12:00〜)の【raganbooks】(ノンフィクション|写真・映像)をチェックしてみよう!

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November 20, 2025 at 1:55 AM