ありんこ
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ありんこ
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成人&貴腐人
父水メイン右水を嗜んでおります
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June 10, 2025 at 3:29 PM
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June 10, 2025 at 3:26 PM
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　その耳はほんのり赤く色づいている。 「あ～…、さっきの鬼太郎の気持ちがよく分かったよ」 「恥ずかしがる水木も可愛いのう」 「クソッ　これ以上はやめろ」 　卓袱台に伏せている頭を優しく撫でるゲゲ郎の手に対して悪態をつきながらもそのままにしている水木に、（本当に愛い存在じゃのう…）と思うゲゲ郎だった。 　 　美味しい美味しいと、水木お手製のチョコレートプリンを堪能した二人だったが、どうしていつものホットケーキではなく、チョコレートプリンだったのか。 　その理由を知った時、ゲゲ郎と鬼太郎はあまりの感動で膝から崩れ落ちることになる。 　どれだけ水木から大切に思われているのか、愛されているのか。 　それをチョコレートプリンがもつ甘さと柔らかさと、すぐ溶けて消えてしまう儚さで思い知らされたのだから。 　 　そして幽霊族の父子は感涙で濡れる目元を拭い立ち上がる。 　愛深いと云われる幽霊族の名に恥じぬように、水木から注がれていた愛の大きさに負けぬように、否、倍以上の大きさでもって報いると決意して。 　 　 【終】
February 19, 2025 at 2:23 PM
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　正直もう水木は前の水木には戻ることはないだろう。出世に貪欲で常にギラギラしていたあの頃の水木にはもう。いつでも強者の喉笛に喰らいつけるよう強かに牙を研いでいたようなそんな水木にはもう。 　 　だってあまりにも幸せそうに笑っていたから。会社では一度足りと見たことがない顔で人魂に笑いかけ、手を伸ばし触れていたから。 『きたろう』と呼んでいた赤ん坊に対してもそうなんだろう。 　その赤ん坊が仮に人間ではなくバケモノだったとしても、水木にとっては大切な存在で、精一杯の愛でもって慈しみながら育てていることだろう。 　正直、あの光景を見た時は、とうとうおかしくなってしまったのかと思った。 　欠勤を繰り返していたのは、気が狂ってしまって日常生活もままならない状態であるからだとそう思った。 　俺だけでなくあの光景を目撃したら誰もがそう思うだろう。 　けれど、人の幸せなんてものは他人がどうこう推し図れるものではない。 　きっと今の水木にとって、あの時間こそが最上の幸せなのだ。 　その幸せの中にいる水木をあの家から連れ出すことなんて誰ができるものか。 　この目で見たことは全て忘れよう。 　明日会社で何か聞かれるかもしれないが、そこは適当に誤魔化す何なりすればいい。 「…じゃあな、水木。」 　振り返ってもう一度水木の家を見てみたが、や はり明かり一つ点いていない真っ暗なままであった。 　 　 　あれからしばらくして水木はひっそりと会社を辞めていた。 　知らぬ間に隣の席はすっからかんとなり、水木が在籍していた形跡はすっかりと消えていた。 　そして退職するのと同時に引っ越しも済ませたのか、家の中はもぬけの殻になっていた。 　近所の人もいつ出て行ったのか分からないと言う。 　ひっそりと会社を辞め消息を絶った水木のことは、しばらく社内外で話題に上がったが、人の噂も七十五日と言うだけあって、徐々に名前すら上がらくなった。 　あいつ今頃どうしているのかな、なんて気に掛ける者などここにはいない。 　 　時折、空き家になっている水木の家の前に立ち寄ることがある。 　水木が戻ってきたような形跡はない。赤ん坊の声も聞こえないし、人魂ももう見ない。 　今どこで生活しているのか分からない。もしかしたら死んでしまっているのかもしれない。 　それか、とっくに人の理から外れた存在に成り果てているのか。 　それならそれでいい、と思う。 　人の世は移り変わりが激しい。自分も含め皆その波に、変化に取りこぼされないように必死だ。 　どうか水木はそんなものとは無縁な場所で、幸せに笑っていて欲しいと、そう思う。
February 19, 2025 at 12:20 PM