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つかさ

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フォロバはあんましませんし、しなくていいです。
挨拶もほぼしてない/昭和生まれ/ジャンルは鋼/
推しは大佐/主に文字を書く。稀に絵/ロイアイメインだけどハボロイも好き。その他多数のカプを書く/BLはRPはしないけど関連呟きはする
アイコンサークル名にしてみた。

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つかさ

@harutoomi.bsky.social

ロイアイワンライ過去お題チャレンジ
お題は宝石
未来軸。結婚してる。それからシリーズを引っ張ってきた。（懐かしいね！
まあ単独でも読めるかと。モブがいる。

印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。

画像情報：generated by 新書ページメーカー / Photo by Thomas B on pixabay / フォント：クレーOne SemiBold

以下は本文の内容です。

「宝石ってどうやって選ぶもんですか」
　唐突に聞かれて、リザはまばたきをする。
　ロイに何やら書簡を持ってきた少尉だ。返事が要るものらしく、しばらく待つとのことだったから、一緒にお茶でもと座ったところだった。
「あ、すいません。不躾に。奥様だったら、宝石とか好きなのかと思いまして」
　ぎこちなく笑って頭をかいたあと、青年は肩を落とした。
「ダイヤモンドが高いっていうのは知ってるんですよ。けど、なんかそういう選び方するのは違うっていうか」
「私も宝石には詳しくないんだけど」
　言うと、彼は意外だと言いたそうな顔をした。こんなに顔に出て大丈夫なのだろうかと、他人事ながら不安になる。
「でもそうね。何か関わりのあるものから選んだらいいんじゃないかしら。誕生石だったり、石言葉だったり」
　そういうのはあの人のほうが得意だなと思いながら、リザはピアスをなでた。思い出したのは数年前にもらった、ブルーサファイアの一粒ピアスだ。
「宝石はそれだけで綺麗だけど。どこからきた石だとか、どんな特徴があるんだとか、そういう物語を伴っているのも面白いと思うの。どうしてそれを選んだのかって、それが伝わるなら、私は嬉しいし、なんていうか……唯一になるでしょう、そういうのって」
「なるほど……」
　青年はポケットを叩いてメモを取り出した。石言葉、とかつぶやきながらメモをしている。

リザはティーカップに手を伸ばした。少しは役に立ったのだろうか。ちょっと喋りすぎたかもしれない。
　金額だけでは選びたくないという話だった。値段や貴重性だって宝石の価値ではあるのだろうけれど、どうせなら、自分のただひとつの宝物になれば素敵だと思うのだ。肌の色や好みで選ぶ方法もあるのだろうが、それは助言などできない。
　戸が開いた。青年が慌てて立ち上がろうとするのを、ロイは手のひらを見せて止めて近寄ってくる。
「石言葉？」
　メモが見えたのだろうか。不思議そうに口にした。
「あー、あのえっと。自分が宝石をどうやって選ぶのか困ってまして、それで」
「何か関わりがあるものがいいんじゃないってお話をしていたんです」
「そうだな……。まあ単に似合いそうって理由でもいいと思うが」
　ロイの言葉に難しいですよと青年は頭をかいた。流れで少し話をしたが、目的である返信を受け取ると、青年はさっさと帰っていく。
　食器を下げて応接間に戻ると、ロイはソファに座っていた。
「あなたに、ブルーサファイアのピアスをもらったことを思い出しました」
　ああ、とロイはゆるく笑う。
「綺麗だなと思って」
「ええ。綺麗だって言われたいなって時につけるようにしています」
「ふぅん」

ロイは目を伏せた。首の後ろに手をやる。女なんて慣れてるだろうに、時々こうやって素をのぞかせるから、この人はずるいのだ。
　どこからきた石だとか。どんな特徴があるだとか。
　そんなのとは別に、選んだ理由だとか、どの場面で渡されたのかだって物語になる。
　自分だけの宝石を思って、リザは微笑んだ。

November 28, 2025 at 3:11 AM

つかさ

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ロイアイのワンライ過去お題チャレンジ
お題は懐かしい仕草
未来設定。特に書いてませんが夫婦だったりするかもしれない。
優しい話かと。

印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。

画像情報：generated by 新書ページメーカー / Photo by Jeong Eun Lee on pixabay / フォント：クレーOne SemiBold

以下は本文の内容です。

　ふっと笑う気配があった。リザは顔を上げる。向かいの席で本を閉じたロイは、随分やわらかい表情でリザを見ていた。
　昔は本を開けば何時間でも耽溺していたけれど、最近は目がかすむのだといって、彼はある程度の時間で休憩を取る。
「何ですか」
「いや、懐かしい仕草だったから」
　お茶でも入れようと彼は立ち上がった。お願いしますと口にして、リザは目の前の書類にかかる。横に落ちかかる髪が邪魔くさくて、指先ですくったそれを握り込むと頬杖をついた。もうちょっとなのだ。ペン先で紙をつついた。そう、これをこっちにやって。
「そうそう。……それで」
　引っかかっていたところを通り抜けると、案外あとはするする決まる。結果を書きつけて、リザはほっと息を吐いた。これでいい。これで完成。
　紅茶の香りがした。ロイがカップを置いてくれる。彼はまた向かいの席に腰を下ろした。
　リザはできあがった書類を脇に置いて、カップに口をつけた。バニラのような甘い香りだ。新しいのを開けたのだろうかと頭の片隅で考える。無意識に髪に手を伸ばしたが、思い直して後ろに払った。
「懐かしい仕草って、なんですか」
「考え込んでる時、髪をにぎりこんでるだろう。時々」
「ああ……。司令部でもしていましたか」
　半端な長さの時はしてしまうが、伸びればまと

めてしまうし、それほど機会はないと思う。していたとすれば、副官になってしばらくして、髪を伸ばしていた頃だろうか。２０歳そこそこの自分は今の自分から見れば随分遠く感じた。
「どうだろう。していたかな。あの頃の君はあんまり打ち解けた顔を見せてくれなかったから」
　意外な答えだ。ではいつだろう。リザは少しだけ首をかしげる。ロイはどこかいたずらめかせた笑みを見せた。
「師匠がね、してたよ。考え込んでる時」
「ええ……」
　つい顔をしかめてしてしまった。ロイは笑い声を立てる。
「嫌なのかい」
「それは、嬉しくはないですよ。そういえば父はこのくらいの髪の長さでしたね」
　多分自分で切るのに楽だったのだろう。リザの髪と同じように、父の髪も癖がなくて細かった。広がりはしないが、顔の横にたれてくるから集中しているときは邪魔だ。わかるかもしれないと思った。
「髪質、似てたんですかね……」
　父とリザは似ていない。似ていなかったと思う。けれど受け継いだところもあったのだろう。
「似てるところなんかないと思ってました」
「そうかな。ふたりとも頑固だし、計算が速い」
「速くはないでしょう」
「狙撃手だろう」
「それは」
　計算はしているが意識してはしていない。口に

出そうとすると、自分でも矛盾している気がした。父も同じだったのだろうか。要素をそろえればひらめくように答えが見えてくる、あの感じ。
　リザはゆっくりと息を吐いた。
　古い家の本だらけの部屋の中で、机に向かっている父の背中を思い出す。昔のような息苦しさは感じない。髪の先を指に巻き付けて、握り込むようにしていた手つきを不意に思い出した。髪を離したその手が伸ばされる。リザの頭の上に。くしゃりと髪をかき回すように頭をなでるあたたかな手。
（ああ）
　本当だ。父もしていた。すっかり忘れていた。長い間覚えていたのは、机に向かう背中とリザを見下ろす冷たい目だけだった。けれど思い出すことができた。そう、父もしていたのだ。難しい顔で考え込みながら、たれてくる横髪をにぎりこんでいた。
　懐かしいという感情は、古い衣服のように肌に柔らかい。
　ふっと笑えた。本当ですねとリザは言う。
「意外なところで似ているものですね」
「そうだな」
　ロイは穏やかに笑んでいる。ふと感謝を口にしたくなった。今こうやって父のことを静かに思い出せるのは、リザが今は焔の錬金術で苦しんではいないからだ。
　言葉にしようとすれば、繊細な気持ちはどうにも固まらないままぼやけてしまった。ただありがとうとだけ言えば良かったのかもしれない。

仕方なくリザは紅茶を飲んだ。ふわりと立ち上る甘い香り。指先と喉を温めて落ちていく紅茶。
「おいしいです」
「それは良かった」
　窓の外は冷たい風に枯れた葉が揺れていたけれど、家の中は暖かだった。室内に差し込む日差しは弱く、時間はゆるゆるとほぐれて消えるような穏やかさ。
　リザは感謝する。ここに一緒にいるひとに。一緒の時間に。今この時に。

November 22, 2025 at 2:04 AM

つかさ

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いい夫婦の日だなーと。
別に夫婦でもカップルでもないですが。
大佐中尉でなかよし。ハボック視点。

印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。

画像情報：generated by 新書ページメーカー / Image by ぱんじ / フォント：クレーOne SemiBold

以下は本文の内容です。

「それとそれはＢ５。そっちのはＡ８よ」
　キビキビした声にハボックは視線を向ける。どうやら倉庫の整理をしているようだった。中尉が指示している。人差し指をまっすぐに指示を出す姿に、ふっと大佐を思い出した。
　さっき大佐も同じように指示を出していたのだ。その隊はこっち、こっちの隊はあっちへと。
「似てるってほどでもないか」
　ただの指示だ。そう差はないだろう。だけどなんだろう。連想してしまったのは。
　頭をかく。視線に気づいたのか、中尉が振り返った。軍靴を鳴らして近寄ってきて、手にした書類バサミでぱんとハボックの胸を軽く叩く。
「ここではタバコは止めてよ」
「吸いませんよー。通りかかっただけっすから」
「何か気になったの」
「いいえ、何も」
「嘘」
　中尉の目が厳しくなる。本当なのになぁとハボックは視線を泳がせた。
「大佐と中尉ってタイプは全然違うのに、なんかずっと一緒だよなって言ったやつがいてですね。でもまあ案外似てるところもあったりすんのかなって。そんでボーッと見ていたと言いますか」
「犬は飼い主に似ると言うわね」
「いや犬って」
　苦笑してハボックは中尉を見おろす。ペン先を顎にあてていた。それからくるりとペンを回すと、書類に何事か書きつける。倉庫を振り返って、運んでいる者たちに指示を飛ばした。

（どっちかっつーと）
　胸に浮かんだ言葉を口に出さない程度の頭はある。ではとハボックはふざけた敬礼をして見せて、さっさとその場を離れた。
　同じ時間をすごせばクセや空気感は似てくるものかもしれない。全然タイプは違うのに、妙に仕草が似通っている。タイミングだったりとか、角度だとか、多分そんな些細なものが。
（似たもの夫婦ってやつじゃね？）
　口に出せばきっと、ふたりとも同じ顔できょとんとして、それからお互い目をそらすだろう。
　想像して、ハボックは小さく笑った。

November 22, 2025 at 1:34 AM

つかさ

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ロイアイのワンライ過去お題チャレンジお題は女心
大佐中尉でできてない。大佐が押し倒している。暴力味がある。
女心とは…って多少悩んだが、まあ好きにした。

印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。

画像情報：generated by 新書ページメーカー / Photo by Biel Morro on Unsplash / フォント：源暎こぶり明朝

以下は本文の内容です。

　大佐に押し倒された。
　どうしてそうなったのかは、もうリザにもよくわからない。半ば売り言葉に買い言葉だったとは思う。
　大佐の家で、それなりにゆったりしたソファの上だ。バレッタをしたままだから後頭部が痛い。きつくつかまれた手も痛い。
　お互い言葉を失って、お互いの顔を見つめている。
　押し倒されたというのも、やや誤解があるかもしれないとリザは思ってみる。とはいえ、話の展開的には、やれるものならやってみろに類した言葉を己が放った気がする。
　謝ろうかと思ったけれど、別に悪くはない気がした。
　離してください、というのもなんだか負けたようではないだろうか。
（それに）
　本当に大佐がするとも限らない。
　そう考えると手から力が抜けた。大佐は舌打ちすると、リザの手首をひとまとめに片手でつかみなおし、空いた片手をリザのブラウスにかけた。ひとつ、ふたつと外していく。
「何を、するんですか……！」
　リザは慌ててもがいたが、手首を押さえられていたし、スカートの裾も大佐の膝に押さえつけられていて、無様に腰を揺らせただけの結果に終わった。きつく締められた手首がじんと痛い。大佐はブラウスを脱がすのを止め、リザの肩に手を置くと、ぐっとソファに押さえつける。
「今更聞くのか。君が要求したんだろう」
　男の目も声も、抑えているのにその向こうに煮

えたぎったものが見えるようだった。気圧されて、リザは唾液を飲む。
「要求など」
「煽った？　結果がわからない年でもないだろう」
　肩を押さえつけていた手は、リザの首を押さえ顎を上げさせた。顔が近づく。身内にはめったに見せない冷淡な表情。
　リザは目を伏せた。唇が重ねられる。思ったよりあっさりと引いていく。
「それとも、私が君に乱暴するとは思わなかったのかい。……まあ、いつも無警戒に上がり込んでいたものな？」
「仕事でしょう！」
「上官の家に上がり込んでソファに座らなければできない仕事などないよ」
　大佐は薄く笑う。リザは唇を引き結んだ。それはそうだ││だが、リザを私的に使っているのは大佐である。リザが、私的に従っているとも言える。
　手首が不意に自由になった。その代わりに大佐はリザの腰をつかむ。リザは大佐の肩をつかんで、めいいっぱい突っ張った。びくともしない。
　本当にまったくリザは無力だった。愕然とする。軍人として訓練も積んだ。格闘訓練の成績だって別に悪くはない。けれどこうやって引き倒されて、純粋な筋力差となればまるで刃が立たないのだ。
　リザの抵抗に大佐は目を細めた。
「そういえば、君、先日子猫を抱っこしていたな。まだ人馴れしてなくて、一生懸命足をつっぱっていた。君はどう思った？　可愛いなと思ったんじゃないかい」
「なんの、話……！」

「小さな生き物の健気な抵抗に、あおられはしなかったのかなと。それとも誘っているのかな」
　大佐の手がリザの服の裾を押し上げ肌に触れる。リザは彼の腕をつかんだ。押し止めようと懸命に力を入れる。
「もちろん猫だって命がけの抵抗なら違っただろう。爪も牙も持った獣だからね。だから結局は、そこまで嫌がられてはいないって判断は正しい。相手が猫ならね。人は人を傷つけるのをためらう。襲われることに慣れてないから、咄嗟の時は恐怖が先立つ。私は君のそのためらい、優しさに、つけ入ってるんだろう。……多分」
　大佐の黒い目をリザは見た。熱を持った目はひたりとリザを見据えていて、やや血走っていた。指先が冷え、喉の奥がひきつる。冗談ではないと悟る。このままでは。
（大佐に）
　暴れろとリザの理性は告げた。攻撃しろ。固まっている場合ではない。軍人なのだ。人を傷つけることなど怖くない。
　腕に力がうまく入らなくなった。指にも力がはいらず、抑えた大佐の腕からすべりそうになる。リザはまばたきした。どうしてこんなにも自分の身体がままならないのか。
　それとも、と大佐はリザの耳元で囁いた。
「抵抗する気がないとか。私が上官だから？　君は自分のことをどうでもいいと思っている？　私に負い目がある？　君のマスタングさんを信じたい？」
　マスタングさんの言葉に、とうとうリザの手が滑った。大佐は遠慮なくリザの服をめくりあげ、肌着に指をかける。リザはめくられた服の裾をつ

かんだが、指は震えてうまく動かなかった。
「あるいは私のせいにしてしまうのも一つの方法なんじゃないか。自分の責任のないところで奪われてしまいたいって││そういうのもあるだろう。女心には？」
「そんなのは」
　そんなのはおかしい。そんなのはない。反発が胸に渦巻く。
　仮に今リザが流されているのだとしても、そんなのは女心なんて言わない。他の女の気持ちなど分からない。選べないリザが、どこかで状況に流されたいと思っていたのだとしても。
　それはリザがリザだからだし、相手が大佐だからだ。
　リザの耳元に顔をよせていた大佐は、顔をやや離してリザの顔を覗き込む。リザは彼を見返した。服の裾をつかんでいた手を離し、体の横にゆっくりと下ろす。体からも力をできるだけ抜いた。
「あなたのせいなんかにしません」
　大佐はまばたきをする。黒い目も口元の笑みも、普段の気安い優しさは欠片もない。ひどく酷薄なそれを向けられることに、リザはほんのりした達成感を持つ。
　彼の隠し持った牙に惹かれていた。
　半ば露出したリザの腹を、大佐は爪の先でゆっくりなぞりあげる。
「君が私に喰われたい？」
「そうです」
　リザはそう答えた。

November 21, 2025 at 3:15 AM

つかさ

@harutoomi.bsky.social

ロイアイのワンライ過去お題チャレンジ
お題は癒し
大佐中尉でできてない。
いちゃついているわけではないけれども、という感じ。手入れにはフェチ味を感じる。

印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。

画像情報：generated by 新書ページメーカー / Image by ぱんじ / フォント：クレーOne SemiBold

以下は本文の内容です。

　カップに伸ばされた大佐の手を、リザはそっと抑えた。
「爪、伸びましたね」
「あー……」
　大佐は目を泳がせたが、リザはお待ち下さいと言い置いてかがんだ。引き出しに入れてある爪切り類を勝手に出す。
　無言で手を差し出せば、大佐は大人しく手を重ねた。リザは指の腹で大佐の指先をなぞり、確かに爪が伸びすぎていると確認する。爪切りを手に取った。
　切っていく。
　パチン、パチンと小気味良い音がする。片手を一旦切り終えた。丁寧に検分して、それから手を離す。別段請求しなくても大佐はちゃんともう一方の手を出してくれた。上目遣いにうかがえば、大佐は居心地悪そうだ。
「楽しいかい？」
「はい、とても」
「……君の趣味はよくわからないな」
「そうですか？　耳掃除が趣味って人もいますよ」
「そっちの方がいい」
　大佐がにやついた。そうですか、とリザは言う。
「射撃の教官です。頼んでおきますね」
「御免被る……」
　本当に嫌そうに言うから、つい笑ってしまった。
　そう、これはリザの趣味だ。大佐は忙しさにかまけて爪を切り忘れていることがあったから、切ってあげたらクセになってしまった。何度かしたら気が引けたらしく大佐は気をつけるように

なったが、狙っていたのに切る機会を逃したリザが不満そうな顔をしてしまったらしく、そこからは大佐は任せてくれている。
　その割には微妙に居心地悪そうな顔をいつもするのだけれど。
　切っていく。パチンパチンとはさみが鳴る。
「癒されるんですよ」
「そういうのって普通ペットとかじゃないのかい」
「さあ、どうでしょう」
　動物は好きだ。それはそれで癒やされるとも思う。けれどこれだって悪くない。きれいに切りそろえられた指先をリザはうっとりと眺める。それからヤスリを手にとって、角を削り落としていく。
　指に触れて、指先をなでる。ふつふつと腹の底からよろこびが立ち上がる。リザは知っている。こうやって無防備に手先を触らせてくれるなんて、大佐にとっては特別だ。それに、彼は焔の錬金術を使って人を殺した後は、リザに触れさせてくれない。だからこれは平和の証だ。
　けれどそれも言い訳かもしれない。ただ、こうやって指先に触れていること。それが１番リザを満足させる。
　全部の爪にヤスリを当て終わって、指の腹で出来栄えを確かめる。申し分ない。満足だ。だけど少しだけ残念だった。もう終わりだ。
　しゃがみこんで使ったものを片付けた。
　見上げると、大佐は自分の手を眺めている。
「気になるところが？」
「いいや、問題ないよ。ありがとう」
　一拍置いて、大佐は笑う。

「世話を焼かれるのは落ち着かないけど、君が私のものだって思うのは嬉しいし」
「それは何よりです」
　リザも笑った。
　大佐の癒しはなんだろうと考えてみる。
　なんとなくだけれど、自分のそれと近いところにあるような気がした。

November 19, 2025 at 11:27 PM

つかさ

@harutoomi.bsky.social

ロイアイのワンライ過去お題チャレンジ
お題は階級章
中佐少尉で付き合ってない。平和な話かと。
あんまりロイアイじゃない気もするけど。
階級を意識してない場所だと甘いといいなとか。

印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。

画像情報：generated by 新書ページメーカー / Photo by suhasrawool on pixabay / フォント：クレーOne SemiBold

以下は本文の内容です。

「ほら、こっちも。うまいから」
　アルミの器に入っていたのは焼きマシュマロだった。底に触れないように縁に手を伸ばしたら、手袋をつけた中佐が底をささえてくれる。
「ありがとうございます」
　にっかりと笑顔を向けてくる男と中佐と、両方にリザは会釈した。男は中佐とリザに視線を往復させる。
「あ、ふたりだと足りねぇかな」
「いや、大丈夫」
「おー」
　遠慮なく食べてと小さく言って、中佐は器をリザにもたせる。なんだか中佐じゃないみたいだとリザは思った。そう、マスタングさんみたいだ。
　本人なのだから当たり前だけど。
　息をふきかけてから、おそるおそるマシュマロをかじった。さっくりと焼けた表面。溶けた中身が舌に広がる。はふ、とリザは息を吐いた。甘くて美味しいが、これは中佐は無理かもしれない。彼は猫舌だった。弟子だった当時から変わっていないならば。
　かわいーじゃんと男は中佐をひじでつついている。階級は一等兵。
　男が中佐とリザの階級に気づいていないのは、ふたりともコートを着ているからだ。
　ここは駐屯地で、仕事はもう終わっていた。駅が近いので帰りの車は断った。運動場のはしで盛大に火が上がっていたから近づいてみたら、若い兵たちが集まっていたのだ。それで、どうも仲間だと誤解されたらしい。

年齢に対して不釣り合いに高い階級は、どうしても周囲から一歩遠ざけられる。こんな風に親しく笑い合うのは慣れなかった。胸の奥がくすぐったくなる。焚き火の照り返しで顔がやや熱かった。
　出身地はばらばららしい。こどものころ好きだった食べ物の話をしている。芋は焼くのが好きだったとか、ふかしたのが美味いだろとか、どうでもいい話で盛り上がっている。なんだか楽しくて、リザは口元をほころばせた。
「そろそろ抜け出そう」
　マシュマロを食べ終わったらしい中佐が、そっとりざの袖を引いてささやいた。はぁい、となんだか甘えた言葉が出る。一瞬目を見張った中佐は、そのままやわらかく微笑んだ。
「器返しとくから」
　後で洗うつもりなのか、後方の机に積んである。そこに皿をそっと戻して、ふたりは建物を回るようにして基地を出た。道路に出ると正面から強い風が吹き付ける。
「寒いですね」
「ん。大丈夫？」
「大丈夫です」
　うっかり隣に並んでいたことに気がついて、リザは足をゆるめた。ふわふわと暖かかった頬が風に冷やされてぴりぴりする。
「楽しかったです……」
「同世代で笑い合うとか、今後ますます減るだろう」
　リザは彼の背中を見た。背筋は伸びている。前を歩く彼に遮られて、吹き付ける風が少しましだ。

今は見えない肩章のことを考えた。
　あんな物お互いになかったら、今も隣で笑えただろうか。
「構いません」
　地獄まで行くと言ったのだから。そもそも仲間を求めて軍人になったわけではない。いつだって追いかけているものはひとつだけだ。
　他の誰を遠ざけてもいい。願いをかける星としては、階級章は無骨すぎるけれど。
「とはいえ、もう少し仕事が増えたら、部下が必要になるんじゃないか」
　眼の前の背中が少しだけゆるんで、彼は振り返った。なんだか楽しそうに笑う。
「そういうのもいいだろう？」
「その時は私の意見も聞いてくれるんですか」
「もちろん。一緒に選ぼう」
「でしたら、喜んで」
「そう上手くはいかないと思うけど」
　中佐は頭をかくと、また前を向いた。リザは少しだけ足を早めて、その背中について行く。

November 18, 2025 at 8:25 AM

つかさ

@harutoomi.bsky.social

これは昨日浮かれたついでに回したジャンプコミックスの豆本のガチャの結果。
呪術だと嬉しいなーと思ったが、そう都合よくはいかんな。
そして写真だと豆本感が伝わらんな…。

November 16, 2025 at 1:03 AM

つかさ

@harutoomi.bsky.social

ポッキーの日かーと思いましたが、なんもネタがなかったので、手持ちを出す。
ロイアイのワンライ過去お題チャレンジ
お題は独り言
大佐中尉で多分つきあってない。少尉Sの会話。平和。

印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。

画像情報：generated by 新書ページメーカー / Photo by somephoto / フォント：源暎こぶり明朝

以下は本文の内容です。

「なあ、４５かける８って何」
　自席に戻ってきたハボックがやおら聞いてくる。えっと、とブレダは一瞬視線を浮かせた。
「３６０だな。４５０ひく９０だから」
「え？　まあともかく５００は多いよな」
「そりゃそうだろ」
　そんなものは計算するまでもなくわかる。
「大佐ね？」
　声を挟んだのはホークアイ中尉だった。ハボックは顔をそちらに向けると、そうっすよと軽く言う。
「４５かける８だから５００で～とかなんか言ってました。調子悪いんですか、大佐」
「違うわよ。次の演習の概算出されてるんだと思うわ。ああもう、急ぎの山はこっちですって言ったのに！」
　ちょっと私行ってくるわねとホークアイは慌ただしく部屋を出ていった。
　ハボックはブレダに視線を戻す。
「何アレ」
「あー、多分、大佐は計算途中を口に出したんだと思う。で、何の計算してるか中尉は心当たりがあったんだろ。そうすると大佐が仕事の優先順位を間違えている可能性が浮上したと」
「計算途中？　ああ、さっきブレさんが口にした４５０引く９０とかそういう」
　言っただろうかと一瞬ブレダは考えた。
「この場合は全部言ってるだろ。４５０だから３６０だなとか、そういう飛ばし方だと思うぞ」
「俺からすると４５０がどっから出てきたってな

るんだよ。や、振り返ればわかんだけどさ。今のだと４５は５０足らずなんだから、８をかけても４００より少ねえよなって先に思うから」
「ああ」
　そういえばおおよそをつかむのは早い男だった。均質な正確さをブレダは優先するが、ハボックはとりあえずで処理する。
　大佐は頭から計算して、それでも速そうな気がした。
「前に中尉が言ってたよな。先回りで動けるのは、大佐は考えてることを口に出すからだって」
「ああ。そういや言ってたかも」
　時々大佐はぽつりと思考の欠片をのぞかせて、中尉はそれに合わせて先回りして動く。ブレダもハボックもそんなのすっかり慣れきっていて、今更中尉の仕事の速さには驚かない。
　ハボックはタバコを取り出す。
「あれでわかんのは中尉だけだけどな」
「夫婦みたいなやり取りしてるよな」
　まあ、とブレダは呟く。その次のふたりの声はそろっていた。
「今更だけど」

November 11, 2025 at 6:55 AM

つかさ

@harutoomi.bsky.social

せっかくだから〜♪と手持ちのフォントなどで遊んでみたが、規定の枠だと物足りないな。
枠含めクリスタで制作してからテプラに読み込ませる方が良さげ。

November 10, 2025 at 6:11 AM

つかさ

@harutoomi.bsky.social

できた✨️
よく見たら左のラインが消えてるな。
難点は私が楽しい以外の使用用途がないことか🤔

November 10, 2025 at 3:34 AM

つかさ

@harutoomi.bsky.social

とりあえずテプラした。
曹長だけ線のメリハリつけてるので、他のもして、テープをちょっと可愛いのにしたらいい感じではないかな…。
たしかリボンも印刷できたよねぇ、テプラ。まあそこまではって気もするけど。

November 10, 2025 at 3:10 AM

つかさ

@harutoomi.bsky.social

遊んでみた。
使ったのは1/4のやつ。
こういうことするつもりなら個々の間は開いてたほうが良かったかもしれないが、まあ。

November 9, 2025 at 1:17 AM

つかさ

@harutoomi.bsky.social

ロイアイワンライ過去お題チャレンジ
お題は負けず嫌い
大佐中尉で付き合ってる。いちゃついてはいない…？なかよし。

印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。

画像情報：generated by 新書ページメーカー / Photo by Joanna Kosinska on Unsplash / フォント：源暎こぶり明朝

以下は本文の内容です。

　だいたい大佐は負けず嫌いなのだ。リザだって人のことを言えたものではないが。
　ふたりは酒を飲んでいた。
　大佐は両手を握って机を抑えるようにしている。グラスを睨んでいたが、とうとう机につっぷした。
「……くそ」
「たいさの負け、です」
　うふふとリザは笑う。結構酔いがまわっていたが、それでもまだ余裕はあった。ボトルのコルク栓をしめ、席を立って水を取りに行く。大佐にも飲ませたほうがいいだろう。
　大佐はそれほど酒に強くはない。普通程度には飲めるけれど、周囲の人間はかなり酒に対する耐性が強いので、比較として弱く見える。
　それなのに大丈夫だと彼は強弁したのだ。普段は簡単に酔うわけにはいかないから制限しているだけだと。それで勝負することになった。ここは大佐の家だし、明日はふたりとも休みだし、大佐の家にはいただきものの酒類がたくさんある。時間だってそれほど遅くなかった。悪ふざけみたいなものだ。
「お水、どうぞ、大佐。たくさん飲んでください」
「ん」
　ゆるゆる顔を起こすと素直に大佐は水を飲んで、顔を上げるとゆっくりと息を吐いた。顔はさっきから結構赤い。目だってうるんでいる。両手で顔をおおうと、また大きく息を吐く。
「あー、酔った」
「大丈夫ですか」
「うん。大丈夫……」

コップにまだ残っていた水を飲むと、大佐はふたたびうつ伏せになった。眠ってしまうかもしれない。今のうちに寝る用意をさせたほうがいいだろうか。あるいは少し休ませてからのほうが良いだろうか。
　リザは時計を見る。まだ大丈夫だろう。
「私、片付けてきますね。それから声をかけますから、少し休んでいてください」
　ん、と反応したようだったが、あまりにも曖昧だった。もう寝たのだろうか。
「大佐？」
　黒い頭は動かない。
「寝ました？」
　では片付けようとグラスとボトルを手に取る。そばに立ったついでに顔をのぞき込んだ。目を閉じている。耳元に唇を近づけてみた。
「ずっとずっと前から、私はあなたが大好きです」
　大佐のまつげがゆれる。目頭に力を入れたのか、まぶたにしわが寄った。
「……なん、で」
　大佐は声を絞り出す。
「しらふの、ときに」
「嫌ですよ。素面の時なんて、恥ずかしくて言えません」
「わたしだって、ずっと……」
　声は途切れる。力尽きたのだろうか。しばらくのぞき込んでいたが、リザは諦めてグラスを運んだ。洗う。気づけば鼻歌を歌っていた。自分の機嫌の良さを自覚するのは気恥ずかしいが、まあ酔っているので良しとする。

（私だって、ずっと？）
　なんだろう。どう続ける気だったのだろう。同じようにずっと好きだったというつもりだったのだろうか。
「時間だって、気持ちの強さだって、私が勝ちますよ」
　自信がある。だいたいリザは結構面倒くさい女なのだ。
　勝負したっていい。方法は知らないけど。
　ハミングしながら、リザはグラスを洗う。

November 8, 2025 at 12:37 AM

つかさ

@harutoomi.bsky.social

シールにするつもりだったので、複数印刷するつもりだったんですが、分割は登録時にしとかないと駄目なんですね。
そんなわけでマスタング組複数バージョンは　TW874L37TQ　です。
証明写真バージョンでできるかなって試したけど微妙にサイドが切れた。
そして曹長のシールを貼ってグッズですって言ってみる。パンチに貼ったときは可愛いかなって思いはしたｗ

November 6, 2025 at 7:39 AM

つかさ

@harutoomi.bsky.social

さっきのマスタング組のやつ、ネップリに登録したのでよろしければご利用ください。
9KL5DWGDDC
ファミマ・ローソン系。2025-11-14 13時頃まで。

1つ目の画像のQRコード読み込めばできるはず。
画像は3種類です。必要なものだけ選べると思います多分。
L版だったら200円かなー。
フュリー曹長のグッズが欲しい方向け曹長✕25もあります。シール印刷して切って貼ったらお手軽グッズ化！