Etsuko Oshita
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Etsuko Oshita
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訳書『森を焼く人』(M・R・オコナー、英治出版)5月21日刊行。これまで『絶滅できない動物たち』(ダイヤモンド社、2018年)、『ようこそウェストエンドの悲喜劇へ』(論創社、2022)など訳しました。
【演劇日記】『イッセー尾形の右往沙翁劇場番外編 銀河鉄道に乗って・すぺしゃるin有楽町』@有楽町朝日ホール

今回は宮澤賢治記念館を案内する老齢のバスガイド(制服と制帽がショッキングピンク!)の「賢治をバスガイド」と、安倍晴明の流れを汲むと言い張る怪しげな陰陽師の「神主2」がよかった。バスガイドが案内しているツアーには「太宰治の生まれ変わり」も参加していて、青森VS岩手の戦いが勃発した。「神主2」の、陰陽師のうさんくささが実にいい。祈祷は松竹梅でそれぞれ120万円、110万円、そして……24,000円。24,000円の梅だと、大幣(おおぬさ、大麻とも書く)なんて0.5回しか振ってもらえない。
December 7, 2025 at 2:05 PM
【展覧会日記】『暮らしの中のお菓子展』@港区立郷土歴史館

建物自体、昭和13(1938)年に竣工された旧公衆衛生院で、風格があった。その中に、この博物館と区の施設が入っている。展示は小ぢんまりとしていたが、区の博物館とは思えない充実ぶりだった。

今日いちばん驚いた展示は、カバヤの景品が生きた動物だったこと。特等は猿!で、1等はスピッツ1匹か「赤い」カナリア1羽。よくこんなこと思いついたし、実行に移したよなあ。とはいえ、この時代は向田邦子が電車の車窓から人に飼われているライオンを見ていたくらいだからなあ。あまりに楽しかったので、家に帰ってからの反芻用でカタログも買った。
December 3, 2025 at 9:07 AM
【高座日記】『桂米二兜町ひとり会第1回』@アートスペース兜座

演目は『替り目』、『まめだ』、『崇徳院』。どの噺もまくらをたっぷり語っていたので、3席でも2時間オーバー。

『替り目』の主人公は酒好きで貧乏でおかみさんを手足のようにこき使う、今でいえばクズだけれど、情に篤いところが垣間見えたりするから憎めない。だけど、ほんとにしょうむないやっちゃ。

『崇徳院』で、若い男女が出会うのが「こうづ」というお社なんだが、「仁徳天皇」などのキーワードが出てきて??となり、ググってみたら、大阪に、仁徳天皇を祀った高津宮(こうづぐう)という神社があるのね。今度行ってみよう。
November 27, 2025 at 5:29 AM
【演劇日記】「吉例顔見世大歌舞伎」@歌舞伎座

目当ては夜の部の三谷幸喜の『ショー・マスト・ゴー・オン』の歌舞伎版『歌舞伎絶対続魂(ショー・マスト・ゴー・オン)――幕を閉めるな』

歌舞伎版『ショー・マスト・ゴー・オン』は、舞台が伊勢で、台詞は完全に現代語。愛之助と雁治郎がバリバリの関西弁で演じている。世田谷パブリックシアターで見たオリジナルは『マクベス』の舞台裏という設定だったが、今回は『義経千本桜』の舞台裏。舞台が回転して『義経千本桜』の「川連法眼館の場」も演じられた。ここは本職の皆さんの身体能力に感心。

www.kabuki-bito.jp/theaters/kab...
November 3, 2025 at 4:55 AM
【映画日記】ウェス・アンダーソン監督『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』(2025年)@ホワイトシネクイント

ザ・ザ・コルダを演じたべニチオ・デル・トロは、最後の方の食堂のおやじ役のほうが断然はまってる(笑)。娘役のミア・スレプルトンは仏頂面がよく似合うと思っていたら、母親はケイト・ウィンスレットだった。母親も仏頂面というか不機嫌顔が迫力あっていいよね。ウェス・アンダーソンは仏頂面が似合う女優の使い方がうまい。

モノクロシーンにちょこっとビル・マーレイ、ウィレム・デフォーが出ていた。主役のザ・ザ・コルダをウィレム・デフォーが演じてもいいくらいなのに。

zsazsakorda-film.jp
September 23, 2025 at 9:39 AM
【演劇日記】塩田泰造作・演出『セメダインの涙』@下北沢シアター711

劇団クロスロード旗揚げ公演だ。リーフレットの「人生は『言ってみるもんだな』と『言わない方が良かったな』の繰り返し」とあるが至言。わたし自身、子どものころ「一言多い」とよく叱られた。それでも、多かった一言も含めて、言わなければわからなかったこと、成せなかったことのほうが多い。たとえ「言わないほうがよかった」という結末になっても、そうと知るためには言ったほうがよかった。

「目が平泳ぎしてる」など、印象的なフレーズがここ一番で効果的に繰り出される。斧出拓也さんのセリフ回しを聴いて、久々にほんまもんの関西弁やわ、となった。
September 6, 2025 at 9:49 AM
【演劇日記】神野美伽主演、マキノノゾミ作、白井晃演出『SIZUKO Queen of Boogie――ハイヒールとつけまつげ』@IMMシアター
sizukoboogie.yoshimoto.co.jp

笠置シヅ子の一生を、有楽町の街娼であるゆき(鈴木杏樹)との友情を軸にした物語にした。有楽町の街娼と友情を結んだのは事実らしく、有楽町の日劇のコンサートには、連日、彼女たちが大勢で詰め掛けたそうだ。

大阪で若いころ活躍した笠置シヅ子を、大阪府貝塚市出身の神野が演じる妙味。神野美伽の泉州弁が際立っていて、ほかの人たちはどうしても負けちゃうんだよな、頑張って関西弁しゃべっても。
August 3, 2025 at 10:22 AM
【高座日記】 『第7回 桂米二一門会』@日本橋社会教育会館ホール

昨日の座組は二豆さんの「明石飛脚」、二葉さんの「打飼盗人」、師匠の「向う付け」、無礼講トークが入ってトリは二乗さんの「植木屋娘」。

我が家イチオシのニ乗さんがトリ。二乗さんのまくらには、いつもペーソスがある。コロナ禍にUber配達をしていたというまくらが大好きなのだが、今回のあべのハルカスで無料の落語を披露したというまくらもペーソスがあった。

漫才では、前の演者のネタや話を自分のネタに取り入れるというのをよくやるのだが、「植木屋娘」では師匠の「向う付け」の面白いところを取り入れていた。それにしても、また鳴り物忘れたとは笑
July 23, 2025 at 5:28 AM
【イベント日記】 『谷川俊太郎さん、ありがとう』展@ほぼ日(渋谷PARCO)

吉本ばななが、佐野洋子と対談したときに、薬を飲みすぎてふらふらだった佐野を迎えにきた谷川を一部始終描写した文章をしみじみと読んだ。三度も結婚するなんて、と今でも思ってはいるが(余計なお世話だ笑)、愛する人にはほんとうに優しくて、心から愛情を捧げていたんだな、とは思う。

ほぼ日の谷川担当者が作成した手書きの思い出帳(あれは何と言うのだろうか)は力作だ。今はなき赤坂の文教堂のコメントや、昼から赤坂のビストロでワインを飲んでいる写真など、直接谷川を知らないわたしにも彼の声が聞こえてきそうだった。
July 10, 2025 at 8:17 AM
【『『訳書発売!】

M・R・オコナー『森を焼く人』(英治出版)、本日発売です。

著者のオコナーさんも、邦訳の刊行をとても喜んでいます。

オコナー作品を手掛けるのは第1作に続いてですが、本作で、「火」を通して彼女が自分を赤裸々に語っているのに驚き、生半可な気持ちではいかん、と居住まいを正して臨みました。一作ごとに、作品と彼女自身が進化・深化しています。女性として、母として、人間として、火とともに、火によって、彼女も変わっていきました。

彼女をはじめ、ふだんなら人生が交錯することなどないであろう人々が交わるときに発生するケミストリーや醍醐味も味わっていただけたらと思います。
May 21, 2025 at 3:39 AM
【見本出来】

『森を焼く人』、5月21日に発売です。

「森林火災って、場合によってはいいものなの?」

疑問を持ったら答えを得るために突っ走らないでいられない著者のオコナーは、デビュー作の『絶滅できない動物たち』同様、今回も、森林火災消防士として森林火災の現場や予防的火入れの現場で、体を張って答えを探します。彼女の「火」をめぐる旅は、「火」の知られざるさまざまな側面に私たちを誘います。

ぜひお手にとって答えを確かめていただければと思います。
May 11, 2025 at 4:00 AM
これが原書カバーです。
April 19, 2025 at 12:39 AM
【高座日記】第50回『京の噺家桂米二でございます』@内幸町ホール

二豆さんの「松山鏡」は越後が舞台だけど、ニ豆さんが演じるとなんとなく無国籍風っぽかった。越後訛りでやるのは難しいのかな。この噺、しみじみとしてそれでいておかしい。

「百年目」は1時間近くの大ネタだった。こういうのを名人の語りで生で聴く醍醐味ときたら。贅沢な時間だったな。小僧のころから店で育った叩き上げの番頭が、羽目を外したところを見かけた主人とのやりとりがもうおかしいったらない。粋な旦那ってこういうもんなのね。この噺のまくらで師匠が披露してくれた人間国宝(=桂米朝)の文化勲章受章時のエピソードに腹を抱えて笑う。
January 18, 2025 at 10:08 AM
【パフォーマンス日記】が~まるちょば"Everybody hates MIME GAMARJOBAT CINEMATIC COMEDY JAPAN TOUR 2025"@よみうり大手町ホール

小道具を使ったが~まるショー、ショートスケッチ「床屋」と「映画監督」。「映画監督」は客席から男性2名、女性1名を引っ張り出した。男性も女性も腹をくくって堂々と演じていて、客席からは拍手喝采。

休憩を挟んで長めのマイムショーは新作の「逢いたくて、、、」。毎度ながら、後半は頭をけっこうフル回転させている。人間がいかに言語に頼っているかがよくわかるし、わたしは言葉の人間なんだな、と実感。
January 16, 2025 at 2:13 PM
【高座日記】『新春! 若手噺家寄席二部~江戸落語と上方落語~』@雷5656会館ときわホール

創作落語の会ということだったが、朝枝さんだけ古典落語の「加賀の千代」。これがまたよかった。声色の使い分けが巧みだった。朝枝さんもお公家さんみたいな顔立ち。

笑金さんは、見た目が完全に漫才芸人(髪型が富山県でしばらくいじられていた)なんだけど、創作ネタがダークでシュール。ご本人は詩も書くといっていたが、SFっぽかった。

トリの三実さんは、年末にNHK新人落語大賞を受賞したそう。「頭すこーんと割ってストローで脳みそチューチュー吸うたろか!」が、東京で受けなくてごめん。(未知)やすえ姐さんごめんなさい。
January 5, 2025 at 7:19 AM
【高座日記】「米二・銀瓶・風間杜夫三人会 vol.2」@朝日生命ホール(大阪・淀屋橋)

銀瓶さんの落語を初めて見たが、口跡も人物を演じる表情もいい。ふつう、羽織はまくらから噺に入るときに脱ぐのだが、「質屋蔵」ではマッチョ(だけど怖がり)な人物が登場するタイミングで羽織を脱ぐ、というなかなか粋な演出だった。

風間さんは含羞の裏返しのような紹介を含めたまくらを延々とやるもんだから、もしかして漫談で終わるのか?!とひやひやした。さすが俳優、登場人物の演じ分けはお手のもの。婀娜な姥桜も、焼きもちを焼く若女房もまったくの別人だった。またぜひ落語を聴いてみたい。
October 6, 2024 at 9:39 AM
Bluesky のユーザー数は現在 1,000 万人を超えており、私は #98,333 番目でした。
September 17, 2024 at 11:13 AM
【展覧会日記】『庄野潤三展』@神奈川近代文学館

会場に執筆していた机や愛用していたコートやご近所の山田さんお手製のカーデガンなどが展示されていた。毎年正月に開催していた百人一首大会の賞状を見て、ちょっと涙が出た。龍也さんには優勝の賞状、千壽子さんには敢闘賞の賞状で、授与者は「生田山山主 庄野潤三」とあった。年始に三世代で集まってこういう時間をもてた家族の幸せのお福分けをもらった気分だ。

展示後に、庄野作品にしばしば登場する「かきまぜ」を頂いた。ちらしずしの小豆島バージョンなのだが、甘い煮豆が入っていた。少ししか入っていないので、味の邪魔にならない。おもしろい趣向だな、と感心した。
August 1, 2024 at 7:34 AM
【パフォーマンス日記】が~まるちょば『珠玉の短編集 真面目・不真面目・馬鹿・利口』@I'M A SHOW

Openingから始まり、「床屋」、「ドライブ」、「ラーメン屋」、「約束」の新作4本で、上演時間は休憩なしの1時間半。HIRO-PONの音楽のチョイスにいつもながら感心する。「ドライブ」のところではベタながらビートルズの"Drive My Car"、おしどり夫婦の一生を描いた「約束」では”Stairways to Heaven”のイントロだけとか、音楽の使い方が絶妙だ。

「ラーメン屋」のオチが、夫で意見が分かれた。私のほうがダークなオチだったんだけど、あれはどっちが正解なんだろうか。
July 24, 2024 at 8:56 AM
【展覧会日記】『民藝 MINGEI』展@世田谷美術館

イギリスでも、いわゆる美術品を展示する美術館よりは工芸品を展示するヴィクトリア&アルバート美術館のほうが好きだった。「用の美」に惹かれるらしい、とわかったのは最近のことだ(わかるの遅すぎ)。

この展覧会では、日本の民芸品だけでなく、縄文土器や海外の食器や家具や衣装も展示されていた。

今なお職人が生産している工芸品も展示されている。一子相伝の品あり、必死で消滅を食い止めている品もあり。繊細な手仕事の美しさに惚れ惚れとする。とはいえ、とてつもない労力がかかっていて、後継者を見つけるのが難しいというのも現実としてある。
June 4, 2024 at 9:30 AM
【高座日記】『第6回 桂米二一門会』@内幸町ホール

二豆さん「やかん」、二葉さん「青菜」、二乗さん「一文笛」、そして米二師匠「軒づけ」。二葉さんバージョンの「青菜」は登場人物が威勢がいい。

昨日、一番いいなと思ったのは二乗さんの「一文笛」だ。時間が押したのか?!まくらなしで、すぐ噺に入った。人情噺なのに最後のオチはずるいぞ。写真撮影可の無礼講トークで、二乗さんの場外ホームラン級のうっかり(二律背反だな、これだと)が暴露されて、会場唖然&大笑。
May 15, 2024 at 10:49 AM
【展覧会日記】『大吉原展』@東京藝術大学大学美術館

この展覧会では、実際の吉原の町を模して、それぞれのブースで吉原のしくみや遊女の日々のあれこれなどを、実際に残っている史料などをもとに解説しているセクションもある。辻村寿三郎の人形を実際の遊郭の建物に配置した模型は見事だった。

酒井抱一が花魁を身請けして、二人で幸せに暮らした、というエピソードに心動かされた。そんなハッピーエンドはほとんどないだろう。一緒になれてよかったねえ、という夫婦合作も残っている。だが、そんなのはほぼ皆無で、吉原が焼け落ちたほとんどのケースは遊女の放火だった。

こういうのを全部ひっくるめての吉原だったのだ。
April 25, 2024 at 10:45 AM
【演劇日記】塩田泰造脚本・演出『ネムレナイト』鑑賞@下北沢ザ・スズナリ

劇団「大人の麦茶」ラストオーダー(劇団活動休止)公演だ。

それぞれの人物描写が際立っている。くずのような人物も登場するが、くずにも五分の魂ということで、どこか憎み切れない人間臭さが残る。若い男性二人の幽霊も、若さならではのバカさ故に命を落とすが、それも愛おしい。堅物住職と妹は、悲しい過去があってそれぞれの今がある。とくに妹は、好きになった人が全員死んでしまったという過去があり、そのトラウマを拭い去るころができない。最後の救いに泣きそうになった。

舞台の後ろでギター、ドラム、ハーモニカの生演奏つき。これも贅沢。
April 21, 2024 at 6:59 AM
【ライブ日記】"Rod Stewart Live in Concert: One Last Time"@有明アリーナ

いや~、楽しかった! 来年傘寿なのに、はるばる飛行機乗ってやってきて、2時間(途中何度か消えたとはいえ)みっちり動き回って(楽器やらないと自分が動くしかない)。

Christine McVieの追悼でChristineがチキン・シャック時代にカヴァーした"I'd rather go blind"、Tina Turnerの追悼で"It takes two"を披露。

途中でセルティックの試合のシーンが流れ、ゴールした古橋が一瞬映った。こういうサービス精神もにくいではないか。
March 21, 2024 at 2:58 AM
【演劇日記】「十八世中村勘三郎十三回忌追善 猿若祭二月大歌舞伎」@歌舞伎座。

演目は「新版歌祭文 野崎村」、「釣女」、「籠釣瓶花街酔醒」の3作。出色はなんといっても最後の「籠釣瓶花街酔醒」だ。佐野から出てきた絹商人の次郎左衛門と太夫の八ツ橋を勘三郎の息子二人が演じている。八ツ橋の間夫は、なんと今年で80歳の仁左衛門! 佐野さんがいい人でいい人で、愛想尽かしされて悪しざまに罵られてもじっと我慢して周りを気遣う場面では、泣いている観客もいた。顔で笑って心で泣いて、そして最後のクライマックスへ。仁左衛門が粋で男前は言うまでもないが、小悪党の権八(尾上松緑)が、こにくらしいったらありゃしない。
February 19, 2024 at 12:18 AM