雑文: https://sizu.me/kimitsuka
ワトスンとホームズの出会いから始まる第一作。開幕から凄い勢いで属性が盛られていく名探偵。長身、驚異的な観察眼、極端に偏った熱意と知識、武道の心得、ヴァイオリンを嗜む、探偵術を褒めると照れる。にわか知識でも知ってたものから意外だったものまで様々で楽しい。ホームズの魅力を詰め込みながら、内容は推理劇のほかにも軽快な会話あり、アクションあり、たっぷり尺を使った背景描写ありで面白かった。シリーズに繋がるような締めも印象的。
ワトスンとホームズの出会いから始まる第一作。開幕から凄い勢いで属性が盛られていく名探偵。長身、驚異的な観察眼、極端に偏った熱意と知識、武道の心得、ヴァイオリンを嗜む、探偵術を褒めると照れる。にわか知識でも知ってたものから意外だったものまで様々で楽しい。ホームズの魅力を詰め込みながら、内容は推理劇のほかにも軽快な会話あり、アクションあり、たっぷり尺を使った背景描写ありで面白かった。シリーズに繋がるような締めも印象的。
人によっては劇薬になりそうな恐ろしい小説だった。動悸がしてきた。就活対策のため集まるようになった若者たち、不安定な時期の関係性の中で自己と向き合う彼らの就職活動。就職活動という特異なイベントを扱った作品は様々にあれど、本作が描き出している彼らの内面はあまりに質感がある。焦燥感、妬み、苛立ちといったネガティブな感情が隙間から僅かに漏れ出すような言葉が紡がれていく。また、その中でSNSも本作のテーマにおいて効果的に使われていた。あの時期にあった痛ましさを思い起こさせ、同時にそれが本当にすべて過去のものなのかが一人ひとりに突きつけられる。自傷行為のような読書だった。
人によっては劇薬になりそうな恐ろしい小説だった。動悸がしてきた。就活対策のため集まるようになった若者たち、不安定な時期の関係性の中で自己と向き合う彼らの就職活動。就職活動という特異なイベントを扱った作品は様々にあれど、本作が描き出している彼らの内面はあまりに質感がある。焦燥感、妬み、苛立ちといったネガティブな感情が隙間から僅かに漏れ出すような言葉が紡がれていく。また、その中でSNSも本作のテーマにおいて効果的に使われていた。あの時期にあった痛ましさを思い起こさせ、同時にそれが本当にすべて過去のものなのかが一人ひとりに突きつけられる。自傷行為のような読書だった。
世界を研究する少年のSF。少年に「少年」と呼びかけるお姉さんが出てくる。やったぜ。かわいいペンギンもいっぱい出てくる。良い小説だった。少年は少年なので、どれだけ聡くてもエネルギーがあっても、その世界には限界がある。わからないこともままならないこともたくさんあって、それでも謎を追いかける少年の記録は時に微笑ましく時に切ない。他方、世界の果てを求める試みは、我々に置き換えると科学的な営みそのものであるとも言える。探求に関する父親の言葉は示唆に富む。
世界を研究する少年のSF。少年に「少年」と呼びかけるお姉さんが出てくる。やったぜ。かわいいペンギンもいっぱい出てくる。良い小説だった。少年は少年なので、どれだけ聡くてもエネルギーがあっても、その世界には限界がある。わからないこともままならないこともたくさんあって、それでも謎を追いかける少年の記録は時に微笑ましく時に切ない。他方、世界の果てを求める試みは、我々に置き換えると科学的な営みそのものであるとも言える。探求に関する父親の言葉は示唆に富む。
刀城言耶シリーズ一作目。面白すぎて来年はシリーズ全部読もうと決めた。さっき。民俗学ホラーと本格ミステリの楽しい部分が詰まっている。私はこういうホラーが好きだし、こういうミステリが大好き。憑き物を主題に、現実と非現実の境界にあるような山深い村で起こる怪死事件、とそこにのこのこ紛れ込む怪奇幻想作家。多量の民俗学的な蘊蓄を交えながら世界観と事件の経緯が書き込まれていき、それがミステリ部分の土台にもなっているという構成が素晴らしい。悍ましい現象の描写もいちいち雰囲気があってとても良かった。
刀城言耶シリーズ一作目。面白すぎて来年はシリーズ全部読もうと決めた。さっき。民俗学ホラーと本格ミステリの楽しい部分が詰まっている。私はこういうホラーが好きだし、こういうミステリが大好き。憑き物を主題に、現実と非現実の境界にあるような山深い村で起こる怪死事件、とそこにのこのこ紛れ込む怪奇幻想作家。多量の民俗学的な蘊蓄を交えながら世界観と事件の経緯が書き込まれていき、それがミステリ部分の土台にもなっているという構成が素晴らしい。悍ましい現象の描写もいちいち雰囲気があってとても良かった。
時代小説って本当に読まなくて、どんなものかもあまりわかっていなかったのだけれど、とても自由なものだということがわかった。下剋上や謀反のイメージで語られがちな松永久秀、その人生を語り直すという趣向の歴史巨編。先進的な価値観と思考でキャラ付けされた久秀が苦闘しながらも人との縁を繋ぎ、前に進もうとするストーリーは現代人の視点からもわかりやすく、感情移入しやすいものとなっている。人気のある作家だというのがよくわかる。北方謙三氏の解説にもあるように、時代は極論いつでもいいのかもしれなくて、設定は設定として書きたいものがあると伝わってくる作品だった。
時代小説って本当に読まなくて、どんなものかもあまりわかっていなかったのだけれど、とても自由なものだということがわかった。下剋上や謀反のイメージで語られがちな松永久秀、その人生を語り直すという趣向の歴史巨編。先進的な価値観と思考でキャラ付けされた久秀が苦闘しながらも人との縁を繋ぎ、前に進もうとするストーリーは現代人の視点からもわかりやすく、感情移入しやすいものとなっている。人気のある作家だというのがよくわかる。北方謙三氏の解説にもあるように、時代は極論いつでもいいのかもしれなくて、設定は設定として書きたいものがあると伝わってくる作品だった。
すごい作品だった。第一に、サスペンスとして抜群に面白い。彼女の足取りを追うストーリーは驚きと悲しさに満ちていて、長編ながら一気に読ませられる。当時の社会とその背後にある精神性、そこに生きる人々が生き生きと描かれており、今読んでも真に迫った印象を受ける。作品全体に横たわる主題については時代を超えた普遍性があり、作家の視線の鋭さを如実に示している。16年後には世界金融危機があり、また情報・虚飾・孤独といった視点は極めて現代的でもある。自己責任論に反論する弁護士は、今の世界を見て落胆するだろうか。幸せになりたかっただけなのに。その言葉はとても重い。
すごい作品だった。第一に、サスペンスとして抜群に面白い。彼女の足取りを追うストーリーは驚きと悲しさに満ちていて、長編ながら一気に読ませられる。当時の社会とその背後にある精神性、そこに生きる人々が生き生きと描かれており、今読んでも真に迫った印象を受ける。作品全体に横たわる主題については時代を超えた普遍性があり、作家の視線の鋭さを如実に示している。16年後には世界金融危機があり、また情報・虚飾・孤独といった視点は極めて現代的でもある。自己責任論に反論する弁護士は、今の世界を見て落胆するだろうか。幸せになりたかっただけなのに。その言葉はとても重い。
マンションで起きる怪異現象を端緒として、過去に遡りながら怪談が連鎖する、重厚なドキュメンタリーホラー。ディティールの作り込みが凄まじい。関係する人物の家族構成・来歴から始まり、土地の成り立ち、戦争やバブルも挟む歴史的な経緯が仔細に書き込まれており、現実感のある怖さの描写に繋がっている。民俗学的な視点を中心に作家の幅広い知識と綿密な下調べを感じる。奇を衒ったギミックや目新しい小道具は出てこないけれど、「穢れ」を主題として語られる世界観は、当たり前に怪異が存在するかもしれないという恐ろしいものだった。
マンションで起きる怪異現象を端緒として、過去に遡りながら怪談が連鎖する、重厚なドキュメンタリーホラー。ディティールの作り込みが凄まじい。関係する人物の家族構成・来歴から始まり、土地の成り立ち、戦争やバブルも挟む歴史的な経緯が仔細に書き込まれており、現実感のある怖さの描写に繋がっている。民俗学的な視点を中心に作家の幅広い知識と綿密な下調べを感じる。奇を衒ったギミックや目新しい小道具は出てこないけれど、「穢れ」を主題として語られる世界観は、当たり前に怪異が存在するかもしれないという恐ろしいものだった。
シンプルに面白かった。37年前の作品にしてはとかそんな留保が必要なしに、今でも余裕で魅力的な設定のパズラーとして成立している。火山の噴火に脅かされる陸の孤島、極限状態のフーダニット。読者への挑戦状がついているタイプのいかにもなパズラーでありながら、青春とサバイバルと少しのオカルティズムとが含有されたストーリーは印象的なものだった。なお自分の推理は清々しいまでに外れた。
シンプルに面白かった。37年前の作品にしてはとかそんな留保が必要なしに、今でも余裕で魅力的な設定のパズラーとして成立している。火山の噴火に脅かされる陸の孤島、極限状態のフーダニット。読者への挑戦状がついているタイプのいかにもなパズラーでありながら、青春とサバイバルと少しのオカルティズムとが含有されたストーリーは印象的なものだった。なお自分の推理は清々しいまでに外れた。
モダンホラーの先駆ともされる作品。今から見ると怪異自体の描写はわりと素朴だと思うものの、37年前に書かれたという古臭さは全く感じない。生と死の境界でストーリーを構築しつつ、視点となる家族の背景設定と内面描写が特徴的で興味深い。怪異に目を向けると気付かれてしまうという描写はありがちだけれど、目を背けていれば救われるのかみたいな。語られていない部分もあって、あまり話を広げすぎず、家族のストーリーとして閉じているのが印象的だった。
モダンホラーの先駆ともされる作品。今から見ると怪異自体の描写はわりと素朴だと思うものの、37年前に書かれたという古臭さは全く感じない。生と死の境界でストーリーを構築しつつ、視点となる家族の背景設定と内面描写が特徴的で興味深い。怪異に目を向けると気付かれてしまうという描写はありがちだけれど、目を背けていれば救われるのかみたいな。語られていない部分もあって、あまり話を広げすぎず、家族のストーリーとして閉じているのが印象的だった。
ガリレオってドラマも見たことないんよね。わりとちゃんと社会性があるタイプの大学教員だった。人間味があって、コーヒーはインスタントで、煙草は吸わない。ドラマティックで綺麗に構成された倒叙ミステリ。あと、今更何を言ってるんだお前はって感じだけれど文章がめちゃくちゃうまい。端的な表現と計算された描写の選択でリズムが良く、作品の臨場感に繋がっている。
ガリレオってドラマも見たことないんよね。わりとちゃんと社会性があるタイプの大学教員だった。人間味があって、コーヒーはインスタントで、煙草は吸わない。ドラマティックで綺麗に構成された倒叙ミステリ。あと、今更何を言ってるんだお前はって感じだけれど文章がめちゃくちゃうまい。端的な表現と計算された描写の選択でリズムが良く、作品の臨場感に繋がっている。