猫山　凪
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猫山　凪
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猫山 凪です。20↑超。９４でドロ。字書きです。審神者騎空士です。日常やゲーム、小説や絵など適当に垂れ流します。腐ってますよ(´⊙ω⊙`)
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あ、でもあれだな。去年と違って、頭と顔チョコでくっついてるなぁ……
November 11, 2025 at 3:58 AM
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（ー∠ー）「ふふふ、今年もこの季節が来たねぇ」
(;　ﾟдﾟ）「…お、おい、もふ公…か、可愛いんだけど、可愛いんだけどさぁ…これ、去年のでぃぐだを反対にしただk…」
（ー∠ー）「おい馬鹿もふ造！！シッ！！思ってても言っちゃ駄目！！」
(;　ﾟдﾟ）「お前だってそう思ってんじゃねぇか！！」
November 11, 2025 at 3:50 AM
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（ー∠ー）「うふふ♪諸君、本日発売だよ。前回同様胸熱な展開だろうから、やるのが楽しみだねぇ」
(　ﾟдﾟ）「大変だぜ！もふ主、間違えて買ってるんだぜ！」
（ー∠ー）「ふふふ、間違えてないのだよ。ようやくご招待があったらしくてね、年内には届くのだよ」
(　ﾟдﾟ）「それまで積みゲー！！」
（ー∠ー）「そもそも、もふ主はまだてぃあきんが終わってない」
(　ﾟдﾟ）「完全なるネタバレあるじゃねぇか！！」
（ー∠ー）「もふ主がクリアするまで、私が遊んでおこうねぇ。何、ネタバレなんて無作法はしないさ。もふ主は精々頑張りたまえ」
November 6, 2025 at 7:06 AM
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（2/2）
後でしれっと支部のキャプションに追加しておきます。文字数引っ掛からなければ。
手綱を持っていて欲しいものだ。 「……あんただってさぁ、人間に殺されたんだから、良い加減、退治人の真似事やめなよ。竜の旦那だって、そう望んだから、あんたを〝愛玩用〟にしたんだろ」 ――もう、これ以上傷付いて欲しくないから。 そう、望まれたのだと。暗に告げれば、目の前の退治人は、眉根を寄せて思わず、閉口する。 ふわりと両者の間を静寂が抜けるように、夜の風がするりと通り過ぎた。 ドラルクのその望みは分かっている。分かっているのだけれども、それでも。 「――そんなロナルド様は、解釈違いなんだよ、クソ雑魚ウスバカゲロウが！！」 勝手に人に殺されて、勝手に屍人にされかけて。 そんな自分の落ち度は、重々承知の上だ。 だからこそ、面と向かって言えないその胸の憤りを、ロナルドは思わず、月に向かって吠えた。 例え、人に殺されても。傷付けられても。それでも、自分は退治人なのだ、と。 それでも、人を護りたいのだ、と。 吠えるその声は、夜の魔都に虚しく反響して、夜に溶けた。 途端、微かな羽音が耳に響き、ふわりと音もなく、〝夜〟が背後に舞い降りた。 「――何が、解釈違い、だって？」 ねぇ、ロナルド君？　……と。 そっと、背後から退治人の顎を捉えた細い指が、優しく頬を撫でる。 今では自分よりも温かな体温を持つその指が、不満を口にする唇を塞ぐ。 赤く仄暗い執着を揺らすその瞳を見上げれば、にぃ、とその吸血鬼は笑みを浮かべた。 「……げ、ドラルク……なんで、ここにいんだよ……」 今日は、ゲームするから城から出ないって言ってたのに、と。 シンヨコへと出掛ける前に交わした会話を思い出しながら、ロナルドは思わず固まった。 それに、にっこりと笑ったドラルクは、きゅっと顎を捉える指に僅かに力を込めた。 「いやー、そのつもりだったんだけどねぇ。マナー君が電話くれたし、それに、使い魔の状態が分かんない程、弱い吸血鬼じゃないからさぁ、私ぃ」 で、この状況は何？　説明してくれる？　――と。 おいたを働く使い魔に、執着に塗れた瞳を綻ばせて、吸血鬼は優しく嗤った。 その様を、一歩離れた所から眺めながら、マナー違反は、哀れな退治人の姿に肩を竦めたのだった。
November 2, 2025 at 1:26 PM
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「とある屍人の主張」
「きみと辿る黄泉路なら」の後の話のグール化読ドロになります。ちょっとグロいので苦手な方はご注意下さい。（1/2） #新書ページメーカー https://sscard.monokakitools.net/pagemakers/shinsho/shinsho_bgtx.php
印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。 付記に「とある屍人の主張」、「きみと辿る黄泉路なら」と記載されています。 画像情報：generated by 新書ページメーカー / オリジナル素材 / フォント：源暎こぶり明朝 以下は本文の内容です。 ドゴンッと一際重たい音を立てて、下等吸血鬼が地面に叩きつけられ、彼方へと弾き飛ばされる。 瞬間詰めた息を僅かに吐いて、蒼天の瞳がそれを見送った。 「……あーあ。また、やっちまったな……」 力の限り振り下ろした腕に違和感を感じる。 予想通り、ぼきり、と。あらぬ方向に折れ曲がった自らの腕を見下ろして、元退治人は思わず苦笑した。 女性を襲おうとした下等吸血鬼を、咄嗟に殴り飛ばした。その際に少し、力加減を間違えたのだ。 突然現れ、自分を救った謎の青年。下等吸血鬼を殴りつけた際に、目深に被っていたキャップがぱさりと地面に落ちて。電燈に煌めく白銀の髪が、さらりと揺れる。 そんな突拍子もない出来事を前に尻餅をついて、呆然と此方を見上げてくる女性の視線から、さっと腕を隠して、思わず苦笑する。 「……あ、あぁ……あなたは……」 ロナルド、様……と。まるで幽霊にでも出逢ったかの様に、女性がその名を口にする。 それに、しまったな、と思いながらも、半ば諦め気味にキャップを被り直した。 世間では既に、死んだ事になっているのだ。……実際、既に生命活動は行なっていない。 少し深く被り直したキャップと伊達眼鏡の奥で、きらりと揺れる蒼天の瞳を細め、秘密を強要するようにしぃ、と。 唇に長い人差し指を当てて笑う元退治人は、ひらりと夜に消えた。 ふわりとした風だけを残して、瞬きのうちに立ち 消えた人影は、まるで、そこには最初から誰もいなかったかのように。 突如、目の前から消えた元退治人の姿に、女性は慌てて辺りを見回したが、もうその姿を見付ける事は適わなかった。 「あーもう！！　突然呼び出すのやめてくれる！？　俺にだって都合ってもんがあるっていつも言ってんでしょうが！！」 カン、カン、カン、と。甲高い鉄の音を奏でる古びた廃ビルの鉄階段。耳に充てた携帯で、その向こうの相手へと文句を訴えながら、不機嫌そうに廃ビルの屋上へと登る。 一歩、一歩と階段を踏み締める度に、緩く束ねた長い髪が揺れる。 桃色の髪に毛先にだけ青が混じるその吸血鬼は、その赤い瞳を細め、辿り着いた屋上の暗がりへと視線を向けた。 眠らぬ街、魔都シンヨコであろうとも暗がりが深い場所もある。人目を避けるように聳え立つ廃ビルの暗がりに、その人物はいた。 気怠げに屋上の縁に座り、おー、と。 へらりと悪びれた様子もなく、携帯を片手に手を振る元退治人の姿に、吸血鬼マナー違反は、呆れた様に肩を竦めた。 「急に呼び出して悪りぃな、マナー。またやっちまったから、これ治してくれよ」 ……ドラルクに見つかる前に、と。 ぶらんとあらぬ方向に曲がったもう片方の手をひらりと揺らし、元退治人は事も無げに笑う。 ある程度予想していた通りの現状に、はぁーっと 深い溜息を吐きながら、マナー違反は携帯の通話ボタンを切った。 「なに？　あんたまたやったの？　懲りないねぇ。竜の旦那が見たら、それお冠でしょ」 携帯電話をポケットに仕舞い、ひらりと元退治人に歩み寄るマナー違反。その言葉に、口をへの字に曲げて、元退治人は辟易とした様子で肩を竦めた。 「だから、早く治せって言ってんの。しょうがねぇじゃん？　下等吸血鬼がいたんだからさぁ。ちょっと殴り飛ばしただけで、このザマよ。……人間だった頃と違ってリミッターが仕事してねぇんだよ。力の制御がピーキー過ぎなんだが、オタクらのメンテナンス不足じゃね？」 クーリングオフ利きます？　……と。 軽口を叩きながら、ついっと歩み寄ってきたマナー違反にその折れ曲がった腕を差し出す。 差し出された氷のように冷たいその腕を手に取って袖を捲り上げれば、やはり中の骨が折れているのか。 僅かに破けた皮膚の切れ間から白いものが見えた。 月夜に照らされても尚、青白い顔色の元退治人。その涼しい顔を見下ろしながら、マナー違反は、何度目かの深い溜息を吐いた。 「だから、何度も言ってんでしょ。あんたは雑用用の屍人じゃなくて、〝愛玩用〟なの！　その為に残した機能と残さなかった機能があんの！！　退治人だった頃みたいにはいかないの！！」 「……だから、なんでロナルド様が寄りにもよって〝愛玩用〟なんだよ。クーリングオフしろ、クーリングオフ！！」 「しょうがないだろ！！　クライアントがそう望んだんだから！　だから、うちのジーちゃんがあんたを〝愛玩用〟の屍人にしたの！！　文句があるなら、竜の旦那に直接言えば！！」 「アイツが聞く耳持たないの、知ってんだろ！？」 ギャンギャン、と。吠える互いの声が廃ビルの暗がりに反響する。 彼の祖父、エルダーによって屍人へと作り変えられた身体に、未だに納得がいっていないロナルドは、度々こうして孫のマナー違反に文句を垂れる。 けれども、クライアントであるドラルクによってオーダーされた事は、確実にこなされている為、どんなに屍人本人が文句を言っても覆る事は無いのだ。 定期のメンテナンス以外に、こうして急遽のメンテナンスに駆り出されるマナー違反にしてみれば、溜まったものではない。 元々、シンヨコでの顔馴染みという事もあり、その気安さ故にロナルドも、エルダーのメンテナンスよりは幾分か緊張せずに受ける事が出来る。 そういう事情もあって、度々こうして呼び出されるのだが、その度に彼の主人であるドラルクの顔色を窺わなければならないのが厄介で堪らないのだが。 まして、こうやって勝手に身体を壊して、それを気付かれる前に治せ、だなどと。 彼の主人に事後報告しようものなら、どんなとばっちりが来るか分からない。 此処に来る前に、既にクライアントには報告済みだ。 ギャンギャン騒ぐ自分の使い魔くらい、ちゃんと
November 2, 2025 at 1:26 PM
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すんすんと出会っ谷。
初めて見た時、似てる(´⊙ω⊙`)！？って思っ……（文章はここで途切れている。
October 21, 2025 at 1:53 PM
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（3/3）格好良い読ロさんなんていなかったんや。勝っても負けても結局は泣かされる事は決定事項な読ロさんでした。
October 9, 2025 at 1:11 PM
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（2/3）
October 9, 2025 at 1:09 PM
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遅刻しましたが、ハンターズムーンだったので、この夜を切り裂いて踊れのIF勝利編の小話を書いてみました。（1/3）
October 9, 2025 at 1:08 PM
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ドロいめそんお求めの方がいたので、個人的ないめそん晒してみました。大分偏りがありますが。基本、恋愛脳よりバトル脳なもので。
何でもかんでも、いめそんに聞こえる病を患っていてな…(´⊙ω⊙`)
October 6, 2025 at 2:35 AM
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立たせた後、ぱっと手を離し倒れるまでの間に撮ったが、変に躍動感がでたもふどさんでした。NG集(´⊙ω⊙`)
September 24, 2025 at 12:29 PM
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( ⁰ Д ⁰ )「そういえば、えっほえっほできるんだぜってネタをもふ主に放置されてたんだぜ」
（－ゞ－）「遺憾の意。私の渾身のえっほえっほをお蔵入りするなんて」
( ⁰ Д ⁰ )「理想と現実wどう足掻いても倒れるくそ貧弱が頑張ったと思うぜ？」
（♯－ゞ－）「むきー！体幹つよつよごりらめ！」
September 24, 2025 at 12:28 PM
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この間の幻覚バトルネタ、まだネタ詰めてるとこなんですが、オチだけ先に浮かんじゃってぇ。ネタバレ大丈夫だよ！って方だけどうぞ！！（待て
まぁ、予定は未定なので。いつ書き上がるか分からないのでw
September 13, 2025 at 3:41 PM
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そういえば、せりあさんにこんなの売ってて、出来心で谷を詰めてみたらこうなった。謎の生き物感ww
頭出せば、谷だなってなった。
August 28, 2025 at 11:33 AM
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（ー∠ー）「いやぁ、久し振りの本誌だねぇ。大きい私、流石の畏怖さだろう？」
(　ﾟдﾟ）「ョンも元気で可愛いなぁ。…でっかい俺、なんかめっちゃ緊張してるな…がんばれー」
（ー∠ー）「久々の表紙で舞い上がってる感あるよね。こうやって、大きい私達の活躍がまた見られるのは、感無量だねぇ」
August 28, 2025 at 11:29 AM
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きみを攫うは夏の青の後の加筆部分。独占欲つよつよおじさん。
弊ドロこう言うお題９７お借りしてます。
(1/1) #新書ページメーカー https://sscard.monokakitools.net/pagemakers/shinsho/shinsho_bg.php
印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。 付記に「きみを攫うは夏の青」、「弊ドロこう言う９７「寝るまでこうしてて」」と記載されています。 画像情報：generated by 新書ページメーカー / Photo by Karina Vorozheeva on Unsplash / フォント：源暎こぶり明朝 以下は本文の内容です。 『……俺が、寝るまでこうしてて……』 彼にしては珍しく随分と殊勝な事を言うものだ、とドラルクは思った。 ソファーに寄り掛かりながら、眠りに着く彼を邪魔せぬよう、光を抑えたゲームの画面へと視線を落としていたら。 不意にマントを掴む微かな力を感じた。 それにどうしたのかと、横になった彼を見上げれば、毛布に包まった塊が、そう言った。 普段の彼からは到底想像出来ないような、弱々しい力。そっと指先でマントを摘み、けれども、縋る事に躊躇っているのか。戸惑った瞳を隠すように、毛布の中に雲隠れを決め込んでいた。 ふわふわと動くその髪先だけが、此方を伺っている。 まるで、悪い夢に怯える子供のような、そんな自分の行動に、彼自身も戸惑っているのが何となく雰囲気で分かった。 此処でいつもの様に揶揄おうものなら、彼もきっといつもの様に此方を殺し、臍を曲げて怒りながら眠るだろう。 『巫山戯んなよ、クソ砂！！　もう良い！！　頼った俺が馬鹿だった！！　寝る！！』 ……と。口汚く言い捨てて、いつもの様に。 そうして、掴み損ねた指先を一人抱き締めて、暗闇に怯えながら、眠りにつくのだろう。 耳に残る、りん、と響く風鈴の音。 その音に怯えながら。 流石にそれはちょっと、許容出来ないな、と。 自らの逞しい想像力に思わず脱帽しそうになった が、今はそれよりもこの若造の相手が先決だ。 反応を返さないものだから、マントを掴む力が段々と弱くなっている。 このまま、何も言わなければ、きっと彼はこの指を離してしまうだろう。 「……良いよ。きみが眠るまで、ここにいるから」 安心してお眠りよ、と。 悪いものは、きみに近づけはしないから、と。 その言葉は心の中だけで呟いて、ソファーの座面に寄り掛かれば、それだけで安心したのか。 ぎゅうっと僅かばかり、マントを掴む力が強くなった。 こんな事でしか縋れない、愚かで愛おしい幼子。彼の育ってきた環境では、きっとこの程度の我儘が限界だったのだろう。 そんな彼を、いつか、もっと素直に。もっと真正面から甘えさせてやれるようになるだろうか。 昔に比べて随分と、片意地をはる事も少なくはなったが、それでもまだ、素直に甘える事に躊躇いがあるようだ。 〝あんな目〟にあった後なんだから、もっと素直に甘えてくれたら良いのに、とは思うが……彼はきっとあの中での事は良く覚えてはいないだろう。 熱中症で倒れたのだ、と言いくるめられ、疑問がってはいたが、強い反論も無かった所を見ると、記憶はきっと残っていない。 あんな、神に成り損なった蛇の事など、覚えている価値など無いのだから。 竜の尾を踏み付けて、ただで済ませるものか。あ れは、手を出してはいけないものに手を出したのだ。同情の余地は無い。 この愛しい子を、青空の中に攫おうなんて、そんなの絶対に許さない。 この子はいつか、私と共に〝夜〟を生きるのだから、と。 いつの間にか規則正しい寝息をたてる愛し子。怖いものは来ないと安心したのか、ぎゅうと力の入っていた拳は、ゆるりと力が抜けて。握り締められていたマントはするりと抜けた。 それに、小さく肩を竦めると、音を立てないよう立ち上がり、マントを外した。 そのまま、彼を守るようにそのマントを彼に掛けた。 悪いものが来ないよう。何にも連れて行かれないよう。 顔まで被っていた毛布を少し退けて、彼の髪を優しく梳いて。その柔らかな額にそっと唇を落とす。 どうか、怖いものが来ませんように、と。 少しばかり冷たい感触に、僅かに彼が身じろいだが、眠りは深いようで起きる事はなかった。 きみの悪い夢を、私が食べてあげる。 だから、安心してお眠りよ、愛しい子。 そう、祈りを込めて。 夜は静かに過ぎていく。 明日もきっと、暑くなるだろう。 真っ青な夏の空には、夏雲が揺れて。彼の白くて美しい髪を、爽やかな風が揺らすだろう。 自分は見る事が出来ない青空の中のきみを。 思い描きながら、ドラルクはそっと笑ったのだった。 『……なぁ、なんか……半田がすげぇ顔して俺の側から離れたんだけど……俺、なんかしたかな……？』 後日、そんなロナルドの嘆きのＬＩＮＥと共にメッセージがもう一件。 『……マーキングは程々にしておけ。臭くて堪らん……』 との件の半田からのお小言に、思わずくすりと笑い。 「あー、やり過ぎちゃったかぁ。今度はもう少し、マイルドに付けるね」 ――と。 そう、悪びれもせず、ドラルクは鼻歌混じりに返信を返したのだった。
August 26, 2025 at 12:56 PM
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（3/3）
ドラルクに触れられただけで、肌がまるでビリビリと痺れるようだ。 頭がふわふわして、ぬるま湯の中にずぶずぶと沈んでいくような、そんな感覚に囚われかける。 鼻腔に広がるドラルクの匂いだけで、意識が何処かに飛び掛けている。 いやだ、と……こわい、と。 微に溢す言葉は、まるで譫言のようで。 僅かに身を捩って逃げようとしたが、ドラルクの細腕に抑えつけられて、思うように動けない。 普段だったら何のことは無い貧弱な腕だというのに。 今はそれにすらも、囚われてしまう。 ……それで良いんだよ、と。 勝手に植え付けられたバース性が、まるで征服される事を望むように。 我が身から抵抗する力すらも奪っていく。 「……大丈夫。怖くないよ……一緒に堕ちようね」 ――ロナルド君、と。 そっと寄せられた耳元で、ドラルクが甘く囁いた。 それはまるで、秘め事を共有するかの様に。 悪魔の囁きとは、まさにこの事なのだろう。 ……こいつと一緒に堕ちるなら……なら、いっか…… もう、この辛さを我慢しなくても……良いのかな、なんて。 そんな甘えた考えに、思考が染まる。 じくり、じくりと身体の奥で燃え上がる熱を、鎮めて欲しい。 その冷たい手で触れて、宥めて欲しい。 たすけて、と。 零れ落ちた譫言は、果たして現実だったのか。 ぷつりとキレた理性の糸が、指の先から擦り抜けていくようだ。 僅かばかりの巣篭もり、と。包まっていたマントを開いて、ドラルクを招けば、その冷たい手が優しく肌に触れてくる。 頰に触れ、唇を交わし、吐息が混ざる。 熱に浮かされた獣の様に、しなだれた身体に冷たい手が触れるだけで、身体が歓喜して身悶える。 喉を震わせるその声は、既に甘く濁っていた。 「……ほーんと……きみってやつはさ……」 理性を手放すまでが大変なんだから、と。 その言葉は飲み込んで。 ようやく腕の中で、蕩けた恋人を見下ろして、ドラルクはほくそ笑んだ。 赤い退治人服を僅かに着崩して、自らの棺桶の中に横たわる哀れな退治人を。 慈しむように、その首筋にキスを落とした。
August 24, 2025 at 3:03 PM
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（2/3）
て堪らないのだ。 内側から込み上げる気持ち悪ささえも伴う熱に翻弄されて、正気を失うのは御免だ。 だから、何としても逃げ出したかったのに、がっちりと拘束されては、逃げ出す余地すら無かった。 加えてこの視界の悪さでは、到底逃げ切れる筈もなく。 この階段が一体何段あるのかさえ、分かないまま、ジョンの足は無慈悲にも地下室へと辿り着いてしまった。 後ろからゆっくりと着いてきたドラルクが、扉の鍵を外し、重厚な扉が開かれる。 僅かばかりひやりとする地下室独特の空気が肌に触れて、思わず身体が身震いした。 一切の光が無い部屋。真っ暗な闇だけがそこに佇んでいるようだ。 自分を抱えているジョンの輪郭だけしか分からず、直ぐそばにいた筈のドラルクの姿さえも見失う。 気配でだけ、何となく何処にいるかは分かるけれども、視認はとてもじゃないが人間には無理だった。 コツコツと、ジョンが地下室の中を歩いて行く。普段の状態であるならば、貴重な吸血鬼の納棺室！　っと、喜びはするものの。 今回はほぼ死刑宣告に近い状況なだけに、洒落にならない。 本当に逃げないとヤバいと暴れても、ジョンの力強い腕に拘束されて、抵抗なんてほぼ出来はしなかった。 と、不意にジョンが立ち止まった、と思ったら。ガシャン、と重たい甲冑の音を響かせて、ゆっく りと跪いた。 「――――ッ、ジョ、やだっ！！　本当に嫌だって……、！！」 瞬間、状況を理解して暴れるが、それを許す程、ジョンは優しくは無かった。 そっと壊れモノを扱うように丁寧に。それでも、捉えた哀れな獲物を絶対に逃さないように。 狭い何かの中に横たえさせられて、本気で抵抗する。 こんな中に入れられたら、本当にもう無理だ。 見えないまでも、ガッと腕にぶつかった縁を掴むと、直ぐ様逃げ出すように身体を起き上げようとしたが。 ガシャンっと響くジョンの屈強な腕に肩口を抑えつけられ、起き上がる事すら敵わない。 「――――、！！　ッ、！！　……ぁ、……ゃ、だ……ここ、……ひ、ぁ……」 身体を強張らせ、何とか逃げ出そうと、抑えつけてくる腕に抗うけれど。 ぶわりと濃度を増した線香の香り（アルファの匂い）に、身体の奧からじくりと灼く熱の温度が爆上がりする。 込み上げる程の情欲に、身が灼かれる様だ。 かたかた、と。縁を掴んでいた手が震えて、力が失われていく。 咽せ返る程のドラルクの香りに、目の奥でぱちぱちと光が爆ぜる。 だらし無く開いたままの口元からは、正体を失ったかのような、小さな呻き声しか出せない。 くたり、と。ようやく大人しく棺桶に収まった退治人を見下ろして、横から顔を出したドラルクがくすりと笑った。 「……全く、ほーんと。きみは理性つよつよなんだから。こんな状況なんだから、素直に甘えたら良いんだよ。全部、ぽんちの所為にしちゃってさ……」 既に縁に掛かっていただけの指先を一つ一つ丁寧に外しながら、その指先にちゅっと僅かに冷たいキスが落とされる。 自分の身体が熱を持ち過ぎているのか、そのキスは普段よりも冷たく感じた。 「……ふ、ざけ、な……ちか、づくな……って……、……」 そう、言ったのに。全く、聞きやがらねぇ、この吸血鬼。 ようやく大人しなった自分の様子を確認すると、ジョンは軽くぺこりとお辞儀だけして立ち上がった。 そうして、来た時と同様に、ガシャンと金属音を響かせながら、やがて遠ざかっていった。 それを見送りながら、暗闇の中で何かがもそりと動くのを眺めていると、僅かな衣擦れの音を響かせて、それはゆっくりと棺桶の中へと入ってきた。 途端に距離が近くなるドラルク（アルファ）の匂いに、ひ、と喉が引き攣れるようなか細い悲鳴が漏れた。 それを宥めるように、ひやりとした青白い手が頰に触れ、撫でてくる。
August 24, 2025 at 3:03 PM
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衝動で書きたいとこだけ書いた擬似オメガバ読ドロ。読ロさんの理性をベキベキに折りたい衝動。（1/3） #新書ページメーカー https://sscard.monokakitools.net/pagemakers/shinsho/shinsho_bg.php
印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。 付記に「きみを壊してみたいのだ」と記載されています。 画像情報：generated by 新書ページメーカー / Photo by Andres F. Uran on Unsplash / フォント：源暎こぶり明朝 以下は本文の内容です。 ガタンっと音を立てて、不機嫌そうな顔をした退治人があの日と同じく乱暴に扉を開けた。 カタカタと震える肩で息をしながら、それでも尚、何事もない様な顔をして。 「待ってくれ、退治人君！！」 それを追う様に、城の扉を潜った吸血鬼は慌てた様子でずかずかと客間への廊下を突き進む退治人の背中へと追い縋る。 そんな吸血鬼を振り返った退治人だったが、けれども無慈悲にもその表情は敵性吸血鬼に向けるような、そんな冷たさを含んでいた。 鋭く光る眼光がドラルクを貫いたかと思えば、凄まじい速度で伸ばされた退治人の腕が容赦なくドラルクの胸倉を掴んだ。 「――これ、寄越せ。……お前は、絶対に俺に近付くな」 ぐいっと乱暴にマントを引っ張られ、その衝撃に容赦なく身体が砂になる。ざらりと零れ落ちる砂をばさりとマントで振り払い、退治人はそれだけを告げて踵を返した。 床へと崩れ落ちる瞬間、見上げた彼の瞳には、敵性吸血鬼に対する様な冷たさを含む表情とは裏腹に、情火の熱に焦がれてるような、僅かな潤みを帯びている事に気が付いた。 けれども、お前は求めない、と拒絶するように。強靭な精神力の成せる技か、その表情にも態度にも、一切その色を見せなかった。 ――私達、所謂恋人とか言われる立場だった筈だよね？ 毅然とした態度でかつんと床を打つ靴音を響かせ ながら、ドラルクは遠ざかっていく退治人の背を見送って。 起きたら覚悟していろよ、と。 理不尽に殺された事への恨みか、はたまたこんな切羽詰まった状況で求められなかった悔しさか。 仄暗く揺らめく感情を隠す事なく、恨み言を溢しながら、ドラルクはざらりと床に零れ落ちたのだった。 きみを壊してみたいのだ 「――ッ、おい、離せッ！！　離せってば！！」 ガシャン、ガシャン、と薄暗い階段を一段降りる度に、分厚い甲冑から重厚な金属音が響く。吸血鬼の城にとって、一番重要な場所であるが故か、しっかりとした石造りの階段や壁が、くわんと音を反射させて耳に響く。 騎士の姿となったジョンに奪ったドラルクのマント毎簀巻きにされて、容易に肩に担がれている。 ふわりと薫る線香のような匂いの所為で、ほぼ身体に力が入らず、足をバタつかせる程度の抵抗しか出来ない。 そんなロナルドの様子を安全圏から悠々と眺めるように。機嫌を直したドラルクが飄々とした様子でその後に続いて階段を降りている。 かつり、かつりと響く革靴の音が、まるで死刑宣告のよう。 それに、ギッと悔しそうにドラルクを睨みつけるが、手も足も出ないとは、まさにこの事か。 「……っ、なぁ、ジョン！！　頼むよ！！　離してくれってばっ！！」 せめて情に訴えかける様に、無言の甲冑の騎士に助けを求めるが、主人の命令には逆らえないジョンはふるりと小さく首を振った。 優しいジョンだけれども、主人の命令は絶対なのだ。特に、この姿の時は。 「……諦めなよ、ロナルド君。私のマントだけを奪って巣篭もりしたって辛いだけだよ。さっさと催眠を解除するなら、どうするべきか、もう答えは出ているだろう？」 ――きみのアルファは私なんだから、と。 くすりと仄暗く笑う吸血鬼は、その赤く小さな瞳孔を細め、そう耳元で囁いた。 その途端に、ふわりと薫る線香のような香りに頭がクラクラする。 それをぎりりと奥歯を噛み締める事で、何とか耐える。そんなロナルドの様子に、強情な、と僅かにドラルクは肩を竦めてみせた。 我が名は、吸血鬼オメガバ巣篭もり大好き……なんつーぽんちの催眠を食らってしまったのは、ほんの数時間前。 この世界にはオメガもベータもアルファも存在しない。そもそもバース性なんていうものは全くない世界だ。 あれは創作で、現実には存在しないというのに。何をとち狂ったか、催眠で擬似的なバース性を植え付けるなんて、クソみたいな能力を開花させた馬鹿野郎が騒ぎを起こした。 これがまた力が強いタイプの吸血鬼で、普段は催眠耐性の強いドラルクには効かない事が殆どなの に、今回ばかりはドラルクさえもそれにかかっている。 思い込みの力とは、本当に恐ろしいものだ。 互いにアルファとオメガにされ、更には擬似的なヒートすらも引き起こされて、今現在。 ドラルクとの接触さえ絶てば何とかなると、客間に立て篭もったのに。 死に戻ってから、騎士姿のジョンをけしかけられ、敢えなく籠城は失敗に終わったのだ。 かつん、かつんと響く靴音が、暗い中、後から着いてくる。 灯りが不要な吸血鬼向けの部屋だけあって、地下階段への道には一切の燭台さえ無い。 暗闇に慣れた退治人であろうとも、流石にこの暗さには直ぐには順応出来ない。 ジョンが階段を降りる度に、僅かに揺れる視界で、後ろから着いてくるドラルクを見上げるけれど、ぼんやりとした輪郭しか見分けが付かない。 この階段を降りた先に何があるか、それはもう分かりきっている。 吸血鬼にとって一番重要なものが鎮座する納棺室だ。 あんな所へ連れて行かれたら、正直自分がどうなるかなんて、容易に想像がつく。 今ですら正直ギリギリの所だと言うのに、理性が耐えられる訳がない。 自分が自分で無くなる感覚は、いつまで経っても慣れはしない。 ずぶずぶとぬるま湯に沈んでいくような、自分の所在すらも分からなくなるあの感覚が空恐ろしく
August 24, 2025 at 3:03 PM
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（ー∠ー）「ョンのどら焼きの感想は如何だったかね？作家先生」
(　ﾟдﾟ）「生地がパサつく事なく、餡と生地の丁度いい比率。結構どら焼きって生地だけ分厚いとか餡だけ多いとかあるけど、このどら焼きは全然そんな事なかった。餡の甘さは控えめで、非常に上品。餡の粒はほっくりと粒がしっかり残り、けれど、皮まで柔らかいのか、皮だけが口の中に残る事はない。それなりに厚く見える生地なのにしっとりとしながらも、口溶けが柔らかく、非常に軽い。一口、また一口と、気が付けば手の中から消えている。つまり、このどら焼きは飲み物！」
（ー∠ー）「飲み物扱いすな！」
August 24, 2025 at 9:50 AM
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なにやら読ドロで擬似オメガバネタが降ってきたので晒しとく。読ロさんの理性をバキボキにへし折りたい衝動。
いつか書くリストに追加。いつか、いつかね(´⊙ω⊙`)
August 24, 2025 at 5:08 AM
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残暑……とは。それはともかく、ぱぴこうまいです。
August 19, 2025 at 2:31 PM
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（4/4）
「ヌヌヌヌヌン（ロナルドくん）！　ヌヌッヌヌー（よかったヌー）！」 ぱちり、ぱちりと。状況が分からず、目の前で何処か安堵したような顔で見下ろしてくるドラルクとジョンの様子に。 ロナルドはのろのろと横たわっていた身体を起き上げた。 髪から背中から、ぱらぱらと砂粒が零れ落ちていく。 くらりとする目眩を覚えながら、ふるりと頭を振れば、再び首元にヒヤリとする何かを押し当てられた。 「……きみ、退治中に熱中症で倒れたんだよ。神社の方に行ったきみが帰ってこないってショッさん達が言うから見にきたら、境内の中で倒れてるんだもの。びっくりしちゃったよ」 いつもステンレスボトルで冷やしている氷嚢をロナルドの首筋に押し当てて、ドラルクは僅かに肩を竦めてみせた。 ……あぁ、そういえば。下等吸血鬼を追って神社の石段を駆け上がっていたんだっけ、と。 何処かぼやけてはいるが、此処に至るまでの記憶を思い出した。それで下等吸血鬼を倒して、その後は…… ……あれ？　――と。 そこから不意に、記憶が途切れている。 ぷつりと、まるで頁が切り取られたかのように。何も思い出せない空白に、胸の何処かがもやりとした。 熱中症で倒れたというドラルクの言葉を疑う訳ではないが、本当にそうだったろうか、と。 ふと胸を過ぎる疑問に、僅かに小首を傾げた。 何か、忘れている？ 脳裏に過ぎる真夏の青空と、りん、と澄んだ音を鳴らす風鈴の音。 そして、その青を背に立つ黒い……？ 駄目だ。そこより先は、まるで霧でも掴むかのように消えてしまった。 手放してしまった何かをもう一度手繰るように。 思い出そうとするけれども、くらりとする頭では、それ以上を辿る事が出来なかった。 「ほらほら、余計な事考えてないで、帰るぞ若造。下にタクシーを呼んだからな。熱中症で倒れたんだ。今日の仕事はもうお終い。マスター達からも直帰しろとのお達しだよ」 ――立てる？　と。 膝に付いた砂埃を払いながら、立ち上がったドラルクが白い汚れのない白い手袋で手を差し出してくる。 それを見上げながら、手放してしまった何かを思い出す事を断念した。 「ヌヌヌヌヌン（ロナルドくん）、ヌイヌヌヌヌ（だいじょうぶ）？」 「えー、ジョン、心配してくれるの？　ありがとーなー♪」 「全く、手の掛かる五歳児だこと。きみ、帰ったらまず真っ先に風呂だからな。砂まみれゴリラなんだからな」 ドラルクの手を取って、じゃりりと石畳を踏み鳴らし、いつもの様に帰路に着く。 一言多いドラルクを砂にしながら、心配してくれるジョンに、デレっと笑うロナルドは、先程あった事など、もう覚えてはいなかった。 理不尽に砂にされた姿をなすなすと文句を零しながら戻し。先を歩くロナルドの背を見送りながら、ドラルクはちらりと境内の昏がりへとその赤い瞳を向ける。 光も指さない社のその片隅に、幾つもの細かく引き千切られた白い蛇の亡骸が転がっていた。 それは夜の闇に紛れ、朝には他の生き物達によって跡形も無く消えていくだろう。 勝手に人のものに手を出そうとした不遜な輩には丁度良い末路だ。 あの真昼の青空は、私だけのものだ。誰にも掠め取らせてなるものか、と。 ゆらりと燻る仄暗い執着をその赤い瞳の中に宿し、ドラルクは瞳を細めた。 「おい、何してんだよ、クソ雑魚砂おじさん。お前が直帰だって言ったんだろ！」 中々着いてこないドラルクの様子に、石段の前までジョンと先に行ったロナルドが振り返る。 その瞳に揺れる真昼の青は、未だ綺麗なまま。 何も知らない昼の子は、ただ真っ直ぐに同居人へとその瞳を向けた。 そんなロナルドへといつもの様に、享楽主義者の顔を貼り付けたドラルクは、へらりと笑った。 「待ってよー、ロナルド君。私、きみを迎えにここに登ってきて疲れてるんだよ。そんなに急いだら死んじゃうよー」 「あぁ？　こんな短い階段で！？　どんだけ雑魚なの！！　死んだら置いて先にタクシーで帰るからな！！」 「私が呼んだタクシーなのに！？」 仄暗く揺らめく執着は、享楽の仮面に隠して。 シンヨコの竜は今日も、隣を歩く真昼の青空を見上げては、その赤い瞳を眩しそうに細める。 いつか、いつか。 その青を我が手に捕まえるまで。 真夏の青空になどくれてやるものか、と。 りん、と響く風鈴の音に、ちらりと睨みを利かせながら。 ドラルクは何事も無かったフリをして、先に行ったロナルドの後を追うのだった。
August 12, 2025 at 12:27 PM
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（3/4）
下等吸血鬼相手ならば、どんな対応をすれば良いのか、骨の髄まで染み込んでいるというのに。 目の前の存在に対して、どう行動すれば良いのかが、全く分からない。 心底怯えた瞳を赤子に向けた退治人に、赤子は顔なき顔で、ただにたりと笑ったように見えた。 「――ひ、！？」 しゅるり、と。何かが赤子の身体から抜け出して、掴まれた指を伝って、あっと思う間もなくロナルドに巻き付いた。 ざらりと鱗で覆われた細長い何かに、瞬間的に首元に巻き付かれた。 咄嗟にもう片方の手でそれを掴んだが、ひやりと冷たいソレは、するりと指を擦り抜け、捉える事が出来なかった。 ざりりと軟い首筋を滑る冷たいそれは、鱗に覆われた白い蛇だ。 これは、先程境内に入る前に見たにょろりとしたナニカ、だ。 瞬間的に思い出される記憶に、背筋が思わず凍り付く。 必死に蛇を捕まえようと足掻くけれど、しゅるりと首元に巻き付くそれは、次第にその力を強めていく。 此方を窒息させる程の強さではまだないが、じわじわと締めてくるそれに、僅かに息が詰まる。 真綿でじわりと獲物を痛ぶるように……恐怖に固まるロナルドを弄んで、蛇はその顔をロナルドに近付け、その頰を赤い舌でペロリと舐めた。 ぺちゃりとするその感触に、ひ、と。 僅かに締められる喉から、引き攣れたような悲鳴が上がった。 「……ねぇ、退治人さん？　私の赤ん坊。可愛いでしょう？」 りん、りりん、りりりんと。 響く風鈴は、優しい声で怯える退治人に声を掛けた。 そっと耳元に唇を寄せ、くすりと笑う女性の声に、蛇に巻き付かれたまま、何を言っているのか、と。怯えた瞳を震わせた。 「この子もね、生まれたかったと思うの。……だからね。貴方の魂を頂戴？　……貴方の魂は、とっても綺麗。真夏の澄み切った青空のよう。……きっと、とても良い子に生まれると思うわ」 ――だから、貴方の魂を頂戴、と。 りん、りりん、りりりんと。 鳴り響く風鈴が。 ミーンミンと。 木霊する蝉しぐれが。 まるで耳鳴りのよう。 じわり、じわりと締め付けてくる冷たい蛇の肌が、首の柔らかな場所を這い回ってくる。 くすくすと、耳元で囁く女性の声が、ただ無邪気に笑う 「――――ッ、が、ぁ……」 途端に、ぎゅうっと締め付けてくる蛇の力に、喉 元が締め付けられる。 必死に蛇を引き剥がそうと踠くが、片手ではどうやっても引き剥がせない。 ギリギリと歯を食いしばって、首に巻きつく蛇に抗うが、人ならざる其れに敵う筈も無く。 かは、と切れる息に、はくりと口を動かすけれど、酸素を取り込む事は出来なかった。 ヤバい、このままじゃ、堕ちる―― じりじりと視界の端が黄色に染まっていく。 りん、りりん、りりりんと。 風にそよぐ風鈴の色硝子が、真夏の青空に反射して、きらきら光っている。 ゆらゆらと揺れる短冊達が澄んだ音を奏で、夏を唄っている。 じりりと灼く太陽は、けれども、哀れな退治人を助けはしなかった。 「――人のものに手を出そうとは、これはまた、無粋な輩だね」 りん、りりん、りりりんと。 響く風鈴の音を掻き消して、良く見知った声が、聴こえた気がした。 途端に、ぱんっと。一度だけ響いた拍手の音に、何かが弾けるように、蛇の動きが止まった気がした。 かはり、と。首を締め付ける力が弱まった事で、解放された喉が、失った酸素を取り戻すようにはくりと動いた。 何が起こっているのか、分からないまま、見上げた真夏の青空の中に、一つの黒い影を見た。 じりじりと灼けつくような太陽と、雲一つない真っ青な夏空の中で、黒いマントを纏った青白い顔の同居人が、其処にいた。 あれ、なんで？　……だって、太陽が、まだ…… 真夏の日差しはただ、燦々と。 青空を背に立つドラルクの姿を見上げながら、ロナルドの意識は、そこでぷつりと切れた。 「……ド、くん……ロナルド君！！」 覚醒は、突然訪れる。 じとりと肌を汗が伝う。夜だというのに、むわりとした熱気をはらむ空気は、冷め切らぬまま。 夏の陽射しの名残を残しながら、陽炎のようにゆらりと揺れた。 よく聞き慣れた同居人の声がすぐ真上から降ってくる。 じとりと汗ばむ首元に、ヒヤリとした何かが宛てがわれている。 背中に感じるじゃりりとする石の感覚に、あれ？　――と。 どういう状況か分からず、数度ぼやりとする瞳を瞬けば、此方を見下ろす顔色の悪い同居人の顔が見えた。 「おー、ようやく起きたか。ジョン、ロナルド君が起きたよ」
August 12, 2025 at 12:26 PM
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（2/4）
「……もし、そこの方」 りん、と響く風鈴の音。その無数の音をすり抜けて、不意に女性の声が耳に届いた。 それに思わずハッとして、そちらへと視線を向ければ、白いワンピースを纏った麦わら帽子の女性が立っていた。 その姿は異様に白くて、真夏の陽射しにその白はよく映えた。 「……え、あ……すみません、何でしょうか？」 りん、りりん、りりりんと。 響く風鈴の音で、思わず呆けていたのだと、今更ながらに自覚する。 けれど、同時に疑問が蛇の様に首をもたげる。 さっきまで、そこに〝居た〟だろうか、と。 突然、ふっと湧いて出た様な……そんな違和感を覚えながらも。けれども、自分がただこの暑さで呆けていただけなのかもしれない、と。 そう自分に言い聞かせ、ふと浮かんだ疑問をふるりと小さく頭を振って、追い払った。 短い時間だったとはいえ、棒立ちのまま立っていた自分は邪魔だったろうか、と。 見知らぬ女性に対し、いつもの善性が思わず前面に出て、ロナルドは不意に謝ってしまった。 その言葉に女性は僅かに小首を傾げ、ふわりと笑った。 よく見れば、その女性はベビーカーを押していた。 強い日差しから我が子を守るよう、シェードを下ろしたその中で、小さな赤子の手足だけがちらりと見えた。 「いえ、ご気分が優れなさそうでしたのでお声を掛けました。……大丈夫ですか？」 もし、体調が優れないなら日陰にお入りなっては、と。 続ける女性の言葉に、自分はそんなにも青白い顔でもしていたのだろうか、と。 心配される事に慣れていないそのむず痒さに、慌てたようにひらりと両の手を振った。 「い、いえ……すみません。大丈夫です！　ご心配をお掛けしました」 見ず知らずの女性に心配を掛けまいと、ロナルドは慌てたようにへらりと笑う。 それに女性は、そうですか、と小さく頷いた。 「……え、と……俺なんかより、貴女の方が大丈夫ですか？　お子さんも随分小さいようですし……こんなに陽が強くては、外での散歩も大変でしょう」 真夏の太陽は、容赦なく境内を照らしている。連日のように猛暑と騒ぐ昨今では外での散歩など自殺行為にも等しい。 赤子にとっても散歩は大事だろうが、何もこんな日差しの強い日でなくとも、と。 ちらりと心配するようにベビーカーを見下ろしても、中の赤子はぴくりとも動かない。 それに、どこかざわりとするような不安を覚えた。 「……あぁ、私は大丈夫ですよ。この子も、ぐずりもせずにとても良い子なんです」 女性はふわりと優しそうに笑うと、そっとベビーカーのシェードを少しずらして、中の赤子を見せる。 薄い夏掛けの中で、赤子がもぞりと動く。顔はよく見えないが、小さな手の平を此方へと伸ばして くるので、ロナルドは思わずそっと人差し指を差し出した。 小さな、本当に小さな紅葉のようなふくふくとした手が、差し出された人差し指をきゅっと掴む。 その力は思ったよりも強く、ロナルドはその微笑ましさに思わず瞳を綻ばせた。 「――ちゃんと、生まれていれば……貴方のように立派な大人になったでしょうに」 りん、りりん、りりりんと。 響く風鈴の音に紛れるように、ふっと零された女性の言葉に、え、と。 思わず、何かの聞き間違いなのかと、顔を上げようとした所で、さぁっと突然強い風が駆け抜けた。 りん、りりん、りりりんと。 けたたましく鳴り響く風鈴が、まるで耳鳴りのよう。 吹き抜ける突然の強い風に揺られて、沢山の短冊達が狂った様に踊り狂っている。 夏の陽射しに灼かれながら、滴り落ちるその汗は、ひやりと冷たく背筋を伝う。 ふわりと揺れた夏掛けが、隠していた赤子をその陽の元へと晒す。 その小さな顔には、あるべき筈のものが、一つもなくて。 小さく真っ平らな肌色しか見えなかった。 「――――――ッ！！」 瞬間、背筋を走り抜けた危機感が警鐘を鳴らす。 赤子が掴んでいる指を咄嗟に引こうと反射的に腕を振り払おうとしたが、それよりも早く、ぎゅうっとその小さな手が指を締め付けて、振り払う事が出来ない。 これは、赤子では無い〝ナニカ〟だ、と。 そこにあるべき、眼も鼻も口も眉すらも無く、のっぺりとした肌色だけがそこにあった。 けれども、確実に此方を〝観て〟いる。 針の様に突き刺さる程の視線に晒されて、危険を訴える肌が総毛立つようだ。 到底赤ん坊の力とは思えない力で握り締めてくるそれに、ロナルドは思わず瞳を剥いた。 「――――、なに、何でっ……！！」 離せ、と。何で、と。 頭が混乱の渦に叩き落とされる。 思わずパニックになりかけながら、ひゅ、と緊張で狭まる気道に、微かに喉が鳴る。 この目の前のモノが一体何なのか分からず、けれども、姿形は赤子のそれをしているものに対して、拳を振り下ろす事は選択肢の範疇に入ってはいなかった。 必死に指を引こうと、もう片方の手で掴まれた手を引こうと握り締めるが、どういった訳かびくともしない。 普段、散々同居人からゴリラだと馬鹿にされている自分が、赤子の力に負ける筈が無いというのに。 訳がわからないその状況に、ただ混乱だけが渦を巻いて広がっていく。 ――怖い、何これ、どうしたら良いの。
August 12, 2025 at 12:26 PM