女子大の講師をしているアーティストの女性を中心に、叔父の有名俳優、大学教授、学生などの恋愛模様を描く。
ホン・サンス監督らしい映画。固定カメラの長回しで、時折ズームイン、ズームアウト映像が飛び出す。酒席での会話が多いのもいつものこと。酒を飲みながら本音で語り合う一方で、言葉とは裏腹の態度が見えたりもする。特に主人公の女性は口数が少ないだけに、その表情や態度から様々なことが想像できてスリリング。
主演のキム・ミニはじめクォン・ヘヒョ、チョ・ユニらホン・サンス映画では常連の俳優たちが、含蓄ある演技を披露している。
相変わらず一度ハマると抜けられないホン・サンスの世界。
女子大の講師をしているアーティストの女性を中心に、叔父の有名俳優、大学教授、学生などの恋愛模様を描く。
ホン・サンス監督らしい映画。固定カメラの長回しで、時折ズームイン、ズームアウト映像が飛び出す。酒席での会話が多いのもいつものこと。酒を飲みながら本音で語り合う一方で、言葉とは裏腹の態度が見えたりもする。特に主人公の女性は口数が少ないだけに、その表情や態度から様々なことが想像できてスリリング。
主演のキム・ミニはじめクォン・ヘヒョ、チョ・ユニらホン・サンス映画では常連の俳優たちが、含蓄ある演技を披露している。
相変わらず一度ハマると抜けられないホン・サンスの世界。
俳優のチョ・ヒョンチョルの長編監督デビュー作。修学旅行を翌日に控えた2人の少女が過ごす1日を綴った青春ドラマ。
感受性豊かな2人のキラキラした輝きと、ふとしたことですれ違うさまを瑞々しく描写。映像作家・DQMが撮影した光を全面的に取り入れた映像も鮮烈。10代の揺れ動く心を自然体で演じたパク・ヘス、キン・シウンの演技も素晴らしい。
ただし、これはただの青春ドラマではない。多くの高校生が亡くなったセウォル号沈没事故が背景にある。冒頭でそれが告げられるだけに、2人の生き生きとした姿が切なくてたまらなくなる。終盤の現実と空想が入り混じった世界が独特の余韻を残す。
俳優のチョ・ヒョンチョルの長編監督デビュー作。修学旅行を翌日に控えた2人の少女が過ごす1日を綴った青春ドラマ。
感受性豊かな2人のキラキラした輝きと、ふとしたことですれ違うさまを瑞々しく描写。映像作家・DQMが撮影した光を全面的に取り入れた映像も鮮烈。10代の揺れ動く心を自然体で演じたパク・ヘス、キン・シウンの演技も素晴らしい。
ただし、これはただの青春ドラマではない。多くの高校生が亡くなったセウォル号沈没事故が背景にある。冒頭でそれが告げられるだけに、2人の生き生きとした姿が切なくてたまらなくなる。終盤の現実と空想が入り混じった世界が独特の余韻を残す。
「ミッドナイトスワン」の内田英治監督のオリジナル作品。2人の子供を抱え貧困にあえぐシングルグルマザーがドラッグの売人になる話。
主人公を演じる北川景子の壮絶な演技が見もの。その演技から彼女の心の痛みがダイレクトに伝わる。彼女のボディガードを買って出る格闘家役の森田望智の演技も素晴らしい。孤独な彼女が主人公一家に加わり、疑似家族のようになるあたりは説得力十分。
ワルの組織がステレオタイプだったり、終盤の展開が不自然だったりはするものの、なかなか凄味のある映画だった。解釈を観客に委ねたラストにも好感が持てる。
「ミッドナイトスワン」の内田英治監督のオリジナル作品。2人の子供を抱え貧困にあえぐシングルグルマザーがドラッグの売人になる話。
主人公を演じる北川景子の壮絶な演技が見もの。その演技から彼女の心の痛みがダイレクトに伝わる。彼女のボディガードを買って出る格闘家役の森田望智の演技も素晴らしい。孤独な彼女が主人公一家に加わり、疑似家族のようになるあたりは説得力十分。
ワルの組織がステレオタイプだったり、終盤の展開が不自然だったりはするものの、なかなか凄味のある映画だった。解釈を観客に委ねたラストにも好感が持てる。
都会で喫茶店を経営していた50歳の女性が再開発で閉店を余儀なくされ、体調不良も重なる中、思いもしない徳島県吉野川市から相続の通知を受け、その後移住する。
いわゆるご当地映画らしく、四季の花々など美しい自然や地元の阿波踊りなどの観光資源が登場するが、特筆すべきはベトナム人の存在。地元に溶け込み、地域の一員となって暮らしている。そのルーツともいうべき女性と、主人公の叔父のロマンスなども織り込み、ベトナム料理と出会った主人公が前向きになるまでを描いている。穏やかで心温まる作品。
26年ぶりの映画主演の中江有里のナチュラルな演技に加え、大塚まさじ、今陽子らの脇役が存在感を発揮。
都会で喫茶店を経営していた50歳の女性が再開発で閉店を余儀なくされ、体調不良も重なる中、思いもしない徳島県吉野川市から相続の通知を受け、その後移住する。
いわゆるご当地映画らしく、四季の花々など美しい自然や地元の阿波踊りなどの観光資源が登場するが、特筆すべきはベトナム人の存在。地元に溶け込み、地域の一員となって暮らしている。そのルーツともいうべき女性と、主人公の叔父のロマンスなども織り込み、ベトナム料理と出会った主人公が前向きになるまでを描いている。穏やかで心温まる作品。
26年ぶりの映画主演の中江有里のナチュラルな演技に加え、大塚まさじ、今陽子らの脇役が存在感を発揮。
主人公の教師が担任を受け持つ中学のクラスの生徒のほとんどが、突然金髪で登校したことから大変な騒動が持ち上がる。
奇妙な校則やSNSの暴走などの社会問題を背景に、坂下雄一郎監督がオリジナル脚本で描いたドラマ。主人公の言動と独白のギャップが笑いを誘うなど、全編にシニカルな笑いが満ちている。いかにも、といった感じの教育委員会や学校の動きなど、けっこうリアルに見えるところもある。
ストーリーは暴走気味だが、生徒の成長に加え大人になり切れない主人公の成長物語も描くなど、押さえるべきところは押さえている。
岩田剛典がオジサンを演じるというのも面白い。生徒役の⽩⿃⽟季の存在感も見逃せない。
主人公の教師が担任を受け持つ中学のクラスの生徒のほとんどが、突然金髪で登校したことから大変な騒動が持ち上がる。
奇妙な校則やSNSの暴走などの社会問題を背景に、坂下雄一郎監督がオリジナル脚本で描いたドラマ。主人公の言動と独白のギャップが笑いを誘うなど、全編にシニカルな笑いが満ちている。いかにも、といった感じの教育委員会や学校の動きなど、けっこうリアルに見えるところもある。
ストーリーは暴走気味だが、生徒の成長に加え大人になり切れない主人公の成長物語も描くなど、押さえるべきところは押さえている。
岩田剛典がオジサンを演じるというのも面白い。生徒役の⽩⿃⽟季の存在感も見逃せない。
1960年代に、性別適合手術が違法か合法かが争われた裁判「ブルーボーイ事件」に着想を得たドラマ。
社会派ドラマではあるが、エンターティメント性も担保。法廷劇を中心に様々な見せ場を用意する。最大のポイントは、手術を受けた主人公が裁判で証言を求められること。恋人もいて幸せな彼女は苦悩する。
主演の中川未悠はトランスジェンダー女性。終盤の法廷での証言には、当事者ならではの迫真性がある。男でも女でもない、自分は自分。自分らしい生き方をすることの重要性を訴えかける。トランスジェンダーの問題はもちろん、現代に通じる様々なテーマを内包した作品。
1960年代に、性別適合手術が違法か合法かが争われた裁判「ブルーボーイ事件」に着想を得たドラマ。
社会派ドラマではあるが、エンターティメント性も担保。法廷劇を中心に様々な見せ場を用意する。最大のポイントは、手術を受けた主人公が裁判で証言を求められること。恋人もいて幸せな彼女は苦悩する。
主演の中川未悠はトランスジェンダー女性。終盤の法廷での証言には、当事者ならではの迫真性がある。男でも女でもない、自分は自分。自分らしい生き方をすることの重要性を訴えかける。トランスジェンダーの問題はもちろん、現代に通じる様々なテーマを内包した作品。
君嶋彼方の小説を「決戦は日曜日」「ピンカートンに会いにいく」の坂下雄一郎の脚本・監督で映画化。高校生の時に体が入れ替わってしまった男女を描く。
入れ替わりのドラマは「転校生」など数々あるが、この映画のユニークなのは入れ替わった後の15年にわたる日々を描いていること。その間、2人には進学、恋愛、親との別れなど様々なことがあり、互いの感情も微妙に変わっていく。時間を行き来しながらそれを描き出す。いわばファンタジーの切り口でリアルを描いたドラマ。はたして元に戻るべきかどうか。切なさの果てに2人が下した決断を描いたラストも印象的。
芳根京子、高橋海人の演技も素晴らしい。
君嶋彼方の小説を「決戦は日曜日」「ピンカートンに会いにいく」の坂下雄一郎の脚本・監督で映画化。高校生の時に体が入れ替わってしまった男女を描く。
入れ替わりのドラマは「転校生」など数々あるが、この映画のユニークなのは入れ替わった後の15年にわたる日々を描いていること。その間、2人には進学、恋愛、親との別れなど様々なことがあり、互いの感情も微妙に変わっていく。時間を行き来しながらそれを描き出す。いわばファンタジーの切り口でリアルを描いたドラマ。はたして元に戻るべきかどうか。切なさの果てに2人が下した決断を描いたラストも印象的。
芳根京子、高橋海人の演技も素晴らしい。
朝倉かすみの小説を「花束みたいな恋をした」「片思い世界」の土井裕泰監督が映画化。脚本は向井康介。
中学校の同級生の男女が中年になって再会するドラマ。
大枠は難病ものの体裁をとっているが、描かれるのはむしろ大人の恋愛。それは若い時とは違いキラキラするばかりではない。様々な過去の傷やしがらみを背負い、それゆえに臆病になり躊躇しながらも、少しだけ前に進んでいく。その両者の微妙な心理を繊細に描き出す。さらに、中学時代のエピソードを随時入れ込んで、今との対比で切なさを醸し出す。結末は悲しいがそれだけではない独特の余韻を残す。
井川遥が圧巻の演技を披露。堺雅人も持ち味を十分に発揮。
朝倉かすみの小説を「花束みたいな恋をした」「片思い世界」の土井裕泰監督が映画化。脚本は向井康介。
中学校の同級生の男女が中年になって再会するドラマ。
大枠は難病ものの体裁をとっているが、描かれるのはむしろ大人の恋愛。それは若い時とは違いキラキラするばかりではない。様々な過去の傷やしがらみを背負い、それゆえに臆病になり躊躇しながらも、少しだけ前に進んでいく。その両者の微妙な心理を繊細に描き出す。さらに、中学時代のエピソードを随時入れ込んで、今との対比で切なさを醸し出す。結末は悲しいがそれだけではない独特の余韻を残す。
井川遥が圧巻の演技を披露。堺雅人も持ち味を十分に発揮。
呉勝浩の小説を映画化。
酔っぱらって暴れて捕まった男が「霊感が働く」と称し、爆弾が爆発すると予告。それが現実のものとなる話。
何よりも「スズキタゴサク」と名乗る犯人を演じた佐藤二朗の怪演がすごい。大仰な演技が鼻をつくこともあるのだが、本作での演技は出色。のらりくらりと刑事の追及をかわし、逆に彼らをやり込める。
対する刑事役の渡部篤郎、山田裕貴、染谷将太に加え、巡査役の伊藤沙莉、坂東龍汰らも好演。
緊迫度はかなりのものでエンタメとして十分楽しめたものの、終盤はやや冗長な感じも。オチも今ひとつピンとこなかった。
呉勝浩の小説を映画化。
酔っぱらって暴れて捕まった男が「霊感が働く」と称し、爆弾が爆発すると予告。それが現実のものとなる話。
何よりも「スズキタゴサク」と名乗る犯人を演じた佐藤二朗の怪演がすごい。大仰な演技が鼻をつくこともあるのだが、本作での演技は出色。のらりくらりと刑事の追及をかわし、逆に彼らをやり込める。
対する刑事役の渡部篤郎、山田裕貴、染谷将太に加え、巡査役の伊藤沙莉、坂東龍汰らも好演。
緊迫度はかなりのものでエンタメとして十分楽しめたものの、終盤はやや冗長な感じも。オチも今ひとつピンとこなかった。
つげ義春の短編漫画2本を三宅唱監督が映画化。スランプの女性脚本家が体験する不思議な出来事を描く。
ドラマは2部構成。前半は主人公が脚本を担当した映画のパート。後半は、「自分には才能がないと思った」と語った主人公が旅に出て、風変わりな宿に泊まり、そこの主人と交流する。
つげ義春作品らしいシュールで哀愁漂う雰囲気はそのままに、弱った女性が自分を見つめ直し再生するドラマの側面を押し出している。ユーモアも満点。前半の夏の海や山、後半の雪の風景など映像も美しい。シム・ウンギョン、堤真一がいい味を出している。河合優実はいかにもつげ作品にふさわしい佇まい。地味ではあるが味わい深い一作。
つげ義春の短編漫画2本を三宅唱監督が映画化。スランプの女性脚本家が体験する不思議な出来事を描く。
ドラマは2部構成。前半は主人公が脚本を担当した映画のパート。後半は、「自分には才能がないと思った」と語った主人公が旅に出て、風変わりな宿に泊まり、そこの主人と交流する。
つげ義春作品らしいシュールで哀愁漂う雰囲気はそのままに、弱った女性が自分を見つめ直し再生するドラマの側面を押し出している。ユーモアも満点。前半の夏の海や山、後半の雪の風景など映像も美しい。シム・ウンギョン、堤真一がいい味を出している。河合優実はいかにもつげ作品にふさわしい佇まい。地味ではあるが味わい深い一作。
韓国のホン・サンス監督がイザベル・ユペールを主演に迎えた作品。
その正体も過去も謎のフランス人女性が、ソウルの街で生活費を稼ぐため風変わりなフランス語の個人レッスンを行い、マッコリを飲みながら会話を繰り広げる。
いつも通りのホン・サンス映画。カメラを固定し、長回しの映像で人物を捉える。そこからそこはかとないユーモアが漂ってくる。主人公をはじめ登場人物の微妙な心理状態もチラチラと見えてくる。
これがホン・サンス映画の魅力。ついてこれない人もいるだろうが、ハマる人はどっぷりとハマってしまう。かくいう私もその口。これから新作を5カ月連続で公開するというからたまりませんなぁ。
韓国のホン・サンス監督がイザベル・ユペールを主演に迎えた作品。
その正体も過去も謎のフランス人女性が、ソウルの街で生活費を稼ぐため風変わりなフランス語の個人レッスンを行い、マッコリを飲みながら会話を繰り広げる。
いつも通りのホン・サンス映画。カメラを固定し、長回しの映像で人物を捉える。そこからそこはかとないユーモアが漂ってくる。主人公をはじめ登場人物の微妙な心理状態もチラチラと見えてくる。
これがホン・サンス映画の魅力。ついてこれない人もいるだろうが、ハマる人はどっぷりとハマってしまう。かくいう私もその口。これから新作を5カ月連続で公開するというからたまりませんなぁ。
イギリスの名匠マイク・リー監督の作品。
主人公のパンジーはひたすら不機嫌で文句ばかり言っている。家族の行動にもケチをつけるし、買い物に訪れた店やクリニックでも文句を言う。あまりに文句ばかり言うので不快なのを通り越して、笑ってしまうぐらいだ。
後半、彼女は自らの胸の内をぶちまけるが、明確な不機嫌の原因が明らかになるわけではない。最後も余白を残し観客の想像力に委ねる。カタルシスを望む観客に受けるような映画ではないが、人間や家族などについて深い問いを投げかけた作品なのは確かだ。
主演のマリアンヌ・ジャン=バプティストの演技が見事。
イギリスの名匠マイク・リー監督の作品。
主人公のパンジーはひたすら不機嫌で文句ばかり言っている。家族の行動にもケチをつけるし、買い物に訪れた店やクリニックでも文句を言う。あまりに文句ばかり言うので不快なのを通り越して、笑ってしまうぐらいだ。
後半、彼女は自らの胸の内をぶちまけるが、明確な不機嫌の原因が明らかになるわけではない。最後も余白を残し観客の想像力に委ねる。カタルシスを望む観客に受けるような映画ではないが、人間や家族などについて深い問いを投げかけた作品なのは確かだ。
主演のマリアンヌ・ジャン=バプティストの演技が見事。
台湾映画。1990年代、名門高校の夜間部に入学した女子生徒が、同じ机を共有する全日制の優秀な女子生徒と交流するドラマ。主人公のコンプレックスを背景に、友情、恋愛、そして成長を生き生きとテンポよく描く。
2人が同じ男の子を好きになるところなどありがちな話ではあるが、90年代のアイテムと学校内のヒエラルキーを巧みにドラマに織り込むことにより、魅力的なドラマに仕上げている。はるか昔に高校生だった身としてはノスタルジックで胸にグッとくるシーンも多い。
主役のチェン・イェンフェイ、共演のシャン・ジエルー、2人が恋する男子校生役のチウ・イータイがいずれも良い演技を披露。
台湾映画。1990年代、名門高校の夜間部に入学した女子生徒が、同じ机を共有する全日制の優秀な女子生徒と交流するドラマ。主人公のコンプレックスを背景に、友情、恋愛、そして成長を生き生きとテンポよく描く。
2人が同じ男の子を好きになるところなどありがちな話ではあるが、90年代のアイテムと学校内のヒエラルキーを巧みにドラマに織り込むことにより、魅力的なドラマに仕上げている。はるか昔に高校生だった身としてはノスタルジックで胸にグッとくるシーンも多い。
主役のチェン・イェンフェイ、共演のシャン・ジエルー、2人が恋する男子校生役のチウ・イータイがいずれも良い演技を披露。
金原ひとみの原作を松居大悟監督が映画化。
二次元の世界を愛する孤独な27歳の主人公が、新宿・歌舞伎町でキャバクラ嬢と出会い、違う世界を知って変わっていくドラマ。
対照的な2人が親しくなりルームシェアをする様子をコミカルに描写。推しについて速射砲のように話す杉咲花と、言葉少なながら厳しいことをズバリと言う南琴奈の演技が出色。周辺の人々もみんないい味を出している。後半はキャバ嬢の過去を巡って急展開するが、ラストは主人公に希望の灯をともして終わる。
ある種のファンタジー的な世界とも言えるが、それがこの映画の独特の魅力になっている。スタンダードサイズの映像も効果的。
金原ひとみの原作を松居大悟監督が映画化。
二次元の世界を愛する孤独な27歳の主人公が、新宿・歌舞伎町でキャバクラ嬢と出会い、違う世界を知って変わっていくドラマ。
対照的な2人が親しくなりルームシェアをする様子をコミカルに描写。推しについて速射砲のように話す杉咲花と、言葉少なながら厳しいことをズバリと言う南琴奈の演技が出色。周辺の人々もみんないい味を出している。後半はキャバ嬢の過去を巡って急展開するが、ラストは主人公に希望の灯をともして終わる。
ある種のファンタジー的な世界とも言えるが、それがこの映画の独特の魅力になっている。スタンダードサイズの映像も効果的。
西尾潤の同名小説を永田琴監督が映画化。脚本は向井康介。
半グレ集団で闇ビジネスをする3人の若者たちが、そこから抜け出そうと苦闘するドラマ。3人それぞれの視点からドラマを綴り、闇ビジネスの手口や事件の行方とともに、彼らが闇ビジネスに手を出す背景にある貧困、虐待などの問題をあぶり出す。
中盤以降は組織からの脱出に焦点を絞り、スリリングなドラマを展開。ド派手なアクションシーンも用意するなどエンタメ性も重視する。ラストはやや尻切れトンボの感があるが、総じてヤクザ映画の進化系として興味深い作品。何より北村匠海、林裕太、綾野剛の3人のキャスティングが秀逸。
西尾潤の同名小説を永田琴監督が映画化。脚本は向井康介。
半グレ集団で闇ビジネスをする3人の若者たちが、そこから抜け出そうと苦闘するドラマ。3人それぞれの視点からドラマを綴り、闇ビジネスの手口や事件の行方とともに、彼らが闇ビジネスに手を出す背景にある貧困、虐待などの問題をあぶり出す。
中盤以降は組織からの脱出に焦点を絞り、スリリングなドラマを展開。ド派手なアクションシーンも用意するなどエンタメ性も重視する。ラストはやや尻切れトンボの感があるが、総じてヤクザ映画の進化系として興味深い作品。何より北村匠海、林裕太、綾野剛の3人のキャスティングが秀逸。
短編「遠くへいきたいわ」で注目された団塚唯我監督の長編デビュー作。カンヌ国際映画祭監督週間に選出。
姉と弟が、母を亡くして以来疎遠になっていたランドスケープデザイナーの父親と再会する家族ドラマ。3人の複雑な胸中をリアルかつ繊細にセリフに頼らずに描き出していく。同時に背景となる渋谷の街の再開発を描き、街の変化と家族の変化をリンクさせる。終盤はアッと驚く大胆な仕掛けを施し、独特の余韻を残す。粗削りなところもあるが団塚監督の才気を感じさせる作品。主演の黒崎煌代をはじめ、遠藤憲一、井川遥、木竜麻生らの演技も素晴らしい。
短編「遠くへいきたいわ」で注目された団塚唯我監督の長編デビュー作。カンヌ国際映画祭監督週間に選出。
姉と弟が、母を亡くして以来疎遠になっていたランドスケープデザイナーの父親と再会する家族ドラマ。3人の複雑な胸中をリアルかつ繊細にセリフに頼らずに描き出していく。同時に背景となる渋谷の街の再開発を描き、街の変化と家族の変化をリンクさせる。終盤はアッと驚く大胆な仕掛けを施し、独特の余韻を残す。粗削りなところもあるが団塚監督の才気を感じさせる作品。主演の黒崎煌代をはじめ、遠藤憲一、井川遥、木竜麻生らの演技も素晴らしい。
「冬のソナタ」のユン・ソクホ監督の映画。済州島の海辺の町で出会った中年の男女のドラマ。
恋愛映画的な要素はあるものの、むしろ過去の傷に苦しむ女性の生き直しのドラマといった感が強い。
話自体にさして新味はないけれど、主人公の過去に関係のあるクラシック音楽が効果的に使われるとともに、海辺の町の美しい風景を捉えた映像も魅力的で、なかなか良い作品に仕上がっている。
ふだんは明るくしゃべり倒すが、その裏で過去の傷に苦しむ女性をキム・ジヨンが好演。
「冬のソナタ」のユン・ソクホ監督の映画。済州島の海辺の町で出会った中年の男女のドラマ。
恋愛映画的な要素はあるものの、むしろ過去の傷に苦しむ女性の生き直しのドラマといった感が強い。
話自体にさして新味はないけれど、主人公の過去に関係のあるクラシック音楽が効果的に使われるとともに、海辺の町の美しい風景を捉えた映像も魅力的で、なかなか良い作品に仕上がっている。
ふだんは明るくしゃべり倒すが、その裏で過去の傷に苦しむ女性をキム・ジヨンが好演。
同じテニスクラブに所属する選手が自殺し、自分の担当コーチが指導停止になって動揺する15歳の少女のドラマ。
タイトル通りに沈黙を続ける主人公に焦点を当てて日常を淡々と映す。そこからは主人公の揺れ動く心の内がリアルに伝わってくるのと同時に、不穏で緊張感にあふれた空気感が漂う。レオナルド・ヴァン・デイル監督の筆致には、共同プロデューサーを務めたダルデンヌ兄弟とも似たものを感じさせる。
主人公を演じたのは、新人のテッサ・ヴァン・デン・ブルック。テニス選手としても活躍しているそうで、テニスの腕が上手いのは当然としても、表情だけで主人公の心の内を表現する演技が見事!
同じテニスクラブに所属する選手が自殺し、自分の担当コーチが指導停止になって動揺する15歳の少女のドラマ。
タイトル通りに沈黙を続ける主人公に焦点を当てて日常を淡々と映す。そこからは主人公の揺れ動く心の内がリアルに伝わってくるのと同時に、不穏で緊張感にあふれた空気感が漂う。レオナルド・ヴァン・デイル監督の筆致には、共同プロデューサーを務めたダルデンヌ兄弟とも似たものを感じさせる。
主人公を演じたのは、新人のテッサ・ヴァン・デン・ブルック。テニス選手としても活躍しているそうで、テニスの腕が上手いのは当然としても、表情だけで主人公の心の内を表現する演技が見事!
オダギリジョー監督・脚本・編集。NHKドラマの映画版。
狭間県警警察犬係のハンドラー・青葉一平は、相棒のオリバーがなぜか着ぐるみのおじさんに見えている。そんな中、先輩ハンドラーが現れ、失踪したスーパーボランティアに関する捜査協力を求めてくる……。
奇想天外でシュールな笑いが満載のドラマ。ただし、後半は不思議なドアをめぐるSFチックな展開に突入。よくもこんなことを考えるものだと、オダギリジョーの頭の中を覗いてみたくなった。
最大の見ものは超豪華キャストの怪演。それを見ているだけで楽しい。
オダギリジョー監督・脚本・編集。NHKドラマの映画版。
狭間県警警察犬係のハンドラー・青葉一平は、相棒のオリバーがなぜか着ぐるみのおじさんに見えている。そんな中、先輩ハンドラーが現れ、失踪したスーパーボランティアに関する捜査協力を求めてくる……。
奇想天外でシュールな笑いが満載のドラマ。ただし、後半は不思議なドアをめぐるSFチックな展開に突入。よくもこんなことを考えるものだと、オダギリジョーの頭の中を覗いてみたくなった。
最大の見ものは超豪華キャストの怪演。それを見ているだけで楽しい。
真利子哲也監督のオリジナル脚本作品。日本人の夫と台湾人の妻。息子の誘拐事件をきっかけに、夫婦の秘密が浮き彫りになり崩壊していく。
全編ニューヨークロケで撮られたノワール調の映像が絶品。夫が研究する廃墟、妻が操る人形、故障した車のエンジン音なども効果的に使われ、不穏で、スリリングな世界を構築している。主演の西島秀俊、グイ・ルンメイのリアルな演技も見もの。
ただし、ラストは賛否が分かれそう。希望の灯をともすような結末にしたくなかったのはわかるが、個人的には曖昧模糊として消化不良気味だった。
真利子哲也監督のオリジナル脚本作品。日本人の夫と台湾人の妻。息子の誘拐事件をきっかけに、夫婦の秘密が浮き彫りになり崩壊していく。
全編ニューヨークロケで撮られたノワール調の映像が絶品。夫が研究する廃墟、妻が操る人形、故障した車のエンジン音なども効果的に使われ、不穏で、スリリングな世界を構築している。主演の西島秀俊、グイ・ルンメイのリアルな演技も見もの。
ただし、ラストは賛否が分かれそう。希望の灯をともすような結末にしたくなかったのはわかるが、個人的には曖昧模糊として消化不良気味だった。
実話を基にした原田マハの小説を映画化。沖縄のサトウキビでラム酒を作る事業に挑戦し成功させた女性のドラマ。
定番のお仕事成功物語以外の何物でもないが、伊藤沙莉演じる主人公の純朴で直球真っ向勝負の小気味よさに加え、沖縄のおおらかで明るい風土のおかげで、実に心地よい映画に仕上がっている。母役の富田靖子、祖母役の高畑淳子も存在感たっぷりで、女三代のモノづくりの継承というテーマも見えてくる。観たらラム酒が飲みたくなるかも。
染谷将太、尚玄、シシド・カフカ、小野寺ずる、肥後克広、滝藤賢一らも好演。
実話を基にした原田マハの小説を映画化。沖縄のサトウキビでラム酒を作る事業に挑戦し成功させた女性のドラマ。
定番のお仕事成功物語以外の何物でもないが、伊藤沙莉演じる主人公の純朴で直球真っ向勝負の小気味よさに加え、沖縄のおおらかで明るい風土のおかげで、実に心地よい映画に仕上がっている。母役の富田靖子、祖母役の高畑淳子も存在感たっぷりで、女三代のモノづくりの継承というテーマも見えてくる。観たらラム酒が飲みたくなるかも。
染谷将太、尚玄、シシド・カフカ、小野寺ずる、肥後克広、滝藤賢一らも好演。
ノーベル文学賞作家カズオ・イシグロの長編デビュー小説を石川慶監督が映画化。1950年代の長崎と1980年代のイギリスを行き来しながら、長崎からイギリスに移住した一人の日本人女性の謎めいた過去を綴る。
広瀬すずと二階堂ふみ、2人が演じる一見対照的な女性が実は大きな共通点を持つことが明らかになり、やがて驚きの展開に突入する。1950年代の長崎の映像がどことなく異世界を思わせ、二階堂すずの演技もリアルさとはやや距離を置く理由が、その展開を目にして氷解した。
戦争の傷を克服してたくましく生きる女性のヒューマンドラマであるのと同時に、記憶を巡るミステリーでもある。
ノーベル文学賞作家カズオ・イシグロの長編デビュー小説を石川慶監督が映画化。1950年代の長崎と1980年代のイギリスを行き来しながら、長崎からイギリスに移住した一人の日本人女性の謎めいた過去を綴る。
広瀬すずと二階堂ふみ、2人が演じる一見対照的な女性が実は大きな共通点を持つことが明らかになり、やがて驚きの展開に突入する。1950年代の長崎の映像がどことなく異世界を思わせ、二階堂すずの演技もリアルさとはやや距離を置く理由が、その展開を目にして氷解した。
戦争の傷を克服してたくましく生きる女性のヒューマンドラマであるのと同時に、記憶を巡るミステリーでもある。
韓国のサスペンススリラー。前半は、幼い娘の異常な行動に憔悴していく母親を描く。20年後を描く後半は、特殊清掃の仕事をしている女のもとに新たな同僚が来たことから異変が起きる。
こちらの予想をことごとく覆すドラマ。ホラー的な妙味に加えサスペンスやバイオレンスアクションの色彩も加味。不穏でスリリングな作りはさすがに韓国映画。大団円になるかと思わせて、最後に後味の悪い結末を持ってくるあたりもいかにもという感じ。終盤やや運びが乱暴ではあるものの、新人監督コンビの作品にしてはまずまずよくできている。
少女時代のクォン・ユリをはじめ、クァク・ソニョン、イ・ソル、キ・ソユらも好演。
韓国のサスペンススリラー。前半は、幼い娘の異常な行動に憔悴していく母親を描く。20年後を描く後半は、特殊清掃の仕事をしている女のもとに新たな同僚が来たことから異変が起きる。
こちらの予想をことごとく覆すドラマ。ホラー的な妙味に加えサスペンスやバイオレンスアクションの色彩も加味。不穏でスリリングな作りはさすがに韓国映画。大団円になるかと思わせて、最後に後味の悪い結末を持ってくるあたりもいかにもという感じ。終盤やや運びが乱暴ではあるものの、新人監督コンビの作品にしてはまずまずよくできている。
少女時代のクォン・ユリをはじめ、クァク・ソニョン、イ・ソル、キ・ソユらも好演。
「そこのみにて光輝く」「きみはいい子」に続いて呉美保監督と脚本の高田亮が3度目のタッグ。
小学生の普通の男の子が、同じクラスの環境問題に熱心な女の子が気になり、接近しようとして過激な環境活動に手を染める。
主人公の男の子をはじめ、子供たちの日常が生き生きと描かれる。手持ちカメラでアップを多用し、彼らの豊かな表情をスクリーンに刻む。どの子供も個性的で得難いキャラクターの持ち主。それを見ているだけで楽しい。
全編がコメディータッチの映画だが、子供たちの起こした行動が過激化してからは社会風刺的な側面もクローズアップされる。
最近の子供を主人公にした映画の中でも出色の作品。
「そこのみにて光輝く」「きみはいい子」に続いて呉美保監督と脚本の高田亮が3度目のタッグ。
小学生の普通の男の子が、同じクラスの環境問題に熱心な女の子が気になり、接近しようとして過激な環境活動に手を染める。
主人公の男の子をはじめ、子供たちの日常が生き生きと描かれる。手持ちカメラでアップを多用し、彼らの豊かな表情をスクリーンに刻む。どの子供も個性的で得難いキャラクターの持ち主。それを見ているだけで楽しい。
全編がコメディータッチの映画だが、子供たちの起こした行動が過激化してからは社会風刺的な側面もクローズアップされる。
最近の子供を主人公にした映画の中でも出色の作品。
世界的ブームを巻き起こした人気ゲームを川村元気監督が映画化。
地下鉄の通路で出口が見つからず、同じ場所で無限ループを繰り返す男の不条理劇。
主要な俳優は二宮和也、河内大和、小松菜奈、花瀬琴音、浅沼成の5人だけ。短編映画で終わりそうなネタを、あの手この手で長編映画に仕立て上げるあたりは、さすがヒット映画のプロデューサーでもある川村監督。
ゲーム的な世界に、主人公と恋人の迷いのドラマを導入するあたりも巧み。それほど深いドラマではないが迷走劇の背景としては効果的。
絶対に観るべき映画とは思わないが、こういう世界が好きな人はハマりそう。
世界的ブームを巻き起こした人気ゲームを川村元気監督が映画化。
地下鉄の通路で出口が見つからず、同じ場所で無限ループを繰り返す男の不条理劇。
主要な俳優は二宮和也、河内大和、小松菜奈、花瀬琴音、浅沼成の5人だけ。短編映画で終わりそうなネタを、あの手この手で長編映画に仕立て上げるあたりは、さすがヒット映画のプロデューサーでもある川村監督。
ゲーム的な世界に、主人公と恋人の迷いのドラマを導入するあたりも巧み。それほど深いドラマではないが迷走劇の背景としては効果的。
絶対に観るべき映画とは思わないが、こういう世界が好きな人はハマりそう。