紗雪| Sayuki
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紗雪| Sayuki
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JP/EN | 25↑LDS fan 恋と深空 | 成人済| 時々SS 書きます |全キャラ好き。🌟には特に大騒ぎ| 📝格納 https://www.pixiv.net/users/104294244 | X➡️ https://x.com/sayukiss
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つづき〜最後まで (2/2)
「お前、帰ってくるなり食い物にかぶりつきか？先に、ばあちゃんにちゃんと挨拶してこい」 「だって、良い匂いがしたからつい…」 　流石に子供っぽかっただろうかと恥ずかしくなっているところに、見つめてくる優しい目がさらに細められて顔が熱くなる。目を逸らして、なんとはなしに食卓の上を見つめる。なにか、何か言わないと。 「…一番好きなものがない」 　なのに、出てきた言葉は何の色気もない言葉。気の利いたことが言えたら良いのに肝心なところで勇気が出ない。けれど、よくできた兄は気にした風もなく笑った。 「フレンチトーストか？あれは食べる直前に焼いてやる。『焼きたてが最高』なんだろ」 「兄さん、大好き！」 『妹』の顔で彼の腕の中に飛び込んだ。彼が『理想的な兄』であるように私もまた条件反射のように『可愛い妹』をやってしまう。頭上からは苦笑が降ってきて、私の背中に手が回る。 「お前はどこまでも食い意地だな」 「食は幸福と健康な人生の基本だよ！」 「まったく…。でも、あのゲームはお前の負けだぞ」 　なんだっけ、と首を傾げるものの、すぐに気がついてはっとする。昨夜電話で話した「好き」という言葉を使わずに好きと言うゲームのことだ。それはまともに表情に出たらしく、マヒル兄さんが得意げに笑う。 「取り消すのは許さないからな。お前の方から『好き』って言った」 　至近で笑まれ、その声は触れた体からも直接響いて心臓が止まりそうになる。私は唇を噛んだ。 「いいよ、わかったよ。私の負け」 　だってもういつからか思い出せないくらい前から、ずっとずっと負け続けている。この人にも、そしてこの家族という完璧な調和にも。私は顔を伏せ、目の前の体に額を押し付ける。この世の誰が『兄』のために渾身のネイルを塗るものか。 　だから、と私は思う。 　少しだけ抗いたいと。 　私は彼に回した腕にほんの少しだけ力を込めた。いつものハグならもうとっくに身体を離していいだけの時間が過ぎた。だから、あとほんのちょっとだけこの腕の中で待つ。「好き」という言葉を使わずに好きと言いたい。 （これが私の、『好き』） 　 　＊＊＊ 　 　ゲームのルールを確認しておけばよかった、とマヒルは思う。 　使えるのは好き以外の『言葉』に限られるのか、行動も『好き』の表現として使えるのか。ルールに確信が持てないから、彼女の行動をどう理解して良いのか判断ができない。 　腕の中には、甘えん坊の『可愛い妹」がいる。 　いつもだったら、ハグを解いているくらいの秒数を、とっくに過ぎた。 　その行動に、家族としての好意以上の意図はあるのか。 『マヒル兄さん大好き』 　そう言って笑顔で飛びついてきた彼女は、それでも自分を兄と呼んだ。彼女が『兄』を求めるなら、何をしてでも叶えてやる。優して頼りになる、無条件の護り手でありつづける。 （それが俺の『好き』だ） 　でも、と思う。 　あとほんの少しだけ待って、それでも彼女がこの腕の中から抜け出さなかったその時には。 　ゲームのルールを最大限に拡大解釈して、自分の中の獰猛な獣が彼女を喰らい尽くしてしまうかもしれない。 　 「好き」という言葉を使わずに好きだと伝える。 　お互いの次を待つふたりを横目に、秒針は音を立てて時を刻んだ。
January 15, 2025 at 9:00 AM
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マヒ主／好きという言葉を使わずに好きという言葉遊びをする話(1/2)

以前ワンドロでホム主版を書いた時に一緒に書いたマヒ主版
pixivで公開してたのを画像版にしてみました
#恋と深空二次創作 #ladプラス #マヒ主
印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。 付記に「マヒ主／「好き」という言葉を使わずに好きと言うことば遊びをする話」、「紗雪 @sayukiss on X / @sayukiss1016 on bsky」と記載されています。 画像情報：generated by 新書ページメーカー / ユーザーアップロード画像 / フォント：夜永オールド明朝Regular 以下は本文の内容です。 「好きって言葉を使わずに好きだっていうゲーム？」 「そう、友達に教えてもらったの。やってみない？」 　私はベッドの上で膝を抱えた。傍に置かれたスマホの画面の向こうが沈黙するのに、おや？と思って声をかける。電波がおかしいはずはない。念の為に確かめたが表示されているアンテナの本数は十分だ。 「兄さん？」 「…聞こえてるよ。じゃあ明日の朝にやろう。日曜だから、ばあちゃん家に帰ってくるよな」 「うん。兄さんは明日の予定はどんな感じ？」 「何もない。やりたいことがあったら言えよ。なんでも付き合ってやる」 　その答えを聞きながら私はそっと微笑んだ。なんて理想的な『兄』だろう。 　風呂上がりに綺麗に整えた爪をナイトスタンドの光にかざしてみた。我ながら上手にできた。きっと、明日見せる手も綺麗なままのはず。 「ひとつ聞くけど、お前さ」 「なぁに？」 「そういうゲーム誰にでも声をかけてないよな？」 「いくら私でもそんなことしないよ。兄さんだから誘ってるの」 「…ならいい。もう切る。また明日な」 「うん、おやすみ」 　返ってくる『おやすみ』を一番近くで聞きたくて、スマホを耳に寄せた。 　あなただから誘っているのに。 　わからずや。 　 　＊＊＊ 　 　通話終了の画面をマヒルは見つめる。 　少し考えて、メッセージを送った。 『早く寝ろよ』 『夜更かしするな』 　画面を見ているとすぐに既読のマークがついた。 『バレてるぞ。本当に寝ろ』 　即座に、プンスカするキャラクターのスタンプが送られてきた。画面の向こうで頬を膨らませているだろう彼女の姿を想像すると思わず苦笑してしまう。そのまま画面をオフにした。これ以上構うと本当に夜更かしをさせてしまう。 　我ながら、なんて理想的な『兄』だろう。 　自嘲と共にそう思う。 　――兄さんだから誘ってるの。 　少しだけ笑みを含んだ声が耳に残っていた。 　 　＊＊＊ 　 　翌朝、わくわくしながら祖母の家を訪ねると待っていたのは、ダイニングテーブルに 並んだ豪華な朝食だった。 「すごい！フルコースだ！」 　ふわふわのオムレツ、フルーツサラダ、パンケーキ、と大好きなもメニューが並んでいる。スープのカップに触れると、寒空の下を歩いてきて冷え切った指先にじんわりと熱が伝わってきて思わず頬が緩む。 「じゃがいものポタージュ？」 「惜しいな。ごぼうだ」 「どっちも好き！」 　いつの間にか後ろから現れた背の高い影を振り返ると、優しい眼差しと目が合った。 「おはよう」 「おはよう、マヒル兄さん」 　しばらく基地に詰めていたから会うのは久しぶりだった。元気だった？今回はどのくらい臨空市にいられるの？たくさんかけたい言葉があるのに、なぜかどれも出てこない。黙っていると、口を開いたのは向こうのほうだった。
January 15, 2025 at 9:00 AM
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ホム主／一月八日の祈り
気持ちの整理のために書きました。
⚠️1/8臨空市役所からのメール読了推奨⚠️
#恋と深空二次創作 #新書ページメーカー https://sscard.monokakitools.net/pagemakers/shinsho/shinsho_bg.php
印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。 付記に「ホム主／一月八日の祈り」、「紗雪 @sayukiss on X / @sayukiss1016 on bsky」と記載されています。 画像情報：generated by 新書ページメーカー / Photo by Krystal Ng on Unsplash / フォント：夜永オールド明朝Regular 以下は本文の内容です。 　一月八日の祈り 　 　冬空の下彼女を待つ。 　 　晴れた空はどこまでも高く、彼方に薄く飛行機雲が伸びてゆくのが見えた。そしてその下にそびえる高層の建物――臨空市役所。市民課、というのはどのフロアなのだろう。そして彼女はいまどんな顔をしているのだろう、とホムラは思い巡らせる。 　市役所までの送り迎えを頼んできた彼女はしかし、窓口まで着いて行くという申し出には首を縦に振らなかった。 「私たち家族のことだから、自分でちゃんとやるよ。すぐに済むはずだから待っててくれる？あ、もし予定があったら無理には…」 「バカなことを言わないで。待ってるよ、ずっと。それに、気が変わって呼んでくれたらすぐに行く」 「…ありがと、ホムラ」 　その時の泣き笑いの笑顔が、目の裏に焼き付いて離れない。――ずっと。 （呼べ） 　そう彼女に命じることができたらいいのに、とホムラは思う。疼いてやまない胸の契約印。それは拍動とともに、彼女の気持ちを届ける。哀しみ、痛み、さみしさ、後悔――。なのにそれでも彼女はホムラを呼ばない。『来て』とそう一言呼んでくれたなら、飛んでいくのに。 　絶滅近くにまで数を減らしたリモリア人は、そ の分同胞の結束が固く、直近の家族をたとえ全て亡くしていたとしても「一族」の近しい者がその代わりとなる。 （でも、彼女には…） 　その先を言葉にするのはたとえ胸の内とはいえ残酷な気がして、ホムラは思考をその先に進ませるのをやめる。市役所の中へ消えてゆく彼女の背中を見送ってからどのくらい経ったのだろう。できることは何もないのに、どうしても、暖かい車内に戻る気になれない。 　この建物から彼女が出てくるその瞬間、その瞳に映るのは自分でありたい。この世界には、彼女の帰りを待つ人が、まだちゃんと居るのだと伝わって欲しい。 （――早く…） 　戻っておいで、その冷たい建物の中から。 　大切な絆をただの符号のように書き換えてしまう、あまりにも虚しいそんな場所から。 　そうやって寒空の下を待ち続け、彼女が市役所の自動ドアから出てくるのが見えたのは、さらに暫くしてからのことだった。こちらを見つけ、驚いたように目を瞬く。 「ホムラ？こんなに寒いのに外で待ってるなんて」 「君に一秒でも早く、おかえりって言いたかったからね」 　大切な人を迎える時の言葉を。 　まるで家族がそうするように。 　彼女ことを大切に思う人は、この世界にまだ居るのだと、伝えるために。 「だから、おかえり。よく頑張ったね」 「ホムラ…」 　抱きしめると、彼女の腕は自然とホムラの背にまわる。その手が、上着をぎゅうっと握りしめた。 「家族関係の取消なんて、紙の上のことだから！おばあちゃんはおばあちゃんだし、兄さんは兄さんだから。私たちを家族にしていた本当に大切なものは、なにもなくなってないから。変わらないから。…変わらないんだから。ただ、」 　 　会えないだけで―― 　 　最後の一言は嗚咽に飲み込まれる。 　どんな言葉もその痛みには追いつかないだろう。 　だから抱きしめる腕に力を込めた。 　彼女が掠れた声で名前を呼び、契約の印が応えるように淡く光る。 　契約なんかなくても独りになんてしない。 　そんな誓いが、どうか彼女に伝わりますように。 　強くつよく希（ねが）いながらホムラは目を閉じた。――祈るように。 　 　一月八日のことだった。 　 （おしまい）
January 9, 2025 at 12:28 PM
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続き〜最後まで(2/2)
「では、行ってこい。私は待っている」 「だめだめ、あなたも引くの！一年の運勢を知っていたら、気持ちの準備もできるじゃない」 「気持ちなど準備して一体どうするというんだ。危機管理ならもっと具体的かつ計画的に…」 「もう！そう言う問題じゃないんだったら」 　彼女は有無を言わさずレイを引っ張ってゆく。気がついたら、御籤番号を引くための竹筒を渡されていた。 「私は二八三番。レイは？」 「こちらは、一四番だ」 　巫女たちがそれぞれの番号の棚から御神籤を取り出してくれる。上部には運勢が書かれ、その下には縁起物の詩歌、そして「家移り」「旅行」など、項目ごとのお告げが書かれている。 （――大吉、か…） 　元よりこういう類（たぐい）のものは信じていない。縁起物だから、大吉が多く出るようになっているのだというのが通説でもある。だから、詳細を読むこともせずその紙を折りたたもうとした――時だった。彼女が長い髪を揺らして振り返る。 「っ、…レイ」 　その様子は、先ほどまでの明るさとはまるで違っている。楽しそうに読んでいたはずの紙を握りしめて、まるで今にも泣き出しそうな顔をしている。 「一体どうした？もしかして、悪い運勢でも出たのか？気にしなくていい。統計上、こういうものは――」 「ち、違うの。そうじゃないの。…見て」 　彼女は手にした紙片を指差す。震える指の先を見ると『待ち人』の欄だった。レイはそこに記された一言を読み上げた。 「――『飛ぶ鳥が帰る。信じて待て』」 「レイ、これ…」 「帰る――か…こういう書き方は少し珍しい気がするな。普通だと『来る』とか『来ず』ではないか？ 『待ち人来たる』と言うしな」 「だよね。…なのに、『帰る』なんてお告げ、あるんだ。それに、飛ぶ鳥って…」 　空を飛ぶ職業の人って思っていいのかな――そう呟く声は微かに震えていた。そこには、隠しきれない期待と、失望に終わってしまうのではないかという恐怖感とが透けて見える。レイが自分の手の中にある紙片を確認すると、『待ち人』の欄には『そのうち来る』とあった。今もどこかの災害復興現場で医療支援にあたっているだろう両親のことがふと頭を過（よぎ）ったが、いずれにせよ書き方としてはよくあるタイプだ。 「飛んでいってしまった鳥、戻ってくると思う？」 「今更疑うのか？ここの御神籤はよく当たると言っていたのは誰だ？」 「そう、だよね…書いてある通り、信じて待ってみようかな」 　痛みにうずくまるよりも希望を選び、自分の足でしっかり立とうとするのはいかにも彼女らしい。だからこそ、願わずにいられないのだ。彼女の祈りが、そしてこのお告げが成就して欲しいと。 「叶うといいな」 「うん」 　 　話し合いの結果、御神籤は境内の枝に結んで奉納することになった。少しでも神鳥達の加護が多くあるようにと願って。できるだけ天に近いところに結んでほしい、と彼女にせがまれて、レイは目一杯に手を伸ばし、さらにはその長身で背伸びまでして、人が届く一番高い枝に彼女のおみくじを結んでやる。 「ありがとう。じゃあ次はレイの番だね！」 　彼女がそう言って、預かっていた二枚目の――レイの分の御神籤を手渡してくれる。その時、本当に偶然に、『待ち人』の隣の文字が目に入った。 　 『恋愛　恋敵多し。油断大敵、殊（こと）に旧友に注意』 　 「………」 　レイは眉間を押さえ、暫し黙考する。いくらなんでも出来すぎではないだろうか。 　 　――飛ぶ鳥が帰る。信じて待て。 　――恋敵多し。油断大敵、殊に旧友に注意。 　 　この二つが並ぶと、もはや『彼』のことしか思い浮かばない。動きを止めてしまったレイに、隣の彼女が目を瞬き不思議そうにする。 「どうしたの、レイ。大丈夫？」 「なんでもない。ただ、この神社が霊験あらたかだというのは本当かもしれないと思ってな。きっと、お前の願いを叶えてくれる――そんな気がしたんだ」 「ホント？現実主義者のレイ先生にそう言われるとなんだか強気になっちゃうな」 　彼女の顔がパッと輝いた。レイは、苦笑しながら緩く首を振る。 「まったく、現金なことだ。では、私は気を引き締めるとしよう。何せライバルは多くて、特に旧友に要注意らしいから」 「何のこと？」 「こちらの話だ。行こう、境内を出てすぐの甘味処で絶品のぜんざいが食べられるらしいぞ」 「年明けからあなたのスイーツ好きは絶好調みたいだね」 「ほう、それはお前は食べないということか？」 「もちろん食べるよ！謹んでいただきます！」 「では決まりだ」 　レイは彼女の手を取ると、手のひらを合わせて指を絡めた。いつもと違う繋ぎ方に彼女は一瞬首を傾げたが、結局気にしないことにしたらしい。 （…不発か） 　レイは繋いだ手をポケットに収めると、今度は親指で彼女の手の甲を撫でた。意味ありげに、ゆっくりと。途端に、びくりと彼女の肩が跳ねる。 「…っ」 「どうした？」 「な、なんでもないよ」 「そうか、では行くぞ」 　マヒルが猛抗議する空耳が聞こえてきそうな気もするが、知ったことではない。本当に彼が戻ってくるのなら、スタートダッシュは肝心だ。それでなくても、深空ハンターとしてのパートナーでもある『ご近所さん』や『副業の雇い主』である人気画家から、果てはよくわからないどこぞの『果物屋』まで、警戒すべき相手は多いのだから。 　他愛ないことを賑やかに話しながら、二人は参道を歩いてゆく。一際高い木の枝に結ばれた二枚の御神籤が、初春の寒風に揺れながらその後ろ姿を見送っていた。 　 　神鳥達が本当に願いを運び、記されたお告げは成就するのか――その答えを彼らが知るのは、もう少しだけ先の未来のことになる。 　 　 　 　 （おしまい）
January 5, 2025 at 8:20 AM
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🎍おさなな組新春小話(1/2)
⚠️4章読了推奨⚠️マヒルを待つ主ちゃんの初詣withレイ
とある神社に初詣にきた彼女とレイ先生。
お参りの後、あるお告げを受け取り…という話。
#恋と深空二次創作 #ladプラス
印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。 付記に「レイ→主←マヒル（不在）／飛ぶ鳥、帰る」、「紗雪 @sayukiss on X / @sayukiss1016 on bsky」と記載されています。 画像情報：generated by 新書ページメーカー / Photo by Annie Spratt on Unsplash / フォント：夜永オールド明朝Regular 以下は本文の内容です。 「わぁ…三ヶ日は過ぎたのに人が多いね」 「はぐれたら厄介だぞ、離れるなよ」 　そう言って手を取りポケットの中に仕舞い込むと、彼女は途端にぷぅと頬を膨らませた。 「また子供扱いする。はぐれたりしないし、万一そうなってもちゃんとレイを見つけるよ。心配しなくても大丈夫」 「今と全く同じことを言っておいて、スイーツに夢中になり、バイキング会場で自分のテーブルがわからなくなってスタッフにエスコートを頼まなければならなかったのは誰だ？」 「う、…あの時は、スイーツに目が眩んだの。今日は気を惑わすものがないから確実にあなたを見つけるよ。レストランと違ってあなたが立っている分見つけやすいしね」 「ああ、なるほど…身長か」 　人混みに紛れていても特別な人はなぜか自然に見つけてしまう――ということではないらしい。自分とは違って。心のどこかで気落ちする自分には気が付かなかったことにしてレイは微かに笑んだ。 　正月明け最初の週末であるこの日、二人は連れ立って臨空市郊外のとある神社を訪れている。初詣のピークは過ぎたとはいえまだまだ参拝客は多く、拝殿までの列は長い。 「それで、レイ副総括はどんな年末年始を過ごしていたの？」 「去年やその前と特に変わらない。年越しのタイミングは、羽目を外して笑えない怪我をして担ぎ込まれる患者が多いんだ。対応に追われているうちに、気がついたら年は明けていた。それにこの時期は町なかの病院が閉まる分、軽症の患者もAksoのような基幹医院に回ってくる。いつも以上に日付の感覚はなかったな」 「うわぁ…それは目もとのクマさんも育つはずだよね。お疲れ様、レイ先生」 「それはどうも。それで、臨空最強のハンター殿はどうしていたんだ？」 「普段と同じ。毎日元気にワンダラーを退治してたよ」 「それはワンダラーたちには災難なことだったな」 「ちょっと！そこは働き者の新人ハンターさんを褒めるところじゃない？」 　ぷぅ、とその頬がまた餅のように膨らむ。彼女がそんな仕草を見せると、『彼』がすかさずそれをつまんで揶揄（からか）っていたものだった。膨らんだ彼女の頬の感触は、一体どんな感じなのだろうと、興味と羨ましさがない混ぜになった気持ちで見守っていたことを思い出す。いま、その彼は――マヒルはいない。だから、それはもう彼の専売特許ではなく、あんな風に、彼女に触れることだって、許されるはずだった。彼女と繋いだ反対側の手が疼く。 「レイ？」 「…いや、なんでもない」 　一瞬迷い、しかしレイはそう言って首を振る。きっと、彼女にとっては今日の初詣も『二人で来た』というよりも『一人足りない』が正直な感覚だろう。自分たちは、三人でいた時間が長すぎたのだ。おそらく彼女は無意識だろうが、彼女の眼差しは、何かを探すように、時折、レイがいるのとは反対――いつもだったら『彼』がいたはずのスペースに向く。 「それはそうと、願い事は決めたのか？」 「もちろんだよ。あなたは？」 「私も決めてある」 　そう答えると、彼女は目を輝かせながら下から覗き込んできた。レイは手のひらをかざし、興味津々の視線を遮るようにする。 「自分の願い事を言わないで、他人の願い事を聞き出そうとするのは些か行儀が悪いのではないか？」 「私とレイの仲じゃない」 「幼馴染の間柄ではそこまでの秘密は明かせないな」 「ええーっ」 　つれないなぁ、と明るく笑う彼女はしかし、レイの望みを無理に聞き出そうとすることはなく、そして彼女自身の望みを教えてくれることもまたない――そんな距離感。そして一方のレイには、彼女の願い事を聞くために自らの願いを明かす必要もなかった。初詣に行くならこの神社がいいと彼女がリクエストしてきた時点で、それは明白だからだ。 「見て、レイ。狛小鳥（こまことり）だよ！かわいいね」 「そうだな」 　彼女が参道両脇の小鳥の石像を指し示す。旅人がこの地で鳥を助け、その鳥は旅人に末代まで加護を与え守護したという故事に因（ちな）んで建てられたこの神社では、普通だと狛犬が置かれるべき場所にはそれに代えて小鳥の像がある。 　そしてそんな伝説から、この神社の主神は翼に関わる一切のものに加護を与えるとされていた。それは何も生き物の鳥に限らない。鋼鉄の翼で空を飛ぶ、航空に関わる者も守護すると考えられており、航空関係者から深い崇敬を集めている。だから彼女の願いは今でもやはりたった一つ――おそらくはあの日突然失われた『彼』に関することに違いなかった。 　少しずつ列は進み、やがて参拝の順番が回ってきた。拝殿はさまざまな神鳥の像や掛け軸に飾られていて、それら聖なる鳥達は、空をゆく全ての者に加護を授け、その翼に人々の願いを乗せ天に運ぶと言われている。揃って祭壇の前に進み、型通りのニ拝ニ拍手をして手を合わせる。 　ふと隣を見ると、彼女はすでに祈り始めていた。その手はなにかを握り込み、そこから銀色のチェーンが覗いている。それは『彼』がいつも身につけていたもの。そしてあの爆発の後、病院に救急搬送されてきた彼女が握りしめていたもの。意識がないにも関わらず、決して離そうとしなかったネックレスだ。知っている。 あの時対応にあたったのは、他ならぬ自分だったのだから。レイは、反射的に隣の細い肩を抱き寄せたくなるのを堪えて目を閉じた。 （どうか――） 　予（あらかじ）め考えていた願い事などとっくに頭から消し飛んでいる。 　 　神鳥達が運ぶ祈りを聞き届ける存在がいるのなら。 　翼を持ち空をゆくものをそれが守ってくれるのなら。 　願わずにはいられない。彼女の願いだけはどうか、と。 　 （――届いてくれ…） 　彼女がもう悲しむことのないように。ずっと笑顔でいられるように。そう祈る時間は永遠にも一秒にも感じられた。目を開くと彼女もちょうど合掌を解くところだった。二人は再度、礼法に則って一礼をし、拝殿を離れる。 「一緒に来てくれてありがとう」 「誘ったのは私だ。お前が礼を言う必要などない」 「それでも、ありがとう」 　それ以上の言葉は必要なく、並んでゆっくりと参道を歩いていった。脇には、翼を象（かたど）った絵馬が並ぶ。ペットの鳥の健康祈願や超難関と言われる航空アカデミーへの合格祈願、そして現役のパイロット本人やその家族のものと思われる安全祈願もあった。 「絵馬祈願もやってみるか？先ほど、随分真剣に祈っていただろう。二重の願掛けで効果倍増かもしれないぞ」 「そうだね…だけど、しつこいと神様に嫌われてしまうかもしれないからやめておくよ。どうせなら、今年の運を神様に教えてもらいたいかな。せっかく初詣に来たんだし。ここの神社の御神籤はよく当たるって有名なんだよ」
January 5, 2025 at 8:20 AM
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監禁フラグが立ってそうなセヤさんが撮れてしまったな…(ｷｭﾝ
December 1, 2024 at 10:13 AM
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💫セイ主/ネコ科の本分🌟🐈(4/4)
お互いを甘やかすセイ主を書いてみました
猫イベ後のふたり
（思念のネタバレはありません）
今回も最高のイベントをありがとう恋深🫶
#恋と深空二次創作 #ladプラス #セイ主 #新書ページメーカー https://sscard.monokakitools.net/pagemakers/shinsho/shinsho_bg.php
印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。 付記に「セイ主／ネコ科の本分」、「紗雪 @sayukiss on X / @sayukiss1016 on bsky」と記載されています。 画像情報：generated by 新書ページメーカー / Photo by Sabri Tuzcu on Unsplash / フォント：夜永オールド明朝Regular 以下は本文の内容です。 　さらさらと、彼女の指先がセイヤの髪を梳いてゆく。その感触が心地よくて目を閉じた。それはオフの日の昼下がり。明るい日差しがリビングに差し込み、大きなソファの上でくっついて過ごすふたりをあたたかく包んでいた。 　髪の流れに沿って撫でた後、反対方向に撫であげてくるやり方は、人の髪を撫でる時のそれではない。すっかりお馴染みになってしまったそんな手つきに、セイヤは微かに笑う。彼女はまたしても猫耳を探しているらしい。 「『にゃー』って鳴こうか？」 　顔を上げて問いかけると、途端に彼女の目が泳いだ。 「そんなにわかりやすかった？」 「猫の耳があったところばかり撫でてたからな」 　ごめん、つい…としょげる彼女は絶賛セイにゃんロスなのだという。猫の呪いは解けてセイヤのEvolが戻り、深空ハンターとしての任務を共にこなすことができる元通りの日常が戻ってきていた。そのことはちゃんと嬉しいんだよ、と複雑そうだ。 「責めてるわけじゃない。あんたがそんなに気に入ってくれたなら猫になった甲斐があった」 　そういって彼女の首元に顔を埋めると、彼女がくすぐったそうに笑う。だから余計にぐりぐりと頭を押し付けてやった。もう！とたしなめてくる声は楽しげだ。 「呪いは解けたのに、甘えたさんだね。しばらく猫だった影響なのかな？」 「そうだな…後遺症みたいなものか、あとは癖になったのかもしれない。あんたに甘えるのが」 「…もっと、甘えていいよ」 　髪を撫でていた手が背に周り、ぎゅうと抱きしめてくる。気持ち良くて、安心できて、愛おしくて、ただひたすらに、もっと欲しい。自分がまだ猫だったらきっと喉を鳴らしていた。 「いっぱい甘えていいんだよ」 「あんたの大好きなセイにゃんじゃなくても？」 「お馬鹿さん。にゃんじゃなくなっても、あなたはわたしの大好きなセイヤなんだから」 　いつだって甘えて頼ってくれていいんだよ―― 　優しい声がそう告げる。その細い手は髪を撫でて、首筋へ。そしてそのまま背中を降りていく。いつでも彼女に巻きつけていたかった尻尾は消えてしまった。だから両腕でもっと深く抱き込むことにする。ふふ、と彼女が笑う気配がする。 「私が守って甘やかしていっぱい撫でてあげる」 「頼もしいな、パートナー」 「そうだよ、あなたは独りじゃないんだから」 　告げる声が胸の奥底に届いていく。触れると痛い思い出がある遥かな深みにすら、真っ直ぐに。 　 「忘れないでいてね、パートナー」 　 　なんでもないことのように言う。 　彼女が、本当は何もかも知っているんじゃないかと思う瞬間だ。 　 　彼女の手が頭から背中を行ったり来たりする。猫でなくたって眠くなる、しあわせな午後。時はゆっくりと穏やかに過ぎていく。まだまだ、にゃ んロスの終わりが見えない彼女に存分に撫でさせてやるのも、元セイにゃん執事としてのご奉仕だ。そう思って、撫でたりくすぐったりしてくる彼女の気の済むままにさせていた。第一、彼女が甘やかしてくれることに文句なんてあるはずがないのだし。 　そしてそのまましばらくが経ち、しかし、セイヤは彼女を止めることにする。 「あんた、それ以上そこを撫でて尻尾を惜しむのはやめた方がいい」 「へ？あ、ごめん無意識で…」 　彼女は一瞬目を瞬いた。そしてはっと我に返りセイヤの腰の下から尻にかけてを撫で倒していた手を離す。「セイにゃんの尻尾が…」なんてモゴモゴと言い訳をする。 「わかってる。だけどこれでもさっきから随分我慢してるんだ。続けるなら、この後可愛く鳴くのはあんたの方になるぞ」 　腰に溜まり始めた熱はもちろん彼女が意図した結果では無いのだが、焚き付けてきた責任が無いとは言わせない。体を起こして彼女の身体を両側に手をついて囲うと、彼女は顔を赤くして俄かに慌て出す。 「ま、待ってセイにゃん、『待て』」 「猫にはコマンドは通じない。犬じゃなくて残念だったな」 「じゃあ、えっと…にゃーん！」 「…？」 「猫語の『待て』」 「無駄だ。可愛いけどな」 　そういって顔を寄せ、耳元でにゃあと鳴いてやった。途端に彼女が笑い出す。 「今のは？」 「猫語で『好きだ』って言ったんだ」 　そのまま強請（ねだ）るように耳たぶを噛み、首筋にキスして舌先でなぞった。そして肌に吐息がかかる距離で、もうひと声にゃんと鳴く。 「それから今のは『欲しい』」 「こ、こら！言われた通り撫でるのはやめたでしょ」 「そうだな。だけど、少し遅かったみたいだ」 「えぇ？！」 　もう手遅れだと分からせるために首筋を唇で辿（たど）り吸い上げた。痕が残るように、きつく。マーキングもネコ科の習性のひとつだから、猫の呪いの後遺症と言えば、いつもよりたくさん痕をつけたって、セイにゃんを――セイヤを甘やかす癖がついた彼女はきっと怒らない。その証拠に、もう彼女は抵抗せず、呆れたようにため息をこぼすだけだ。 「猫は猫でも、今のあなたは…まるでヒョウとかライオンとか、猛獣系の猫みたいだよ」 　そんなぼやきに吐息だけで笑う。だってきっとそれは正しい。猫は甘えて喉を鳴らす可愛い生き物。そして、そんな家猫も含めてネコ科の獣は全て、獲物を追わずにはいられないのだから。 　狩りをするのはネコ科の本分なのだ。 「かもな」 　セイヤは短くそう答えると、そのまま彼女の唇を奪った。
November 28, 2024 at 2:40 AM
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このポーズの真価が発揮される時が来た❣️
November 13, 2024 at 1:03 PM
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セヤ誕のpixiv用の表紙かわいくできたからみてみてする…💕
お話書くのも楽しいけど、表紙作るのも楽しいな🥰
October 21, 2024 at 1:11 AM
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🫧ホム主SS／ホムラがリップクリームを（クリエイティブに？）塗ってくれる話🫧
pixivでのみ公開してた過去作を🦋TL賑やかしのため若干加筆修正して画像化してみました。
思えばこれが初書きホム主！懐かし〜😊💕
#恋と深空二次創作 #ladプラス #ホム主
October 20, 2024 at 4:32 AM
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🌟誕生日翌朝のセイ主🌟
ふたりがずっとずっと笑顔で一緒にいられますようにと願いを込めて😊💕

#セイヤ誕生日おめでとう
#恋と深空
#恋と深空二次創作
#ladプラス
October 17, 2024 at 3:03 PM