カエル男の憂鬱な日々
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カエル男の憂鬱な日々
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カエル男の日々を綴っている連載小説の卵です。不定期更新だけどなるべく毎日。小説はその日の起きたことや考えてたことをベースにAIで書いています。イラストもAI。
彼女はいつからか「普通」を嫌うようになった。最初は少し背伸びしたレストランだった。 次は少し高いバッグだった。その次は「特別な夜景が見えるホテル」だった。

「せっかく記念日なんだから」「みんなこれくらいしてるよ」「私、安いの好きじゃないの」 彼女の言葉はいつも柔らかくて正しい顔をしていた。だからカエル男は間違っていると言えなかった。
January 25, 2026 at 5:16 AM
夜の部屋で、カエル男は湯気の消えかけたカップを見つめていた。
「うちの上司は、自分で言い出した計画なのに、進めようとすると必ず反対する。結局、保身なんだ」
透明人間は少し考えてから言った。
「その人物は矛盾しているのではありません。一貫しています。ただ、目的が違うのです」
「目的?」
「彼の目的は、成功ではなく“無傷でいること”です。提案すれば評価を得られる。止めれば責任を避けられる。その両方を満たす行動を選んでいるのです」
カエル男は眉をひそめた。
「じゃあ、どうすればいい」
January 24, 2026 at 3:50 AM
床に置いた器が小さく鳴り、T君は尻尾を振りながら顔を上げた。カエル男は無言で餌を足し、その様子をしばらく眺めていた。

犬の時間は人間よりも早く流れる。いずれ訪れる別れを知っているからこそ、世話をする手には自然と責任が宿る。生き延びるために人の庇護が必要な存在。それが犬だ。

ふと、透明人間たちのことが頭をよぎる。彼らは人間よりはるかに長く生きる。では彼らにとって、人間とは何なのだろう。答えは、T君との関係とはまったく違うところにある気がした。

人間は短命だが自立している。庇護がなくても社会を作り、失敗し、立て直し、世界を変えてしまう。透明人間から見れば、それは弱さではなく、危うさに近い。
January 16, 2026 at 12:17 PM
その日、透明人間の家を出たあとも、その言葉はカエル男の中に残り続けていた。

透明人間達は富を否定していない。ただ富が未来を固定してしまうことを知っているだけだという。金は備えであり、保険であり、選択肢を増やす道具だ。だが同時に、判断を正しさへと押し固め、変化の余地を奪う装置でもある。長命な彼らにとって、それは致命的だった。
January 15, 2026 at 2:38 PM
「君たちは、やろうと思えば何でも見られるだろう」カエル男はそう切り出した。透明人間の家の中で、その問いは妙に現実的に響いた。

「個人の生活も、企業の内部も、政府の機密も。なのに、なぜやらない」しばらく間があった。言葉を選んでいる沈黙だった。

「理由は単純です」やがて、落ち着いた声が答える。「それを始めた瞬間、我々は“考える必要がなくなる”」

カエル男は眉をひそめた。
「情報があれば、判断は正確になるだろう」

「ええ。ですが、それは判断であって、思考ではありません」透明人間は続ける。
January 7, 2026 at 8:57 AM
焚き火の火が落ち着いた頃、透明人間は珍しく言葉を選ぶように話し始めた。「長く生きるというのは、必ずしも知恵が増えるという意味ではありません」

カエル男は黙ってうなずく。

「我々の里でも、世代間の軋轢はあります。いや、正確に言えば“世代”という概念自体が曖昧になるところから問題が始まる」

長命であるがゆえに、古い判断基準が消えない。成功体験は風化せず、失敗も修正されないまま居座る。

「若い個体が新しい提案をすると、必ずこう言われる。『それはもう試した』『結局うまくいかなかった』と」

カエル男は苦笑した。「どこでも同じだな」
January 6, 2026 at 3:56 AM
会議室の時計はまだ午前中だというのに一度も見られなかった。誰も時間を気にしていないわけではない。ただ、気にしているのは会議の行方だった。

資料は一巡し議論は具体論に入っている。数字、工程、リスク。そのどれもが、わずかに慎重すぎる調子で語られた。

「透明人間の集落への潜入はやはりまだ時期早々ではないですか?距離を保った接触を続けるべきです」提案は穏当だった。否定する理由もない。

だが、カエル男はその言葉の裏にある“先延ばし”を聞き取っていた。様子を見る、可能性を探る、検討を続ける。どれもプロジェクト中止の可能性が高まってしまう。
January 3, 2026 at 7:58 PM
薄曇りの森に、年の境目を告げる音はない。湿った土の匂いだけが、いつもと同じ速度で漂っていた。

「そうなると、正月みたいなイベントは君らにとって何の意味もないんだろうね」カエル男が、焚き火を小突きながら少し意地の悪い口調で言う。

透明人間は姿のないまま、澄んだ声で答えた。「そうは思いません。我々には時間を区切る感覚がないだけです。始まりも終わりも、常に同時に存在している」

火のはぜる音が、その言葉を区切るように鳴った。
January 2, 2026 at 3:24 AM
「時間は未来から過去に流れています」カエル男は、透明人間からそんな話を聞いたとき、思わず目を丸くした。

透明人間は続ける。「人間たちは不確定なことを試行錯誤して確定させながら生きています。なのに、なんで時間だけがその逆なことには不思議に思わないのでしょう?未来は『確定しているけど、あなた達には見えていない』だけなのです。時間が過去に流れる過程で、私達は『不確定だと思っていた未来』をひとつずつ確定させているに過ぎないのです」
 
透明人間は、まるで当然のことを語る。カエル男は顎に手を当てて考え込んだ。理屈はわからなくもないが、いまいちピンとこない。
February 26, 2025 at 12:36 AM
「そういうのって、透明植物を見つけられる能力とかあるの?」カエル男は首を傾げながら尋ねた。
透明人間はふっと笑い、「私たちにそんなものはありません。ただ、確信はあります」と静かに答える。

「確信?」カエル男が聞き返すと、透明人間はゆっくりと言葉を紡いだ。「だって、私たちは目に見えない存在そのものですから。だからこそ、透明植物もあると信じ、探し続けて、ついに見つけるんです」

「なるほど……」カエル男は理解したような、しきれないような表情を浮かべる。そんな彼を見て、透明人間はさらに続けた。「大事なのは、信じること。そして、探し続けること。それさえあれば、きっと見つかるんですよ」
February 20, 2025 at 12:18 AM
鍋を作るから食べに来ないか?という誘いに乗ってカエル男は透明人間の家に足を運んだ。それは不思議な香りの鍋だった。

鶏もも肉としめじ、舞茸の旨みが溶け込み、そこにほんのりと柑橘のような酸味と香ばしさが加わった。木綿豆腐と長ねぎが出汁をしっかり吸い込み、優しく包み込むような味わいに仕上がっている。

箸を持つ手が自然と伸び、湯気の揺らぎの中に不思議な感覚が広がっていった。一口味わうごとにまるで森の静寂に包まれたような余韻が口の中に広がる。

「これは…出汁は何だろう?こんな味わい、初めてだ…」カエル男が疑問を口にすると、透明人間は少し誇らしげに答えた。

「これは影草の葉の静寂鍋です」
February 19, 2025 at 12:57 AM
森の奥深く、霧がかかる川のほとりに、その集落はひっそりと息づいている。外界からはその存在すら知られておらず、訪れる者もなく、ただ水の流れと風のささやきがその存在を物語っている。

川の両岸には、それとは分からぬ程度の小道がくねくねと続き、やはりそれとは分からぬように古びた木製の橋が何本かかかっている。橋はもう何十年も使われており、ところどころ削れたり苔に覆われたりしているが、不思議と崩れることはない。
February 18, 2025 at 1:33 AM
透明人間集落レポート③

政府やGFPの監視から完全に逃れ、ひっそりと平和に暮らす透明人間たち。しかし彼らにも避けられぬ天敵がいる。

その名は――あおらぎ。

カエル男は、未だその姿を見たことがない。だが話によるとあおらぎは偏光視覚を持ち、オーロラのように輝く体毛をまとう神秘的な捕食者だという。影のわずかな揺らぎを読み取り、空気の流れすら感知し、透明人間さえも確実に狩る。

幸いあおらぎの個体数はそれほど多くない。それでも森の中を常に徘徊しているらしい。

「動き続けろ」――それがあおらぎの生存の鉄則だ。
February 17, 2025 at 3:24 AM
透明人間たちも社会の一員として他の民族と何ら変わりなく暮らしている。ただしその生活の中で、彼らはふとした瞬間に哲学的な言葉を口にしたり、深い意味を込めたフレーズを自然に交えたりすることがある。それが周りの人々にとってはどこか違和感を覚える原因となっていた。人々は透明人間を仲間として認めてはいるが、その発言にどこか浮世離れしたものを感じることがしばしばあった。

ある日のこと、カエル男は仲良くしている透明人間にそのことを尋ねた。透明人間は静かに答えた。「私たちの宗教観に由来するものだと思う。私たちは透明な存在として人間社会を静かに観察し、影響を与えずに見守ることを大切にしている」
February 16, 2025 at 8:21 AM
かつてこの国の森林は大躍進政策の名のもとに無残に切り拓かれた。森は消え、土壌は痩せ、川は干上がり、空は淀んだ。そしてその代償として、酸素供給と水循環が崩壊。生態系は壊滅的な打撃を受けた。

事態を重く見た国際連合、世界銀行、気候変動対策機関は連携し、地球全体の森林を「人類共通の財産」として国際自然保護機関(GFP: Global Forest Protection)の管理下に置くことを決定した。各国の森林はもはや国家のものではなくなり、GFPの監視のもと厳格な保護が行われることになった。
February 15, 2025 at 8:49 AM
この国には、二種類の通貨が存在する。一つは、一般の経済活動で流通する法定通貨(M$)。もう一つは、社会貢献活動を通じて得られる社会通貨(S$)。

だが、金に目がくらみ、市場通貨ばかりを追い求める者たちもいる。
彼らは コインジャッカー(Coin Jacker) と呼ばれ、軽蔑の的だった。
February 15, 2025 at 12:40 AM
この国は移民に寛容でありながら、厳格な徴兵制を敷いている。18歳から28歳までの男女すべてに、21か月の兵役義務が課されているのだ。

多民族が入り混じる軍隊は、その多様性ゆえに強大な戦力を誇り、建国以来、一度たりとも他国の侵略を許したことがない。

しかし、透明人間たちは、ほとんどが兵役を果たしてこなかった。天災によって世界各地に散り散りになった難民の末裔であり、透明化する特殊な能力を持つ彼らは、その力を軍事利用されることを恐れどの地域・どの時代においても積極的に従軍しようとはしなかったのだ。
February 14, 2025 at 12:39 AM
カエル男の住む国では、翻訳技術がとんでもなく進化していた。民族ごとに言語は違えど、50年も前に言葉の壁は消え去った。

耳に埋め込んだ翻訳チップが、誰と話してもスムーズに意味を伝えてくれるからだ。だが、それでも各民族特有の言い回しや言葉遣いはしぶとく生き残っていた。

例えば、透明人間たちがよく使う「リブート(新規巻き戻し)」という言葉がある。
February 13, 2025 at 1:22 AM
カエル男にも転機は訪れた。
それが透明人間との集落生活だった。

それまでの彼は感情の起伏が激しく、怒るたび、悲しむたびに「ゲロゲロ」と騒ぎ立て周囲から煙たがられる存在だった。しかし集落での生活を経た彼は、まるで別人のように変わってしまった。

言葉数は減り、一つ一つの言葉を慎重に選ぶようになった。まるで、喉の奥でじっくりと熟成させた言葉だけを、ゆっくりと吐き出しているかのように——。

以前の激情的なカエル男を知る者は彼の変貌ぶりに目を丸くした。いったい、透明人間たちの集落で何があったのか?

誰も知らない。
ただひとつ確かなのは、彼の瞳の奥に、静かに揺らめく何かが宿っていたことだけだった。
February 11, 2025 at 11:36 PM
草はまた、透明人間たちにとって、悩みを解決するための大切なツールでもあった。

例えば、ある透明人間が草にそっと悩みを刻み込む。すると、その瞬間、それはすべての透明人間たちに共有されるのだ。誰かが答えを持っていれば、それを書き込むことでまた全員に広がる。

もしすぐに解決策が見つからなくても、いつか必ず世代すら越えて誰かが応えてくれる。

だからこそ、草に刻むことが何よりも大切なのだ――それは、透明人間たちが支え合うための、静かで確かな絆だった。
February 11, 2025 at 12:45 AM
透明人間集落レポート②
透明人間の集落は、深刻な少子化に直面していた。

もともと雌雄同体で、人間よりもはるかに長寿な彼らは、一生をかけて各々が興味を持つ分野の探究に没頭することを好んでいた。そのため、子育てや子孫を残すことにはさほど関心を示さなかった。

そんな彼らの姿勢にある日カエル男は首をかしげながら、少し咎めるような口調で問いかけた。

「お前たち、こんなに人口が減ってるのに、それで本当にいいのか?」

すると、集落のひとりが静かに答える。「そう言われてもね……。果たして、この世界で子供を産むことが、本当に彼らにとって幸せなことなのでしょうか?」
February 10, 2025 at 2:03 AM
透明人間たちの集落からカエル男が戻ってきた――しかも、いつの間にか一年もの時間が経っていたなんて!

まるで以前のカエル男とは別人のような雰囲気で、あの集落での暮らしが彼の心の奥底まで大きく変えてしまったらしい。

その影響は見た目や態度だけにとどまらず、なんと書く文章の調子までガラリと変わってしまったのだ。
February 9, 2025 at 10:34 AM
研究者たちの中で、透明人間の里への潜入調査というカエル男の提案が議題になった。予算に見合う成果が得られる保証はどこにもなく、予測不可能な結果に投資することについては、彼らは慎重だった。考慮すべき他の研究課題も山積みになっている。

「まずは文通で情報を集めてみるのはどうだろう?」ある研究者は提案した。未だにその存在すら確認されていない集落に、本当に郵便は届くのだろうか。

しかし、ここで調査を中止すれば、今までの努力は全て水の泡になる。この思いから彼らの表情は非難めいていた。

この一大プロジェクトに対する情熱と、現実との間で揺れ動く心情が、カエル男を翻弄していた。
April 3, 2024 at 12:36 AM
ある朝、カエル男の携帯に透明人間からの意外なSMSが届いた。それは透明人間が故郷への帰還を決意したという内容だった。「私は以前の仕事を失ってから、必死に新しい職を探してきました。しかし、もう限界なのです」と、彼は悲痛な声で続けた。

透明人間の困難は彼の特異な体質というよりはこの国の高い失業率に起因しているように思えた。

そして彼がここを去ることになれば、カエル男の透明人間調査も終了し、同じく失業者の仲間入りをすることを意味していた。
March 31, 2024 at 10:00 PM
透明人間集落レポート①

透明人間達は生まれながらにして、それぞれが一本の草を持っている。この草は彼らの影のように常に共にあり、その言動を草の繊維に刻み込んでいく。さらに草同士はテレパシーのように繋がり、各自の情報は瞬時に共有されるのだ。

集落内での争いが起こると、その解決の場となるのが調停所である。ここではそれぞれの言い分を確認した上で草が記録している事実を基に、調停員が公平な判断を下す。

草の記録は決して偽ることができないため、透明人間同士で嘘をつくことはほぼ不可能なのである。この神秘的な草は、彼らの独自の特殊技術の結晶であり、集落の平和を保つ重要な役割を果たしていた。
March 7, 2024 at 4:44 AM